2014年04月16日

韓国旅客船沈没事故:船内に謎のアナウンス

 韓国の旅客船転覆沈没事故。
 修学旅行生ら477人のうち、2人の死亡、約290人が行方不明。
 大惨事に発展する懸念が出ている。
 韓国政府当局は当初、368人が救助されたと発表したが、まったく根拠のない数字だった。
 情報の混乱ぶりが分かる。

 旅客船は船首で「ドン」という音がした後、左舷が傾きはじめ約2時間後には完全に沈没した。
 客船が傾き始めたとき、船内アナウンスで「そのままとどまりなさい」と案内があったという。
 危険を感じた乗客は、アナウンスを無視し、ライフジャケットを着用し、外に出て助けを求め、救助された。
 行方不明の270名の多くは、船内に取り残されているのではと見られている。

 客船が何かに衝突した後、僅か2時間という速いスピードで沈没した。
 非難するとしたら、直ちに行動しないと間に合わない。
 ところが、「とどまれ」のアナウンスに従って、客室内にとどまった人が多かったようだ。
 なぜ、このようなアナウンスをしたのか。

 この事故で、思い出される事例が2つある。
 2003年に韓国で地下鉄火災。
 地下鉄車内で、自殺願望の男がガソリンをまいて放火。
 その車両は大火災を起こした。
 ところが、その隣の線路に対抗列車が入線。
 燃えている車両の隣に別の列車が横付けされる形となった。
 この時、対抗列車で車内アナウンスが流れた。
「そのまま、待機してください」
 なんと、乗客は慌てることもなく、アナウンスに従って、待ち続けた。
 対抗列車にも炎が燃え移り、結果としてこの列車で142名が焼死した。
 火元となった列車では死者6名だった。
 謎のアナウンスが、乗客の避難行動を遅らせたのは間違いない。 

 もう1つは、2001年の同時多発テロ。
 貿易センタービルの北棟に旅客機が突っ込んだ時、南棟では慌てて非難を始めた人たちがいた。
 ところが、その時に、館内アナウンスが流れた。
「火災が起きているのは北棟です。南棟に問題はありません。職場に戻ってください」
 せっかくビルの1階まで降りてきた人も、このアナウンスを聞いて、またエレベーターで戻っていったという。
 その直後に、2機目が南棟に激突した。
 
 異常事態が発生した時の謎のアナウンス。
 たぶん、現場の管理者が人びとのパニックを恐れて、落ち着かせるためにこのようなアナウンスをしてしまうのだろう。
 一般に誤解が多いが、本当のパニックというものは、めったに起きない。
 だから、パニックを恐れるのは、ありもしないリスクに怯えているだけなのだ。
 緊急事態が発生した時は、人びとを落ち着かせるのではなく、むしろ、危険を知らせて素早い行動を起こさせなくてはいけない。
 人は、緊急事態に遭遇した時、正常性バイアスが働いてしまう。
 正常性バイアスとは、本当は危険にさらされているのにもかかわらず、それを認識せず、平静を保とうとしてしまう心理傾向のこと。
 このような心理状態の時に、「おちついて」というアナウンスを聞くと、ますます正常性バイアスを強化させてしまう。
 これが、避難行動を遅らせてしまうのだ。
 
 今回の沈没事故でも、アナウンスを聞いて、避難行動を起こさず、客室内にとどまり続けた人が多かったに違いない。
 客船が傾くと床に立っていられない。
 船体が横倒しになれば、もう客室から出ることができなくなる。
 こうなる前に、行動を起こさなくてはいけないのだ。
 現在のところ、乗客数に対して、行方不明者があまりにも多すぎる。
 事故が起きたのが朝で、場所は半島沿岸近く、日中の明るい中で救助活動が行われているにもかかわらずだ。 
 
 今後の救助活動を見守りたい。
 
posted by 平野喜久 at 21:33| 愛知 | Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

八甲田山リーダーシップ研修:ウェブサイト開設

 新しいウェブサイトを開設した。
 「『八甲田山死の彷徨』リーダーシップ研修」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/hakkoudasankenshu.html
 リーダーシップ研修は、世の中にあふれ返っているが、『八甲田山死の彷徨』に徹底的にこだわった研修プログラムだ。

 私にとって、八甲田山遭難事件は、20年来の研究テーマだ。
 メルマガや電子書籍で、関連の情報発信もしてきた。
 このテーマは、ライフワークとして一生付き合っていくことになりそうだ。
 以前から、依頼があれば、研修や勉強会で八甲田山事件をテーマにお話しさせていただくことはあったが、きっちりしたプログラムとして公開していなかった。
 最近、企業からの研修依頼が増えたことから、人材教育の研修プログラムに落とし込んではっきりメニュー化することとした。

 『八甲田山……』にこだわるのは、これがビジネスの現場に応用できる様々な課題を含んでいること、事件の全体像が把握しやすいこと、すぐれた小説により当事者の状況が臨場感をもって実感できるということ、による。
 ただ、八甲田山をテーマにした人材教育は以前から存在した。
 だが、それは、結果のすべてを知った神の視点で登場人物の言動を評価するというのが通例だ。
 その行軍隊がほぼ全滅に陥ったという結果を知った上で、事例を検証するのは簡単だ。
 失敗したリーダーのやったことはすべて否定すれば、それが答えになる。
 これは、講師も説明しやすいし、受講者もわかりやすい。
 しかし、これは後知恵バイアスで話をしているだけだ。
 犯人とトリックを知ったうえで、ミステリー小説を読み始めるようなもの。
 このやり方は、自分だけは、はじめからすべてを見通せているような感じがして気分がいいが、事例研究としてはほとんど意味がない。
 後知恵の講釈からは、次に活かせる教訓を得られないからだ。
 それで、この研修プログラムでは、後知恵の講釈を排除することを第1とした。

 次に、受講者自らが考え答えを探っていく参加型の研修スタイルにしている。
 短時間のリーダーシップ研修では、どうしても講師があらかじめ用意した結論を一方的に伝えるだけということになりがちだ。
 だが、リーダーシップに唯一の正解があるはずがない。
 各人によって目指すべきリーダー像は違って当たり前で、この研修は、それを見つける機会と位置づけとした。

 そして、この研修の特徴は、『八甲田山……』の事例に絞って、徹底的にエッセンスをしゃぶりつくすことにある。
 一般的なケーススタディとして事例の検証をするだけではなく、ディベート競技の手法を取り入れたり、プレゼン・トレーニングの手法を取り入れたり、プロジェクトマネジメントの実践手法を取り入れたり、研修全体として総合的なリーダー育成の効果が期待できるようにしてある。
 だから、2泊3日の宿泊研修という長い時間を設定している。
 3日間も社員を研修に拘束するのは、会社としても社員としても負担が大きい。
 だが、本当に研修効果を上げようとしたら、単発のセミナーを何度も開くより、集中して深い研修を1つ受けたほうがはるかにいい。
 受講する社員にとっても、研修期間中は仕事のことを一切忘れて自己研鑽に専念できて、結果として喜ばれる。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/hakkoudasankenshu.html

 
 

 
 
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2014年03月25日

園児遺族側敗訴:震災津波訴訟3件目

 震災津波訴訟で3件目の判決が出た。
 宮城県山元町立東保育所の園児2人(当時2、6歳)の遺族3人が「町側が避難を指示しなかったため起きた人災だ」として、町に計約8800万円の賠償を求めた訴訟。
 仙台地裁は24日、請求を棄却した。

 訴訟で遺族側は、町災害対策本部が震災発生直後、園に対し避難の必要がない「現状待機」を指示したために発生した事故だと主張。
 津波の情報収集にも不備があったとして「自力避難が不可能な乳幼児を預かる保育士と町職員が、適切な行動を取らなかったために発生した人災」と批判していた。

 一方、町側は、保育所が海岸から1.5キロ離れた場所にあったことなどから「津波襲来を予見できたとは言えない」と反論。
 「現状待機」指示についても「津波を予見できなかった以上、避難を指示する義務はなかった」としていた。
 判決では、町側の主張が受け入れられた。

 震災津波訴訟では、これまで3件の判決が出た。
 日和幼稚園のケースは、遺族側勝訴
 七十七銀行のケースは、遺族側敗訴
 山元町立東保育所のケースは、遺族側敗訴

 日和幼稚園の場合は、責任者が必要な措置を取らず、危険な行動を繰り返したために犠牲を招いたと解釈された。
 七十七銀行の場合は、責任者は日ごろから訓練を行い、当日もその行動基準にのっとって指示を行っていたことが分かり、やむを得ぬ犠牲と解釈された。
 東保育所のケースは、これほど大きな津波を予見できる状態ではなかったと解釈され、免責となった。

 単純に津波の犠牲はだれの責任かは決められない。
 保護責任者の安全配慮義務がどこまで問えるのかが焦点と言える。


震災犠牲者の遺族が勤務先や学校などの責任を問う一連の訴訟で3件目の判決で、七十七銀行女川支店(同県女川町)訴訟に続き、遺族側が敗訴した。(毎日新聞)
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2014年03月01日

米国マックに損害賠償訴訟:ナプキン1枚で

 共同通信の報道による。
 アメリカで、客がマクドナルドを相手に損害賠償訴訟を起こしたとして話題になっている。
 その理由は、十分な枚数のナプキンをもらえなかったから。
 150万ドルの賠償を求めている。

 客がハンバーガーを注文した際、1枚しかナプキンがないと苦情を言うと「枚数は決められている」と断られた。
 そのために、その後、心痛で仕事が手に付かなかったという。
 これが、訴訟を起こした理由だ。

 以前、マクドナルドのコーヒーでやけどをした客が損害賠償訴訟を起こし、286万ドルの賠償命令の判決を勝ち取った事例がある。
 それ以来、大企業相手に巨額な賠償訴訟を起こす一般消費者が続出。
 そのような風潮をあおる弁護士もおり、言いがかりのような訴訟が相次いだ。
 今回のナプキン訴訟も、同じたぐいのものだ。

 日本人の感覚からすると、「ナプキンぐらい好きなだけ提供すればいいのに」と思う。
 そして、「ナプキンぐらいで訴訟なんて大げさすぎだ」と思う。
 しかし、精神的苦痛は個人の問題であり、一般常識では推し量ることはできない。
 本人が、「仕事が手につかないほどの苦痛を味わった」と言えば、それを否定するのは難しい。
 それを、裁判所がどう判断するのだろうか。
 アメリカの場合は、陪審員が判定を下すので、一般の陪審員の心情に訴えることができると、賠償命令となる。
 特に、大手企業相手の訴訟の場合は、懲罰的な判決が出ることがある。
 客が実際に受けた損害を補償する程度では、大企業にとって少しもダメージにはならない。
 それで、信じられないほどの巨額の賠償命令となる。
 
 ナプキン訴訟がどうなるか、興味深い。





 
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2014年02月09日

中国鳥インフル:隠蔽体質と不安拡大

 中国で今年に入り、鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染者が急増している。
 中には、家族間でヒトからヒトに感染した疑いのある例が相次いでいるため、警戒されている。
 家族間の感染が確認されているものの、ヒトからヒトへの持続的な感染までには至っていないために、WHOも新型インフルとの認定はしていない。
 だが、中国国内では、さまざまな憶測が流れており、中国当局は社会不安の鎮静化に神経をすり減らしているようだ。
 特に、上海で医師が鳥インフルに感染して死亡した事例があり、感染源が特定できなかったことから、「患者から感染した」「院内感染が起きている」との憶測が流れ、不安を拡大させた。

 中国当局は発表の文言にも神経を使うなど警戒を強めている。
 警戒を強めているのは、鳥インフルの感染拡大より、風評の拡大の方だ。
 去年は、感染者が発見されるたびに報道され、感染拡大が持続的に起きているような印象を与えてしまうため、途中から情報公開を中止してしまったことがある。
 
 中国で国民に風評が広がるのは、当局の隠蔽体質によるところが大きい。
 「何か重大なことを隠しているのではないか」という憶測が国民の不安を増幅させる。
 不安拡大を恐れる当局は、ますます情報を隠蔽するようになり、そのことが余計に社会不安を引き起こす。
 悪循環が起きているのだ。
 このような中国の体質は非常に厄介だ。
 騒ぎを起こさないことを最優先にするあまり、状況把握と情報公開が遅れ、近隣諸国やWHOが気づいた時には、既に手遅れという事態が心配だ。

 公開されている情報によると、今年の感染者は7日現在、中国本土と香港を合わせて175人(うち36人死亡)と、昨年を既に上回るペースで増えている。


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2014年01月27日

鳥インフル(H7N9)感染急増:中国

 中国の広東、江蘇、湖南3省の衛生当局は27日、鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の新たな感染者が計4人確認され、うち1人が死亡したと発表した。
 今年に入ってから同日までに確認された感染者は、香港の1人を含め計101人。
 うち11人が死亡。
 同型ウイルスは昨年3月に初めて確認された後、夏にいったん沈静化したが、今年に入って感染者が再び急増。
 上海市では、市内病院に勤める31歳の医師がこの鳥インフルに感染し、死亡した。
 この医師は家禽類に接触した形跡がなく、感染経路が不明。

 中国では、さまざまな型の鳥インフルが人への感染が報告されている。
 いま最も心配されているのが、H7N9型だ。
 感染者101人のうち11人が死亡ということだと、死亡率は10.9%。
 香港、台湾を含めると226人が感染、うち58人が死亡。
 死亡率は、25.6%となる。
 香港台湾を含めると途端に数字が増えるのは、この地域で感染拡大がひどいということではなく、単に情報の透明性の違いだろう。
 本当は、中国本土での感染者数や死亡者数の実態はもっと大きいのかもしれない。
 いずれにしても、通常の季節性インフルの死亡率が1%未満だから、H7N9型の死亡率はかなり高い。
 
 このH7N9型は、免疫を持っている人がいない。
 だから、これがヒト型に変異すると、感染力が強い新型インフルになる恐れがある。
 死亡率が高く感染力が強い新型インフルの登場となる。
 これが警戒されているのだ。

 中国の国家衛星計画出産委員会は、このウィルスが限定的ながら、ヒト‐ヒト感染を起こしている可能性を指摘している。
 ただ、持続的なヒト‐ヒト感染は確認できていないという。

 このウィルスの潜伏期間は3〜4日。
 発症後3〜7日で急速に重症化する。 
 
 今後も、中国の鳥インフルの情報からは目が離せない。



 
posted by 平野喜久 at 22:37| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月11日

房総沖、スロースリップか

共同の報道による。

 国土地理院は2日ごろから10日にかけ、房総半島沖で通常とは異なる地殻変動を観測したと発表した。
 海底が最大6センチ、南東方向に動いたとみられる。
 プレート(岩板)同士が揺れを起こさずゆっくりずれる「スロースリップ」が起きたとみている。

 通常この地域の海底は北西方向に動いている。
 力を蓄積させたプレート境界面がすべって、反対方向へ動いたらしい。

 房総沖では1996年からこれまで、スロースリップとみられる現象を4回観測している。
 発生間隔はこれまで50〜77カ月だったが、今回は前回(2011年10月)から27カ月後と最も短い。
 今後も数日間は同様の現象が続く見込みという。

 海溝型地震は、海側のプレートが陸側のプレートを引きずり込みながら沈み込むことでエネルギーがたまり、それが限界にきて跳ね上がった時に地震が起きる仕組み。
 巨大地震が発生するときは、突然に震源域全体が跳ね上がるのではなく、まず部分的にはがれ始めて、最後の固着域が耐えられずに外れた時、地震発生となると考えられている。
 このはがれはじめる部分が、スロースリップとなって観測されるのではないかと解釈されている。
 すると、スロースリップが起きているということは、この地域のプレートのひずみが極限に近づいている証拠で、大地震発生の前兆かもしれない。
 それで、この情報が注目されているのだ。

 東日本大震災でも、前兆としてスロースリップが起きていたことが分かっている。
 本震が起きる前の約1カ月間に、岩手・宮城沖のプレート境界の震源域がゆっくり滑る現象が2回起きていたのだ。
 1回目は1カ月から半月前、2回目は2日前。
 これが、事前にしっかり観測されて、大地震発生の前兆と認識されていれば、予知成功となっていた。
 だが、このスロースリップは事前には観測されず、事後にデータ分析をして判明した。

 今回の房総半島沖は、以前からエネルギーの蓄積している地域として注視されているところ。
 そこでスロースリップに似た現象が観測されたということで、緊張が走っている。
 今後の推移に注目したい。



posted by 平野喜久 at 14:50| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月09日

北米で鳥インフル死者:強毒性H5N1型

 ロイターの報道による。
 カナダ西部アルバータ州で、鳥インフルエンザで死者が出ていた。
 その鳥インフルは、なんとH5N1型。
 以前から恐れられている強毒性だ。
 昨年12月に中国へ渡航した人が、27日、カナダに帰国途中の飛行機内で発症。
 今月の3日に死亡した。

 中国国内で訪問したのは北京だけ。
 養鶏場や鶏肉が売られているような市場などは訪れておらず、感染経路は不明という。
 家族や同行者に感染者は出ていない。

 カナダと言えば、中国でSARSが騒がれたとき、アジア以外で初めて発症者が出たのも、カナダだった。
 何か、カナダ特有の事情があるのだろうか。

 鳥インフルエンザで一番恐れられているのが、このH5N1型。
 致死率が60%という強毒性だからだ。
 今のところ、ヒトからヒトに感染する力は弱いので、他への感染は確認されておらず、緊迫した状況にはない。
 だが、死亡した感染者が、北京で鳥に触れたことがないという情報もあり、感染経路がよく割らないところが不気味だ。
 中国の情報の不透明さが、真相究明を阻む。
 いま中国では、いろんなタイプの鳥インフルがヒトに感染している。
 いずれも情報が不十分のまま、うやむやになって忘れられていく。

 だが、H5N1型だけは、見過ごしにできない。
 ウィルスは常に変異を続けている。
 H5N1型が新型インフルになった時、最も深刻な事態を引き起こす。
 それで、このニュースが注目されるのだ。


posted by 平野喜久 at 14:23| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月06日

冷凍食品から農薬検出:マルハ子会社アクリフーズ

 冷凍食品から農薬検出。
 以前、中国産の冷凍餃子から農薬が検出されたことがあったが、今回は、国内産の冷凍食品から検出されたことで衝撃が大きい。

 マルハニチロホールディングスは29日、子会社のアクリフーズの群馬工場(群馬県大泉町)が生産した冷凍食品の一部から、農薬マラチオンを検出したと発表した。
 同工場の生産・出荷を停止し、すでに出回っている全ての商品を自主回収。

 原因はいまだに不明。
 原材料や流通段階での混入は考えにくいという。
 あとは、製造工程での混入の可能性。
 内部の人間による意図的な混入ではないかと疑われている。

 12月29日のアクリフーズの会見で問題が公表された。
 ところが、11月中旬から消費者からクレームが出ていたという情報もあり、対応の遅れが指摘される。

 マルハ側は当初、このコロッケを「体重20キログラムの子供が60個食べないと毒性は発症しない」と説明したが、厚生労働省によると、「子供で8分の1個、大人でも3分の1個」を食べると、吐き気や腹痛などを起こす恐れがあるとして、注意を喚起している。
 厚労省の指摘を受けて、マルハの久代敏男社長は31日午前1時すぎから記者会見し、毒性に関する発表内容を訂正するとともに、謝罪した。
 マルハ側の混乱ぶりがうかがわれる。

 食品会社では、不測の事態に対応する緊急マニュアルが整備されており、行動訓練も日ごろから行われているはず。
 ヤマハニチロも当然、準備や訓練は行われていただろう。
 それでも、いざ本番となるとうまくいかない。
 緊急時対応の難しさが分かる。

 中国毒餃子事件の時は、中国産の冷凍食品の信頼が失墜した。
 今回の事件は、冷凍食品全般の信頼を失いかねない。

 中国毒餃子事件については、中国の閉鎖性と日本側の腰の引けた対応から、うやむやのまま話題が遠のいてしまった。
 今回の事件については、早期の明快な原因究明が求められる。
 
 
posted by 平野喜久 at 09:41| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月21日

全国地震動予測地図:私たちの直面する震災リスク

 全国地震動予測地図の最新版が公表された。
 30年以内に大きな揺れに見舞われる確率を地図上に色分けで表示したものだ。
 政府の地震調査委員会が20日に公表した。
 この数値は、地震保険の料率算定に使われる。

 地域によって確率が高まったり低くなったりしている。
 高くなったのは、中国四国と九州。
 低くなったのは、東海地方。
 静岡県は90%から65%に下がった。
 これは、何かの事情で地震が起きにくくなったという意味ではない。
 単に、入力データを入れ替えたら算出数値が変わったというだけ。
 東海地方が全体に低くなったのは、東海地震が単独で起きるという想定を外したからだ。
 去年までは東海地震の30年間の発生確率は88%という非常に高い確率で予想されていた。
 だが、過去のデータから東海地震は単独で発生したことがないことから、単独の予想数値を使わず、南海トラフ全体の予想数値を使うようにした。
 東海地震88%から南海トラフ巨大地震60〜70%へ。
 それで、従来、異常に高かった東海地方の確率が軒並み下がったというわけ。

 逆に、四国中国、九州については、従来、南海地震の想定確率60%で計算されていた。
 それが、南海トラフ巨大地震60〜70%に入れ替わり、そのほかにも内陸型の地震の発生確率も加味したものになったので、軒並み確率が上昇したという次第。
 入力データが変われば、算出数値が変わるのは当たり前。
 確率が前回よりも増えたとか減ったとかいうこと自体にはほとんど意味がない。

 ただ、関東から九州にかけての太平洋側に確率の高い地域が帯状に広がっているという点は、従来から変わっていない。
 この地域は、近年、大きな地震が発生しておらず、かなりのエネルギーが溜まっている。
 なおかつ、人口密度の高い主要都市が集中し、日本の主要産業が集積している地域でもある。
 日本が、大きな震災リスクにさらされ続けているということを、改めて認識させられる。

 国の呼びかけの中に、「BCP」という言葉が頻繁に登場するようになった。
 震災リスクに対処するには、自助、共助、公助が重要と言われる。
 だが、国や自治体が対応する公助には限界があることは明らか。
 そこで、自分のことは自分で守る自助と、地域や同業者同士で互いに助け合う共助の必要性を呼びかけるようになってきているのだ。
 企業にとって、自助、共助の中心は、BCPとなる。
 BCPについては、大企業は既に準備完了。
 中堅企業が仕上げの段階。
 そして、中小企業がようやく走り出したという感じだ。

 阪神淡路大震災以降、日本は地震の活動期に入ったといわれる。
 これからは、企業経営にあたって、BCPはあって当たり前の時代が来たと言える。

 
 

 

 三十年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「全国地震動予測地図」の最新版を、政府の地震調査委員会(委員長・本蔵義守東京工業大名誉教授)が二十日、公表した。南海トラフ地震について、新しい長期予測を取り入れたため、静岡県など東海地方で確率が減った。数値は地震保険の料率算定などに影響する。

 これまで、駿河湾周辺を震源とする東海地震の発生確率は「三十年以内に88%」と見積もられていた。今年五月、東海・東南海・南海の区分けをやめ、南海トラフ全域での地震発生確率を「三十年間で60〜70%」とする改定が行われた。

 そのため、昨年まで全国の都道府県庁所在地で最も高かった静岡は90%から65%に低下した。津は87%から70%になり、名古屋は46%から42%になった。

 関東地方では東京26%、横浜70%など、前年からほぼ横ばいだった。千葉が全国の都道府県庁所在地中、最も高い77%だった。

 ただ、同じ市内でも数キロ離れるだけで確率が70%から20%に低下する例があるなど、確率は地盤の影響を強く受ける。

 予測地図は、二百五十メートル四方に区切って確率を示している。防災科学技術研究所のウェブサイト「地震ハザードステーション」で公開しており、各地の確率を調べることができる。

 地震調査委は、未知の活断層の影響を含めた予測手法の改善を進めている。また関東地方では、相模湾で起こる海溝型の地震規模を、現在より大きく想定する方向だ。来年度以降、関東では確率が高まる可能性がある。
posted by 平野喜久 at 17:47| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月20日

死者2万3000人は甘すぎる:首都直下地震

 政府の中央防災会議の作業部会が、首都直下地震の被害想定を公表した。
 首都圏でM7クラスの直下型地震が起きた場合、最悪で死者23,000人、経済被害額は95兆円に達する。
 避難者は720万人、帰宅困難者は800万人を予想している。
 
 この手の被害予想は、ある計算式に条件設定を入力してはじき出したもの。
 予想される事態のうち、最悪の条件が重なった時の状況を説明している。
 だから、条件の設定の仕方で、または、計算式の作り方で、結果は全く違うものになってしまう。
 次に起きる地震を正確に予想したものでもないし、こうなる可能性が高いということを予言したものでもない。
 あくまでも、理論上はこのような事態もありうるということを示しているに過ぎない。

 最悪の事態を想定した数字ということになっている。
 だが、全体の印象としては、首都直撃の大地震にしては、被害規模が小さい感じがする。
 東京の大地震で死者23,000人は、あまりにも優しすぎる。
 大阪府が南海トラフ巨大地震で想定しているのが、死者13万人だ。
 それに比べると2万3千人はけた違いに少ない。
 人口密度が高い東京で起きる直下型地震なのにである。

 首都の中枢機能が保全されることが前提になっているのも、想定が甘い。
 首都機能の分散や首都移転の話に発展しない程度の想定に抑えているのではないか、との疑問はぬぐえない。
 
 国の被害想定の公表は、国民の健全な危機感を喚起するために行なうものだ。
 だが、今回の被害想定は、無用な安心感を与えてしまいかねない。


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2013年10月29日

お客様に向き合わない組織体質:阪急阪神ホテルズ社長辞任へ

 阪急阪神ホテルズ系のレストランなどでメニュー表示と異なる食材が使われた問題。
 出崎弘社長は28日夜、大阪市内で記者会見。
 11月1日付で社長を辞任すると発表。
 合わせて、親会社の阪急阪神ホールディングスの取締役も辞任。
 後任は29日の取締役会を経て決定。

 出崎社長は前回24日の会見で、偽装の意図はなく「誤表示」と強調していた。
 単なる表示ミスということで事態を矮小化してやり過ごそうとしていた。
 ところが、世論は納得していなかった。
 批判が収まらないことを見て、社長辞任での幕引きとなった。
 表現も「偽装と思われても仕方がない」というところまで、後退した。
 それでも、「利益を得ようとしてお客様を欺こうとしたのではない。チェックの甘さ、知識の不足、連携不足が原因」というところは、こだわりを見せた。
 
 故意に表示を偽装していたとなると、詐欺罪の適用となる。
 最悪の事態だけは避けたいとの思惑が見える。

 今回の偽装表示に対する会社側の対応は、2回も社長が謝罪会見をせざるを得なかったことが失敗。
 社長の謝罪会見は、1回で決めなくてはならない。
 先週の「誤表示」にこだわった会見が、ごまかしと言い逃れにしか見えず、むしろ批判を増幅させる結果となった。
 記者に「偽装か誤表示か」と問われたとき、すかさずマイクを持ち、「誤表示です!」と強い口調で言い切った時の表情は、特に印象が悪かった。
 社長の姿勢がお客様に向いておらず、自らの保身に汲々とする姿にしか見えなかったからだ。

 メニューの表現に偽装があったことが問題なのに、それを「誤表示」と言い換えることでやり過ごそうとする姿勢が、また、表現をごまかして世間を欺こうとしているという印象を与えた。
 問題の本質が分かっていないことが丸わかりとなって、批判が増幅したのだ。
 
 「お客様を欺いて利益を得ようとしていたわけではない」としきりに強調していたが、結果として、お客様を欺いて利益を得ていたのは間違いない。
 「たまたま偶然、間違えて利益が出てしまっていた」などと言う寝ぼけた話は通用しない。
 そこに、チェックの甘さや認識不足があったのだとしても、そのこと自体がお客様を欺いていることと同義だ。
 たまたま偶然、チェックが甘くなったり、認識不足が起きたりするわけがないからだ。

 結局、従業員や幹部の視線がお客様に向いていなかったのだろう。
 だから、チェックが甘くなったり、認識不足が起きるのだ。
 視線がお客様に向いていない組織体質は、1回目の社長の記者会見で、遺憾なく発揮された。
 2回目の会見を見ても、社長が組織体質の問題に気づいているかどうかは怪しい。
 
 失った客の信頼を取り戻すのは、相当な努力がいる。



 
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2013年10月25日

クール宅急便、常温仕分け:ヤマト運輸

 ヤマト運輸のクール宅急便。
 その仕分けが常温で行われていたことが発覚。
 朝日新聞社にある動画が送られてきて発覚したらしい。
 その動画には、ヤマト運輸の営業所内で、保冷用コンテナが開けっ放しになった状態で、作業員が仕分けをする様子が収められていた。
 「冷蔵」と書かれたシールが貼られた荷物がコンテナ外に放置されたままになっている場面も収録されていたらしい。

 クール便については、以前から疑問に思うところがあった。
 温度管理をしながら、どのように配送仕分けをしているのだろう、と。
 普通の荷物なら、ベルトコンベアーに乗せられて、自動仕分けで簡単に行き先別に選別される。
 しかし、クール便はどうするのだろうと思っていた。
 普通の仕分け場所とは別棟を建てて、クール便専門の仕分け場所全体を保冷するのか。
 そんなことをしたら、作業員が寒すぎるし、保冷コストもかかりすぎる。
 ヤマト運輸のことだから、何か特別なノウハウを使っているのだろうと勝手に想像していたが、実態は、こういうことだった。

 この告発をした人は、一方である実験をしたという。
 温度変化を測定記録できる装置を箱に入れ、クール便として発送した。
 その記録によると、午前6時までは11度だったが、7時40分ごろから上昇、50分には20度を突破。
 8時10分前後には27度を記録。
 8時50分前後に再び11度台に戻った。
 この実験は8月に行なわれており、短時間の放置でも温度が急上昇するのは、この時期の猛暑のせいだろう。
 クール便は、食品を扱う場合が多く、食品安全の面でも問題は大きい。

 ホテルレストランのメニュー偽装、コメの偽装、そして、今度は、クール便の偽装だ。
 客の見えないところでは何をやっているか分からない、という不信感ばかりが募る。
  
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最大規模のコメ偽装事件:三瀧商事

 三瀧商事のコメ偽装事件。
 四日市市の米穀販売会社「三瀧商事」が、外国産米をまぜたコメを国産米と偽装して販売していた問題。
 三重県警は24日、日本農林規格(JAS)法違反と米トレーサビリティー法違反の疑いで、同社や関連会社などを家宅捜索。
 偽装米問題は刑事事件に発展した。
 中国産や米国産のコメをまぜていたにもかかわらず、国産米と偽装表示してコメを販売した疑い。

 米トレーサビリティー法は、コメがどのような経路をたどって消費者に届くのかを確認できるようにするための法律。
 業者間でコメやコメ加工品の販売や移動をした場合、品名や産地などの情報を記録し3年間保存しなければならない。
 違反すると50万円以下の罰金。
 農水省と三重県は三瀧商事などにJAS法などに基づく改善指示や勧告を行った。
 三瀧商事とミタキライスは今月10日付で解散と清算を決めた。

 またまた、コメの偽装事件。
 米トレーサビリティー法ができたが、罰金50万円以下では、抑止効果は全くない。
 むしろ、やったもの勝ちを奨励するような法律になっていた。
 実際、関係した会社は解散してしまい、一目散に逃げた。

 コメの偽装は見極めるのが非常に難しい。
 一般消費者にはまず無理。
 何か変だなと思ったとしても、それを確認する手段もない。
 だから、コメ流通の信頼性を担保できる仕組みがいる。
 貿易自由化で外国産のコメが安価で入ってきても、国内産のブランドが揺るぐことはないから大丈夫と言う。
 ところが、現状では、貿易自由化の前に、国産ブランドの信頼は失墜する。
 
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誤表示か偽装表示か:阪急阪神ホテルズ

 阪急阪神ホテルズの社長が謝罪会見。
 「信頼を裏切ったお客様に心よりおわび申し上げます」と謝罪する一方で、原因は従業員の認識・知識不足にあるとして「偽装でなく誤表示」と強調した。
 
 意図的にやったことではなく、うっかりミスだった、ということにしようとしている。
 事件を矮小化して、やり過ごそうとしている。
 これは、かつての船場吉兆の対応を想起させる。
 他の客の食べ残しを別の客に出していたことが発覚して大騒ぎになったことがある。
 その時の女将の言い訳。
 「食べ残しではなく、手つかずの料理と言ってください」
 この言い訳が騒ぎを更に大きくした。

 メニューの誤表示というのは、まさにうっかりミスのこと。
 たとえば、鹿児島産なのに宮崎産と表示。
 アイスクリームなのにシャーベットと表示。
 単なる書き間違い。
 メニュー作成の段階で間違えたか、途中で料理内容が変わったのに、メニューに反映されていなかったか、ということになる。

 ところが、今回の誤表示は違う。
 メニュー表示は、ホテルの品格と価格の高さに見合った内容になるよう、最大限に食材の特別さを強調して書かれたもの。
 客にアピールすることを狙ってメニューを作っているのだ。
 メニュー作成の段階で既に意図がある。
 うっかりミスで間違ったメニュー表示をしてしまったわけでは全くない。
 なのに、実際は普通の食材と普通の調理法で料理が提供されていた。
 それで、問題になっているのだ。
 メニューで特別の表示をし最大限にアピールしておきながら、実際にはそれよりも劣る料理を提供していた。

 高級宝石店で、ダイヤモンドと表示して、ダイヤモンドの値段でガラス玉を売るようなもの。
 これを「うっかりミスの誤表示でした」と言うか。
 本来なら「ガラス玉」と表示して売るべきだったとでも言うのか。
 確かに、「ガラス玉」と表示して売っていれば誤表示ではない。
 しかし、宝石店で「ガラス玉」と表示してガラス玉を売ることはありえないのだから、表示が間違っているのではなく、売るものが間違っていたということになる。
 劣悪なものを高級なものに見せかけて高額で売る。
 これを「表示偽装」と言う。

 利用客には、レシートがなくても返金に応じるという。
 既に、利用客から問い合わせや返金要求が殺到しているらしい。
 予約名簿や会員履歴などから、ある程度確認可能とのことだが、ここで相当な混乱が予想される。

 リッツカールトンでも、メニューの偽装表示が発覚した。
 この事件、他のホテルレストランにも波及する。
 
 
posted by 平野喜久 at 09:59| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月23日

メニュー偽装事件:阪急阪神ホテルズ

 阪急阪神ホテルズは、運営する8ホテルなどにある計23店舗で、メニュー表示と異なる食材を使った料理を提供していたと発表した。
 販売期間は2006年3月から今年9月。
 利用客は延べ7万8775人に上る。
 景品表示法などに抵触する可能性があるとして、同社は消費者庁に報告。

 提供したのは47品目。
 同社は申し出た客から状況を聞いた上で返金する。
 返金額は約1億1千万円と見込んでいる。

鮮魚⇒冷凍魚
九条ネギ⇒一般の青ネギ
芝エビ⇒安価なバナメイエビ
手捏ね煮込みハンバーグ⇒既製品
自家菜園サラダ⇒一般流通野菜
などなど

 理由について、メニューの作成担当者と調理担当者、食材を発注する担当者、さらに仕入れ業者などの間で情報伝達と連携に不備があり、誤った表示が継続されたと説明している。
 記者会見で奥村隆明・総務人事部長は「アピールポイントを強調しようとしてメニューを作り、誤った表示をした。意図的、明確な意思を持っていないが、一線を越えてしまった。本社としてチェックもできていなかった」と謝罪。

 この表示偽装、ホテルレストランで提供しているあらゆる食材に及ぶ。
 メニュー企画の段階で、差別化を狙うために、アピールポイントを付けられるところにはすべてつけまくったのだろう。
 企画としては高級レストランらしいメニューができあがったが、実際の食材の調達や調理の現場がついていけなかった。
 希少価値の高い食材は、安定的な仕入れができない。
 応急の間に合わせに、メニューとは違う一般食材でしのぐことになる。
 特別食材でも、一般食材でもそんなに変わらないことが分かってきて、いつの間にか一般食材が定着してしまう。
 これは、現場の都合。

 一方、経営側の都合では、コストの話がある。
 高級食材に比べて、一般食材は半値以下。
 原価率を抑えることが至上命題になった時、一番簡単なのは、食材を安いものに切り替えること。
 その効果は絶大。
 一般食材への誘惑は大きい。
 
 不思議なのは、今回の不祥事がどうして発覚したのかということ。
 今年5月に他社のホテルで同様の誤表示があり、記録が残る06年3月以降を自主的に調査して判明した、ということになっている。
 一般に、不祥事の発覚は内部告発によることが多い。
 社員が社内で内部告発を行なって、現場の不正が経営トップの知るところとなり、調査が行われるというケース。
 社内での内部告発が上層部につぶされ、業を煮やした社員が外部のマスコミや公的機関に通告して発覚するケース。
 不当解雇や左遷人事に不満を持つ社員が、復讐のためにいきなり外部に密告するケース。

 今回の発覚は、どのタイプかは不明。
 自主的に社内調査し、偽装表示が長期に広範囲に及んでいることに気づき、公表し謝罪したように見える。
 
 この動きは、他のホテルにも影響するかもしれない。
posted by 平野喜久 at 08:50| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月19日

長周期地震動の速報開始へ:気象庁

 朝日新聞の報道による。
 気象庁は18日、高層ビルを大きく揺らす「長周期地震動」の速報を早ければ2年後をめどに導入する方針を固めた。
 地震の揺れが届く前に出す現行の「緊急地震速報」のように、瞬時の備えに役立てる狙いがある。

 長周期地震動は、地中では弱くなりにくいため遠隔地まで届き、ゆっくりと長く揺れるのが特徴。
 東日本大震災でも発生し、東京の新宿センタービル(54階建て)では約13分にわたる揺れが観測された。

 現在、気象庁は起きた揺れの大きさを4段階で評価し、発生10分後をめどに「長周期地震動階級」として気象庁のサイトで伝えている。
 速報でも予測される大きさをこの4段階で伝える考え。
 速報の技術的課題などを2年間かけて有識者会議で詰めるという。

 長周期地震動は、高層ビルだけを大きく揺らし続けるという特有の地震動だ。
 近年になって注目されるようになった都会特有の現象と言える。
 減衰しにくい揺れであるため、震源域から遠方でも影響が及ぶ。
 ビルの高さや剛性によって固有周期が違うので、同じ地震波でもビルごとに揺れ方が異なる。
 これをどのように評価するのかが難しい。
 
 
posted by 平野喜久 at 10:21| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

9月なのにインフルで学級閉鎖:静岡

 静岡県の小学校で、インフルエンザの集団感染で早くも学級閉鎖が起きているらしい。
 静岡県東伊豆町の町立熱川小学校。
 2年生の1クラス27人中、8人が38度以上の高熱で欠席。
 7人がインフルエンザB型と診断。
 台風18号の直後から静岡県内は一気に乾燥し、感染が広がったとみられている。

 9月にインフルによる学級閉鎖は珍しい。
 インフルの流行は、必ずしも冬とは限らないということが分かる。

posted by 平野喜久 at 09:31| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月02日

NHKスペシャル「メガクエーク巨大地震U」:高度な情報番組

 NHKスペシャル「メガクエーク巨大地震」
 防災の日に向けて2夜連続で地震関連の番組が報道された。
 1夜目は、関東大震災を振り返りながら、次の首都直下地震を警戒せよというもの。
 2夜目は、最新の研究成果を取り上げながら、南海トラフ地震を警戒せよというもの。
 グラフィックを多用して、分かりにくい概念を視覚的にうまく表現していた。
 専門的な話が多く、ややマニアックな興味に入りすぎている感じはある。
 一般の国民にここまでの地震メカニズムの知識が必要か、というとやや疑問。
 だが、地震研究の最新情報を分かりやすく伝えようという意気込みが感じられ、情報番組としての完成度は高い。

 今回の「メガクエーク」で印象に残った点。
 関東大震災の18年前に大地震を警告する地震学者がいたということ。
 今村助教授とその上司の大森教授。
 今村助教授が一般雑誌に東京での大地震の可能性を指摘したところ、明日にでも地震が来るかのような大騒ぎになった。
 慌てて、大森教授が根拠のない浮説として否定して騒ぎを鎮静化させた。
 大森も今村の研究を高く評価していながら、立場上、否定せざるを得なかったのだろう。
 18年後に実際に大地震が来る。
 今村の予想は、正解だったのかどうか分からない。
 日本にいる以上、「大地震が来る」と言っていれば、いずれは当たる。
 この程度の予想だったのかもしれない。
 だが、東京での大地震の可能性を指摘したのは今村だけだった。

 関東大震災直後の記録フィルムが残っている。
 不思議なのは、火災が起きているのに、それを遠巻きに見物している人々がいること。
 平常時に起きた火事見物のつもりなのかもしれない。
 だが、震災時は、火災が各地で同時多発的に発生しているので、風上から火災を見物しているつもりが、別の火災の風下にいるということになる。
 気が付いたときは、周りが火の海で、逃げ場を失っている。
 こうして、犠牲者が増えたようだ。

 また、避難をするときに、家財道具一切を大八車やリアカーに満載して運んでいる人たちが映っていた。
 ドラマや映画などで、このような光景を見たことがあったが、これは現実にその通りだったのだ。
 今では、タンスや布団などを持ち出す人はいない。
 ところが、当時はそのような日常で使うものが大事な財産と思われていたのだろう。
 ここでも、平常時の火災避難の感覚で行動してしまっているのが分かる。
 この大きな荷物が道路の混雑を助長し、避難を難しくしたらしい。
 また、広場に避難した後でも、飛んできた火の粉が、この家財道具に燃え移り、避難場所での犠牲者を増やしたという。
 当時の大八車は、現代では自動車にあたるだろう。
 みんなが自動車で避難しようとすると、そのことが渋滞を引き起こし、道をふさぐ。 

 関東大震災の犠牲者は10万5千人。
 そのほとんどが火災による焼死と見られている。
 過密都市で同時多発的な火災が発生したとき、どうしたらいいのかを考えるのに、貴重な教訓だ。 
  
 その他、番組内で得た新しい情報。
 房総半島沖でひずみが溜まっていること。
 南海トラフの想定震源域が、伊豆半島の更に東側まで広がる可能性があること。

 
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2013年08月30日

公衆無線LAN災害時無料開放:通信各社共通

 産経新聞の報道による。
 NTTドコモなど通信各社が、大規模災害時に公衆無線LAN「Wi-Fi」を無料開放する方針を固めた。
 通信各社の垣根を取り払い、契約する通信会社以外のネットワークを通して無料でインターネット利用できるようになる。
 
 通信各社は、災害時に共通のIDを発行。
 利用者は携帯電話やパソコンの画面に自動表示される共通IDを選択することで、どのポイントからでも接続できるようになる。
 これが実現すれば、契約している事業者のポイントがダウンしても、他社のポイントを経由してネットにつなげることができるようになる。
 地震直後の、安否確認や災害情報の収集に役立つことは間違いない。

 いままでは、災害に強い通信会社はどこか、ということを気にしていた。
 「この通信会社は災害に強い」という噂を聞くこともある。
 実際に、地震が発生したときに、同じ環境で携帯電話を使用しても、通じた携帯電話と通じなかった携帯電話があった。
 だが、どこでも同じ通信会社が通じないということではなく、別の地域では違う現象が起きる。
 その地域の被害状況で、通信状況が違うのだ。
 現実には、この通信会社なら安心ということはない。
 だから、通信会社も、「災害時でも安心」ということまで保証することはできない。
 過去にたまたま使えた通信会社であっても、次の災害時に無事に使えるという保証はない。

 通信会社としての社会的使命を果たすために、今回の試みは高く評価できる。

posted by 平野喜久 at 09:18| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする