2018年04月23日

西側7県 援助隊出さず:南海トラフ巨大地震

 読売新聞の報道による。
 総務省消防庁は、南海トラフ巨大地震で東側の震源域で地震が起きた場合、西側の和歌山や高知などからは救援隊を出動させない方針を決めた。
 南海トラフ巨大地震は、静岡県駿河湾から紀伊半島沖、四国沖、九州沖にかけて東西700qにわたって震源域が想定されている地震だ。
 過去に何度も繰り返し発生しており、毎回発生パターンは違うものの、一定の傾向は把握されている。
 それは、東から地震が始まり、西側に広がっていくという傾向だ。
 南海トラフ巨大地震は、いくつもの震源域が連続して破壊する連動型の地震なのだ。
 時間を置かずに続けて破壊が広がっていくことが多いが、時には時間を置いて連動する場合がある。
 1854年に起きた地震では、東側が破壊した後、32時間後に西側が破壊した。
 1944年の東南海地震が発生した時には、約2年後に西隣の南海地震が発生している。
 いずれにしても、東から西というパターンは決まっており、いまのところ例外はないらしい。
 次に起きると想定される南海トラフ巨大地震も、東から始まって西に広がっていく可能性が高いと見られている。
 その想定を前提とした今回の消防庁の対策だ。

 例えば、駿河湾から愛知県沖にかけて巨大地震が発生したとしよう。
 この時、全国から救援隊が駆けつけることになるが、西側の救援隊まで駆けつけて、留守になったすきに西側で巨大地震が発生したら大変なことになる。
 これを恐れて、東側にだけ地震が発生した場合は、和歌山、高知、徳島、愛媛、香川、大分、宮崎の7県からは救援隊を出動させないこととした。
 これは実際にあり得る想定を前提にした現実的な行動計画といえる。
 今回は、緊急消防救援隊の行動計画だが、同じことは自衛隊でもいえる。
 当然ながら、防衛省内でも同じ行動計画が進んでいるに違いない。
 
 東側と西側の境目は紀伊半島沖と見られている。
 紀伊半島沖に固い固着域が存在していて、それがストッパーの役割を果たしているらしい。
 東側で始まった破壊が、この固着域をやすやすと超えた場合は、西側まで連続して一気に破壊が広がる。
 固着域でストップした場合は、一旦、地震は収束し、時間を置いて西側が破壊する。
 過去の事例では、東側が破壊した後、西側が破壊せずに終わったケースはなく、いずれかのタイミングで必ず西側も破壊する。
 ここにどのぐらいの時間差があるのかが分からない。
 数時間かもしれないし、数年かもしれない。
 人間の感覚では、数時間と数年は大違いだが、地震メカニズムの時間感覚ではほんの一瞬の違いでしかない。
 タイムラグがどのぐらいになるのかを事前に予測するのは実質的に不可能だ。
 東側だけで巨大地震が発生した場合は、近いうちに西側も巨大地震に見舞われることを前提に非常態勢に入らざるを得ないだろう。
 その時、どのような非常態勢を取るべきかは非常に難しい。
 どのような対応をすべきかは、各地の自治体で検討が始まったところだが、これは企業のBCPにおいても同じことだ。
 西側の巨大地震が数時間後か数年後かでは対応の仕方が全く違う。
 数時間後と想定すれば、東側の地震直後に操業を停止し、直ちに避難開始となる。
 ところが、緊急避難をしたまま何も起きなかったとき、どこで避難解除するのか。
 何日も操業を停止したまま従業員を避難させているわけにはいかない。
 いずれかのタイミングで避難解除し、警戒態勢を維持しながら操業再開せざるを得ないだろう。
 いつ操業再開するのか。
 判断をする人の責任は重大だ。

 重要な判断をしなければいけない人の心理的負担を軽減する方法として、あらかじめ判断基準を決めておくという方法がある。
 例えば、こんな感じだ。
 東側で地震が発生した場合は、直ちに操業を停止し、従業員を避難させる。
 72時間以内に東側で地震が発生しなかった場合は、一旦、避難解除し、操業再開。
 その場合も、いきなり100%操業にいきなり戻すのではなく、重要業務に限って再開する。
 その一方で、いずれ起きる西側の巨大地震に向けて、事前対策の最終確認を進めていく。
 その後も警戒態勢は維持しながら、状況に応じて操業割合を変動させていく。

 南海トラフ巨大地震は、東から始まる可能性が高い。
 西側には事前に身構えるチャンスがあると捉えるべきだろう。
 
 

  
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2018年04月09日

山陰地方に「ひずみ集中帯」か

 本日1:32、島根県西部でM5.8の地震が発生した。
 最大震度5強というやや大きい地震だった。
 山陰地方はもともと地震の少ない地域と見られており、地震発生確率でも常に低い値が出ていた。
 しかし、予想発生確率が低いということは地震が起きないということと同義ではない。
 過去の記録をさかのぼってみると、大災害をもたらすような深刻な地震はめったに起きないが、中程度の地震は頻繁に起きている。
 
2000年10月6日 M7.3 最大震度6強(鳥取県西部地震)
2000年10月8日 M5.6 最大震度5強
2002年9月16日 M5.5 最大震度5強
2011年6月4日 M5.2 最大震度4
2016年10月21日 M6.6 最大震度6弱
2018年4月9日 M6.1 最大震度5強

 山陰地方は目立った活断層は存在しない。
 なのに時々地震が発生するのは、陸側のひずみがこの地域に集中するためではないかと見られている。
 西日本は陸側のユーラシアプレートの上に乗っている。
 海側からフィリピン海プレートがぶつかり、北西方向へぐいぐい押されている。
 そのひずみが内陸で蓄積すると、時々内陸型の地震を引き起こす。
 そのひずみが山陰地方に集中しているのだ。
 1か所のひずみが地震によって解放されると、次に隣り合った別の場所にひずみが移動する。
 するとその別の場所で地震が起きる。
 こうしてひずみの場所が移動していくので、この地域の地震は1度起きると、一定期間連続することが多いという。
 今回の地震もしばらくは警戒した方がよさそうだ。
 
 869年に貞観地震という東日本大震災と同じ規模の地震が東北地方で起きていた。
 その直後に肥後地震が起きている。
 肥後は今の熊本だ。
 そして、その11年後の880年、出雲地震が起きた。
 不気味に今と同じパターンをトレースしている。
 そして、出雲地震の7年後に仁和地震が起きている。
 仁和地震は今でいう南海トラフ地震のことだ。
 南海トラフ地震は過去に何度も起きているが、その発生前には内陸で中程度の地震が起き始めることがあるらしい。
 陸側プレートのひずみがたまってくると、内陸の弱いところが破壊し始めるためだろう。
 いずれにしても、陸側プレートのひずみが蓄積し続けていることは間違いなく、それがいつか一気に解放されるときがくる。
 それが今一番警戒されている南海トラフ巨大地震だ。
 

posted by 平野喜久 at 18:13| 愛知 ☁| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月10日

南海トラフ地震 確率上昇

 読売新聞の報道による。
 政府の地震調査委員会は9日、南海トラフで今後30年以内にM8〜9の巨大地震が発生する確率を「70〜80%」に引き上げたと発表。
 13年までは「60〜70%」とされていたが、14年に「70%」に引き上げられ、今回さらに上昇した。
 今後10年以内の発生確率は、「20〜30%」から「30%程度」に引き上げ。
 50年以内の確率は、「90%程度、もしくはそれ以上」と据え置き。
 北海道太平洋側の千島海溝沿いで予想されている地震については、根室沖でM7.8〜M8.5程度が30年以内確率を「70%程度」から「80%程度」に引き上げた。

 南海トラフ巨大地震が確実に迫りつつある。
 この確率は、誰か適当に勘で見積もっているわけではなく、科学的根拠をもって算出された数値をもとに公表されている。
 30年以内というと人間の時間感覚では世代が入れ替わるほどの長時間という印象だが、地震のタイムスケジュールでは、ほんの一瞬の違いでしかない。
 また、この数値は、あくまでも確率を表しているにすぎず、いつ地震が起きるかを示しているわけではない。
 30年後に地震が起きる確率が「70〜80%」と解釈してしまっている人がいるが、それは間違いだ。
 その時は、30年後かもしれないし、明日かもしれない。
 この情報は、その時が確実に近づきつつあることを表していると受け止めよう。

 南海トラフ巨大地震は、いつか必ず起きる。
 「もしかしたら、地震が起きるかもしれませんよ」という緩い話ではない。
 過去に南海トラフ地震は繰り返し起きており、その発生パターンが突然消えてなくなることはあり得ないからだ。
 しかも、次のその時は、何十年も何百年も先の話ではない。
 10年20年というレベルの時間軸で起きる。
 こうなるとすべての人にとって他人事ではない。
 「その時をどのように迎えるのか」これは、私たち一人ひとりが考えておかなくてはいけない話だ。
  
  
posted by 平野喜久 at 08:35| 愛知 | Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月22日

北海道沖に予想される超巨大地震

 政府の地震調査委員会が、北海道東部沖の太平洋でM9クラスの超巨大地震の発生が切迫している可能性が高いとの予測を公表した。
 道東沖では、340〜380年間隔で超巨大地震が起きている。
 最後に起きたのが約400年前であるため、次の超巨大地震が切迫しているという判断だ。
 超巨大地震が今後30年間に起きる確率は7〜40%と推計。
 この地域は、過去の地震の記録が少なく、地盤調査も進んでいないことから、シナリオによって確率に幅がある。
 震源域は、道南東沖から北東に延びる千島海溝沿いに想定されている。
 一回り小さなM8クラスの巨大地震になると、もう少し細かい確率が公表されている。
 今後30年間の確率は、十勝沖で7%、根室沖で70%、色丹島沖・択捉島沖で60%。
 この千島海溝は南にいくと日本海溝につながっているため、青森県沖まで震源域が広がった場合は、さらに巨大化する恐れがある。
 千島海溝を震源域とする巨大地震は、以前から指摘されてきたが、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の陰に隠れて、忘れがちだった。
 今回、そのリスクに改めてスポットを当て、警戒を呼び掛けている。

 もう1つ、忘れがちなのが、中央構造線断層帯のリスクだ。
 紀伊半島から四国にかけて貫いているが、それが伊予灘を超え、九州内陸にまで達していることが分かってきた。
 これが動いた時の被害も甚大になることが予想される。
 四国内陸部で活断層によるM6.8以上の地震が起きる確率は、30年間で9〜15%と公表された。
 
 ちなみに、M7クラスの地震を「大地震」、M8クラスを「巨大地震」、M9クラスを「超巨大地震」という言い方になる。
 「大地震」の読み方は「おおじしん」が標準だ。

posted by 平野喜久 at 18:06| 愛知 ☀| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月06日

東レ子会社データ改竄問題:経営者の感覚のズレ

 東レ子会社の品質データ改ざん問題。
 東レ社長は、16年10月に不正を把握していたが、発表が1年以上遅れた。
 神戸製鋼、三菱マテリアルなど、素材メーカーによる品質偽装が次々に発覚する中、11月3日にネット掲示板に、次のような書き込みが行われた。

「東レのタイヤコード、産業用コードを生産するグループ会社にて顧客に提出する検査データを改ざんしていた。

 顧客と取り決めていた規格値に対して、実際には規格を満たしていないにも関わらず検査データを改ざんし、規格を満たしているかのように偽り、顧客へ納入していた。

 不正は10年前から行われており、品質保証部門の管理職が主導して改ざんに関わり組織的に不正を行っていた。」

 匿名の投稿であり、情報源も定かではない。
 普通なら、よくある「釣り」と言われるフェイクニュースとして立ち消えになってしまうような情報だった。
 ところが、これについて実際に東レに問い合わせた株主がいたらしい。
 それで、ネット上に不正情報が拡散し始めていることを知る。
 あらぬ噂が広がる前に、正確な情報を公表した方がよいと判断し、このたびの謝罪会見となった。
 一見、フェイクニュースと思われたネット上の書き込みが、図星だったわけだ。

 当初は、この不正を公表するつもりはなかったと、東レ社長は会見で言い切った。
 法令違反があるわけでもない。
 安全上の問題があるわけでもない。
 顧客も了承の範囲であり何ら問題はない、との判断だ。
 つまり、東レ社長の言い分は、「確かにデータの書き換えは行なわれていたが、それは形式上の問題であり、実質的な問題は何も起きていない」ということなのだろう。

 ところが、実態は、顧客の了承は取り付けていなかった。
 当初は、基準値を下回る製品については、「トクサイ」として顧客に説明を事前了承を得たうえで納品していた。
 それが慣例化し、いつのまにか、いちいち説明をしなくても、了承を得なくても、基準値以下の製品をそのまま納品するようになってしまった。
 その時、データ表示を基準値をクリアしているかのように書き換えていたというのだ。

 東レ社長の認識と、私たち一般が感じる認識との間に大きな隔たりを感じる。
 データ改竄は、単に書類上の数字が違っていただけの手続き上のミスで、実質的な影響は何もない、というのが東レ社長の認識。
 わざわざ公表して、自分から騒ぎを持ち掛けるほどの話ではないと感じているようだ。
 だが、少し基準に満たない製品を納品してました、という単純な問題ではない。
 基準を満たしていないにもかかわらず、満たしているかのようにデータを偽装するという行為は、明らかに一線を越えた不正の領域だ。
 ここが不正行為として問題視されているのだ。

 もともと基準値が不必要にハイレベルで、それを守っていたら過剰品質に無駄なコストをかけるだけという問題があったのなら、その基準値の見直しを優先して取り組むべきところだ。
 顧客との話し合いで、現実的な安全基準について話し合い、妥当なレベルまで落とせばいい。
 それを行なわずに、自社の都合で「ここまでだったら大丈夫」と勝手な安全レベルを設定していたとすると、問題は大きい。
 これは、品質基準を形骸化させる行為だからだ。
 しかも、データをこっそり書き換えるというのは、騙そう、ごまかそうという行為であり、これはどんな言い訳でも正当化できない、明らかな不正行為だ。
 とても、これでは取引先と信頼関係を維持できない。

 今回の不正で、取引先がどう受け止めているかは不明だ。
 実質的な損害や不具合が発生していない以上、この問題が賠償責任や取引停止にまで発展する可能性は低い。
 
 かつて、日本のモノ作りは品質の高さが信頼の証だった。
 製品検査でも、現実にはあり得ないような過酷な条件下で何度もチェックを繰り返し、少しでも不安のあるものは出荷しないという姿勢を貫くことで、信頼を得てきた。
 世界の製造業関係者が日本のモノづくりの強さの秘密を知ろうと現地視察に訪れたとき、過剰なまでの品質へのこだわりに舌を巻いて「これではかなわないはずだ」と納得して帰っていった。
 それが、いまやどうだ。
 コスト重視、効率重視が最優先になり、品質の日本ブランドは崩壊寸前だ。

 このような品質データの改竄は、いまやどの製造現場でも習慣として常態化してしまっているのではないか。
 かつて、あるレストランにおける食材の偽装表示が発覚した時、その他の高級レストランや高級料亭でも同様の偽装が見つかり、次々と謝罪に追い込まれたことがある。
 素材メーカーの品質偽装は、しばらく発覚が続くのかもしれない。
 
posted by 平野喜久 at 14:05| 愛知 ☀| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月18日

初動対応のミス:完成車両検査不正問題:日産自動車

 日産自動車は17日、資格のない従業員に完成車両の検査をさせていた問題で、不正の実態や再発防止策をまとめた調査報告書を国土交通省に提出。
 同日、西川社長が会見を開き、「日産に対する信頼を裏切り、改めて深くお詫びしたい」と謝罪した。

 この検査不正の問題は、9月18日に国交省の立ち入り検査で発覚した。
 29日に日産が不正を発表。
 10月2日に西川社長が会見。
 6日に116万台のリコールを国交省に届け出。
 このような初動だった。

 ところが、問題が大きくなったのは、この後だ。
 10月11日になって、社内で無資格検査を続行していたことが発覚したのだ。
 2日の社長会見では、はっきりと「検査員による正式な検査体制に切り替えた」と述べていた。
 だが、それは社長の口先だけの言葉でしかなく、現場はまったく変わっていなかった。
 ここで、経営トップと現場との断絶が露呈した。
 これを受けて、国内全6工場での出荷停止に追い込まれた。
 11月7日に順次、生産と出荷を再開したが、業績の下方修正は免れない。
 弁護士を中心とする調査委員会による報告書の提出を機に、西川社長の謝罪会見となった。

 今回の日産自動車の不正問題。
 初動対応にミスがあった。
 当初、この問題は内部告発により国交省が動き出したらしい。
 国交省の立ち入り検査の際に、関係書類を削除したり無資格検査員を現場から遠ざけたり、隠蔽工作をしていたという。
 国交省による立ち入り検査から日産が不正発表まで、11日も時間がたっていた。
 社内調査に手間取ったというより、この問題をいかに穏便にやり過ごすかというところで逡巡していたというのが実態だろう。
 9月29日、日産が初めて不正を発表した会見に臨んだのは、「グローバルコミュ二ケーション本部ジャパンコミュニケーション部長」「企画・管理部エキスパートリーダー」という肩書の人物だった。
 社長でも幹部役員でもなく単なる部長クラスだったのだ。
 現場の一部で問題があった程度の話で終わらせようとしていたことが分かる。

 10月2日になってようやく社長の会見となったが、これは謝罪会見ではなかった。
 もちろん、「お詫び申し上げます」という言葉はあったが、役員そろって深々と頭を下げる姿を見せることはなかった。
 そもそも、この会見は社長単独で臨んでいた。
 社長の簡単な受け答えで対応可能とみていたようだ。
 さらに、不正は認めたものの、「検査そのものは確実に行われていた。安心して使ってもらえないことは全くない」ということを強調していた。
 つまり、この不正は、資格があるかないかという単なる形式上の問題で、実態はしっかり検査は行われていたのだから大した問題ではないという認識だったのだ。
 だから、正式な謝罪をしなかったのだろう。
 新聞でも、「お詫び申し上げると陳謝した」と報道された。
 そう、謝罪ではなく、陳謝だったのだ。
 企業不祥事の会見で、陳謝で済んだ例は存在しない。

 かつて、食品偽装で問題が発覚した時、同じ言い訳でやり過ごそうとした企業があった。
 「表示は違っていたが、中身は同等の上質な食材を使っている」「おいしさや安全に問題はない」
 ただ原材料表示にミスがあっただけということで済まそうとした。
 だが、これは手前勝手な理屈であり、この姿勢がますます消費者の反感を買うことになった。

 日産では、10月2日の社長会見以降でも、現場では無資格者による検査が行われていることが発覚し、騒ぎを大きくした。
 社長は現場の実態を知らず、口先だけでこの問題をやり過ごそうとしていたことがばれてしまったのだ。
 ここでようやく経営トップがことの深刻さに気付き、問題に真剣に向き合い始めた。
 10月19日に社長会見。
 全工場での生産出荷停止を決断。
 問題発覚から1か月が経過していた。

 調査結果の報告を兼ねた今回の社長会見は、明らかな謝罪会見だった。
 記者の前で他の幹部とともに深々と頭を下げた。
 問題発覚から2か月が経過していた。

 企業の不祥事発覚で、一番大事なのは初動対応だ。
 ここで、きっちり対応できるかどうかで、その後のダメージの大きさが決まる。
 日産自動車は、これら過去の企業不祥事の失敗事例に学ばなかったのか。
 これほどの大企業になれば、それなりの危機管理アドバイザーがついているはずだが、彼らはいったい何をしていたのか。

 
 
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2017年08月01日

北ミサイルのリスクに備えよう

 北朝鮮ミサイルのリスクが日に日に高まってきている。
 前回のミサイル発射は、異例の深夜に行われ、しかも、従来では考えられない山間部から発射されている。
 「いつでも、どこからでも」というところを見せつけようとしている。
 事前にミサイル発射の動きは察知されていたが、この時刻、この場所を予測した人はいなかった。
 北海道の奥尻島沖150qの日本海に着弾したらしい。
 NHKの屋外カメラが、火の玉になって落下していくミサイルを捉えていた。
 これほど、日本の領土に近いところに落下したのも初めてだ。 
 上空3500qまで打ち上げられ、自然落下で着弾する。
 僅かに軌道がずれただけで、落下地点は簡単に150qぐらいずれそうだ。
 海上では、航行している船舶もあるはずだが、被害がなかったのが不思議なぐらいだ。
 もはや、北ミサイルは、現実の脅威になっている。
 いつ海上の船舶に命中するか分からない。
 いつ日本領土に落下するか分からない。
 大気圏再突入の時の衝撃で、ミサイルが粉砕されたら、細かい破片となって降り注ぐ。
 被害範囲は、一気に広がる。

 次は、日本列島を超えて、太平洋に落下させるミサイル実験を実施しそうだという。
 いま、北ミサイルのリスクに最もさらされているのは、日本だ。
 次のミサイル発射時には、いよいよJアラートが作動するかもしれない。
 その時に向けて、日本政府はどのような対応を進めているのか不明だ。
 何らかの準備を進めているはずだが、外交戦略上の機密情報となっている。
 だが、実際には何もできないのではとの声が多い。
 そして、実被害が起きても、日本政府のできることは、北朝鮮に対して強く抗議することが精いっぱい。
 アメリカも手出しをできそうにない。
 「1発だけなら誤射かもしれない」ということで、うやむやにするのか。

 今回のミサイルは、発射から着弾まで約45分だった。
 ミサイル発射と同時にJアラートが発信されたら、着弾までに40分ぐらいの猶予があることになる。
 着弾場所ははっきり分からないものの、40分の時間があれば、最低限の安全行動を取る余裕は十分ある。
 Jアラートが鳴ったらどうするのか。
 これは、私たちが、常に意識しておかなくてはならないだろう。
posted by 平野喜久 at 17:28| 愛知 ☁| Comment(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月22日

地下天気図は使えない:地震予知最前線

 BS-TBS「諸説あり!」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」
 番組の後半では、東海大学教授の長尾氏の研究が紹介された。
 長尾氏は、「地下天気図」という奇妙なものを使って地震を予知しようとしている。
 地下天気図というのは、地下の状態を天気図のように可視化したものだ。
 まず、過去に起きた地震の記録を地図上にプロットする。
 当然、地震活動が活発な地域とそうでない地域とが存在する。
 その活動度の変化を捉えて、天気図のように可視化するのだそうだ。
 例えば、活動が活発になっている地域は高気圧とみなして赤色に、活動が沈静化している地域は低気圧とみなして青色に表示される。
 この時、地震の予兆として注目するのは、意外にも、赤色ではなく、活動が沈静化している青色の方なのだ。
 どうも、大地震発生の直前に、その地域には地震活動が沈静化する現象が起きるので、それを捉えることができれば、地震予知が可能という理屈らしい。
 これも、なぜ大地震の前に沈静化現象が起きるのかは、よくわからない。
 だが、過去の大地震のデータを解析すると、地震発生の半年から1年ぐらい前に、その地域に青色の表示が強く現れるらしく、それが根拠になっている。

 番組では熊本地震の時のデータが紹介された。
 発生1年前の2015年4月の時点で、長崎と紀伊半島先端に青色エリアが現れた。
 この地域の地震活動が低下していることを意味している。
 嵐の前の静けさだ。
 これが6月になると、長崎の青色エリアは勢力を拡大し、紀伊半島の方は縮小していく。
 その後、いったん勢力は弱まるが、9月になってぶり返し、九州北部の青色だけが目立つようになり、他の地域の青色は姿を消していく。
 すると、10月には九州の青色も勢力が衰え始め、12月には消滅してしまう。
 消滅して4か月後に熊本で大地震発生となる。
 この予知法の特徴は、一番の異常データは地震発生の半年前に出るという点だ。
 実際に、このとき、長尾氏は九州北部で大地震が起きるかもと予想していたそうだ。
 「厳密には熊本とのずれがあるが、九州での異常を捉えていたことには変わりはない」と胸を張る。
 この研究も、熊本地震の前兆を捉えたとみるには、こころもとない。
 異常データが地震発生の半年前に現れること、そして、地震が起きた場所にピンポイントで現れるのではなく、そこからずれて現れること。
 地震予知には、「いつ」「どこで」が重要情報だが、この両方にずれが生じる予知情報は珍しい。
 「九州での異常を捉えていた」と言うが、九州といっても広い。
 他の地域の人から見れば、九州とひとくくりにしてしまえばどこも同じという印象かもしれないが、その土地のひとからすれば、福岡と熊本はまったく違う。

 また、この地下天気図の時間変化を見ると、別に気になるところが見るかる。
 地震が起きた2016年4月の天気図では、小笠原諸島から房総半島にかけて強い青色エリアが広がっているのだ。
 そのほかに、広島のところにも青色エリアが見つかる。
 異常データが出てから半年後に大地震発生というのなら、この地域に、半年後に大地震が起きていなければいけない。
 当時、長尾氏もリアルタイムでこのデータを見ていたはずで、この異常値を見て、熊本地震に続いて、首都圏や広島でも大地震が起きそうと予想していたのではないか。
 だが、そうはならなかった。
 この青色エリアについては地震の予兆ではなかったということになる。
 ということは、青色エリアは、地震の予兆になることもあれば、そうならないこともあるということだ。
 ここが非常にこころもとない。
 大地震が起きてから、その地域の過去のデータを調べて、異常値を見つけているだけという印象を受ける。
 
 番組では、熊本地震の直前に起きた三重県南東沖地震についても予兆を捉えていたと説明していた。
 2015年4月の段階で、紀伊半島先端と長崎で青色エリアが発生したが、このときの紀伊半島先端の異常値が、この三重県南東沖地震の予兆だったという。
 この時の地震はM6.1で最大震度4.
 ほとんど被害らしい被害は起きなかった。
 こんな小さな地震でも予兆を捉えることができたと言いたいようだが、説得力がない。
 ここの異常値が最大になったのは1年前。
 地震が起きてから、過去にさかのぼってデータを調べて異常を探しているという風にしか見えない。
 
 2016年10月に起きた鳥取中部地震も取り上げていた。
 熊本地震が発生した4月の段階で、広島に青色エリアが現れていた。
 この広島の青色は、6月になって急に勢力を拡大し、広島から島根にかけて広い範囲に広がった。
 7月にはさらにエリアを広げ、瀬戸内海、岡山まで広がっている。
 その後勢力は縮小し、地震発生時には広島北部から島根県の一部のエリアだけが青色に。
 これが、鳥取中部地震の予兆だったというのだ。
 これも、とても予兆には見えない。
 そもそも、震源だった鳥取県は、一度も青色に染まることはなかった。
 ずっと青色が続いたのは広島県だけだ。
 しかも、今度は、地震発生時に青色エリアは消滅していなかった。
 青色エリアは、半年から1年前に消滅するのではなかったのか。
 残念ながら、地震予知という観点で見たとき、「いつ」も「どこで」も外し続けているという印象しかない。
 番組内で長尾氏は、青色エリアが消滅していないことを捉えてこう言っていた。
 「もう1回、大きな地震が中国四国地方で発生する可能性が高い」
 これほど外していて、なお、予知しようとしている。
 この人にとって、中国四国地方はどこも一緒くたなのだ。
 このエリアのどこかで地震が起きれば、「予兆を捉えていた」ということになりそうだ。
 これほど広いエリアを長いスパンで捉えれば、地震が起きるのは当たり前だ。
 もうこうなると、怪しげな占い師の領域に足を踏み込み始めているように見える。

 こんな危なっかしいデータばかり紹介しているということは、ずばり「いつ」「どこで」を言い当てた異常データはまだ存在しないのだろう。
 この番組では、東日本大震災のデータは紹介されなかった。
 この異常データは、東日本大震災の予兆を捉えることがなかったのだということが分かる。
 紀伊半島沖のM6.1の地震は予兆を捉えたのに、M9の超巨大地震は予兆を捉えられなかったのだ。
 
 もちろん、まだまだ研究途上であり、完璧な予知を期待する方が無謀だ。
 地震予知に向けた基礎研究がようやく始まったところと考えれば、これらも貴重な取り組みと言えるかもしれない。
 だが、研究者の姿勢に疑問を感じる。
 安易に「予兆を捉えていた」とか、「予測が可能だ」などと言うからだ。
 時期がずれていても、場所がずれていても、近いからOKで当たったことにしてしまう。
 自分の研究が本物であると信じたいし、それが世の中の役になってほしいという強い思いがあるために、このようなやや大げさな物言いになってしまうのだろう。
 しかし、これは、占い師の姿勢であって、研究者の姿勢ではない。
 本当なら、ずれが生じたときこそ、そのずれに注目し、なぜずれが生じたのかを解明することが、本当の地震予知につながるのではないか。
 また、東日本大震災の時はなぜ予兆が現れなかったのか。
 そして、小笠原諸島から房総半島にかけて異常データが現れたのに、なぜ地震が起きなかったのか。
 ここにこそ、本質があるのではないだろうか。

 この番組で取り上げられた2人の研究者は、民間のうさん臭い地震予想屋とは違う。
 ちゃんとした研究者であり、科学論文があり、その研究内容が第三者によって検証できるからだ。
 地震予知は、現時点では無理であるにしても、いずれできるようになるかもしれない。
 そのためにはこのような地道な研究の積み重ねが必要なのだろう。



 

 
 
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地震予知研究の最前線:上空の電子数で予知できるか

 BS-TBS「諸説あり」5月6日放送:「地震予知は本当に不可能なのか」。
 この番組は、世に存在する様々な諸説を掘り起こし、徹底検証する情報バラエティだ。
 この回では、地震予知研究の最前線の紹介だった。
 京都大学教授の梅野健氏、東海大学教授の長尾年恭氏の研究が紹介された。
 梅野氏の研究は、「地震が起こる20分から1時間前に、その地域の上空で電子数に異常が見られる」というもの。
 熊本地震のデータを解析した結果を科学論文として発表し、話題となった。
 番組では、その時の異常データの時間変化が動画として紹介された。
 熊本地震の1時間前に、九州と北陸に異常を示す赤色のエリアが現れた。
 時間を進めると、北陸の赤色が消え、中国地方から九州にかけての地域だけ赤色が残る。
 しかも、赤色の地域は、帯状の畝のように縦に何本も発生しており、それが時間とともに西へ移動している。
 30分前になると、赤色エリアは九州だけになり、やがて地震発生となる。
 まるで、赤色のエリアが震源地に向かって集まってきているような動きがみられる。
 これを見れば、どこで地震が起きるか事前にわかるというわけだ。
 だが、私が映像を見た感じでは、これで、熊本地震の発生を予知できたという印象は持てない。
 30分前に赤色エリアが九州だけになるが、その赤色は主に福岡から宮崎にかけてのエリアに帯状に広がっている。
 そのあと、赤色帯は西に移動し続けるが、同時に中国地方にも再び帯が何本も等間隔で現れ、同じように西に移動し続ける。
 地震発生の時には長崎から熊本を通って鹿児島のあたりに1本の帯、大分のあたりにもう1本の帯が赤くなっている。
 たしかに、地震発生時に熊本のあたりも赤色になっているが、赤色の範囲は九州全土に広がっており熊本地震の発生をピンポイントで予知しているように見えない。

 この帯状の赤色エリアが日本列島の上に何本も平行に一定間隔で並び、それが同じ速度で西に移動している。
 これが、とても自然現象に見えないのだ。
 データの収集過程で何かノイズが入り、それが干渉を起こしているようにしか見えない。
 赤色エリアが移動して震源の熊本に向かって集まってきているように見えるのは、ただ干渉を起こした帯状の模様が左に動いていただけで、たまたま左の端に熊本があったということではないのか。

 梅野氏は、どうして地震発生直前に上空の電子数に異常が起きるのかは分からないとしている。
 「もしかしたら、地面の破壊現象が上空の電子数に影響を及ぼしているのではないか」と予想しているようだ。
 異常を表すエリアは、日本列島上に縦に帯状、それも複数が平行に均等間隔で並び、西へ同じ速度で移動する。
 ということは、地面の破壊現象も同じような動きをしているということか。
 地面の破壊現象がそんな規則的で幾何学的な動きをするはずがない。
 だとすると、別の原因でそのようなデータの動きをしていることになる。
 それが何なのかを解明しないことには、とても地震との関連は証明できないだろう。

 番組では、東日本大震災の時のデータ解析も紹介された。
 地震発生1時間20分前になると、日本列島のあちこちで赤いエリアが現れ始める。
 そのエリアは、現れては消え、消えては現れ、日本中をうごめいているように見える。
 20分前になると、近畿、中部、関東エリアに強い赤色のエリアがはっきり現れる。
 10分前になると、紀伊半島から御前崎の沿岸部に強い赤色のエリアが集中する。
 次の瞬間、このエリアの赤が突然消え、続いて関東地域が赤く染まる。
 と同時に地震発生となった。
 この時も、全国に広がっていた赤色のエリアが震源の方に集まっていく様子が見られると解釈していた。
 だが、東日本大震災の震源は宮城県沖であり、関東ではない。
 地震発生時、宮城県周辺は赤色になっていない。
 赤色エリアは全国をうごめいていたが、地震の被害の大きかった東北地方はほとんど赤くなることがなかった。
 東日本大震災も無理に解釈しようとしているが、とても地震の予兆を捉えているようには見えない。
 むしろ、10分前の映像を見ると、まさに南海トラフ巨大地震の想定エリアが真っ赤に染まっており、そちらの予兆であったと言った方が説得力がある。
 だが、真っ赤に染まった南海トラフ地震は発生せず、赤色に染まることのなかった宮城県沖で地震発生。
 これは、むしろ、このデータは予兆を捉えていないと解釈すべきではないのか。

 地震発生と同時に動画がストップしてしまい、そのあと赤色エリアはどのように動いたかは放送では分からなかった。
 東日本大震災発生後は、余震が頻発した。
 長野と静岡では誘発地震も起きた。
 その部分のデータを見てみたいものだ。。
 本当にデータが地震の予兆を捉えているのなら、地震発生後は、余震の続く東北太平洋側全体が常に真っ赤に染まっているはず。
 東日本大震災は日本の観測史上最大規模の地震だった。
 だったら、異常データもいままでに見たこともない最大規模で表れていなければおかしい。
 たぶん、データはそのようになっておらず、見せられないのだろう。

 「上空の電子数に異常がみられる」という表現をしているのも、違和感がある。
 異常とは何か。
 電子数が増えるとも減るとも言っていない。
 たぶん、電子数が突然増えたり減ったりする現象をとらえているのだろう。
 それを「異常」とみなして、地震の予兆と解釈しているのだ。
 本当に捉えたデータ値の変化は、電子数の異常なのか。
 どうして電子数に変化が生じるのかが分からないのに、「異常」と決めつけるところに恣意的な解釈が入ってしまっている。
 
 これは科学論文として発表されているのが救いだ。
 他の科学者によって、しっかり検証されるのを待ちたい。
 
 
 
 
 
 
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2017年05月15日

Jアラートが鳴ったらどうする

 政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を知らせる全国瞬時警報システム「Jアラート」による避難指示を変更。
 発射直後の第1報から「頑丈な建物や地下に避難してください」と呼び掛けるようにした。
 これまでは、
 第1報で、ミサイルが日本の領土領海に届く可能性。
 第2報で、日本の領土領海に着弾の可能性。避難指示。
 第3報で、着弾の状況。
 これだと、避難指示が遅すぎるので、ミサイルが日本に届きそうだと分かったら、第1報から非難を呼びかけるようにすることとなった。

 昨日の早朝のミサイル発射時にはJアラートは発信されなかった。
 日本に届く恐れなしと判断されたからだ。
 東京メトロは、前回のミサイル発射時に電車の運行を10分間停止した。
 だが、これはやりすぎとの批判があったことから、Jアラートが発信された時に運航停止に対応を切り替えた。
 柔軟に対応しているところが好ましい。

 北朝鮮のミサイルは、日本にとって、現実のリスクとなりつつある。
 今回のミサイルは、従来にはない新型のようで、上空2,000qにも達してから自由落下させるように打ち上げられたらしい。
 上空2,000qというと完全に宇宙空間であり、一度宇宙空間に打ち上げられたミサイルが、大気圏に再突入して着弾したことになり、軌道コントロールが非常に難しいことをやっている。
 北朝鮮は、狙い通り正確に着弾させることに成功した、と見解を表明しているが、本当にそうか危なっかしい。
 今回はたまたま何ごともなく済んだが、少しでも軌道にずれが生じただけで、着弾地点は大きくずれる。
 試作段階のミサイルを次々に打ち上げ、失敗しないと考える方が間違っている。
 いままでの失敗は、途中で爆発したり、北朝鮮の領土内に落下したりという完全な失敗だったからよかった。
 だが、完全な失敗ではなく、少しミスした程度の失敗だった場合、そのミサイルはどこに着弾するか分からない。
 北朝鮮の意図にかかわらず、日本領土内に着弾する可能性はある。
 国がJアラートのシステムを開発し、国民に呼びかけているのは、現実のリスク対応として当然だろう。
 
 ところが、このJアラートに苦情を申し立てる人がいるそうだ。
 「子どもが怖がる」
 「不安をあおるのはやめてほしい」
 リスクに目を向けさせまいとする勢力は常に存在する。
 
 リスクに目を背けるのではなく、リスクを正しく直視し、冷静に対処法を考えておくことだ。
 Jアラートが鳴ったらどうしたらいいのか。
 国は屋内避難しか呼びかけていないが、本当は、もっと詳しく解説した方がいい。
 北朝鮮から日本に飛んでくるミサイルはどんなタイプになるのかは分からない。
 ただ実験用のミサイル筐体だけが落ちてくるのか、爆薬が仕掛けられているのか、爆薬とともにバイオや核が搭載されているのかによって、予想される被害はまったく違う。
 最低限、頑丈な建物の中に逃げ込むのが第1。
 これは、上からの落下物を回避するため。
 次に、窓際から離れ、建物の奥に退避する。
 これは、爆風から逃れるためだ。
 そして、目を両手で抑える。
 これは、爆発の閃光で失明しないため。
 目をつぶるだけでもいいが、核爆弾の場合その閃光は瞼を透過してしまうので、両手で覆った方がいい。
 爆発音もすごいので、耳を塞いだ方がいい。
 この時、目を覆いながら耳を塞ぐ姿勢になる。
 爆風が収まったら、情報収集。
 いまの爆発がどんなミサイルだったのか、周辺状況がどうなっているのかを確認。
 確認できる前に、勝手に動き回らない方がいい。
 生物・化学兵器や核爆弾の場合、その後の被害が大きくなる。

 
 
 
 



北朝鮮を巡る情勢が緊迫化しているためで、ミサイルは発射から最短数分で着弾することから、一刻も早く国民に避難を促す必要があると判断した。
政府は弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合に、Jアラートを使用して警報を出し、防災行政無線や緊急速報メールを通じて情報を伝達する。

これまでは、ミサイル発射後、日本の領土・領海に届く可能性がある場合、警報の第1報を出し、1〜2分後、領土・領海内に着弾する可能性が高くなった段階で第2報、着弾した段階で第3報を出すことにしていた。
避難指示は第2報の段階で「屋内に避難してください」と伝えていたが、今後は第1報から避難を指示し、屋内避難を呼び掛ける。

 
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2017年05月06日

原発事故ルポの名著:危機のリーダーを考えさせる

 遅ればせながら、福島原発事故のドキュメンタリーを読んだ。
 このような本は、事故直後よりも、時間を置いてからの方が、落ち着いて読める。

大鹿靖明 著 『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社文庫)
船橋洋一 著『カウントダウン・メルトダウン(上)(下)』 (文春文庫)

 原発事故関連の書籍はいろいろ出ているが、この2冊が最も内容が充実しているようだ。
 関係者へのインタビューと周辺情報の取材がしっかり行われており、人々の動きや気持ちが手に取るようにわかる。
 現場では何が起きていたのか、東電幹部らは何を考えていたのか、保安院や委員会は何をしていたのか、官邸はどう行動したのか。
 まるで、小説でも読むようなリアルさで再現されている。
 これが、フィクションではなく、現実に起きていたことだけに、胸に迫るものがある。
 リアルタイムでは国民に何も知らされていなかったが、実際には、日本消滅の危機に瀕していたのだということが分かって背筋が寒くなる。
 この2冊は同じ原発事故を取り上げており、当然、同じ場面が出てくるが、視点の置き所の違いか、本によってニュアンスが違うのが興味深い。
 このような多面的な視点で事故を取り上げることで、真実が見えてくる。

 事故時の対応で、菅直人総理の言動が批判されることが多い。
 事故直後に、総理自身が官邸を離れて事故現場に押しかけ、現場を邪魔した。
 東電本社に乗り込み、幹部や社員らをどやしつけて萎縮させた。
 常にイライラし、周りの人間を怒鳴り散らし、誰も近づかなくなった。
 これらの言動はどうやら事実のようだ。
 だが、菅総理の立場に立ってみると、彼のイライラ感はよくわかる。
 腑抜けのように当事者能力を失っている東電幹部。
 責任放棄して逃げることしか考えていない保安院職員。
 まともに判断できず適切なアドバイスもできない安全委員会。
 その実態を知ると、菅総理でなくてもイライラを爆発させたくなる。
 もちろん、官邸の対応にも反省すべき点はあっただろうが、政治家まで腑抜けになっていたり、逃げ腰になっていたりしなかっただけでも、よかったと思う。

 官邸の中の1人が、「菅総理でよかった」と思わず漏らす場面が出てくる。
 東電本社に乗り込み、「撤退はあり得ない! 死ぬ気でやれ!」と大声でどやしつけ、東電幹部らの表情が引き締まる場面だ。
 ドラマだったら、ここがクライマックスになる。
 確かに、菅総理だから、これができた。
 その前の総理だったら、「トラストミー」「腹案がある」と言っているだけで、何も行動できなかったに違いない。
 
 この本は、危機の臨んでのリーダーの在り方を考えさせる絶好のケーススタディになる。
posted by 平野喜久 at 09:14| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月30日

オリンパス元経営陣への賠償請求:590億円の支払い命令

 オリンパスの株主代表訴訟で、約586億円の賠償責任という判決が出た。
 光学機器大手オリンパスの巨額損失隠し事件で損害を与えたとして、同社と個人株主が旧経営陣ら18人を相手取り、計約897億円の損害賠償を同社に支払うよう求めた訴訟。
 東京地裁は27日、元会長ら8人に計約590億円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、同社は1990年に運用していた株の大幅下落で損失が拡大。
 96年頃には資金運用の含み損が約900億円に達したが、海外ファンドに含み損を抱えた金融資産を移し替えるなどして損失を簿外で隠蔽。
 損失隠しは2011年に発覚。
 元社長ら3名は金融商品取引法違反に問われ、東京地裁で13年7月、執行猶予付きの有罪判決を受け、確定していた。
 オリンパス社は「会社に多額の損害を与えた」として元社長らを提訴。
 約37億円の支払いを求めた。
 同時に個人株主も株主代表訴訟を起こし897億円の賠償請求していた。
 今回の判決は両者を合わせた判断となる。

 判決は、菊川元会長ら旧経営陣について「簿外損失を公表する機会がありながら公表せず、損失隠しの中止や是正の措置も何ら講じなかった」と指摘。
 損失隠しによって、株主に本来の分配可能額を約586億円上回る配当が行われたとして、菊川、山田、森の3氏に約586億円の賠償責任を認めた。
 また、菊川氏らには、事件で同社が支払った課徴金の一部などの賠償も命じた。

 今回の賠償責任は、元経営陣8人に対するものだが、実質、元社長の菊川氏、元副社長の森氏、元監査役の山田氏に対するものだ。
 この3氏が損失隠しを主導した主役、他の5人は当時の経営陣として虚偽記載を防ぐ責任を果たせなかった脇役と認定された。
 主要3氏だけで586億円の賠償責任。
 これは、組織の賠償責任ではなく、個人の賠償責任という点が重要だ。
 単純に三等分したとしても、1人195億円。
 個人賠償としては、考えられないような額になる。
 
 被告の元経営陣らは、何も私腹を肥やそうと会社の金に手を出したわけではない。
 たぶん、本人らには、会社のためという経営判断で行なったものとの思いがあるだろう。
 だが、これだけの損失を会社にもたらしておきながら、自分は高額の役員報酬をもらい、退職金を満額手に入れているとしたら、自分の利益のために会社の利益を犠牲にしたも同然だ。
 私腹を肥やすために会社の金に手を出したのと同じことになってしまう。
 
 もう1つ、重要な点は、主役3氏だけではなく、脇役5氏にも賠償責任が認められたことだ。
 この5氏は、たぶん、損失隠しには直接関与していない。
 しかし、当時の役員として、損失隠しを知りうる立場にあったし、それを防ぐ責任があった。
 そのことを厳しく認定されたことになる。
 つまり、何かやらかしたことを責められているのではなく、何もしなかったことが責められているのだ。
 ただ役員会の場で、黙って座っているだけでは、いつ賠償責任を問われるか分からないということになる。

 さらに、賠償責任が認められた元役員の中には既に他界してい人もいるが、支払い命令はその遺族に出されている。
 賠償責任は死んでも許されないということだ。 
 
 仮にこの判決が確定したとすると、賠償命令が実行に移される。
 個人でこれだけの賠償に応じられるかどうか。
 世界的な富豪だったら小遣い程度の金額だが、普通は全財産を拠出しても足りないだろう。
 賠償請求に対して、自己破産は認められていない。
 当面の生活費だけを残して、強制的に身ぐるみをはがされることになる。

 菊川氏については、2012年の報道で、個人資産を親族に譲渡していたことが分かっている。
 今回のように個人賠償にまで発展することを見込んで、事件発覚直後から対策をしていたのだ。
 他にもあらゆる手段で、個人資産を分散させているのに違いない。
 このような行動は詐害行為とみなされ、すべての取引を取り消されることになる。
 相手が善意の第三者であったとしても、無理だ。
 取引の取り消しとは、取引自体がもともとなかったことにされるということだからだ。
 オリンパスの元経営陣らは、たぶん、逃げ切れない。

 中小企業の社長は失敗したら身ぐるみはがされるが、大企業の社長は、失敗しても辞任すれば退職金をもらって逃げ切れるというのが、昔の常識だった。
 ところが、いまは時代が違う。
 

 
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2017年04月15日

くら寿司のお粗末な対応:投稿者の情報開示請求

 産経新聞の報道による。
 奇妙な裁判があった。
 大手すしチェーン「無添くら寿司」を運営する「くらコーポレーション」が、プロバイダー業者「ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)」を相手取り、裁判を起こした。
 訴訟の内容は、インターネット掲示板上に「無添という表現はイカサマくさい」などと書き込んだ人物の情報開示を請求したもの。
 その判決が12日、東京地裁であった。
 結果は、請求棄却。
 「書き込みは、くら社の社会的評価を低下させるものではなく、仮に低下させるとしても、書き込みには公益性があるため違法性はない」ということだった。
 
 株式情報を扱う掲示板に、ソネットのプロバイダーを利用する誰かが「くら寿司」を批判する書き込みをしたらしい。
 それで、くら社がソネットに対して、投稿者の情報開示を求めていたのだ。
 くら社は、投稿者の情報を得て、何をしようとしたのか。
 投稿者に直接掛け合い、投稿を削除せよと要求するつもりだったのか。
 それとも、このような裁判を起こし、批判的な投稿をする匿名者への脅しのつもりだったのか。
 いずれにしても、上場企業の対応としては低レベル過ぎる。

 実際の投稿内容は、次のようなものだったようだ。
 「ここは無添くらなどと標榜するが、何が無添なのか書かれていない。揚げ油は何なのか、シリコーンは入っているのか。果糖ブドウ糖は入っているのか。化学調味料なしと言っているだけ。イカサマくさい。本当のところを書けよ。市販の中国産ウナギのタレは必ず果糖ブドウ糖が入っている。自分に都合のよいことしか書かれていない」

 これを読むと、誹謗中傷やデマの類とは全く違うのが分かる。
 この内容は、多くの人が漠然と感じていたことで、「確かに、そうだよなぁ」と思わせる。
 「無添くら寿司」という店舗名は、まるで、出されている食材は、無添加に徹しているかのように連想させる。
 ところが、この店舗の売り文句に、「無添加」の言葉はどこにもない。
 テレビコマーシャルにも、広告にも、店舗内装にも、無添加をセールスポイントにしている様子はまったくない。
 ならば、この「無添」とは、何の意味か。
 誰もが疑問に思うだろう。
 もしかしたら、「無添」とは、どこかの地名か? 人名か?
 名前の由来も公表されていない。
 もしかしたら、消費者に「無添加」を勝手にイメージさせるためにこのような店名にしているだけではないのか。
 あの投稿者の思いは、ここにあったのではないだろうか。
 
 それにしても、くら社の対応はお粗末すぎた。
 裁判に訴えたことで、この案件が広く知られることとなり、むしろ企業イメージの低下につながた。
 そして、店名のうさん臭さに改めて気づかせることになってしまった。
 くら社としては、裁判に訴えるのではなく、「無添くら寿司」の店名の由来を丁寧に説明し、我が社の創業理念を広く知ってもらう絶好のチャンスにすべきだった。

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2017年04月10日

表層地盤、想定の1.5倍以上の揺れ

 NHKwebnewsの報道による。
 地震の揺れの大きさについて。
 表層地盤によって局所的に揺れが増幅する恐れがあるとして、国の研究機関である防災科学技術研究所が分析した。
 いままでは、揺れの大きさは地盤の柔らかさによって決まると思われてきた。
 だから、山間部は地盤が固いため揺れは小さく、平野部は地盤が柔らかいために揺れは大きくなる。
 当然、平野部ほど建物の被害は多くなるというのが一般的な解釈だった。
 ところが、去年4月の熊本地震では、必ずしもそうなっていなかった。
 平野部でも、場所によって建物被害の大きいところと小さいところが極端に分かれていたのだ。
 特に、河川流域は体積地層が深いので、建物被害は甚大になるはずが、そうなっていなかった。
 むしろ、流域から離れた地域の方に被害が集中していた。

 この謎は、表層地盤の厚さによるものだということが分かってきた。
 表層地盤とは地表面に堆積した柔らかい粘土層の地盤のことを言う。
 山間部は表層地盤が薄いので、地震の揺れは増幅されることがない。
 これは従来からの解釈と同じだ。
 問題は、平野部だ。
 河川流域は表層地盤が厚い。
 当然、地震の揺れは表層地盤で増幅されて地表に伝わるが、その揺れは非常に周期の長い揺れになって伝わる。
 この周期の長い揺れは、地面を大きく揺さぶりはするが、低層階の木造住宅を破壊するような力を持たない。
 一方、河川流域から離れた表層地盤が少し浅くなっている地域は、地震の揺れが増幅され、地表面に達するときには周期1秒ぐらいの揺れになる。
 この周期の揺れが木造住宅に特に被害をもたらすことが分かっている。
 熊本地震で、同じ震度7を観測した地域でも、場所によって建物の被害状況に極端な違いが見られたのはこういう仕組みだったのだ。

 近い将来、首都直下地震の発生が懸念される関東地方。
 従来の地質調査で揺れの大きさをハザードマップで公表されていたが、これが全面的に見直しを迫られている。
 表層地盤の状況によっては、地震の揺れが、これまでの想定の1.5倍以上に強まる可能性のある地域が5000か所余りに上ることが明らかになった。
 場所によっては、揺れの大きさが3倍以上となるところもあり、従来の被害想定がまったく当てはまらなくなっている。
 今後は、他の地域の地盤調査も進み、より正確なハザードマップが作られるようになるだろう。
 地震の調査研究は、常に進化しており、ハザードマップも常に塗り替えられている。
 私たちが地震への備えを考えるときには、最新の情報に敏感になっておく必要がある。


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2017年04月01日

第3回レジリエンス認証:審査登録結果

 第3回のレジリエンス認証(国土強靭化貢献団体認証)の審査結果が公表された。
 今回、審査登録されたのは7社だった。
 第1回が44社、第2回が20社だったから、第3回はずいぶん少ない印象だ。
 応募そのものが少なかったのか、それとも、応募はあっても審査に合格するレベルの企業が少なかったのか。
 応募総数や合格率などが公表されていないので、実態はよくわからない。
 これまでに審査登録になった企業は、71社。
 初年度に100社を目標としていたはずなので、やや低調だ。

 レジリエンス認証制度は、民間企業のBCPの取り組みを客観的な立場で認証し、国が応援しようという仕組みだ。
 いままで、BCPの必要性はいろいろなところで語られてきたが、各企業が勝手に取り組んでいるだけで、それが実質的に意味のある内容になっているのかどうかは、よくわからなかった。
 BCPに取り組んでいるといっても、いろんなレベルの取り組みがある。
 ようやく基本レベルが一通りできた初級レベル。
 基本レベルのBCPに基づき、具体的な対策を実行し始めた中級レベル。
 必要な対策は実行済みで、さらに実効性の向上にバージョンアップを重ねている上級レベル。
 「BCPに取り組んでいる」と表明していても、その企業が実際にどのレベルの取り組みを行なっているのかは外部からはうかがい知ることができない。
 外部から伺い知ることができないだけではない。
 取り組んでいる当事者も、自分たちの取り組みはこれで十分なのか、まったく足りないのか、それが分からないことがある。
 お手本を見ながら、見よう見まねで作っているだけだからだ。
 
 こういう状況にあるとき、レジリエンス認証のような客観的な審査制度は非常にありがたい。
 取り組んでいる当事者にとっては、自分たちのBCPが十分なレベルにあり、いままでの取り組み方が間違っていなかったことの確認になる。
 第三者に対しては、我が社のBCPは十分なレベルにあることの証明になる。
 このことから、BCPに取り組む企業には、まずはこのレジリエンス認証をクリアできるレベルを目指すことをお勧めしている。
 
 だが、このレジリエンス認証制度は、まだ昨年度に始まったばかりで、認知度は高くない。
 いままで認証取得した企業も、地域や業種が一部に偏っている。
 このレジリエンス認証の審査基準の1つに、過去2年ほどの活動実績があることが要求されている。
 これが1つのハードルになっているようだ。
 つまり、とりあえずBCP文書を作りました、というだけでは認められない。
 それに基づいて実際の活動が行われていて初めて認証される。
 この認証制度は、文書が形式的に整っているかは重視しない。
 実際に活動が行われており、今後もその活動が継続する仕組みがあるかどうか、という実質性の方に重点が置かれている。
 だから、この認証制度を知って挑戦しようと思っても、まずは活動実績がなければ申請できない。
 それで、いま、活動実績を作っているところということかもしれない。
 回を重ねるごとに登録企業数が減っているのは、こんなところに理由があるのだろう。

 国土強靭化は国策として取り組まれており、レジリエンス認証制度は、その一環として重要な位置づけにある。
 国は本気でこの制度を広げていこうとしている。
 レジリエンス認証に挑戦する企業が増え、このメリットが具体的に実感できるようになれば、一気に普及が進むだろう。


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2017年03月30日

雪崩事故:責任者のリスク認識

 8人もの若い命を失う重大な結果を招いた栃木県那須町の雪崩事故。
 この事故の論点は2つ。
 1つは、なぜ雪崩発生のリスクがあるのに雪山訓練を決行したのか。
 もう1つは、なぜ事故発生の通報が遅れたのか。

登山講習会責任者が会見を開いた。
 訓練決行の理由については、「絶対安全との認識があったため」と発言した。
 前日の報道で雪崩発生の可能性を認識していたが、雪崩の発生しそうな場所は分かっているので、そこを避ければ安全であると判断したようだ。
 「100%か」と問われ、「100%だ」と答えていた。
 世の中に「絶対」とか「100%」などということはめったにあるものではないが、この責任者は安易にこの言葉を使う。
 すべての間違いはこの「絶対安全」との認識から始まっている。
 リスクを認知していなければ、それに対する備えをすることはなくなってしまう。
 遭難時用のビーコンを生徒らに持たせなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。
 本部で緊急事態に備えた心構えができていなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。

 彼は、登山歴20年のベテランだ。
 どうしてそのような人物が雪山リスクを正しく認知できなかったのか。
 もしかしたら、自らの経験が判断を誤らせたのかもしれない。
 経験豊かな人が判断を間違うということは往々にしてある。
 むしろ、経験豊かだからこそ間違うということも起きる。
 その経験が偶然の成功体験しかなかったら、その経験則は、間違った判断しかもたらさない。
 
 彼は、同じ場所で過去に同じような訓練をした経験があるという。
 そして、その時には何も問題は起きなかった。
 この成功体験が判断を誤らせたのは間違いない。

 当日、早朝、天候が悪いために、通常登山は無理と判断し、「ラッセル訓練」に切り替えたという。
 前日の雪崩注意の報道、そして当日の荒天。
 そのために、登山を避けるべきというリスク判断をした。
 ここまではよかった。
 だが、ラッセルなら絶対安全という認識に至る経緯が理解不能だ。

 問題の2つ目は、通報が遅れたこと。
 この理由は、よくわからない。
 本部が遭難を知ったのは、最終班の教員が本部に駆けつけて通報したことによる。
 そのために、雪崩発生から警察への通報に50分もかかることになった。
 各班の教員は、それぞれ無線機を携帯し、何かあればただちに本部に連絡できる体制になっていた。
 なのに、なぜ、雪崩に巻き込まれた先頭班の教員らは、ただちに無線連絡しなかったのか。
 教員らも雪崩に巻き込まれ、無線連絡できる状態ではなかったとしても、2番班、3番班の教員たちは、ただちに無線連絡できたはず。
 今回、最終班の教員が本部に駆けつけたので、緊急事態を知ることができたが、もし、それがなかったら、さらに救助が遅れたはずだ。
 会見では、無線連絡がなかった理由はよくわからないとのことだった。
 ただ、無線機を車の中において、他の作業をしていた時間帯が10分ほどあったことを明かしていた。
 
 このあたりもあまりにも不自然な印象を受ける。
 たぶん、雪崩発生を受けて現場の教員らは直ちに本部へ無線連絡を試みたに違いない。
 雪崩に巻き込まれて、教員にそんな余裕がなかったとしても、離れた場所にいる教員は何が起きたかすぐにわかり、それをただちに無線連絡することは可能だ。
 1班から5班までのすべての引率教員が無線連絡を失念していたなどということはあり得ない。
 特に最終班の引率教員が本部に駆けつけて緊急事態を知らせたのは、無線が通じなかったからではないのか。
 もしかしたら、本部ではまったく無線が通じない状態にあったことを疑わせる。
 たとえば、無線機の近くに誰もいなかったとか、無線機の電源が切られていた、とか。
 「絶対安全」との認識だったのだから、そうなっていたとしても不思議ではない。
 すべての間違いは、責任者のリスク認識にあったと言わざるを得ない。

 最終班の教員が本部に駆けつけたのはせめてもの救いだった。
 この教員が、「どうせ誰かが本部に通報しているだろう」「無線が通じないのは既に本部で緊急対応が始まっているからだろう」などと憶測してしまっていたら、対応は更に遅れていた。

 最後に、責任者の記者会見について。
 たどたどしい語りだったが、まるで人ごとのように軽々しく話しているという印象を受けた。
 たぶん、彼自身、ことの重大さをまともに受け止め切れていない感じだ。
 「どうして、こんなことになってしまったのだろう」と訳が分かっていない様子に見えた。
 最後、隣にいる人に促されて、立ち上がって頭を下げていた。
 その姿が痛々しい。



 
 

 
posted by 平野喜久 at 11:01| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月22日

アスクル倉庫火災:社会的責任

アスクルの物流倉庫火災。
 6日たった今朝、ようやく鎮火となった。
 延べ床面積およそ7万2000平方メートルのうち、これまでに東京ドームとほぼ同じ広さの4万5000平方メートルが焼けたという。
 窓のほとんどない倉庫で、消火活動がままならず、壁の一部を壊しながらの放水だったが、効果は限定的だった。
 倉庫内の物資が燃え尽きたところでようやく鎮火に至ったといった印象がある。
 周辺住民へは避難勧告が出されており、それもようやく解除されることになる。

 今回の火災事故には疑問点がいくつかある。
1.なぜ出火したのか。
2.なぜ初期消火できなかったのか。
3.なぜ鎮火まで長期化してしまったのか。

 今回の火災は、アスクルの通販業務に影響を及ぼしたが、それよりも、長期化したことにより地域社会への影響が大きかった。
 社会的責任を果たすためにも、原因の究明と再発の防止が求められる。
 アスクルは本日午後に記者会見を開くらしい。
 疑問点に対して明確な回答ができるかどうかが注目される。




 
posted by 平野喜久 at 12:03| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月21日

レジリエンス認証の取得と目指すメリット

 内閣官房のウェブサイトに、レジリエンス認証を取得した企業が公開されている。

国土強靱化貢献団体認証 認証取得団体一覧表
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/ninshou_dantaiichiran.html

 レジリエンス認証を取得した企業は、正式には「国土強靭化貢献団体」として認証されている。
 国の推し進めている「国土強靭化政策」に貢献している団体という位置づけだ。
 内閣官房のウェブサイトは、日本国内で最もページランクが高い。
 つまり、検索エンジンにとって、サイトの信頼性が最も高いと評価されているページだ。
 その内閣官房のウェブサイト上で、企業名が公表されているのは、企業PRの点で、非常に価値が高い。

 一覧表を見ると、あまりにも東京都に偏りすぎているきらいがある。
 第1回、第2回、合わせて現在までに64社の登録があるが、そのうち、愛知県の企業は、たった4社にとどまる。
 私が顧問をしている企業はこの内の1社だ。
 以前からBCPのお手伝いをさせていただいてきたが、取り組みの成果を形として残すために、レジリエンス認証への申請をご提案した。
 愛知県はBCPの取り組みが進んでいる地域ではあるが、その割にレジリエンス認証の広がりが遅い。
 本年度に始まったばかりの制度であることもあり、まだ、認知度が低いのかもしれない。
 しかし、国は、この制度を積極的に推し進めようとしており、初年度は100件ぐらいを目指し、今後は加速度的に認証団体を増やしていく意向だ。
 首都直下地震や南海トラフ巨大地震は目前に迫っており、国を挙げて災害への備えが求められる状況にあるからだ。

 従来は、災害対策と言ったら、行政が取り組むべきことという認識だった。
 だが、行政だけの努力でどうにかなるものではないことがあきらかなので、住民の自助も呼びかけかれるようになった。
 現実には、これだけではだめで、民間企業の果たす役割が大きいことが認識されるようになってきた。
 地域経済が復旧しなければ、住民の生活基盤が失われてしまい、地域の復興は成功しない。
 地域経済を守るのは、行政でも住民でもなく、民間企業なのだ。
 いざというときに民間企業が生き残り、いち早く復旧することが、その街の再生に欠かせない。
 それで、国が本腰を入れて「レジリエンス認証」を推し進めようとしているのだ。

 この認証制度は、今後は、国の強力なバックアップで、ますます認知度が高まっていくだろう。
 BCPの取り組みは、いまやどの企業でも避けて通れない重要課題となりつつあり、このレジリエンス認証は、まずは最低限クリアすべき目標として非常に使い勝手がいい。
 いままでは、BCPは各社が勝手なやり方で勝手なレベルで対策していたが、それに、ある程度客観的な基準ができたことになる。
 「レジリエンス認証」がその企業の信頼性を証明する指標になりうる。
 ISOのようなその企業の信頼性を表す指標として位置付けられれば、一気に広がっていくことが予想される。
 業界によっては、爆発的な広がりになっていくだろう。
 取り組むとしたら、いまが、トップランナーに加わる絶好のチャンスといえる。

 レジリエンス認証は、地道にBCPに取り組んでいる企業であれば容易に取得できる。
 しかし、今日取り組めば、明日には取得できるというほどいい加減なものではない。
 実質的な活動が行われているかどうかは厳しく審査される。
 それだけに、認証取得できたということは、中身のある取り組みが行われている証明でもある。
 逆に言うと、このレジリエンス認証の審査に合格するぐらいでなければ、そのBCPの取り組みは意味がないともいえる。
 まじめにBCPに取り組んできた企業、または、これから本格的にBCPに取り組もうとする企業は、ぜひ、このレジリエンス認証に挑戦してほしい。
 この認証には挑戦するだけの価値がある。



 
posted by 平野喜久 at 16:25| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月25日

なんでも鑑定団の内容に異論:曜変天目茶碗

 テレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』。
 20年以上も続く人気長寿番組だが、それに騒動が持ち上がった。
 昨年12月20日の放送で、「曜変天目茶碗」が出品され、それが本物と鑑定され、2500万円の値段が付いた。
 ところが、放送直後から、あちこちから疑問の声が上がることになる。
 世界に3点しか見つかっていない曜変天目茶碗の4点目が見つかったのであれば、国宝級であり、その価値がたったの2500万円なんて安いはずがない。
 既に国宝指定されている他の曜変手目茶碗に比べると、まったく似ていない。
 そもそも、これは本物なのか。

 専門家も黙っていない。
 曜変天目を長年研究してきた陶芸家からは、「どう見ても中国の商店街に売られているまがい物にしか見えない」と厳しい指摘。
 中国陶磁器の研究をしている大学教授も、「本物である可能性は低い」とにべもない。
 この騒動は、海外へも飛び火し、中国からも異論が出ているという。

 「開運!なんでも鑑定団」は、ただの娯楽番組に過ぎない。
 一般の人が、自慢のお宝を持ち寄って、鑑定士に値段をつけてもらい、思いのほか高値がついてびっくりしたり、まったくの偽物との鑑定で大笑いになったり。
 その場の、たわいもない喜怒哀楽を楽しむのが目的。
 その内容に、専門家がむきになって反論するほどのものではない。
 
 だが、今回はただの笑い話では終わらなくなった経緯がある。
 それは、番組の放送前に、テレビ局がプレスリリースを流していたのだ。
 「番組始まって以来の最大のお宝発見!」
 国宝級のお宝が出るということで、番組放送前から注目が集まっていた。
 専門家も関心を寄せるのは当たり前だ。
 そうなれば、さまざまなところからいろんな意見が出るのは予測できたこと。
 その結果、専門家からも厳しい異論が噴出することとなった。
 これは、テレビ局側が招いた騒動だといえる。

 だが、テレビ局側は、今回の騒動については書面での回答で終わっている。
「鑑定結果は番組独自の見解によるものです。番組の制作過程を含め、この件について特にお答えすることはありません」
 番組内で鑑定した中島氏もコメントを出していない。
 プレスリリースでは、「国宝級の発見」と煽っておいて、問題が起きると「ただの娯楽番組」というところに逃げ込もうとしているように見える。
 
 お宝を出品した所有者のところには、心無い誹謗中傷が押し寄せているという。
 このままでは、出品者が被害者になってしまいそうだ。
 テレビ局が無責任な対応をしているために、出品者が批判の矢面に立たされてしまっている。
 このままうやむやでは済まない状況。
 出品者を守るためにも、番組の信用を取り戻すためにも、きっちりした対応をすべきだろう。




 
posted by 平野喜久 at 10:54| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月28日

第2回認証団体公表:レジリエンス認証

 内閣官房「国土強靭化貢献団体の認証に関するガイドライン」にもとづく第2回レジリエンス認証取得団体が公表された。
 今回の認証団体は。20団体。
 第1回が44団体だったから、半分以下に減っている。
 製造業7社、建設業3社、卸小売3社など、業界は多岐にわたる。
 団体名を見てみると、有名な大企業が目につく。
 第1回の時と同じだ。
 これは、申請企業が大企業に偏っているためだろう。
 認証団体が半数以下に減少したのも気にかかる。
 レジリエンス認証の認知度が低く、申請件数が減っているからか。
 それとも、申請数は増えていても、認証レベルの団体が少なくなっているためか。

 私が顧問をしている企業も今回のレジリエンス認証に申請し、無事に認証取得にい成功した。
 従業員数100名に満たない中小企業だが、社長のBCPへの取り組み意欲が高く、社内を挙げて取り組んでいる。
 せっかくの取り組みを形に表すため、この成果をレジリエンス認証に挑戦したらどうかと提案した。
 申請書類の作成や、第2次審査の社長ヒアリングの対策などお手伝いをさせていただいた。
 取り組みの実態をありのままに見ていただくという方針のもと、審査に臨んだが、特に厳しい指摘や質問を受けることもなくクリアできたようだ。
 このレジリエンス認証は、厳しく審査して落とすことを目的としたものではなく、BCPの普及のために、まじめに取り組んでいる企業は積極的に応援していこうというところに主眼がある。
 だから、中小企業の実態にあった審査が行われ、地道な活動実績が認められ認証取得となったものと思われる。
 
 実は、第1回の認証団体を見ると、東京の大企業ばかりが名を連ねているので、少し不安になっていた。
 もしかしたら、大企業の先進的な取り組みしか認めないのではないか。
 大企業と同じ基準で中小企業も審査しているのではないか。
 だが、それは全くの杞憂だった。

 レジリエンス認証は、BCPにまじめに取り組んでいることを第三者の目で認めてもらう制度だ。
 BCPに取り組んでいる企業は増えてきたが、それがまともな内容なのかどうかは、よくわからない。
 取り組んでいる当事者もこれでいいのか分からないし、ましてや、取引先など社外の人間には、その会社のBCPがまともなものかどうか確かめようがなかった。
 それが、この認証取得に挑戦することで、BCPに取り組む場合の目指すべきレベルがはっきりわかるし、客観的にもその会社のBCPがどのレベルにあるのかが分かるようになった。
 第1回のレジリエンス認証取得団体に認定されたある中小企業は、この認証マークをさっそく会社のPRに使っている。
 名刺、パンフレット、ウェブサイトなど、あらゆるところに掲示し、我が社のBCPをアピールしている。
 別途、印刷冊子を用意し、問い合わせがあれば、直ちにそれを渡せるように準備しているという。

 このレジリエンス認証は、特別に難しいことを求めていない。
 まじめにBCPに取り組んでいる企業であれば、十分認証取得できる。
 ただし、そこには明確な審査基準が設けられており、その基準に満たないものは厳しく排除されるようだ。
 審査基準は単純だ。
 防災とBCPの違いを理解していること。
 BCPの内容を経営トップが理解し、率先して推進していること。
 事前対策、教育訓練、見直し改善が行なわれているか。
 このあたりが重点的にチェックされる。
 まじめに取り組んでいる企業にとっては、何も難しいことはない。
 ありのままを見てもらえれば、簡単にクリアできる。

 しかし、取り組み方が間違っている企業はクリアは難しい。
 例えば、防災とBCPを混同して取り組んでいるケース。
 部下に丸投げで、社長がBCPを理解していないケース。
 とりあえずBCP文書は作ったが、これに基づいた活動実績がないケース。
 これらの場合は、書類審査の段階で厳しい指摘を受けることになる。

 この認証制度の目的や意義を理解しないままの申請して認証取得にいたるのは難しい。
 この認証には様々な項目に分けて細かく情報提供が要求されており、それぞれの要求項目が何を求めているのかを理解するのが難しいのだ。
 中小企業の場合は、専門家の支援があった方が認証取得はしやすいだろう。

 
 
 
 
posted by 平野喜久 at 17:16| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする