2017年05月22日

地下天気図は使えない:地震予知最前線

 BS-TBS「諸説あり!」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」
 番組の後半では、東海大学教授の長尾氏の研究が紹介された。
 長尾氏は、「地下天気図」という奇妙なものを使って地震を予知しようとしている。
 地下天気図というのは、地下の状態を天気図のように可視化したものだ。
 まず、過去に起きた地震の記録を地図上にプロットする。
 当然、地震活動が活発な地域とそうでない地域とが存在する。
 その活動度の変化を捉えて、天気図のように可視化するのだそうだ。
 例えば、活動が活発になっている地域は高気圧とみなして赤色に、活動が沈静化している地域は低気圧とみなして青色に表示される。
 この時、地震の予兆として注目するのは、意外にも、赤色ではなく、活動が沈静化している青色の方なのだ。
 どうも、大地震発生の直前に、その地域には地震活動が沈静化する現象が起きるので、それを捉えることができれば、地震予知が可能という理屈らしい。
 これも、なぜ大地震の前に沈静化現象が起きるのかは、よくわからない。
 だが、過去の大地震のデータを解析すると、地震発生の半年から1年ぐらい前に、その地域に青色の表示が強く現れるらしく、それが根拠になっている。

 番組では熊本地震の時のデータが紹介された。
 発生1年前の2015年4月の時点で、長崎と紀伊半島先端に青色エリアが現れた。
 この地域の地震活動が低下していることを意味している。
 嵐の前の静けさだ。
 これが6月になると、長崎の青色エリアは勢力を拡大し、紀伊半島の方は縮小していく。
 その後、いったん勢力は弱まるが、9月になってぶり返し、九州北部の青色だけが目立つようになり、他の地域の青色は姿を消していく。
 すると、10月には九州の青色も勢力が衰え始め、12月には消滅してしまう。
 消滅して4か月後に熊本で大地震発生となる。
 この予知法の特徴は、一番の異常データは地震発生の半年前に出るという点だ。
 実際に、このとき、長尾氏は九州北部で大地震が起きるかもと予想していたそうだ。
 「厳密には熊本とのずれがあるが、九州での異常を捉えていたことには変わりはない」と胸を張る。
 この研究も、熊本地震の前兆を捉えたとみるには、こころもとない。
 異常データが地震発生の半年前に現れること、そして、地震が起きた場所にピンポイントで現れるのではなく、そこからずれて現れること。
 地震予知には、「いつ」「どこで」が重要情報だが、この両方にずれが生じる予知情報は珍しい。
 「九州での異常を捉えていた」と言うが、九州といっても広い。
 他の地域の人から見れば、九州とひとくくりにしてしまえばどこも同じという印象かもしれないが、その土地のひとからすれば、福岡と熊本はまったく違う。

 また、この地下天気図の時間変化を見ると、別に気になるところが見るかる。
 地震が起きた2016年4月の天気図では、小笠原諸島から房総半島にかけて強い青色エリアが広がっているのだ。
 そのほかに、広島のところにも青色エリアが見つかる。
 異常データが出てから半年後に大地震発生というのなら、この地域に、半年後に大地震が起きていなければいけない。
 当時、長尾氏もリアルタイムでこのデータを見ていたはずで、この異常値を見て、熊本地震に続いて、首都圏や広島でも大地震が起きそうと予想していたのではないか。
 だが、そうはならなかった。
 この青色エリアについては地震の予兆ではなかったということになる。
 ということは、青色エリアは、地震の予兆になることもあれば、そうならないこともあるということだ。
 ここが非常にこころもとない。
 大地震が起きてから、その地域の過去のデータを調べて、異常値を見つけているだけという印象を受ける。
 
 番組では、熊本地震の直前に起きた三重県南東沖地震についても予兆を捉えていたと説明していた。
 2015年4月の段階で、紀伊半島先端と長崎で青色エリアが発生したが、このときの紀伊半島先端の異常値が、この三重県南東沖地震の予兆だったという。
 この時の地震はM6.1で最大震度4.
 ほとんど被害らしい被害は起きなかった。
 こんな小さな地震でも予兆を捉えることができたと言いたいようだが、説得力がない。
 ここの異常値が最大になったのは1年前。
 地震が起きてから、過去にさかのぼってデータを調べて異常を探しているという風にしか見えない。
 
 2016年10月に起きた鳥取中部地震も取り上げていた。
 熊本地震が発生した4月の段階で、広島に青色エリアが現れていた。
 この広島の青色は、6月になって急に勢力を拡大し、広島から島根にかけて広い範囲に広がった。
 7月にはさらにエリアを広げ、瀬戸内海、岡山まで広がっている。
 その後勢力は縮小し、地震発生時には広島北部から島根県の一部のエリアだけが青色に。
 これが、鳥取中部地震の予兆だったというのだ。
 これも、とても予兆には見えない。
 そもそも、震源だった鳥取県は、一度も青色に染まることはなかった。
 ずっと青色が続いたのは広島県だけだ。
 しかも、今度は、地震発生時に青色エリアは消滅していなかった。
 青色エリアは、半年から1年前に消滅するのではなかったのか。
 残念ながら、地震予知という観点で見たとき、「いつ」も「どこで」も外し続けているという印象しかない。
 番組内で長尾氏は、青色エリアが消滅していないことを捉えてこう言っていた。
 「もう1回、大きな地震が中国四国地方で発生する可能性が高い」
 これほど外していて、なお、予知しようとしている。
 この人にとって、中国四国地方はどこも一緒くたなのだ。
 このエリアのどこかで地震が起きれば、「予兆を捉えていた」ということになりそうだ。
 これほど広いエリアを長いスパンで捉えれば、地震が起きるのは当たり前だ。
 もうこうなると、怪しげな占い師の領域に足を踏み込み始めているように見える。

 こんな危なっかしいデータばかり紹介しているということは、ずばり「いつ」「どこで」を言い当てた異常データはまだ存在しないのだろう。
 この番組では、東日本大震災のデータは紹介されなかった。
 この異常データは、東日本大震災の予兆を捉えることがなかったのだということが分かる。
 紀伊半島沖のM6.1の地震は予兆を捉えたのに、M9の超巨大地震は予兆を捉えられなかったのだ。
 
 もちろん、まだまだ研究途上であり、完璧な予知を期待する方が無謀だ。
 地震予知に向けた基礎研究がようやく始まったところと考えれば、これらも貴重な取り組みと言えるかもしれない。
 だが、研究者の姿勢に疑問を感じる。
 安易に「予兆を捉えていた」とか、「予測が可能だ」などと言うからだ。
 時期がずれていても、場所がずれていても、近いからOKで当たったことにしてしまう。
 自分の研究が本物であると信じたいし、それが世の中の役になってほしいという強い思いがあるために、このようなやや大げさな物言いになってしまうのだろう。
 しかし、これは、占い師の姿勢であって、研究者の姿勢ではない。
 本当なら、ずれが生じたときこそ、そのずれに注目し、なぜずれが生じたのかを解明することが、本当の地震予知につながるのではないか。
 また、東日本大震災の時はなぜ予兆が現れなかったのか。
 そして、小笠原諸島から房総半島にかけて異常データが現れたのに、なぜ地震が起きなかったのか。
 ここにこそ、本質があるのではないだろうか。

 この番組で取り上げられた2人の研究者は、民間のうさん臭い地震予想屋とは違う。
 ちゃんとした研究者であり、科学論文があり、その研究内容が第三者によって検証できるからだ。
 地震予知は、現時点では無理であるにしても、いずれできるようになるかもしれない。
 そのためにはこのような地道な研究の積み重ねが必要なのだろう。



 

 
 
posted by 平野喜久 at 10:08| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

地震予知研究の最前線:上空の電子数で予知できるか

 BS-TBS「諸説あり」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」。
 この番組は、世に存在する様々な諸説を掘り起こし、徹底検証する情報バラエティだ。
 この回では、地震予知研究の最前線の紹介だった。
 京都大学教授の梅野健氏、東海大学教授の長尾年恭氏の研究が紹介された。
 梅野氏の研究は、「地震が起こる20分から1時間前に、その地域の上空で電子数に異常が見られる」というもの。
 熊本地震のデータを解析した結果を科学論文として発表し、話題となった。
 番組では、その時の異常データの時間変化が動画として紹介された。
 熊本地震の1時間前に、九州と北陸に異常を示す赤色のエリアが現れた。
 時間を進めると、北陸の赤色が消え、中国地方から九州にかけての地域だけ赤色が残る。
 しかも、赤色の地域は、帯状の畝のように縦に何本も発生しており、それが時間とともに西へ移動している。
 30分前になると、赤色エリアは九州だけになり、やがて地震発生となる。
 まるで、赤色のエリアが震源地に向かって集まってきているような動きがみられる。
 これを見れば、どこで地震が起きるか事前にわかるというわけだ。
 だが、私が映像を見た感じでは、これで、熊本地震の発生を予知できたという印象は持てない。
 30分前に赤色エリアが九州だけになるが、その赤色は主に福岡から宮崎にかけてのエリアに帯状に広がっている。
 そのあと、赤色帯は西に移動し続けるが、同時に中国地方にも再び帯が何本も等間隔で現れ、同じように西に移動し続ける。
 地震発生の時には長崎から熊本を通って鹿児島のあたりに1本の帯、大分のあたりにもう1本の帯が赤くなっている。
 たしかに、地震発生時に熊本のあたりも赤色になっているが、赤色の範囲は九州全土に広がっており熊本地震の発生をピンポイントで予知しているように見えない。

 この帯状の赤色エリアが日本列島の上に何本も平行に一定間隔で並び、それが同じ速度で西に移動している。
 これが、とても自然現象に見えないのだ。
 データの収集過程で何かノイズが入り、それが干渉を起こしているようにしか見えない。
 赤色エリアが移動して震源の熊本に向かって集まってきているように見えるのは、ただ干渉を起こした帯状の模様が左に動いていただけで、たまたま左の端に熊本があったということではないのか。

 梅野氏は、どうして地震発生直前に上空の電子数に異常が起きるのかは分からないとしている。
 「もしかしたら、地面の破壊現象が上空の電子数に影響を及ぼしているのではないか」と予想しているようだ。
 異常を表すエリアは、日本列島上に縦に帯状、それも複数が平行に均等間隔で並び、西へ同じ速度で移動する。
 ということは、地面の破壊現象も同じような動きをしているということか。
 地面の破壊現象がそんな規則的で幾何学的な動きをするはずがない。
 だとすると、別の原因でそのようなデータの動きをしていることになる。
 それが何なのかを解明しないことには、とても地震との関連は証明できないだろう。

 番組では、東日本大震災の時のデータ解析も紹介された。
 地震発生1時間20分前になると、日本列島のあちこちで赤いエリアが現れ始める。
 そのエリアは、現れては消え、消えては現れ、日本中をうごめいているように見える。
 20分前になると、近畿、中部、関東エリアに強い赤色のエリアがはっきり現れる。
 10分前になると、紀伊半島から御前崎の沿岸部に強い赤色のエリアが集中する。
 次の瞬間、このエリアの赤が突然消え、続いて関東地域が赤く染まる。
 と同時に地震発生となった。
 この時も、全国に広がっていた赤色のエリアが震源の方に集まっていく様子が見られると解釈していた。
 だが、東日本大震災の震源は宮城県沖であり、関東ではない。
 地震発生時、宮城県周辺は赤色になっていない。
 赤色エリアは全国をうごめいていたが、地震の被害の大きかった東北地方はほとんど赤くなることがなかった。
 東日本大震災も無理に解釈しようとしているが、とても地震の予兆を捉えているようには見えない。
 むしろ、10分前の映像を見ると、まさに南海トラフ巨大地震の想定エリアが真っ赤に染まっており、そちらの予兆であったと言った方が説得力がある。
 だが、真っ赤に染まった南海トラフ地震は発生せず、赤色に染まることのなかった宮城県沖で地震発生。
 これは、むしろ、このデータは予兆を捉えていないと解釈すべきではないのか。

 地震発生と同時に動画がストップしてしまい、そのあと赤色エリアはどのように動いたかは放送では分からなかった。
 東日本大震災発生後は、余震が頻発した。
 長野と静岡では誘発地震も起きた。
 その部分のデータを見てみたいものだ。。
 本当にデータが地震の予兆を捉えているのなら、地震発生後は、余震の続く東北太平洋側全体が常に真っ赤に染まっているはず。
 東日本大震災は日本の観測史上最大規模の地震だった。
 だったら、異常データもいままでに見たこともない最大規模で表れていなければおかしい。
 たぶん、データはそのようになっておらず、見せられないのだろう。

 「上空の電子数に異常がみられる」という表現をしているのも、違和感がある。
 異常とは何か。
 電子数が増えるとも減るとも言っていない。
 たぶん、電子数が突然増えたり減ったりする現象をとらえているのだろう。
 それを「異常」とみなして、地震の予兆と解釈しているのだ。
 本当に捉えたデータ値の変化は、電子数の異常なのか。
 どうして電子数に変化が生じるのかが分からないのに、「異常」と決めつけるところに恣意的な解釈が入ってしまっている。
 
 これは科学論文として発表されているのが救いだ。
 他の科学者によって、しっかり検証されるのを待ちたい。
 
 
 
 
 
 
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2017年05月15日

Jアラートが鳴ったらどうする

 政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を知らせる全国瞬時警報システム「Jアラート」による避難指示を変更。
 発射直後の第1報から「頑丈な建物や地下に避難してください」と呼び掛けるようにした。
 これまでは、
 第1報で、ミサイルが日本の領土領海に届く可能性。
 第2報で、日本の領土領海に着弾の可能性。避難指示。
 第3報で、着弾の状況。
 これだと、避難指示が遅すぎるので、ミサイルが日本に届きそうだと分かったら、第1報から非難を呼びかけるようにすることとなった。

 昨日の早朝のミサイル発射時にはJアラートは発信されなかった。
 日本に届く恐れなしと判断されたからだ。
 東京メトロは、前回のミサイル発射時に電車の運行を10分間停止した。
 だが、これはやりすぎとの批判があったことから、Jアラートが発信された時に運航停止に対応を切り替えた。
 柔軟に対応しているところが好ましい。

 北朝鮮のミサイルは、日本にとって、現実のリスクとなりつつある。
 今回のミサイルは、従来にはない新型のようで、上空2,000qにも達してから自由落下させるように打ち上げられたらしい。
 上空2,000qというと完全に宇宙空間であり、一度宇宙空間に打ち上げられたミサイルが、大気圏に再突入して着弾したことになり、軌道コントロールが非常に難しいことをやっている。
 北朝鮮は、狙い通り正確に着弾させることに成功した、と見解を表明しているが、本当にそうか危なっかしい。
 今回はたまたま何ごともなく済んだが、少しでも軌道にずれが生じただけで、着弾地点は大きくずれる。
 試作段階のミサイルを次々に打ち上げ、失敗しないと考える方が間違っている。
 いままでの失敗は、途中で爆発したり、北朝鮮の領土内に落下したりという完全な失敗だったからよかった。
 だが、完全な失敗ではなく、少しミスした程度の失敗だった場合、そのミサイルはどこに着弾するか分からない。
 北朝鮮の意図にかかわらず、日本領土内に着弾する可能性はある。
 国がJアラートのシステムを開発し、国民に呼びかけているのは、現実のリスク対応として当然だろう。
 
 ところが、このJアラートに苦情を申し立てる人がいるそうだ。
 「子どもが怖がる」
 「不安をあおるのはやめてほしい」
 リスクに目を向けさせまいとする勢力は常に存在する。
 
 リスクに目を背けるのではなく、リスクを正しく直視し、冷静に対処法を考えておくことだ。
 Jアラートが鳴ったらどうしたらいいのか。
 国は屋内避難しか呼びかけていないが、本当は、もっと詳しく解説した方がいい。
 北朝鮮から日本に飛んでくるミサイルはどんなタイプになるのかは分からない。
 ただ実験用のミサイル筐体だけが落ちてくるのか、爆薬が仕掛けられているのか、爆薬とともにバイオや核が搭載されているのかによって、予想される被害はまったく違う。
 最低限、頑丈な建物の中に逃げ込むのが第1。
 これは、上からの落下物を回避するため。
 次に、窓際から離れ、建物の奥に退避する。
 これは、爆風から逃れるためだ。
 そして、目を両手で抑える。
 これは、爆発の閃光で失明しないため。
 目をつぶるだけでもいいが、核爆弾の場合その閃光は瞼を透過してしまうので、両手で覆った方がいい。
 爆発音もすごいので、耳を塞いだ方がいい。
 この時、目を覆いながら耳を塞ぐ姿勢になる。
 爆風が収まったら、情報収集。
 いまの爆発がどんなミサイルだったのか、周辺状況がどうなっているのかを確認。
 確認できる前に、勝手に動き回らない方がいい。
 生物・化学兵器や核爆弾の場合、その後の被害が大きくなる。

 
 
 
 



北朝鮮を巡る情勢が緊迫化しているためで、ミサイルは発射から最短数分で着弾することから、一刻も早く国民に避難を促す必要があると判断した。
政府は弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合に、Jアラートを使用して警報を出し、防災行政無線や緊急速報メールを通じて情報を伝達する。

これまでは、ミサイル発射後、日本の領土・領海に届く可能性がある場合、警報の第1報を出し、1〜2分後、領土・領海内に着弾する可能性が高くなった段階で第2報、着弾した段階で第3報を出すことにしていた。
避難指示は第2報の段階で「屋内に避難してください」と伝えていたが、今後は第1報から避難を指示し、屋内避難を呼び掛ける。

 
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2017年05月06日

原発事故ルポの名著:危機のリーダーを考えさせる

 遅ればせながら、福島原発事故のドキュメンタリーを読んだ。
 このような本は、事故直後よりも、時間を置いてからの方が、落ち着いて読める。

大鹿靖明 著 『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社文庫)
船橋洋一 著『カウントダウン・メルトダウン(上)(下)』 (文春文庫)

 原発事故関連の書籍はいろいろ出ているが、この2冊が最も内容が充実しているようだ。
 関係者へのインタビューと周辺情報の取材がしっかり行われており、人々の動きや気持ちが手に取るようにわかる。
 現場では何が起きていたのか、東電幹部らは何を考えていたのか、保安院や委員会は何をしていたのか、官邸はどう行動したのか。
 まるで、小説でも読むようなリアルさで再現されている。
 これが、フィクションではなく、現実に起きていたことだけに、胸に迫るものがある。
 リアルタイムでは国民に何も知らされていなかったが、実際には、日本消滅の危機に瀕していたのだということが分かって背筋が寒くなる。
 この2冊は同じ原発事故を取り上げており、当然、同じ場面が出てくるが、視点の置き所の違いか、本によってニュアンスが違うのが興味深い。
 このような多面的な視点で事故を取り上げることで、真実が見えてくる。

 事故時の対応で、菅直人総理の言動が批判されることが多い。
 事故直後に、総理自身が官邸を離れて事故現場に押しかけ、現場を邪魔した。
 東電本社に乗り込み、幹部や社員らをどやしつけて萎縮させた。
 常にイライラし、周りの人間を怒鳴り散らし、誰も近づかなくなった。
 これらの言動はどうやら事実のようだ。
 だが、菅総理の立場に立ってみると、彼のイライラ感はよくわかる。
 腑抜けのように当事者能力を失っている東電幹部。
 責任放棄して逃げることしか考えていない保安院職員。
 まともに判断できず適切なアドバイスもできない安全委員会。
 その実態を知ると、菅総理でなくてもイライラを爆発させたくなる。
 もちろん、官邸の対応にも反省すべき点はあっただろうが、政治家まで腑抜けになっていたり、逃げ腰になっていたりしなかっただけでも、よかったと思う。

 官邸の中の1人が、「菅総理でよかった」と思わず漏らす場面が出てくる。
 東電本社に乗り込み、「撤退はあり得ない! 死ぬ気でやれ!」と大声でどやしつけ、東電幹部らの表情が引き締まる場面だ。
 ドラマだったら、ここがクライマックスになる。
 確かに、菅総理だから、これができた。
 その前の総理だったら、「トラストミー」「腹案がある」と言っているだけで、何も行動できなかったに違いない。
 
 この本は、危機の臨んでのリーダーの在り方を考えさせる絶好のケーススタディになる。
posted by 平野喜久 at 09:14| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月30日

オリンパス元経営陣への賠償請求:590億円の支払い命令

 オリンパスの株主代表訴訟で、約586億円の賠償責任という判決が出た。
 光学機器大手オリンパスの巨額損失隠し事件で損害を与えたとして、同社と個人株主が旧経営陣ら18人を相手取り、計約897億円の損害賠償を同社に支払うよう求めた訴訟。
 東京地裁は27日、元会長ら8人に計約590億円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、同社は1990年に運用していた株の大幅下落で損失が拡大。
 96年頃には資金運用の含み損が約900億円に達したが、海外ファンドに含み損を抱えた金融資産を移し替えるなどして損失を簿外で隠蔽。
 損失隠しは2011年に発覚。
 元社長ら3名は金融商品取引法違反に問われ、東京地裁で13年7月、執行猶予付きの有罪判決を受け、確定していた。
 オリンパス社は「会社に多額の損害を与えた」として元社長らを提訴。
 約37億円の支払いを求めた。
 同時に個人株主も株主代表訴訟を起こし897億円の賠償請求していた。
 今回の判決は両者を合わせた判断となる。

 判決は、菊川元会長ら旧経営陣について「簿外損失を公表する機会がありながら公表せず、損失隠しの中止や是正の措置も何ら講じなかった」と指摘。
 損失隠しによって、株主に本来の分配可能額を約586億円上回る配当が行われたとして、菊川、山田、森の3氏に約586億円の賠償責任を認めた。
 また、菊川氏らには、事件で同社が支払った課徴金の一部などの賠償も命じた。

 今回の賠償責任は、元経営陣8人に対するものだが、実質、元社長の菊川氏、元副社長の森氏、元監査役の山田氏に対するものだ。
 この3氏が損失隠しを主導した主役、他の5人は当時の経営陣として虚偽記載を防ぐ責任を果たせなかった脇役と認定された。
 主要3氏だけで586億円の賠償責任。
 これは、組織の賠償責任ではなく、個人の賠償責任という点が重要だ。
 単純に三等分したとしても、1人195億円。
 個人賠償としては、考えられないような額になる。
 
 被告の元経営陣らは、何も私腹を肥やそうと会社の金に手を出したわけではない。
 たぶん、本人らには、会社のためという経営判断で行なったものとの思いがあるだろう。
 だが、これだけの損失を会社にもたらしておきながら、自分は高額の役員報酬をもらい、退職金を満額手に入れているとしたら、自分の利益のために会社の利益を犠牲にしたも同然だ。
 私腹を肥やすために会社の金に手を出したのと同じことになってしまう。
 
 もう1つ、重要な点は、主役3氏だけではなく、脇役5氏にも賠償責任が認められたことだ。
 この5氏は、たぶん、損失隠しには直接関与していない。
 しかし、当時の役員として、損失隠しを知りうる立場にあったし、それを防ぐ責任があった。
 そのことを厳しく認定されたことになる。
 つまり、何かやらかしたことを責められているのではなく、何もしなかったことが責められているのだ。
 ただ役員会の場で、黙って座っているだけでは、いつ賠償責任を問われるか分からないということになる。

 さらに、賠償責任が認められた元役員の中には既に他界してい人もいるが、支払い命令はその遺族に出されている。
 賠償責任は死んでも許されないということだ。 
 
 仮にこの判決が確定したとすると、賠償命令が実行に移される。
 個人でこれだけの賠償に応じられるかどうか。
 世界的な富豪だったら小遣い程度の金額だが、普通は全財産を拠出しても足りないだろう。
 賠償請求に対して、自己破産は認められていない。
 当面の生活費だけを残して、強制的に身ぐるみをはがされることになる。

 菊川氏については、2012年の報道で、個人資産を親族に譲渡していたことが分かっている。
 今回のように個人賠償にまで発展することを見込んで、事件発覚直後から対策をしていたのだ。
 他にもあらゆる手段で、個人資産を分散させているのに違いない。
 このような行動は詐害行為とみなされ、すべての取引を取り消されることになる。
 相手が善意の第三者であったとしても、無理だ。
 取引の取り消しとは、取引自体がもともとなかったことにされるということだからだ。
 オリンパスの元経営陣らは、たぶん、逃げ切れない。

 中小企業の社長は失敗したら身ぐるみはがされるが、大企業の社長は、失敗しても辞任すれば退職金をもらって逃げ切れるというのが、昔の常識だった。
 ところが、いまは時代が違う。
 

 
posted by 平野喜久 at 18:30| 愛知 | Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月15日

くら寿司のお粗末な対応:投稿者の情報開示請求

 産経新聞の報道による。
 奇妙な裁判があった。
 大手すしチェーン「無添くら寿司」を運営する「くらコーポレーション」が、プロバイダー業者「ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)」を相手取り、裁判を起こした。
 訴訟の内容は、インターネット掲示板上に「無添という表現はイカサマくさい」などと書き込んだ人物の情報開示を請求したもの。
 その判決が12日、東京地裁であった。
 結果は、請求棄却。
 「書き込みは、くら社の社会的評価を低下させるものではなく、仮に低下させるとしても、書き込みには公益性があるため違法性はない」ということだった。
 
 株式情報を扱う掲示板に、ソネットのプロバイダーを利用する誰かが「くら寿司」を批判する書き込みをしたらしい。
 それで、くら社がソネットに対して、投稿者の情報開示を求めていたのだ。
 くら社は、投稿者の情報を得て、何をしようとしたのか。
 投稿者に直接掛け合い、投稿を削除せよと要求するつもりだったのか。
 それとも、このような裁判を起こし、批判的な投稿をする匿名者への脅しのつもりだったのか。
 いずれにしても、上場企業の対応としては低レベル過ぎる。

 実際の投稿内容は、次のようなものだったようだ。
 「ここは無添くらなどと標榜するが、何が無添なのか書かれていない。揚げ油は何なのか、シリコーンは入っているのか。果糖ブドウ糖は入っているのか。化学調味料なしと言っているだけ。イカサマくさい。本当のところを書けよ。市販の中国産ウナギのタレは必ず果糖ブドウ糖が入っている。自分に都合のよいことしか書かれていない」

 これを読むと、誹謗中傷やデマの類とは全く違うのが分かる。
 この内容は、多くの人が漠然と感じていたことで、「確かに、そうだよなぁ」と思わせる。
 「無添くら寿司」という店舗名は、まるで、出されている食材は、無添加に徹しているかのように連想させる。
 ところが、この店舗の売り文句に、「無添加」の言葉はどこにもない。
 テレビコマーシャルにも、広告にも、店舗内装にも、無添加をセールスポイントにしている様子はまったくない。
 ならば、この「無添」とは、何の意味か。
 誰もが疑問に思うだろう。
 もしかしたら、「無添」とは、どこかの地名か? 人名か?
 名前の由来も公表されていない。
 もしかしたら、消費者に「無添加」を勝手にイメージさせるためにこのような店名にしているだけではないのか。
 あの投稿者の思いは、ここにあったのではないだろうか。
 
 それにしても、くら社の対応はお粗末すぎた。
 裁判に訴えたことで、この案件が広く知られることとなり、むしろ企業イメージの低下につながた。
 そして、店名のうさん臭さに改めて気づかせることになってしまった。
 くら社としては、裁判に訴えるのではなく、「無添くら寿司」の店名の由来を丁寧に説明し、我が社の創業理念を広く知ってもらう絶好のチャンスにすべきだった。

posted by 平野喜久 at 17:10| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

表層地盤、想定の1.5倍以上の揺れ

 NHKwebnewsの報道による。
 地震の揺れの大きさについて。
 表層地盤によって局所的に揺れが増幅する恐れがあるとして、国の研究機関である防災科学技術研究所が分析した。
 いままでは、揺れの大きさは地盤の柔らかさによって決まると思われてきた。
 だから、山間部は地盤が固いため揺れは小さく、平野部は地盤が柔らかいために揺れは大きくなる。
 当然、平野部ほど建物の被害は多くなるというのが一般的な解釈だった。
 ところが、去年4月の熊本地震では、必ずしもそうなっていなかった。
 平野部でも、場所によって建物被害の大きいところと小さいところが極端に分かれていたのだ。
 特に、河川流域は体積地層が深いので、建物被害は甚大になるはずが、そうなっていなかった。
 むしろ、流域から離れた地域の方に被害が集中していた。

 この謎は、表層地盤の厚さによるものだということが分かってきた。
 表層地盤とは地表面に堆積した柔らかい粘土層の地盤のことを言う。
 山間部は表層地盤が薄いので、地震の揺れは増幅されることがない。
 これは従来からの解釈と同じだ。
 問題は、平野部だ。
 河川流域は表層地盤が厚い。
 当然、地震の揺れは表層地盤で増幅されて地表に伝わるが、その揺れは非常に周期の長い揺れになって伝わる。
 この周期の長い揺れは、地面を大きく揺さぶりはするが、低層階の木造住宅を破壊するような力を持たない。
 一方、河川流域から離れた表層地盤が少し浅くなっている地域は、地震の揺れが増幅され、地表面に達するときには周期1秒ぐらいの揺れになる。
 この周期の揺れが木造住宅に特に被害をもたらすことが分かっている。
 熊本地震で、同じ震度7を観測した地域でも、場所によって建物の被害状況に極端な違いが見られたのはこういう仕組みだったのだ。

 近い将来、首都直下地震の発生が懸念される関東地方。
 従来の地質調査で揺れの大きさをハザードマップで公表されていたが、これが全面的に見直しを迫られている。
 表層地盤の状況によっては、地震の揺れが、これまでの想定の1.5倍以上に強まる可能性のある地域が5000か所余りに上ることが明らかになった。
 場所によっては、揺れの大きさが3倍以上となるところもあり、従来の被害想定がまったく当てはまらなくなっている。
 今後は、他の地域の地盤調査も進み、より正確なハザードマップが作られるようになるだろう。
 地震の調査研究は、常に進化しており、ハザードマップも常に塗り替えられている。
 私たちが地震への備えを考えるときには、最新の情報に敏感になっておく必要がある。


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2017年04月01日

第3回レジリエンス認証:審査登録結果

 第3回のレジリエンス認証(国土強靭化貢献団体認証)の審査結果が公表された。
 今回、審査登録されたのは7社だった。
 第1回が44社、第2回が20社だったから、第3回はずいぶん少ない印象だ。
 応募そのものが少なかったのか、それとも、応募はあっても審査に合格するレベルの企業が少なかったのか。
 応募総数や合格率などが公表されていないので、実態はよくわからない。
 これまでに審査登録になった企業は、71社。
 初年度に100社を目標としていたはずなので、やや低調だ。

 レジリエンス認証制度は、民間企業のBCPの取り組みを客観的な立場で認証し、国が応援しようという仕組みだ。
 いままで、BCPの必要性はいろいろなところで語られてきたが、各企業が勝手に取り組んでいるだけで、それが実質的に意味のある内容になっているのかどうかは、よくわからなかった。
 BCPに取り組んでいるといっても、いろんなレベルの取り組みがある。
 ようやく基本レベルが一通りできた初級レベル。
 基本レベルのBCPに基づき、具体的な対策を実行し始めた中級レベル。
 必要な対策は実行済みで、さらに実効性の向上にバージョンアップを重ねている上級レベル。
 「BCPに取り組んでいる」と表明していても、その企業が実際にどのレベルの取り組みを行なっているのかは外部からはうかがい知ることができない。
 外部から伺い知ることができないだけではない。
 取り組んでいる当事者も、自分たちの取り組みはこれで十分なのか、まったく足りないのか、それが分からないことがある。
 お手本を見ながら、見よう見まねで作っているだけだからだ。
 
 こういう状況にあるとき、レジリエンス認証のような客観的な審査制度は非常にありがたい。
 取り組んでいる当事者にとっては、自分たちのBCPが十分なレベルにあり、いままでの取り組み方が間違っていなかったことの確認になる。
 第三者に対しては、我が社のBCPは十分なレベルにあることの証明になる。
 このことから、BCPに取り組む企業には、まずはこのレジリエンス認証をクリアできるレベルを目指すことをお勧めしている。
 
 だが、このレジリエンス認証制度は、まだ昨年度に始まったばかりで、認知度は高くない。
 いままで認証取得した企業も、地域や業種が一部に偏っている。
 このレジリエンス認証の審査基準の1つに、過去2年ほどの活動実績があることが要求されている。
 これが1つのハードルになっているようだ。
 つまり、とりあえずBCP文書を作りました、というだけでは認められない。
 それに基づいて実際の活動が行われていて初めて認証される。
 この認証制度は、文書が形式的に整っているかは重視しない。
 実際に活動が行われており、今後もその活動が継続する仕組みがあるかどうか、という実質性の方に重点が置かれている。
 だから、この認証制度を知って挑戦しようと思っても、まずは活動実績がなければ申請できない。
 それで、いま、活動実績を作っているところということかもしれない。
 回を重ねるごとに登録企業数が減っているのは、こんなところに理由があるのだろう。

 国土強靭化は国策として取り組まれており、レジリエンス認証制度は、その一環として重要な位置づけにある。
 国は本気でこの制度を広げていこうとしている。
 レジリエンス認証に挑戦する企業が増え、このメリットが具体的に実感できるようになれば、一気に普及が進むだろう。


posted by 平野喜久 at 16:09| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月30日

雪崩事故:責任者のリスク認識

 8人もの若い命を失う重大な結果を招いた栃木県那須町の雪崩事故。
 この事故の論点は2つ。
 1つは、なぜ雪崩発生のリスクがあるのに雪山訓練を決行したのか。
 もう1つは、なぜ事故発生の通報が遅れたのか。

登山講習会責任者が会見を開いた。
 訓練決行の理由については、「絶対安全との認識があったため」と発言した。
 前日の報道で雪崩発生の可能性を認識していたが、雪崩の発生しそうな場所は分かっているので、そこを避ければ安全であると判断したようだ。
 「100%か」と問われ、「100%だ」と答えていた。
 世の中に「絶対」とか「100%」などということはめったにあるものではないが、この責任者は安易にこの言葉を使う。
 すべての間違いはこの「絶対安全」との認識から始まっている。
 リスクを認知していなければ、それに対する備えをすることはなくなってしまう。
 遭難時用のビーコンを生徒らに持たせなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。
 本部で緊急事態に備えた心構えができていなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。

 彼は、登山歴20年のベテランだ。
 どうしてそのような人物が雪山リスクを正しく認知できなかったのか。
 もしかしたら、自らの経験が判断を誤らせたのかもしれない。
 経験豊かな人が判断を間違うということは往々にしてある。
 むしろ、経験豊かだからこそ間違うということも起きる。
 その経験が偶然の成功体験しかなかったら、その経験則は、間違った判断しかもたらさない。
 
 彼は、同じ場所で過去に同じような訓練をした経験があるという。
 そして、その時には何も問題は起きなかった。
 この成功体験が判断を誤らせたのは間違いない。

 当日、早朝、天候が悪いために、通常登山は無理と判断し、「ラッセル訓練」に切り替えたという。
 前日の雪崩注意の報道、そして当日の荒天。
 そのために、登山を避けるべきというリスク判断をした。
 ここまではよかった。
 だが、ラッセルなら絶対安全という認識に至る経緯が理解不能だ。

 問題の2つ目は、通報が遅れたこと。
 この理由は、よくわからない。
 本部が遭難を知ったのは、最終班の教員が本部に駆けつけて通報したことによる。
 そのために、雪崩発生から警察への通報に50分もかかることになった。
 各班の教員は、それぞれ無線機を携帯し、何かあればただちに本部に連絡できる体制になっていた。
 なのに、なぜ、雪崩に巻き込まれた先頭班の教員らは、ただちに無線連絡しなかったのか。
 教員らも雪崩に巻き込まれ、無線連絡できる状態ではなかったとしても、2番班、3番班の教員たちは、ただちに無線連絡できたはず。
 今回、最終班の教員が本部に駆けつけたので、緊急事態を知ることができたが、もし、それがなかったら、さらに救助が遅れたはずだ。
 会見では、無線連絡がなかった理由はよくわからないとのことだった。
 ただ、無線機を車の中において、他の作業をしていた時間帯が10分ほどあったことを明かしていた。
 
 このあたりもあまりにも不自然な印象を受ける。
 たぶん、雪崩発生を受けて現場の教員らは直ちに本部へ無線連絡を試みたに違いない。
 雪崩に巻き込まれて、教員にそんな余裕がなかったとしても、離れた場所にいる教員は何が起きたかすぐにわかり、それをただちに無線連絡することは可能だ。
 1班から5班までのすべての引率教員が無線連絡を失念していたなどということはあり得ない。
 特に最終班の引率教員が本部に駆けつけて緊急事態を知らせたのは、無線が通じなかったからではないのか。
 もしかしたら、本部ではまったく無線が通じない状態にあったことを疑わせる。
 たとえば、無線機の近くに誰もいなかったとか、無線機の電源が切られていた、とか。
 「絶対安全」との認識だったのだから、そうなっていたとしても不思議ではない。
 すべての間違いは、責任者のリスク認識にあったと言わざるを得ない。

 最終班の教員が本部に駆けつけたのはせめてもの救いだった。
 この教員が、「どうせ誰かが本部に通報しているだろう」「無線が通じないのは既に本部で緊急対応が始まっているからだろう」などと憶測してしまっていたら、対応は更に遅れていた。

 最後に、責任者の記者会見について。
 たどたどしい語りだったが、まるで人ごとのように軽々しく話しているという印象を受けた。
 たぶん、彼自身、ことの重大さをまともに受け止め切れていない感じだ。
 「どうして、こんなことになってしまったのだろう」と訳が分かっていない様子に見えた。
 最後、隣にいる人に促されて、立ち上がって頭を下げていた。
 その姿が痛々しい。



 
 

 
posted by 平野喜久 at 11:01| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月22日

アスクル倉庫火災:社会的責任

アスクルの物流倉庫火災。
 6日たった今朝、ようやく鎮火となった。
 延べ床面積およそ7万2000平方メートルのうち、これまでに東京ドームとほぼ同じ広さの4万5000平方メートルが焼けたという。
 窓のほとんどない倉庫で、消火活動がままならず、壁の一部を壊しながらの放水だったが、効果は限定的だった。
 倉庫内の物資が燃え尽きたところでようやく鎮火に至ったといった印象がある。
 周辺住民へは避難勧告が出されており、それもようやく解除されることになる。

 今回の火災事故には疑問点がいくつかある。
1.なぜ出火したのか。
2.なぜ初期消火できなかったのか。
3.なぜ鎮火まで長期化してしまったのか。

 今回の火災は、アスクルの通販業務に影響を及ぼしたが、それよりも、長期化したことにより地域社会への影響が大きかった。
 社会的責任を果たすためにも、原因の究明と再発の防止が求められる。
 アスクルは本日午後に記者会見を開くらしい。
 疑問点に対して明確な回答ができるかどうかが注目される。




 
posted by 平野喜久 at 12:03| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月21日

レジリエンス認証の取得と目指すメリット

 内閣官房のウェブサイトに、レジリエンス認証を取得した企業が公開されている。

国土強靱化貢献団体認証 認証取得団体一覧表
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/ninshou_dantaiichiran.html

 レジリエンス認証を取得した企業は、正式には「国土強靭化貢献団体」として認証されている。
 国の推し進めている「国土強靭化政策」に貢献している団体という位置づけだ。
 内閣官房のウェブサイトは、日本国内で最もページランクが高い。
 つまり、検索エンジンにとって、サイトの信頼性が最も高いと評価されているページだ。
 その内閣官房のウェブサイト上で、企業名が公表されているのは、企業PRの点で、非常に価値が高い。

 一覧表を見ると、あまりにも東京都に偏りすぎているきらいがある。
 第1回、第2回、合わせて現在までに64社の登録があるが、そのうち、愛知県の企業は、たった4社にとどまる。
 私が顧問をしている企業はこの内の1社だ。
 以前からBCPのお手伝いをさせていただいてきたが、取り組みの成果を形として残すために、レジリエンス認証への申請をご提案した。
 愛知県はBCPの取り組みが進んでいる地域ではあるが、その割にレジリエンス認証の広がりが遅い。
 本年度に始まったばかりの制度であることもあり、まだ、認知度が低いのかもしれない。
 しかし、国は、この制度を積極的に推し進めようとしており、初年度は100件ぐらいを目指し、今後は加速度的に認証団体を増やしていく意向だ。
 首都直下地震や南海トラフ巨大地震は目前に迫っており、国を挙げて災害への備えが求められる状況にあるからだ。

 従来は、災害対策と言ったら、行政が取り組むべきことという認識だった。
 だが、行政だけの努力でどうにかなるものではないことがあきらかなので、住民の自助も呼びかけかれるようになった。
 現実には、これだけではだめで、民間企業の果たす役割が大きいことが認識されるようになってきた。
 地域経済が復旧しなければ、住民の生活基盤が失われてしまい、地域の復興は成功しない。
 地域経済を守るのは、行政でも住民でもなく、民間企業なのだ。
 いざというときに民間企業が生き残り、いち早く復旧することが、その街の再生に欠かせない。
 それで、国が本腰を入れて「レジリエンス認証」を推し進めようとしているのだ。

 この認証制度は、今後は、国の強力なバックアップで、ますます認知度が高まっていくだろう。
 BCPの取り組みは、いまやどの企業でも避けて通れない重要課題となりつつあり、このレジリエンス認証は、まずは最低限クリアすべき目標として非常に使い勝手がいい。
 いままでは、BCPは各社が勝手なやり方で勝手なレベルで対策していたが、それに、ある程度客観的な基準ができたことになる。
 「レジリエンス認証」がその企業の信頼性を証明する指標になりうる。
 ISOのようなその企業の信頼性を表す指標として位置付けられれば、一気に広がっていくことが予想される。
 業界によっては、爆発的な広がりになっていくだろう。
 取り組むとしたら、いまが、トップランナーに加わる絶好のチャンスといえる。

 レジリエンス認証は、地道にBCPに取り組んでいる企業であれば容易に取得できる。
 しかし、今日取り組めば、明日には取得できるというほどいい加減なものではない。
 実質的な活動が行われているかどうかは厳しく審査される。
 それだけに、認証取得できたということは、中身のある取り組みが行われている証明でもある。
 逆に言うと、このレジリエンス認証の審査に合格するぐらいでなければ、そのBCPの取り組みは意味がないともいえる。
 まじめにBCPに取り組んできた企業、または、これから本格的にBCPに取り組もうとする企業は、ぜひ、このレジリエンス認証に挑戦してほしい。
 この認証には挑戦するだけの価値がある。



 
posted by 平野喜久 at 16:25| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月25日

なんでも鑑定団の内容に異論:曜変天目茶碗

 テレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』。
 20年以上も続く人気長寿番組だが、それに騒動が持ち上がった。
 昨年12月20日の放送で、「曜変天目茶碗」が出品され、それが本物と鑑定され、2500万円の値段が付いた。
 ところが、放送直後から、あちこちから疑問の声が上がることになる。
 世界に3点しか見つかっていない曜変天目茶碗の4点目が見つかったのであれば、国宝級であり、その価値がたったの2500万円なんて安いはずがない。
 既に国宝指定されている他の曜変手目茶碗に比べると、まったく似ていない。
 そもそも、これは本物なのか。

 専門家も黙っていない。
 曜変天目を長年研究してきた陶芸家からは、「どう見ても中国の商店街に売られているまがい物にしか見えない」と厳しい指摘。
 中国陶磁器の研究をしている大学教授も、「本物である可能性は低い」とにべもない。
 この騒動は、海外へも飛び火し、中国からも異論が出ているという。

 「開運!なんでも鑑定団」は、ただの娯楽番組に過ぎない。
 一般の人が、自慢のお宝を持ち寄って、鑑定士に値段をつけてもらい、思いのほか高値がついてびっくりしたり、まったくの偽物との鑑定で大笑いになったり。
 その場の、たわいもない喜怒哀楽を楽しむのが目的。
 その内容に、専門家がむきになって反論するほどのものではない。
 
 だが、今回はただの笑い話では終わらなくなった経緯がある。
 それは、番組の放送前に、テレビ局がプレスリリースを流していたのだ。
 「番組始まって以来の最大のお宝発見!」
 国宝級のお宝が出るということで、番組放送前から注目が集まっていた。
 専門家も関心を寄せるのは当たり前だ。
 そうなれば、さまざまなところからいろんな意見が出るのは予測できたこと。
 その結果、専門家からも厳しい異論が噴出することとなった。
 これは、テレビ局側が招いた騒動だといえる。

 だが、テレビ局側は、今回の騒動については書面での回答で終わっている。
「鑑定結果は番組独自の見解によるものです。番組の制作過程を含め、この件について特にお答えすることはありません」
 番組内で鑑定した中島氏もコメントを出していない。
 プレスリリースでは、「国宝級の発見」と煽っておいて、問題が起きると「ただの娯楽番組」というところに逃げ込もうとしているように見える。
 
 お宝を出品した所有者のところには、心無い誹謗中傷が押し寄せているという。
 このままでは、出品者が被害者になってしまいそうだ。
 テレビ局が無責任な対応をしているために、出品者が批判の矢面に立たされてしまっている。
 このままうやむやでは済まない状況。
 出品者を守るためにも、番組の信用を取り戻すためにも、きっちりした対応をすべきだろう。




 
posted by 平野喜久 at 10:54| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月28日

第2回認証団体公表:レジリエンス認証

 内閣官房「国土強靭化貢献団体の認証に関するガイドライン」にもとづく第2回レジリエンス認証取得団体が公表された。
 今回の認証団体は。20団体。
 第1回が44団体だったから、半分以下に減っている。
 製造業7社、建設業3社、卸小売3社など、業界は多岐にわたる。
 団体名を見てみると、有名な大企業が目につく。
 第1回の時と同じだ。
 これは、申請企業が大企業に偏っているためだろう。
 認証団体が半数以下に減少したのも気にかかる。
 レジリエンス認証の認知度が低く、申請件数が減っているからか。
 それとも、申請数は増えていても、認証レベルの団体が少なくなっているためか。

 私が顧問をしている企業も今回のレジリエンス認証に申請し、無事に認証取得にい成功した。
 従業員数100名に満たない中小企業だが、社長のBCPへの取り組み意欲が高く、社内を挙げて取り組んでいる。
 せっかくの取り組みを形に表すため、この成果をレジリエンス認証に挑戦したらどうかと提案した。
 申請書類の作成や、第2次審査の社長ヒアリングの対策などお手伝いをさせていただいた。
 取り組みの実態をありのままに見ていただくという方針のもと、審査に臨んだが、特に厳しい指摘や質問を受けることもなくクリアできたようだ。
 このレジリエンス認証は、厳しく審査して落とすことを目的としたものではなく、BCPの普及のために、まじめに取り組んでいる企業は積極的に応援していこうというところに主眼がある。
 だから、中小企業の実態にあった審査が行われ、地道な活動実績が認められ認証取得となったものと思われる。
 
 実は、第1回の認証団体を見ると、東京の大企業ばかりが名を連ねているので、少し不安になっていた。
 もしかしたら、大企業の先進的な取り組みしか認めないのではないか。
 大企業と同じ基準で中小企業も審査しているのではないか。
 だが、それは全くの杞憂だった。

 レジリエンス認証は、BCPにまじめに取り組んでいることを第三者の目で認めてもらう制度だ。
 BCPに取り組んでいる企業は増えてきたが、それがまともな内容なのかどうかは、よくわからない。
 取り組んでいる当事者もこれでいいのか分からないし、ましてや、取引先など社外の人間には、その会社のBCPがまともなものかどうか確かめようがなかった。
 それが、この認証取得に挑戦することで、BCPに取り組む場合の目指すべきレベルがはっきりわかるし、客観的にもその会社のBCPがどのレベルにあるのかが分かるようになった。
 第1回のレジリエンス認証取得団体に認定されたある中小企業は、この認証マークをさっそく会社のPRに使っている。
 名刺、パンフレット、ウェブサイトなど、あらゆるところに掲示し、我が社のBCPをアピールしている。
 別途、印刷冊子を用意し、問い合わせがあれば、直ちにそれを渡せるように準備しているという。

 このレジリエンス認証は、特別に難しいことを求めていない。
 まじめにBCPに取り組んでいる企業であれば、十分認証取得できる。
 ただし、そこには明確な審査基準が設けられており、その基準に満たないものは厳しく排除されるようだ。
 審査基準は単純だ。
 防災とBCPの違いを理解していること。
 BCPの内容を経営トップが理解し、率先して推進していること。
 事前対策、教育訓練、見直し改善が行なわれているか。
 このあたりが重点的にチェックされる。
 まじめに取り組んでいる企業にとっては、何も難しいことはない。
 ありのままを見てもらえれば、簡単にクリアできる。

 しかし、取り組み方が間違っている企業はクリアは難しい。
 例えば、防災とBCPを混同して取り組んでいるケース。
 部下に丸投げで、社長がBCPを理解していないケース。
 とりあえずBCP文書は作ったが、これに基づいた活動実績がないケース。
 これらの場合は、書類審査の段階で厳しい指摘を受けることになる。

 この認証制度の目的や意義を理解しないままの申請して認証取得にいたるのは難しい。
 この認証には様々な項目に分けて細かく情報提供が要求されており、それぞれの要求項目が何を求めているのかを理解するのが難しいのだ。
 中小企業の場合は、専門家の支援があった方が認証取得はしやすいだろう。

 
 
 
 
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2016年12月01日

レジリエンス認証を目指そう

 2016年からレジリエンス認証がスタートした。
 レジリエンス認証とは、政府の内閣官房国土強靭化推進室が行う施策で、国土強靱化の趣旨に賛同し、事業継続に関する取組を積極的に行っている事業者を「国土強靱化貢献団体」として認証する制度だ。
 「国土強靭化貢献団体」というと何のことか分からなくなるが、平たく言うと、「まじめにBCPに取り組んでいる事業者を国が応援しよう」という制度ということになる。
 いま、国策として国土強靭化政策が進められているが、これは、国や自治体が対策をすればいいというものではない。
 民間の事業者も、同じように準備を進めてくれなくては、本来の国土強靭化にならない。
 民間事業者のBCPの取り組みは一部で取り組まれているものの、全体的な普及が進んでいない。
 普及が進まない理由としてはいろいろあるが、その中の1つとして、BCPに取り組むことのインセンティブが働かないということが挙げられる。
 つまり、せっかく苦労してBCPに取り組んだとしても、誰かに評価されるわけでも認められるわけでもないとしたら、ただ勝手に取り組んでいるだけで、そのメリットが感じられないというわけだ。
 そこで、まじめにBCPに取り組んでいる事業者を国が積極的に認めて、その活動を応援しようということになった。
 それが、このレジリエンス認証だ。
 レジリエンス認証制度に表向き「BCP」という言葉はあからさまに出てこない。
 だが、その目的はBCPの普及にある。
 BCPという言葉を避けているのは、この言葉が欧米発祥の概念であるし、国際規格にもBCP関連のものがあるために、それらとは別の日本独自の制度であることをはっきりさせる意味があるのだろう。
 BCPという言葉は使われていないが、やっていることは、ずばりBCPそのものだ。

 中小企業の中には、せっかくBCPに取り組んでいるものの、それで十分なのか不十分なのか、方向性があっているのか間違っているのかが分からないまま不安の中での取り組みになっている場合がある。
 そのような場合は、このような認証制度は非常にありがたい。
 この認証を得ることで、我が社のBCPは一定レベルにあることを客観的に証明される。
 認証を受けると、認証マークの使用を許可されるので、それを内外へのアピールに使うことができる。
 これが国の認証であることは、取引先に対しても絶大の信頼になる。
 自社の案内パンフレットや名刺、ウェブサイトに、認証マークを表示し、我が社のBCPをアピールできる。
 この認証制度を知らない人でも、このマークを見れば興味を示してくれるので、それをとっかかりにして、我が社の取り組みを知っていただける。
 この認証制度は、ISOのような国際規格と違い、日本の事業者の実態に合った審査が行われており、現実的で意味のある制度になっている。

 この認証制度の審査で重視されているのは、活動実績だ。
 つまり、BCP文書を作りましたというだけでは評価しない。
 BCP文書を作ることは当たり前だが、それだけでBCP活動が終了するわけではない。
 BCPを策定すれば、実際にそれに則った事前対策が行なわれなくてはいけない。
 行動計画があれば、それに基づいた教育訓練が行われなくてはいけない。
 BCPの見直しは常に行われているはずで、見直しのたびにバージョンアップがなされていなくてはいけない。
 そのような活動が行われているのかどうかが審査のポイントになっている。
 単なる文書主義や形式主義に陥ることなく、BCPの実効性に焦点を当てているところが特徴だ。
 
 もう1つの特徴は、経営トップの積極的な関与を求めていることだ。
 認証審査は、1次と2次に分かれる。
 1次審査は書類審査だが、2次審査は経営者ヒアリングが行なわれる。
 この意味は大きい。
 つまり、BCPは経営トップが関わるべき重要課題という位置づけを求めているのだ。
 総務の一担当者に任せっきりで、社長が感知しないというケースがあるが、この認証制度は、それを認めない。
 だから、面談による審査で、社長自身がBCPの内容を理解し、率先して活動を進めているかどうかが問われることになる。

 この認証制度で、求められる項目は多岐にわたるが、いずれも、まじめにBCPに取り組んでいる企業であれば、当たり前の内容ばかりで難しいことは1つもない。
 制度の趣旨がBCPの普及であり、厳しい審査で不合格を出すことは求められてない。
 むしろ、活動を応援してくれる制度だと理解したほうがいい。
 事業者の実態に合った審査をしてくれるところもありがたい。
 中小零細事業者が大企業と同じ評価基準で機械的にチェックされたら、すべて不合格になってしまうだろう。
 大企業は大企業にあったBCPがあり、中小零細事業者にはそれにふさわしいBCPがある。
 少々取り組み不十分なところがあったとしても、そこを指摘して、今後の活動の在り方をアドバイスしてくれる。
 そういう意味では、中小企業にとっても対応しやすく、意味のある制度になっている。

 大企業は、BCPの取り組みは行われていて当たり前で、このような認証をわざわざ取得するメリットは少ない。
 中小企業の場合、この認証取得のメリットは大きい。
 むしろ、中小企業へのBCP普及のために設けられた制度と言ってもいい。

 BCPに取り組む場合、このレジリエンス認証取得を1つの目標に置くことをお勧めしたい。
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2016年10月27日

遺族の疑問は解消していない:大川小津波訴訟

 大川小の津波訴訟。
 14億円の賠償命令が出された。
 地震直後に適切な情報収集を怠ったこと、津波の襲来を知ってからの避難行動が不適切だったことにより、学校側の責任が厳しく判断された。
 遺族側は勝訴したが、これでもまだ納得できるところまでいっていないだろう。
 「なぜ?」という疑問が解消されていないからだ。

 なぜ、50分間も何もせずに校庭で待機していたのか。
 なぜ、裏山に逃げようとする児童を引き戻したのか。
 なぜ、川岸の方向に避難しようとしたのか。

 大川小周辺にもいろんな小中学校がある。
 大川中、橋浦小、北上中、吉浜小。
 これらの学校の生徒児童は適切に避難し、犠牲者はゼロだ。
(在校生の中に犠牲者のいる学校もあるが、いずれも帰宅後に津波に襲われたケースばかりだ)
 大川小の犠牲だけが際立っている。
 だから、その理由をみんなが知りたがっているのだ。

 学校側の行なった検証も遺族を納得させるものではなかった。
 検証委員会を立ち上げて調査もしたが、学校側の免責を主張するための調査になっていて、まったく客観的な検証になっていない。
 裏山に登ろうとしていた児童を引き戻したという話については、事実確認ができないとして、検証報告書からは外された。
 そのかわり、裏山は崩壊の危険があるという地元民の指摘があったとか、川岸への移動は地元住民の先導で行われたとかいうあいまいな証言を採用して検証結果に盛り込んでいる。
 ただ、学校側に非がないことをでっちあげるための検証だった。
 これに遺族が怒って、訴訟を起こしたのだ。
 実態はどうだったのか、ということを解明してほしい。
 どうして、こんなことになったのかを明らかにしてほしい。
 遺族の思いはここにある。

 一番の問題は、唯一生き残った教員が、何の証言も残していないことだ。
 教師になりたての新米教員だ。
 過去に1度だけ、遺族への説明会に顔を出したことがあったらしいが、その後は姿を見せていないという。
 今回の裁判でも証言を拒否した。
 学校側から止められているのかもしれない。
 この教員自身も、PTSDを患い、思い出すのもつらい日々を送っているのに違いない。
 当時の状況を唯一正確に伝えられる人物だけに、彼に課せられた責任は重い。
 犠牲になった児童らのためにも、そして、後世に残すべき教訓のためにも、勇気ある証言を期待したい。




 
 
 
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2016年10月26日

14億円の賠償命令:大川小津波訴訟

 注目の裁判に判決が出た。
 東日本大震災の津波で児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族が市と県を相手取り23億円の損害賠償を求めた訴訟。
 仙台地裁は26日、市と県に約14億円の支払いを命じた。

 裁判では、津波の襲来が予見できたかどうかが争われた。
 学校側(県、市)は、もともとハザードマップでは大川小は津波浸水エリアに含まれていなかったことをもって、予見不可能を主張した。
 だが、裁判所は、それでも今回の津波は予見可能であったとの判断を下した。

 地震発生直後、大川小では児童らを校庭に並ばせ待機させていた。
 その後、避難行動を開始するが、それまで50分間を無駄に過ごしてしまった。
 この間、ラジオではしきりに津波の襲来を呼び掛けていた。
 地域の広報車が津波非難を呼び掛けていた。
 保護者の何人かは学校に直接子どもを迎えに来ていたが、その時、異口同音に津波の襲来を警告していた。
 生き残った児童の証言によると、学校にやってきた保護者が、声高に迅速な避難を学校側に呼び掛けていたが、教員の方は、「まぁ、まぁ、落ち着いてください」と一生懸命になだめていたという。
 児童の中にも騒ぎ出すものがおり、教員はそれを落ち着かせることに専心していたらしい。
 生存者の証言の中には、「裏山に勝手に逃げ出す児童を教師が連れ戻して校庭に並ばせた」というものがあったという報道もある。

 50分経過後、念のためにもう少し高台の方に移動しようということになって、児童らは行列を作って移動開始。
 向かった先は校庭よりも高台だったが、川岸の方向だった。
 川をさかのぼってきた津波が上流であふれ、高台の方から流れ下ってきた。
 その流れに児童らと引率の教員らが飲み込まれたらしい。
 中には、行列から離れ、とっさに近くの小山に駆け上がった児童もおり、彼らだけが助かったという。
 難を逃れたのは、児童4人と、教員1人だ。

 今回の判決は、学校側に非常に厳しいものとなった。
 「ハザードマップでは浸水エリアではなかったから」「千年に一度の未曽有の大災害だったから」という言い訳が通用しないことをはっきりさせた判決でもある。
 よく、このような津波訴訟を見て、「こんな裁判を起こしたって、亡き子は戻ってこないんだから、無駄だろう」という人がいる。
 それは違う。
 訴えた遺族らの気持ちは、賠償金がほしいわけでもないし、裁判で憂さ晴らしをしようとしているわけでもない。
 「地震なんだから仕方ないよね」で終わってほしくない、という思いがある。
 大川小の尊い犠牲を無駄にしないためにも、今後の教訓につなげなくてはいけない。
 それをはっきりさせるために、裁判に訴えているのだ。
 私たちは、この事例を貴重な教訓として受け継いでいかなくてはならないだろう。







 


 



  
posted by 平野喜久 at 15:52| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

緊急地震速報の誤報:東京湾震度7

 8月1日17時9分、東京湾震度7の緊急地震速報が流れた。
 スマホのアラームが鳴って、画面を見たとき、緊張した。
 「ついに、首都直下地震が来たか」
 ところが、奇妙なことに第1報のアラームだけで次が続かない。
 地震アプリを開いて、情報を見ると、関東エリア一帯が震度7の表示で真っ赤。
 日本列島全域に震度表示が出ている。
 「なんか、おかしい」
 細かいデータを見るとマグニチュード9.1、深さ10km。
 ますますおかしい。
 やがて関東エリアでは地震が起きておらず、誤報だと判明した。

 今回の誤報は、落雷によるノイズが悪さをしたらしい。
 1か所の地震計に過電流が流れ、そのノイズデータを瞬時に解析して発信したために、とんでもない巨大地震という誤報になった。
 緊急地震速報には2種類ある。
 一般向けと高度利用者向け。
 高度利用者向けは、会員向けのサービスで、いち早くキメ細かい情報を提供することを目的とする。
 だから、1か所でも地震データを観測したら、その情報をもとに第1報を出す。
 第1報の速報性に重きを置いているからだ。
 だが、周辺の地震計に反応がなかった場合は、直ちに誤報として取り消される。
 今回、第1報だけで後が続かなかったのは、このためだ。
 3年前の8月初旬にも「奈良県震度7」という誤報があった。
 この時期は、落雷による誤報が起きやすい。

 一般向けは、テレビ、ラジオ、エリアメールなど、広域の不特定多数に配信される。
 複数個所で地震発生のデータを確認した段階でアラームが発信される。
 速報性に劣るが、誤報の少なさが優先されている。
 今回、テレビやラジオで緊急地震速報が流れることはなかった。

 今回の緊急地震速報では、電車が止まったり、オフィスでアラームが鳴ったりして、一時、騒然となった。
 直後に誤報と分かって、ほっとしたが、これは、いい訓練になった。
 本当にうちの装置はアラームが鳴るのか。
 アラームが鳴った時、うちの社員は迅速に安全行動がとれるのか。
 不意打ちの訓練だからこそ、実践レベルの確認ができる。

 誤報であったことに文句を言ってはいけない。 
 異常データを見逃さずに瞬時に反応してデータ配信されたことだけでも評価しよう。
 空振り三振はOKだが、見逃し三振は許されない。



  
posted by 平野喜久 at 08:48| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

大震法を南海トラフ巨大地震に拡大

1978年に制定された大震法(大規模地震対策特別措置法)の対策強化地域を東海地震から、南海トラフ巨大地震へと拡大する方向で検討が進んでいる。
 大震法は、東海地震の発生に備えて制定された。
 というのは、1944年、46年に東南海地震、南海地震が起きたのに、東海地震だけ起きなかったことから、東海地域だけ歪みが蓄積したまま解放されていないと判断され、東海地震が切迫しているとの予想から制定された法律だ。
 ところが、その後の地震研究で様々な知見が明らかとなり、法律の内容が古いものとなっていた。
 特に東日本大震災以降は、東海地震という言葉は死語となり、南海トラフ巨大地震という言葉に置き換わって、東海から紀伊半島沖、四国沖、九州沖にまで広く連動するM9クラスの超巨大地震を想定して国は対策を行い始めた。
 大震法と現実との乖離を修正すべく、ようやく法改正の検討に入ったということだ。

 大震法では、東海地震は事前予知ができることを前提とした仕組みができている。
 これも、いまや絵に描いた餅となりそうだ。
 事前予知ができない可能性が高いこと、予知できたとしても事前警告できるかどうか分からないことなど、問題が大きいことがかねてから指摘されていた。
 事前予知の研究は地道に進めていくにしても、予知ができないことを前提に、不意打ちを覚悟した事前対策のほうに軸足を移した内容に重点を置くべきだろう。

 このニュースは、時代錯誤の法律を現実に即した内容に作り替えようという取り組みに過ぎない。



posted by 平野喜久 at 15:51| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月15日

JTB顧客情報漏洩

 大手旅行会社JTBの顧客情報漏洩事件。
 標的メールにてコンピュータがウィルス感染し、外部からの不正アクセスにより700万人分の個人情報が流出した恐れがあるという。
 不審な添付ファイルを開いてしまったミス、不正アクセスの感知から完全遮断までの遅滞、管理している個人情報を暗号処理していなかった不手際など、JTB側の反省点も多い。
 実際にどれだけの情報が流出したのかは不明で、今後、実被害が出始めると、その賠償責任がJTBに降りかかってくることになる。

 発端は、不審なメールの添付ファイルを開いてしまったことによる。
 なんという単純なミス。
 だが、このメールは、実在する航空会社のメールアドレスが表示されており、件名やメール文面も通常業務であり得る内容だったという。
 1日に膨大な量のメールを処理している担当者は、当然、変なメールは警戒しているだろうが、本物によく似たメールにまで神経を尖らせて警戒せよというのは酷だ。
 当然、不審メールは安易に開かないというルールは厳格に守るとしても、それでも、うっかり標的型メールに引っかかってしまう恐れは常にある。
 その場合は、ウィルス感染してしまったことを想定した対応策も用意しておかなくてはならない。
 感染しても、外部からの不正アクセスを遮断できるように。
 外部からの不正アクセスを許してしまったとしても、重要情報へのアクセスは防げるように。
 重要情報をコピーされても、解読されないように。
 多段階的に最悪の事態を阻止するバリアを用意しておくべきだった。

 利用者としては、JTB程の大手旅行会社が、顧客情報の管理がこれほど緩かったとは驚きだろう。
 今回は、初動に反省点があったが、その後の対応は迅速で申し分ない。
 いまのところ、実害は確認されておらず、事態は最小レベルで抑えることができている。
 今後は、実態の把握と、原因の追究、そして、再発の防止に取り組むことになる。
 会社の信用は、情報を透明化し、利用者への十分な説明責任を果たすことができるかどうかにかかわっている。
 
posted by 平野喜久 at 15:56| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

自ら傷を広げ続けた舛添氏

 舛添氏の政治資金騒動。
 ようやく辞任ということで決着となりそうだ。
 週刊誌による報道後、定例の記者会見で弁明を迫られ続けた。
 当初は、強気で突っぱねていたが、第2第3のネタが毎週のように報道され、そのたびに弁明をする羽目になった。
 不透明な政治資金の使途が次々に発覚し、いちいち弁明をするのも追いつかないほど。
 そこで、彼がとった策略が、第三者なる弁護士を立てて、すべての案件を一気に決着つけようということだった。
 その調査報告書があまりにもずさんで、とても第三者による厳しい調査には見えないことから、批判の声は一気に最大値に膨れ上がった。
 一気に決着がつくどころか、疑惑の目がさらに細かいところに向かうこととなり、答弁の矛盾点が至る所にみられるようになる。
 都議会の集中審議で、「リオオリンピックが終わるまで、今しばらく猶予を」と必死の懇願を行なったが、頼みの自民公明の辞任やむなしとの判断により万事休すとなる。
 一時は、都議会の不信任案可決を受けて、議会解散の暴挙に出るのではとの憶測も流れたが、さすがにそこまでは理性を失ってはいなかったようだ。

 今回の政治資金騒動は、舛添氏辞任の方向でしか決着しないことは誰の目にも明らかだった。
 それなのに、彼の執念を感じさせるような粘り腰に、「なぜ?」という疑問が常にあった。
 冷静な判断ができなくなっているのでは?
 意固地になっているのでは?
 リオオリンピックの閉会式に出たいから?
 いろんな憶測があるが、本心はわからない。

 リスクマネジメントの視点で今回の騒動をとらえると、舛添氏の対応は最悪のケースとなった。
 彼にとって最悪の事態は、辞任に追い込まれることだが、その最悪の事態を避けるための行動が、自らを追い込むことになってしまった。
 最悪の事態を避けているつもりが、さらに悪い状況を招いてしまう。
 彼としては、最悪の事態を最悪の状況で迎えることとなった。

 潮目が変わったのは、第三者による調査報告が公表された時点だ。
 彼としては問題を先送りするうまい戦術だったが、役者が悪すぎた。
 元検事の弁護士の態度が不遜で一般の人々を見下すような物言いで、反感を買った。
 厳しい第三者による調査どころか、雇われ弁護士が依頼人の言い分を代弁しているだけだった。
 都議会の審議では、細かい事実関係の検証が行われた。
 細かい事実の確認になればなるほど、舛添氏の答弁はあいまいになった。
 このことが、疑惑を深めた。
 肝心のところは、何もわからないままだ。
 正月の家族旅行の宿泊先で、出版社社長と政治的会合を行なったということすら、事実を証明できなかった。
 出版社社長は実在しないのでは?
 実在したとしても、正月に会っていないのでは?
 単なる家族旅行の経費を政治資金でまかなっただけでは?
 疑惑が最大限に膨らんだ状態での辞任となった。

 スキャンダル発覚初期に潔く辞任していれば、細かい疑惑までほじくり返されずに済んだ。
 政治家としてのダメージも最小限にとどまり、場合によっては再挑戦の機会も得られたかもしれない。
 ところが、ここまで傷が深くなると、辞任したぐらいでは収まらなくなってしまっている。
 一連の疑惑をきっちり解明しないことには都民が納得しない。
 政治資金報告書の不実記載、領収書の偽造などということになると、明確な刑事事件に発展するからだ。
 実際、それが疑わしい案件がそこかしこに見つかっている。

 舛添氏のいまの心境は分からないでもない。
 ほんの数万円程度の政治資金処理の問題で辞任させられることの悔しさ。
 都知事として何の実績も残せないまま終わることの未練。
 猪瀬知事の辞任を受けて、絶好のタイミングでつかんだ都知事の座をこんな無様な形で手放すことの無念。
 いろんなところに恨みを残したままの辞任だろう。
 
 振り返ったとき、辞任して事態を収拾できる最後のチャンスは、第三者による調査結果を公表する段階だった。
 そこで、違法は一件もなかったことを明確に示したうえで、「不適切な処理があったことを認め、責任を取って辞任する」と表明すれば、道義的な責任を取ったということで決着できたはずだった。
 その後の、細かい事実関係までほじくり返されずに済んだ。
 それまでの過熱したマスコミ報道では、すべてが疑惑まみれで真っ黒という印象だったが、それが、真っ黒は1つもないことを明確にできただけでも高得点。
 この時が、傷をもっとも浅く済ませることができた最後で最大のチャンスだったと言える。
 だが、彼はそのチャンスを捨て、多くを望みすぎ、破滅した。

 彼に政治家としての再起の目はない。
 テレビタレントとしての再起の目も失っているだろう。
 最悪の状況を迎えての幕引きとなった。






posted by 平野喜久 at 11:09| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする