2012年08月31日

被害想定のデータは、こう見よう:南海トラフ巨大地震

 内閣府の有識者会議が、南海トラフ地震の被害想定を発表。
 M9クラスの超巨大地震になることを想定して、被害の最大値を算出した。
 死者数は最大で32万3000人。
 そのうち津波による死者は全体の7割の23万人に達する。

 極端な被害想定はインパクトが大きい。
 だが、このデータは扱いが難しい。
 次に南海トラフで起きる地震がこれだけの被害をもたらすとは言っていないのだ。
 これだけの被害をもたらす可能性が高いとも言っていない。
 むしろ、可能性は低いと言っている。
 ここがややこしいのだ。

 従来、この種の被害想定は、不安感をあおることを恐れて、控えめな数字になるのが常だった。
 ところが、東日本大震災の結果を受けて、簡単に想定外を作ってはいけないとの反省から、最悪の被害を想定するように舵が切られた。
 今回の被害想定も、科学的に考えられる最悪の数値が公表されている。

 公表されたデータを見ると、最大震度7という地域がそこかしこに存在し、10mを超えるような津波被害があちこちで発生しているようにみえる。
 だが、これは、次に発生するこの地域の地震がこのような被害をもたらすという意味ではない。
 次に発生する南海トラフ地震にはいろんなケースが考えられる。
 東寄りの地域を中心に揺れる場合と西寄りの地域を中心に揺れる場合とでは被害想定は変わる。
 発生する時間帯、季節によっても被害は変わってくる。
 例えば、東寄りを中心に発生した場合は、静岡、愛知、三重の被害が大きくなり、四国の被害は比較的小さい。
 逆に、西寄りを中心とした場合は、高知、宮崎の被害が大きくなり、東海地方の被害は小さい。
 日中に発生するか、夜中に発生するかでも、犠牲者の数に格段の違いが出る。
 次の地震がどのようなタイプになるか分からないので、あらゆるケースを想定して被害数値を算出し、その中で最悪の数値だけを取り出して並べたのが今回のデータなのだ。
 予想震度を色分けした地図や、津波被害を色分けした地図が公表されているが、これは、さまざまなタイプの地震のうち、最大数値だけをぬきだして1つの地図上に表現したものにすぎない。
 一度の地震でにこれだけの被害をもたらすということは、まれなケースが何重にも重なった場合で、まずあり得ない。

 国が公表する想定は、各地域で次の地震被害には最大どれだけの可能性があるかを認識するためのデータとして受け止めるべき。
 実際は、このデータよりも控えめの被害にとどまる可能性のほうが遙かに高い。
 極端なデータを見て、いたずらに不安感をいだいたり、諦めたりするのではなく、健全な危機感をもって、備えを進めるべきだろう。




 
 
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2012年07月31日

地震シミュレーション訓練:愛知県商工会議所青年部連合会

 7月27日、愛知県商工会議所青年部連合会の会長会議で地震シミュレーション訓練を行なった。
地震シミュレーション訓練.JPG

 この地震シミュレーション訓練は、地震発生からの1時間をリアルタイムで体験するもの。
 参加者は4〜6人でグループを作り、架空企業の経営幹部になって、地震発生後の意思決定を行う。
 緊急地震速報が発信されたところから訓練開始。
 訓練が始まるといろんなタイミングでいろんな情報が入ってくる。
 緊急地震速報とラジオの災害情報は音声で流れる。
 現場の状況、周辺の状況はメモ書きの情報カードとして差し入れられる。
 参加者は、経営幹部として、刻々と変化する状況を的確に把握して、何をすべきかを判断し、指示や行動を決断する。

 シナリオには、さまざまな課題が仕込んである。
 表面的にはなんでもない情報でも、その裏に重要な課題が隠れている。
 それを見つけて適切な対応ができるかどうかがポイントとなる。
 この課題が見つけられないと、次々に入ってくる情報に振り回されるだけで終わってしまう。

 この仕込まれた課題については、訓練終了後に種明かしをする。
 ここがこの訓練のクライマックスだ。
 「え? この情報にはそういう意味があったの?」
 「あ、やられた! そのことは全く気付かなかった」
 「なるほど、そういう風に状況を読むんだぁ」
 目から鱗が落ちるのを実感すること請け合い。
 この課題は、答えだけを教えてもらうと、なんでもない当り前のことばかり。
 しかし、訓練を経験してから種明かしをしてもらうと、衝撃的な驚きがある。
 これは、手品の種明かしにそっくり。
 推理小説の最後の謎解きにも似ている。
 今回も、参加者のみなさんにインパクトを与えられたようだ。

 この地震シミュレーション訓練は、完全に弊社のオリジナル。
 どこかが作ったプログラムをライセンス使用しているわけではない。
 他社が制作したプログラムを真似ているわけでもないし、参考にさえしていない。
 どこからも突っ込みようのない完全オリジナルだ。
 特に、ナレーターによるラジオ音声が流れる演出は、他では真似ができないだろう。

 地震シミュレーション訓練は、4年ぐらい前に初めて実施した。
 その後、バージョンアップを繰り返し、今日の形に仕上がった。
 かなり完成度の高いプログラムになってきたと思う。 

 参加者は約70名。
 今まで行なったシミュレーション訓練のうちでは、最も参加者が多い。
 アシスタント2名に手伝ってもらいながら問題なく行なうことができた。
 この訓練は人数が多くても十分対応できることが分かった。
 
 「うちの団体でもやってもらえないか」
 「わが社でもこの訓練を実施したい」
 訓練後、多くのお声掛けをいただいた。
 この訓練プログラムが多くの方のお役にたてることを嬉しく思う。




 
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2012年07月08日

死者40万人の恐れ:南海トラフ地震

 新聞報道によると、関西大学の河田教授の試算で、南海トラフ地震での死者が40万人になる可能性が指摘された。
 5月末の報道では、内閣府のワーキンググループの試算で30万人との想定が出ていたが、それを上回る数値だ。
 計算の根拠は、どちらも同じ。
 東日本大震災の死者数を1.9万人とすると、南海トラフ地震の場合は、人口比から12万人となる。
 さらに、より条件の悪い深夜に起きたとしたら、犠牲者は3倍〜4倍に膨れ上がる。
 それで、「死者40万人の恐れ」という試算結果が出た。

 深夜に起きたとき、犠牲者がどれだけ増えるかの見積もりの仕方で30万人になったり40万人になったりする。
 ここで数字の正確さを議論しても意味がない。
 要は、南海トラフ地震が発生した場合、その被害は、東日本大震災の比ではないということだ。
 東日本大震災は戦後最大級の自然災害だったが、それでも、条件がよかった。
 平日の午後という多くの人が活動中の地震だったため、ただちに行動を起こすことができた。
 これが深夜だったら、まったく違う状況になっていた。
 周りの状況把握が遅れ、行動が遅れる。
 特に、津波の襲来を目視できないのは、深刻だ。
 今回の震災では、遠くに見える巻き上がる水煙と土煙を見て、津波の方向と距離を把握することができた。
 これが深夜だと、停電で明かりが1つもない中で、遠くから迫る轟音だけを頼りに逃げなくてはならなくなる。
 これでは、普段から津波非難のルート確認をしている人でなければ、適切な避難行動は不可能だろう。
 
 さらに、南海トラフ地震の場合、震源域に陸地が非常に近いという悪条件がある。
 揺れが大きく、なおかつ津波到達までの時間が非常に短い。
 東日本大震災を優に超える被害が予想される。
 
 これは、いたずらに不安感をあおる情報として退けるのではなく、健全な危機感を持つ前提として、私たちが冷静に受け止めておくべき情報だろう。


 
  
 
 
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2012年07月05日

教育委員会の隠ぺい体質は変わらず:大津市いじめ自殺問題

 大津市で起きた中学生のいじめ自殺問題。
 昨年10月に起きた事件だが、いまになって、問題が噴出。
 自殺した生徒はいろいろないじめにあっていた中で、「自殺の練習をさせられていた」ということが分かってきたからだ。
 
 自殺直後、学校側は、早々と「いじめはなかった」と宣言した。
 納得いかない遺族の要望で、全校生徒にアンケートを実施。
 そこで、さまざまないじめの実態が明らかになった。
 ようやく教育委員会はいじめがあったことを認め遺族に謝罪。
 だが、ここで、アンケートの中で、何人もの生徒が答えている「自殺練習」の情報だけ隠蔽。
 結局、教育委員会は、「いじめはあったものの、自殺との因果関係は不明」ということで、結論とした。
 今年になり、遺族側が加害者や大津市を相手に損害賠償訴訟を提訴。
 それが、マスコミの知られるところとなり、今回の騒動になった。

 記者会見で、市教委は「自殺の練習をさせられたとの確証は得られなかった」と弁明した。
 アンケートでは、16人もの生徒が自殺練習について触れていた。
 回答者特定できた生徒4人にだけ確認したところ、伝聞によるものだったので、確証が持てなかったという。
 無記名のアンケートも、直接見たことを確信させる情報がなかった。
 それで、公表しなかった、というのが弁明の論旨。

 この感覚は到底一般に人に通用しない。
 いったい、彼らは、自殺練習の確証が持てるとはどういうことを言うのだろう。
 はっきり、「自殺練習をさせられているところを見ました」という生徒が出てきたら認めるのか。
 いや、これでも、「ただよそからそう見えてしまっただけで、それが本当に自殺練習だったかどうかは分からない」ということで確証見送りとなりそうだ。
 彼らは、いじめの実態を解明しよう、自殺の原因を追求しようという意思は始めからない。
 悪質ないじめを放置していた教育現場の責任を逃れたい一心だけが見える。

 市教委は「いじめと自殺の因果関係」も否定している。
 理由は、いじめと自殺を直接結び付ける証拠がないから。
 これも同じ理屈。
 いったい、どのような自殺だったら、いじめが原因と認定するのだろう。
 自殺者が、はっきり遺書に明記しないといじめ自殺にならないのか。
 やはり、責任を負う覚悟のない市教委が、屁理屈で逃げ回っている印象だけが残る。

 記者会見で、厳しい追及を受けた市教委側が強調していた点。
「私たちは、いじめがあったことは認めている」
 そう。
 実は、市教委がいじめの存在を認めただけでもすごいことなのだ。
 自殺直後、学校側はいじめの存在を否定していた。
 ふつうは、これで終わり。
 それを、遺族側の要望にこたえてアンケートを実施し、いじめの存在を認めた。
 だから、市教委としては、かなり思い切ったことをしたつもりでいる。
「これほど、徹底的に調査をし、ここまで踏み込んだ判断をしたのに、なぜ?」
 というのが彼らの感覚なのだろう。
 
 いじめの存在を認めざるを得なかったのは、アンケートに書かれたいじめの実態があまりにもひどかったからだ。
 だから、いじめの存在は認めるものの、いじめと自殺の因果関係を認めないことで、自分らの最後の砦を守ろうとしている。
 そのために、「自殺練習」という衝撃的な情報を隠ぺいしたということだろう。
 
 アンケートで様々ないじめの実態が明らかになった。
 やりきれないのは、これほどいじめが多くの人に認められていたのに、だれも救おうとしなかったということ。
 同級生はみんな見て見ぬふり。
 先生も見て見ぬふり。
 親も救い主になれなかった。
 自殺生徒の心情を思うとやり切れない。
 
 
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2012年06月16日

マニュアル・テンプレート集アマゾン販売開始:新型インフルエンザ対策

 DVD教材「BCPって何?」「新型インフルエンザって何?」を販売開始し、ようやく「在庫あり」になった。
 続いて、「新型インフルエンザ対策マニュアル・テンプレート集」もアマゾンで販売開始した。
 こちらは、企業のパンデミック対策に必要な様々なデジタルフォーマットをCD−ROMに記録したもの。
 アマゾンでは書籍扱いになる。
 出版元はひらきプランニング。

 最近は、BCPというと、まず地震の話題ばかり。
 新型インフルエンザは、ずいぶん昔の話題という印象が強い。
 が、本当のリスクはこれから。
 強毒性の鳥インフルエンザが新型に変異するのは目前に迫っている。
 意識の高い方は、その時のために、ご準備を。






posted by 平野喜久 at 10:47| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月12日

DVD教材「新型インフルエンザって何?」アマゾン販売開始

 DVD教材「新型インフルエンザって何?」をアマゾンで販売開始した。
http://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95-%E7%9B%AE%E3%81%A8%E8%80%B3%E3%81%A7%E5%AD%A6%E3%81%B6BCP%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA2-DVD-%E5%B9%B3%E9%87%8E-%E5%96%9C%E4%B9%85/dp/B008997AA2/ref=sr_1_1?s=dvd&ie=UTF8&qid=1339456496&sr=1-1

 「BCPって何?」に続く第2弾としてウェブサイトで販売を続けていたが、このたび、アマゾンでも販売をすることとした。
 新型インフルエンザについては、09年に弱毒性の豚インフルエンザが発生し、何事もなく終息したため、もうすでに過去の話と思っている人が多いが、本当の脅威は強毒性の鳥インフルエンザが新型に変異するとき。
 東南アジアや中国では、鳥インフルエンザによる死亡例も出始めており、いずれ新型インフルエンザに変異するのは時間の問題とみられている。
 BCPについては、地震対策の延長で語られることが多いが、パンデミックも全く違うタイプの脅威として準備すべきだろう。

 忙しいビジネスパーソンが効率的に重要知識を学ぶことを目的に作ったDVD。
 個人向けではなく、法人向けなので、価格はやや高め。
 


 
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2012年05月30日

30万人規模の犠牲者も:南海トラフ巨大地震

 内閣府のワーキンググループが、南海トラフ巨大地震では30万人規模の犠牲者となる可能性があると指摘した。
 指摘したのは、「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」。
 取りまとめ役の河田恵昭関西大教授が会合後の記者会見で明らかにした。

 南海トラフ巨大地震とは、東海・東南海・南海地震が連動して起きることが予想されている巨大地震のこと。
 この3つの震源域は単独で破壊することがなく、大抵、隣の震源域と連動して地震が起きる。
 過去の地震発生パターンから、次に南海トラフで発生する地震は、東海から南海地震が連動して発生する可能性が高いとされており、最悪の事態を想定して、いま被害想定の見直しが進んでいる最中だ。

 今回の、「30万人規模の犠牲者」の根拠はこうだ。
 次に起きる南海トラフ巨大地震は、M9クラスの超巨大地震になる可能性がある。
 その時は、東日本で起きた地震が西日本で再現されることが予想される。
 東日本大震災の犠牲者は1万9千人だが、これは、平日の日中という好条件によるもの。
 もしも真夜中に地震が発生していたら、犠牲者は6万人ぐらいになっていただろう。
 南海トラフの被害想定域の人口は、東日本被災地の6倍。
 すると同じ地震が真夜中に南海トラフで起きたとすると、36万人の犠牲者となる計算。

 地域ごとに被害想定を積み上げていって30万人という数字がでてきたわけではない。
 しかし、災害の大きさを捉えるのにはこれで十分。
 むしろ、個別の被害想定を積み上げるよりも、ブレが少ないかもしれない。
 
 この被害予想は東日本大震災の被害を前提に単純に人口比でかけ算しただけだが、南海トラフ地震では、東日本以上に悪い条件がたくさんある。
1.震源域が陸地に近い。
2.高度成長期の耐震性の低い建物が多く残っている。
3.近年、大きな地震が起きておらず、住民の危機意識が低い。

 今回は、人的被害だけの話題だったが、経済的被害になると、更に深刻になる。
 南海トラフの震源域は、太平洋ベルト地帯と重なるところが多く、日本のモノづくりの拠点が広域に被災する恐れがある。
 また、東京、名古屋、大阪という日本を代表する三大都市が同時に被災するという事態も予想される。
 経済的な被害額は、国家予算をはるかに超えるという。
 この時は、国家の基盤そのものを揺るがしかねない。
 最悪の事態を想定していくとキリがないが、ここで、諦めてしまったら、その時点で終わりだ。
 最悪の可能性があることを承知した上で、少しでも準備を進めるべきではないか。




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2012年05月28日

福島原発事故調:質問者の姿勢に問題あり

 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は、5月28日に菅元総理を参考人招致した。
 その時の様子がネット上で中継された。
 その様子を見て、がっかり。
 これでは、原因究明は進まない。

 なぜ、アメリカの救援申し出を断ったのかを委員の野村氏が質問する。
 それに対する菅氏の答えは、自己弁護一辺倒だ。
 これでは、真相究明はできず、貴重な体験から教訓を得ることもできない。

 これは、菅氏の姿勢に問題があるというよりも、質問者の姿勢に問題があるようだ。
 アメリカの救援を断ったことを間違いと決めつけた上で、いったい誰が間違ったのかを追及しようとしている。
 昨日の枝野元官房長官の答弁との食い違いを指摘して、菅氏の答弁の不備をつくような質問をしていた。
 まるで、検察が被告を追い込んでいるかのような風景だ。
 このような質問をしたら、参考人はガードを固くし、自己弁護に終始せざるを得なくなる。
 この委員会の使命は、事故原因の真相を解明することであって、犯人を見つけて観念させることではない。

 間違ったとしたら何が間違いだったのか。
 今後、間違わないためには、どうすればいいのか。
 完全な間違いとまでは言えなかったとしても、より良い選択肢はなかったのか。
 より良い選択肢を選べるようにするにはどうしたらいいのか。
 これを、当時者と共に解明していくことではないのか。
 せっかく、当事者から生の声を聞くチャンスなのに、もったいない。

 
 
posted by 平野喜久 at 16:03| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

貴重な証言集:大震災時の情報通信の実態を知る

『3.11 被災地の証言 ー東日本大震災 情報行動調査で検証するデジタル大国・日本の盲点ー』(インプレスジャパン)

 この本は、東日本大震災で被災した人々の聞き取り調査やアンケート調査による証言を集めたもの。
 被災体験を綴った体験談はいろいろあるが、これは普通の証言集と違う。
 「情報」「通信」というところにポイントを絞って調査している。
 阪神大震災以後、情報通信技術は格段の進歩を遂げた。
 今回の大震災は、情報通信技術が高度の発達した社会を大地震が襲った世界でも初めてのケースだ。
 被災者の情報行動を調査することで、デジタル社会の限界と可能性を探り、今後の教訓を得ようという趣旨で行われたものだ。
 いままでにはない視点から震災を検証したプロジェクトとして価値が高い。

 大地震が発生した直後に、まず行わなければならないのが情報収集と情報発信。
 これが最も重要でありながら、最も難しい。
 そのことを被災者の生の声を通じて、リアルに実感することができる。

 被災直後に情報収集の手段として使われたのが、ラジオが1位。
 これは当然のことであるが、2位にテレビとワンセグが挙げられているのは注目だ。
 従来は、「災害の時はラジオ」というのが常識だったが、これからは、災害時はワンセグTVというのが重要な選択肢になってきた。
 また、ラジオ情報の限界もはっきりした。
 同じ情報の繰り返しで欲しい情報が得られない。
 シーケンシャルな情報メディアなので、ずっと聞いていないと大事な情報を聞き逃す。
 ローカルな情報が少ない。
 映像がないので情報の理解に限界がある。
 などなど。

 このラジオの欠点は、ワンセグTVやインターネットを使うことで補うことができる。
 防災対策には、防災ラジオを用意して終わり、というのでは、あまりにも心もとない。
 これからの情報収集は、あらゆるツールを使って、それぞれの特徴に合わせた利用を準備しておく必要がありそうだ。

 もう1つ、安否確認の方法。
 通信手段が絶たれている中で、いったい、何が使えたのか。
 現実に最も使われたのは、携帯電話と携帯メールだ。
 もちろん、携帯電話は利用制限がかけられたり、基地局の停電で使用できなかったケースも多かった。
 しかし、その一方で、うまくつながって身内と連絡が取れたケースも多かったのだ。
 実際の利用率は、携帯電話、携帯メール共に約50%だ。
 地震が起きると携帯が使えない、というイメージがあるが、他に手段がない以上、現実的に使える手段は携帯電話と携帯メールしかないということだろう。
 
 現代社会では、携帯は誰もが持っている通信手段なので、まず、みんなが携帯を試してみた。
 多くの人が試せば、使えた人もたくさん出るが、使えなかった人もたくさん出る。
 「携帯は使えない」という声が多く聞かれたのは、こういうことだったのではないか。

 逆に言うと、他の通信手段があまりにも乏しかったということかもしれない。
 NTTの提供している171伝言ダイヤルは、利用率が低く、2%程度だった。
 伝言ダイヤルは使おうと思えば使える状態にあったが、実際には使えないツールだった。
 伝言ダイヤルは何も難しいツールではない。
 171にダイヤルして、音声ガイダンスに従って操作してメッセージを吹き込むだけ。
 しかし、伝言ダイヤルは、緊急時にしか開設されないサービスだ。
 普段使っていないサービスであり、地震直後で気が動転している時に、やり慣れていない操作を思い出すには骨が折れる。
 こちらがうまく操作ができたとしても、相手方が同じように操作してくれないと、情報は伝えられない。
 2重のハードルがあって、現実には使えないツールになってしまっているのだ。
 普段使っていないツールは、いざというときに使えないということがよくわかる。
 
 
 

 
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2012年05月25日

太平洋プレートの沈み込み加速:根室沖の地震エネルギー蓄積

 読売新聞の報道によると、太平洋プレートの沈み込みスピードが加速しているらしい。
 太平洋プレートは、日本海溝で北米プレートにぶつかり、北海道や東北の下に潜り込んでいる。
 2003年以前は、毎年8〜10センチ程度の速さで沈み込んでいたが、東日本大震災後30センチぐらいになっているという。
 これは、大震災の時に、北米プレートのストッパーが外れたことで、太平洋プレートが一気に滑り出したというイメージで捉えると分かりやすい。
 このため、太平洋プレート内部では、引っ張られすぎによる正断層が発生し、これが次の巨大地震になるのではと心配されている。
 そして、もう一つ心配なのが、根室沖や三陸沖だ。
 大震災でストッパーが外れたためにプレートの沈み込みが加速しているとすると、ストッパーが外れていないところは、この加速で更にエネルギーの蓄積が進んでしまうことになる。
 すると、次の巨大地震を誘発する恐れがあるのだ。
 次の海溝型地震の可能性の高いところは、東海地震が注目されているが、もう1箇所、三陸沖から根室沖も忘れてはいけないだろう。



posted by 平野喜久 at 16:25| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

日本は地震の活動期にある

 東日本大震災を受け、東海連動型地震(南海トラフ連動型地震)や首都直下地震の被害想定の見直しが急ピッチで続いている。
 研究者から新しい知見が出るたびにマスコミで報道される。
 今年に入ってから、散発的に次の巨大地震の情報が出るようになったのはこういう理由だ。
 ここで、「また地震の話か」と不感症になってしまってはいけない。
 「今度はどんな発見があったのだろう」と、発表される地震関連情報に注目し、自分自身の知識を最新のものに更新しておくことが重要だ。

 さて、地震に関して、勘違いしている人がいる。
「東日本大震災のような1000年に1度の巨大地震が起きたあとだから、もうしばらくは大きな地震はないだろう」
 千年に一度だったら、次の巨大地震は千年後だろうと思ってしまうようだ。
 だが、専門家に言わせると、一度巨大地震が起きると、次の巨大地震が起きやすくなる、というのが常識なのだそうだ。
 
 日本の地震活動を長期の視点で見てみると、活動期と静穏期を繰り返しているのが分かる。
 活動期には集中的に地震が起き、静穏期には地震が起きなくなる。
 これが一定のパターンで繰り返しているらしい。

 幕末の19世紀前半は活動期にあったようだ。
 50年ぐらい内陸の地震が活発になったあと、海溝型の安政東南海南海地震が発生。
 その後、数年で静穏期に。
 次の活動期は、1891年の濃尾地震から。
 44年の東南海地震、46年の南海地震を経て、48年の福井地震で終了。
 50年ほどの静穏期が続いたあと、95年の阪神淡路大震災。
 ここで日本は再び地震の活動期に入ったのではないかと言われている。
 いまは、日本は地震活動期の真っ只中にあるということだ。

 日本が非常にラッキーだったのは、高度経済成長期に戦争に巻き込まれることもなく、巨大地震に見舞われることもなかったこと。
 だから、これほど経済が発達し、都市開発が進んだ。
 戦争に巻き込まれなかった理由はさておき、地震のダメージを受けずに済んだのは、たまたま静穏期にあたっていたからだ。
 これは幸運としか言いようがない。
 だが、高度成長期に作り上げてきたものが、地震活動期に入った今、大きなリスクになりつつある。
 首都圏の一極集中のリスク。
 高度成長期に作った橋梁や建築物の老朽化。
 原発問題が噴出して電力不足のリスクが急浮上しているのも、高度成長期のツケが回ってきていると見ることができる。
 今回、福島原発の事故で原発管理の杜撰さが発覚したが、地震活動期に入った今、福島で事故が起きなかったとしても、日本のどこかで同じような事故が起きた可能性は大きかっただろう。
 
 私たちは阪神淡路大震災を境に、地震活動期に入ったということ認識すべきではないか。
 いままでのパターンから推測すると、活動期は50年ぐらい続く。
 すると、あと30年ぐらいはどこで地震が起きても不思議ではないと考えるべきだろう。

 地震は発生を止めることはできない。
 だが、その被害を少なくすることはできる。
 私たちがやらなければいけないのは、むやみに怖がったり、諦めたりするのではなく、健全な危機感を持って地震に対する準備を進めることではないか。


posted by 平野喜久 at 12:30| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月22日

長周期地震動2〜5倍に:南海トラフ3連動地震

 東大の研究チームの発表。
 南海トラフの3連動地震が発生した場合、長周期地震動の強さが東日本大震災の2〜5倍になるという。
 超周期地震動とは、揺れの周期が数秒以上で、ゆっくりと長く揺れる地震動のこと。
 減衰しにくく、震源から遠くまで伝わり、高層建築を大きく揺らすのが特徴だ。

 東日本大震災の時も、新宿の高層ビル群が大きく揺れた。
 ガタガタという揺れではなく、大きくしなるように揺れる。
 ビルにはそれぞれ固有の周期があり、それに地震動が共振すると、特に揺れが大きくなる。
 だから、新宿のビル群でも、ビルによって揺れ方が違い、それぞれが勝手気ままに揺れているように見えたらしい。

 東大チームは南海トラフでマグニチュード8.7の3連動地震が起きたと仮定し、長周期地震動の強さを予測。
 周期6秒の地震動の場合、揺れの強さの指標となる速度が、大阪湾岸部で震災の5倍に当たる毎秒250センチになるという。
 周期6秒、毎秒250センチというのはどういう揺れかというと、揺れ幅が7.5メートルになるということ。
 そして、揺れ幅7.5メートルを片道3秒の速さで揺れるということだ。
 
 最近の高層建築であれば、耐震性は十分なので、地震で壊れることはない。
 だが、この長周期地震動の揺れはどうしようもない。
 建物全体を大男につかまれて振り回されている感覚になるという。
 地震が起きたときは、物が上から落ちてくるというのが普通の認識だが、高層ビルで長周期地震動に揺さぶられたときは、物が横から飛んでくるそうだ。
 コンピュータのモニターが何メートルも離れた場所に飛ばされることもある。
 キャスター付きのコピー機は、ものすごい勢いで室内を暴走する。
 机の下に隠れたとしても、モニターが横からぶつかってきたり、暴走コピー機が突進してきたりするのだ。
 「地震が起きたら机の下に」というマニュアルは、ここでは役に立たない。

 南海トラフ連動地震は、名古屋や大阪のような高層ビル群を直接襲う世界で初めてのケースになりそう。
posted by 平野喜久 at 09:04| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月08日

地震の被害は企業規模による:中小企業こそBCP

 首都直下地震と東海地震の被害想定が急ピッチで進められており、地震リスクに対する関心が高まってきている。
 企業の地震対策も、いまがベストタイミングだ。
 地震対策に関心を持つようになった経営者が増えてきた一方、未だに無関心の人も多い。
 よく、次のようなことを言って諦観を決め込んでいる人がいる。
「地震が起きれば、みんなやられちゃうんだから、自分だけが心配しててもしょうがないよ」
 東日本大震災で、壊滅的な被害の様子を見て、諦めてしまったのだろう。
 地震は、特定の企業だけを襲うものではないので、「やられるときは、みんな一緒」、という奇妙な連帯感か、安心感があるのかもしれない。
 だが、過去の事例を振り返ってみると、それは幻想だということがわかる。
 巨大地震が起きた時、その被害は「みんな一緒」にはならないのだ。
 結論から言うと、壊滅的な被害を受けた時、強い企業はますます強くなり、弱い企業はたちまち廃業の危機に追い込まれる。

 よくBCPは大企業が取り組むもので、中小企業は関係ないと思っている人がいる。
 実際は、大企業より中小企業にこそBCPは必要なのに。
 大企業だったら、いくつもの拠点を持っているので、1箇所が潰れたとしても、他で簡単に代替が利く。
 銀行に簡単に見捨てられることもない。
 取引先も辛抱強く待ってくれる。
 そして、何より、ダメージに耐えられるだけの基礎体力がある。
 
 ところが、中小企業に、そのような余裕はない。
 メインの生産拠点が潰れたら、たちまち再起不能に陥る。
 被災でリスクが高まった企業に銀行は融資しない。
 取引先も辛抱強く待ってくれない。
 無理に再開にこぎつけたとしても、従来通りの取引量が確保できるかどうかはわからない。

 阪神淡路大震災の時、神戸地区の事業者は壊滅的な被害を受けた。
 神戸製鋼所、三菱重工、川崎重工、住友ゴム。
 いずれも名だたる大企業は壊滅的な被害を受けた。
 当然のことながら操業は停止し、赤字に転落。
 しかし、これらの企業はその後、どうなったか。
 赤字に転落したまま、消えてなくなったか。
 ノー。
 その後、復興を遂げ、数年で赤字分を取り戻して、さらに成長を続けた。
 工場が壊滅的な被害を受けたが、それを機に、機械設備の入れ替え、レイアウトの変更、生産ラインの組み換えを行い、以前よりも効率のいい生産体制を作り上げることができたからだ。

 これと対照的なのが、神戸のケミカルシューズ業界。
 こちらは、中小零細企業の集積地だ。
 80%もの事業者が半壊以上の被害を受けた。
 生産量は半分に落ち込み、数年かけて7から8割ほどまで回復したが完全復旧に至らず。
 雇用も半分失われたまま回復せず。
 事業者数は、減少の一途。
 ケミカルシューズは、もともと安い外国製品に押され、業界規模も縮小傾向を示していた。
 震災はそれを後押しして、縮小傾向を加速させることになった。

 震災は強い企業をますます強くさせ、弱い企業をますます弱らせる。
 これは、業界単位で見ても同じ。
 強い業界をますます強くさせ、弱い業界をますます弱らせる。

 「うちは、地震対策なんかやってる余裕なんかないよ」
 「いつ来るかわからない地震より、今月の仕事をなんとかしなきゃ」

 経営に余裕があるのなら、地震対策が少々抜けていても大丈夫。
 いずれ立ち直れる。
 しかし、本当に余裕がないのなら、地震対策を真剣に考えなくては、先はない。
 中小企業こそBCPをというのは、こういう理由だ。



 
  
posted by 平野喜久 at 17:54| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月19日

死者9700人:首都直下地震の被害想定

 最近、地震関連の想定情報の報道が頻繁に行われるようになった。
 東日本大震災を受けて、次の想定地震の見直しが進められているからだ。
 特に大きな見直しが行われているのが、首都直下と東海だ。

 首都直下では、震源が従来の想定より10キロほど浅いことが分かって、東京23区を中心に、非常に大きな揺れに襲われる可能性がクローズアップされた。
 その想定の見直しを踏まえて、東京都がこのたび、被害想定を出した。

 圧死 5600人
 焼死 4100人
 負傷 14万7600人 
 帰宅困難者 517万人
 避難生活者 339万人

 首都直下は地殻構造が複雑で、地震のメカニズムは1種類ではない。
 いろんな場所で、いろんなタイプの地震が起きる。
 だから、次の地震の予想が非常に難しいのだ。

 今回の被害想定も、さまざまなタイプの地震を想定して、それぞれの地震で最悪の事態をつなぎ合わせて作ったような数字だ。
 1つの地震で、かならずこのような被害が出るというものではない。

 しかし、東日本大震災から学んだ教訓は、「想定外を想定せよ」ということ。
 簡単に想定外をつくってしまわないために、つねに最悪の事態を想定しながら対策を進めるという姿勢は必要となる。

 6月をめどに、今度は、東海地域の南海トラフ沿いの連動型地震の被害想定が公表される予定。



「首都直下型地震が切迫している理由」
http://youtu.be/9_dbSOqVAyo



 
posted by 平野喜久 at 19:21| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月01日

津波20メートル以上6都県:南海トラフ地震

 最近、地震関連の報道が続いている。
 
 30日には、文部科学省のプロジェクトチームが首都直下地震での震度分布図を公表。
 東京湾北部でM7級の地震が起きた時、東京都と神奈川県の一部で震度7の揺れ。
 東京23区のほとんどが震度6強以上。
 従来の想定よりも、大きな揺れが予想されるという。

 31日は、内閣府が進めていた有識者の検討会がまとめた南海トラフ沿いの巨大地震の想定が発表された。
 南海トラフ沿いの地震とは、東海地震、東南海地震、南海地震の連動型地震のことを言う。
 東日本大震災を受けて、南海トラフ地震も被害想定の見直しが進められていたが、その検討結果だ。
 南海トラフでもM9以上の連動型地震になることを想定している。
 震度6弱以上の恐れがある地域は24府県687市町村。
 以前の中央防災会議の想定よりも面積として3.3倍。
 震度6強以上になる地域も5.6倍。
 津波高さについては、あらゆるパターンで想定値を算出しているが、高知県黒潮町で最大値34.4メートル。従来想定の2.4倍。
 都市部でも津波被害が大きい。
 静岡市で10.9メートル。
 豊橋市では、20.5メートル。
 高知市:14.7。宮崎市:14.8。
 従来想定の1.5〜3倍になった。

 この被害想定に基づいて、想定地域の自治体の防災対策は根本的に見直しが進む。
 同時に、企業のBCPも見直しを迫られることになる。

 首都直下と東海地震は、既に想定内の地震となった。
 むやみに不安がったり、諦めたりするのではなく、健全な危機感を持って準備を進めるべきだ。

東海地震が切迫している理由
http://youtu.be/qMwx2-zaHnw

首都直下地震が切迫している理由
http://youtu.be/9_dbSOqVAyo





 
posted by 平野喜久 at 18:13| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月06日

3万ビュー突破:動画「東海地震が切迫している理由」

 動画コンテンツ「東海地震が切迫している理由」
http://youtu.be/qMwx2-zaHnw

 ついに、3万ビューを突破した。

 11年11月26日にアップ。
 12年1月31日に1万ビュー。
 12年2月20日に2万ビュー。
 12年3月6日に3万ビュー。

 1万ビューを越えたあたりから、加速度的にアクセス数が増え出した。
 震災から1周年を迎え、また、地震に対する関心が高まっているようだ。


 8日には、蒲郡商工会議所で、危機管理セミナーが開催される。
 「東日本大震災 被災企業の経営者が語る 我が社はこうして乗り越えた」
 宮城県大崎市で実際に被災された企業の社長にお越しいただき、実体験を直接お聞きする機会を設けた。
 講演者の一人、緒方製作所の高橋社長は、早くからBCPの必要性に気づき、積極的に取り組んできた。
 それが今回の震災で功を奏し、取引先からも高く評価されている。
 BCPの成功事例として、大いに参考になるお話をしていただけるものと思う。
 この講演会では、私は演壇には立たないが、司会を務めさせていただく。

http://www.gamagoricci.or.jp/users/roudou/gacademy/images/pdf/120308.pdf



posted by 平野喜久 at 22:23| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月20日

2万ビュー突破:「東海地震が切迫している理由」

 YouTubeで公開している動画コンテンツ、「東海地震が切迫している理由」。
 ついに、2万ビューを突破した。

http://youtu.be/qMwx2-zaHnw

 1万ビューを突破するのには2カ月かかったが、2万ビュー突破は、それから1カ月もかからなかった。
 ネット上で、いろんなところで紹介され、いろんな方にご覧いただいているようだ。

 YouTubeで見られる地震関連の動画は、まともなものが少ない。
 
1.テレビ情報番組の違法アップ
2.恐怖を煽ることを目的としたオカルト情報
3.自称地震学者によるトンデモ理論

 世の中には情報があふれているようでいて、本当に必要とされる情報は少ない。
 「東海地震が切迫している理由」が多くの方にご覧いただいているのは、このような基本的な情報を分かりやすく冷静に伝えるコンテンツが他にないからだろう。


 第2弾「首都直下型地震が切迫している理由」も、ただいま公開中。

http://youtu.be/9_dbSOqVAyo





 
posted by 平野喜久 at 07:43| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月17日

「首都直下型地震が切迫している理由」:新作動画完成

 新たな動画コンテンツが完成。
 
「首都直下型地震が切迫している理由」



 前回の「東海地震が切迫している理由」の関連動画だ。
 東海地震はずいぶん前から、その切迫性が指摘されてきたが、最近は首都直下型地震の切迫性がクローズアップされてきた。
 ところが、なぜ首都直下型地震が切迫していると言われるようになったのかは、意外に知られていない。
 
 関東大震災から約90年が経過。
 この間、首都圏に大きな被害をもたらすような地震は発生していない。
 過去の地震パターンを見ると、巨大地震が発生した後は、100年ぐらいの間、ほとんど地震が起きない静穏期があるらしい。
 そのあと活動期に入ると、内陸の直下型地震が何度も起き始めるようだ。
 そろそろ、静穏期から活動期に移行する時期なのではないかと心配されている。

 もうひとつ気になるのが、東日本大震災の影響で、首都直下型地震の発生が早まるのではないかという話。
 「4年以内に70%」という衝撃的な情報が東大地震研究所から出されたりしたが、これは、一般受けを狙ったお騒がせネタだった。
 しかし、何らかの影響があることを否定する研究者はいない。

 東海地震と首都直下型地震。
 私たちが直面している震災リスクを冷静に受け止める時が来ている。
 むやみに不安がったり、はじめから諦めてしまうのではなく、健全な危機感を持って準備しよう。

関連動画:「東海地震が切迫している理由」
http://youtu.be/qMwx2-zaHnw 




 
posted by 平野喜久 at 08:14| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月16日

中小企業にBCPが必要な理由

 大震災以後、BCPへの関心が高まっている。
 大企業の多くは既に完成しているか、策定中。
 策定していない企業も、いずれ策定の予定というのがほとんど。
 一方で、中小企業は策定済みの企業は数%にとどまる。
 最近になって、策定予定という企業が増えてきたかなという印象。

 BCPは大企業向けのもの、という印象が根強い。
 BCPという言葉がなじみにくい。
 日本語で「事業継続計画」と訳すと堅苦しい。
 中小企業にとって我がことと思えないのも無理はない。
 だが、BCPは大企業よりも中小企業でこそ必要なものだということを知ってほしい。

 大地震は企業に様々なダメージを与える。
 ダメージの大小を決める要素は何か。
 決定的な要素は、規模の大きさだ。

 大企業ほどダメージが大きくなるような印象があるが、実態は違う。

 大企業の場合は、たいてい拠点が全国に分散している。
 海外にまで事業展開している場合もある。
 どこかで大地震が起きたとしても、全社の拠点が同時に壊滅してしまうことはない。
 1か所が機能不全に陥ったとしても、他の拠点で簡単に代替できる。
 被災した拠点には、別の場所から応援要員を派遣できる。
 取引業者とも強力なパイプがあるので、原材料の調達も早い。
 機械メーカーの技術者も優先的に派遣してもらえる。
 資金調達も金融機関の支援を受けやすい。

 阪神大震災の時は、神戸製鋼所、三菱重工、住友ゴムなど、名だたる大企業が大きな被害を受けた。
 しかし、たちまち復旧し、3,4年で被った赤字分を吸収するだけの成長を遂げた。
 それどころか、被災を契機に、生産ラインの組み直しを全面的に行ない、前よりも効率の良い生産体制を立ち上げることができたという。
 大企業は、大地震を契機に、更に飛躍することさえできる。

 一方、小さな企業は深刻だ。
 拠点は1カ所に集中しているので、そこが壊滅した場合、そのまま再起不能に陥る。
 運よく生き残ったとしても、原材料調達ができない、機械や施設の修理ができない。
 まごまごしているうちに、取引先から発注をよそに切り替えるとの連絡。
 瀕死の企業に融資してくれる銀行はない。

 阪神大震災後の経緯を見てはっきりするのは、上昇傾向の企業や大企業は被害を吸収し更に成長を続け、下降傾向の企業や中小零細企業は、ダメージを回復できずに一層下降に拍車をかける、ということだ。

 「BCPがなくても何とかなるさ」というのは大企業の言い草だ。
 中小企業が何の準備もなくその時を迎えてしまったら、何ともならなくなる。
 
 「BCPは大企業が取り組むもので中小企業には必要ない」という考えはとんでもない間違い。
 「中小企業でもBCPは必要」という人がいるが、これでも弱い。
 「中小企業だからこそBCPが必要」という認識が正解だ。

 この時、中小企業が大企業並みのBCPを作る必要はまったくない。
 身の丈に合ったBCPにすべき。

 

 
 
posted by 平野喜久 at 11:39| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月15日

BCPの取り組み姿勢に世代間のギャップ

 BCPの作成講座3回目が終了。
 ここまで、BCP作成の手順やポイントを一通り説明。
 さて、いよいよ来月の最終回は、参加企業の事例発表。

 参加者の方々に、現在の進捗状況を尋ねると、やや心もとない。
 ある程度、手掛けてはいるが、自分一人で取り組むには限界があり、あまり進んでいないというケースがほとんど。
 進まない原因は?

「社長の理解が得られない」

 これが一番多い。
 BCP作成講座に社員を派遣するぐらいだから、BCPの必要性に気付いていない社長ではないはず。
 でも、「BCPは社長が乗り出すほどの話ではなく、担当者に作らせておけばいい」という認識らしい。
 BCPは、単なる防災マニュアルとは違う。
 経営の根幹にかかわる部分も多く含んでおり、担当者が1人で取り組んでいたのでは完成させられない。
 私のBCPセミナーでは、この部分は最初に強く強調するところだ。
 だが、セミナーに出席した方々はこのことを実感として理解してくれるが、肝心の社長にこれが伝わらない。

 社長をいかにその気にさせるか……これが、BCP最大のハードルになっている。

 受講者の方の中に、社内に世代間のギャップがあることを指摘する人がいた。
 40代50代の社員と、20代30代の社員とでは、地震リスクに対する意識が違うのだそうだ。
 若年層は、自分が現役のうちに地震が来るだろうという認識でいるため、地震リスクについては、我がこととして意識しやすい。
 ところが、年齢が上がるにつれて、地震リスクが他人事と認識されるようになるらしい。
 自分が現役のうちに来るかどうか分からない地震は、自分とは無関係の話に思えるだからだ。
 それよりも定年という確実にやってくるタイムリミットまでに、何をするかの方に関心が向かいがち。

 BCPへの取り組み姿勢に世代間の違いがあるということに初めて気づかされた。


 
posted by 平野喜久 at 16:10| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | リスクマネジメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする