2022年01月31日

「医療介護BCP急務」いまごろ遅すぎないか

 本日付読売新聞による。
 「医療・介護「事業継続」策定遅れ BCP急務」
 オミクロン株の急拡大により、感染者や濃厚接触者が急増し、現場スタッフの欠勤者が相次ぎ、診療や介護の一部が停止する事態となっている。
 そこで、政府や専門家がBCPの早急な策定を求めているのだという。
 
 いまごろBCP? というのが率直な感想だ。
 新型コロナは2020年から始まっており、すでに3年目に入っている。
 オミクロン株の感染拡大が世界で過去最大のレベルに達してはいるが、ワクチン接種が進み、治療薬の確保されるようになってきており、重症化率は過去最低レベルのとどまっている。
 国によっては行動制限を全面解除の方針を打ち出しているところもあり、パンデミックとしては最終局面に入っている印象だが、今になってBCP策定とはどういうことか。
 BCPを策定など、2020年のうちに済ましてあるはずではなかったのか。
 私も、一般の中小企業を対象にパンデミックBCPのセミナーや策定支援を行ってきたが、いずれも20年の内で終わっており、いまごろ取り組んでいるところは存在しない。
 
 医療と介護ではパンデミックBCPが特に厳しく求められる業界だが、たぶん、コロナ禍が始まってから現場は目の前の対応に追われ、じっくりBCPを検討しているような余裕がないまま今に至っているのではないだろうか。
 2009年の新型インフルの時に、医療介護の業界で感染症対応のBCPの策定が促された。
 だが、ウィルスが弱毒性で、深刻な状況にならなかったために、BCPも話題にならずに終わってしまった。
 この時、次のパンデミックを想定してBCPの策定を進めていればよかったが、ことが終われば関心が遠のき、何の準備もできないまま新型コロナが始まってしまった。
 新型コロナが始まったのは2020年1月からだが、波状的に感染拡大が襲ってきて感染拡大期と小康期を繰り返してきた。
 常に多忙だったわけではなく、小康期の余裕があるときに十分BCP策定ができた。
 特に、第5波が収束してからは、ほとんど感染ゼロに違い小康状態で、第6波への準備が落ち着いてできる状態にあった。
 それでも、BCPの策定は進まず、第6波が急拡大し始めた今になって、「BCP急務」との声が出始めた。
 
 感染状況が深刻になると、「BCPを作らなければ」となり、感染状況が落ち着くと、BCPの関心が遠のく。
 これを繰り返しているだけだ。
 感染拡大が始まってから慌ててBCPを作り始めても遅い。
 泥棒を見て縄をなうようなものだからだ。
 2009年の時に次のパンデミックに備えておくべきだったし、それができていなかったとしても、コロナ禍の小康状態の時に次の波に備えてBCPを策定しておくべきだった。
 第6波を迎えて、医療介護の現場は緊張状態に置かれているが、スタッフの努力で何とか乗り越えていくだろう。
 すると、第6波が収まったところで、またBCPの関心は遠のいていくに違いない。
 
 小康状態になるとBCPの関心が薄れ、感染拡大になると多忙でBCPに取り組んでいる余裕がない。
 結局、いつまでたってもBCPの取り組みは始まらないということに。
 いまどの業種でもBCPの取り組みは進んでいるが、その中でも、医療福祉分野と宿泊飲食分野は特に策定率が低い業界だ。
 そのBCPに縁のない業界が、いまコロナリスクの直撃を受けているというわけだ。

 介護事業者については、今年度からBCP義務化になった。
 現在は努力義務にとどまっているが、令和6年度からは完全義務化に移行する。
 介護業界は、いざ災害に見舞われたときは、どこよりも業務の継続が強く求められるのに、BCPの取り組みが最も遅れている。
 その実態に国が危機感を覚えたために、このような措置に切り替えたのだろう。
 最近、介護事業者の話を伺う機会が増えたが、BCPどころか、基本的な防災対策すら何も考えられていない中小事業者があまりにも多いという印象だ。

 BCPの取り組みが最も進んでいる業界は製造業だ。
 その理由は、災害で直接被害を受ける可能性が高く、その被害も具体的にイメージしやすいこと。
 そして、取引先からBCPを求められるケースがあり、取引のためにBCPが必須となりつつあること、にある。
 その点、医療介護業界は、強力な取引先というものがない。
 お客様は、患者であり利用者だ。
 BCPがなければ、お客様を失うということは考えられない。
 BCPがあってもなくても変わらない。
 さらに、実際に大地震や大雨洪水に見舞われたとき、何がどのようになるのかは経験がなく、その時になってみないと具体的にイメージできない。
 であれば、BCPに取り組もうというインセンティブが働くわけがない。
 宿泊飲食業界でBCPが進まないのも同じ理由だろう。

 ところが、先日、あるホテルのウェブサイトで珍しいアピールを見つけた。
 なんと、そのホテルは、免振対策済みの建物だというのだ。
 つまり、地面と直接触れている部分がなく、緩衝材を介して地上に建っており、地震が起きたときにはその揺れが建物に伝わらない構造になっているという。
 庁舎のような公共施設で免振ビルは見たことがあったが、ホテルでもこのようなところが出てきたかと驚いた。
 地震の活動期に入った日本。
 今後は、ホテルもこのような視点で選ばれる時代になってくるのかもしれない。
posted by 平野喜久 at 20:42| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月26日

エリザベス・ホームズ有罪判決

 セラノスの創業者、エリザベス・ホームズ。
 詐欺などの罪で起訴されていた彼女に対し、4件の訴因について陪審員団から有罪の評決が下された。
 セラノスというのは、たった1滴の血液であらゆる検査がその場でできることを謳って事業展開していたベンチャー企業だ。
 エリザベスはその創業者。
 わずか19歳での起業、しかも美形の白人女性ということで注目され、第2のスティーブジョブズとも言われていたという。
 ところが、彼女の行なっているビジネスには実体がなく、彼女の言葉に騙されて出資してしまった投資家やVCから訴えられていた。

 この壮大な詐欺事件の経緯は、書籍『シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相』に詳しい。
 このドキュメンタリーを読むと、当初から社内の開発現場から異論が相次いでいたようだ。
 たった1滴であらゆる血液検査ができるなど、どう考えても実現不可能だからだ。
 ところが、エリザベスはそれを認めず、なんとか実現せよと圧力をかけ続けた。
 反発するスタッフは解雇。
 強圧的な支配で会社を回していたようだ。
 どんなに圧力をかけても、物理的に不可能なものは実現できない。
 それでも、エリザベスは製薬会社や医療現場などに派手な売り込みをかけ、受注を取り付けてくる。
 メディアにも露出し、話題を喚起。
 黒のタートルネックのセータを着てジョブズの真似をした。
 ヘアスタイルもわざときっちり固めないラフはスタイルにこだわったようだ。
 最も奇妙なのは、彼女の異様に低いバリトンボイスと瞬きしない大きな瞳。
 ネット上の動画でこれは確認できる。
 確かに奇妙だ。
 たいていの人は彼女に会うと、この声と瞳に幻惑されてしまうようだ。
 アメリカでは声のトーンが低い人は、信頼と好印象を得られることから、弁護士や経営者などボイスコントロールをしている人がいる。
 彼女もその一人だ。
 瞬きしない大きな瞳も、相手の目を食い入るように見つめることで、自分が心理的に上位に立つ効果を狙ったものだろう。
 著名人の中にも彼女に心酔する人が現れ、それがまた広告効果を上げ、セラノスの評判はうなぎのぼり。
 しかし、理想の検査機は完成せず、ごまかしのデモンストレーションで顧客を欺くようになり、耐えられなくなった内部者の通報により、実態が白日の下に明らかとなる。

 彼女も当初は純粋に自分のビジネスアイデアを実現すべくビジネスを立ち上げた夢多きベンチャーであった。
 ところが、いち早く成功者になりたいという欲求のほうが強く、地道に足元を固めながらビジネスを進めていくことに無頓着だったようだ。
 事業の立ち上げ当初は、順調に進むことは稀で、あちこちで問題や不具合が発生するのが普通だ。
 こまごまとしたつまらないことで問題が起きる。
 それらを1つ1つクリアして少しずつビジネスが回り始める。
 ところが、シリコンバレーで華々しい成功を夢見る人は、このような地味なこまごまとしたことに興味がない。
 それで、いきなり大風呂敷を広げて注目だけ浴びようとしてしまう。
 「シリコンバレーで成功者になるためには、まずは成功者であるふりをしろ」と言われる。
 あのビルゲイツも、初めてIBMに売り込みをかけたとき、その時点で売れるソフトは何もできていなかったというのは、笑い話として伝えられている。
 エリザベスも、その成功の法則に則っただけかもしれない。
 ただ、彼女に運がなかったのは、肝心の検査機ができないために、最後まで偽装し続けることになってしまったことだろう。

 この詐欺事件、なぜこんなにも多くの人が騙されたのか。
 実は、医療の専門家の間では、たった1滴であらゆる血液検査なんて原理的に不可能であるのが常識として認識されていたという。
 では、なぜそれが公に指摘されなかったのか。
 それは、セラノスの血液検査の技術について論文が1つも出されていなかったからだ。
 論文がないと専門家は検証できない。
 検証できなければ、正しいとも誤りとも判定できない。
 それで、公に「これはインチキだ」と言うこともできなかったという。
 エリザベスは、セラノスの技術に疑問を呈した者に対しては、訴訟を仕掛け、黙らせるということまでしていた。
 それで、専門家としてこんなことはできるわけがないと思ったとしても、それを根拠なく公にできなかった。
 では、自分であらゆる可能性を想定して実験をし、どんな方法でも実現不可能であることを実証するか。
 時間と労力をかけて、得られる答えは、当たり前のことが証明できるだけ。
 多忙の研究者がこんなことに無駄な時間をかけられるわけがない。
 こうして、あやしい技術が検証もされずに一般に絶賛され続けるという現象が起きるというわけだ。
 
 この事件、キャラクターが魅力的なので、映画化の話が出ているという。
 ぜひ見てみない。
posted by 平野喜久 at 19:03| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月16日

イギリスの感染拡大

 イギリスでも感染拡大が続いている。
 1日当たりの新規陽性者数が78,000人を超え、過去最大の感染状況にある。
 いま、デルタ株とオミクロン株の2つの感染が同時に起きているという。
 今後、感染拡大は継続し、1月から2月にピークを迎えるだろうと予想されている。
 ただ、重傷者は、過去の感染拡大期に比べると5分の1レベルに抑えられており、政府は再び行動制限をかける段階ではないとしている。
 
 イギリス国会では、政府の政策の失敗を追求し、ジョンソン首相は防戦に必死。
 「行動制限をかけろ」という意見に対しては、ワクチンの追加接種で対応すべきというのが政府の見解。
 ところが、ワクチンパス制度の導入法案が、与党が反対する中、野党側の賛成多数で可決されてしまった。
 7月以降、ワクチン接種が進んだ状況では行動制限をかけるべきではない、という見解の元、一貫して制限再開を拒否し続けているジョンソン首相。
 感染者数が過去最大のレベルに達すれば、重傷者や死者は確実に増加する。
 過去の感染拡大期に比べて実数は少なくなるが、着実に増加傾向にあるのを見ながら、ワクチン接種だけで乗り越えられるか。
 イギリスのケースは、いま行動制限を解除するとどうなるかを確かめる社会実験のようになっている。

posted by 平野喜久 at 10:01| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月14日

イギリスのオミクロン株

 イギリスのジョンソン首相は、オミクロン株に感染した患者の少なくとも1人が死亡したと発表した。
 オミクロン株での死亡例は世界でも初めて。
 イギリスのコロナ感染者数は1日52,000人に達しており、このうちの3分の1がオミクロン株の感染者だ。
 今後、48時間以内に、オミクロン株が感染の主流になるだろうと見られている。
 現在、入院患者は7,300人。
 これが来年1月には45,000人レベルにまで達するという予測も出ている。
 過去最大の入院者数は4万人弱だったので、それを超える入院患者になる。
 ジョンソン首相は、「オミクロン株の症状がより軽いという考えはいったんわきに置き、感染が加速していることを認識すべき」と述べ、3回目のワクチン接種を急がせている。

 アストラゼネカ製のワクチンは、オミクロン株への有効性は10%ほどしかないことが分かってきて、それも対策を急がせる要因になっている。
 
 フランスも警戒を強めている。
 イギリスで感染拡大が起きると、遅れてフランスでも感染の波が襲ってくるのが過去の経験則だからだ。
 アルファ株は今年の1月にイギリスで流行したが、3月にフランスでも感染拡大。
 デルタ株は6月にイギリス、7月にフランス、という具合。
 1月にイギリスで最大の流行が起きるとすれば、やがてそれはフランスにも。

 ヨーロッパ各国はクリスマス休暇を前に、ワクチンのブースター接種と行動制限の再開に舵を切った。
 だが、国民の中にはこの政府の施策に反発する人たちも。
 あちこちで、デモや抗議集会などが起きているらしい。
 世界で自由主義と専制主義の対立が起きている中、自由主義社会における感染症対策の難しさが浮き彫りになっている。
posted by 平野喜久 at 08:37| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月02日

オミクロン株:イギリスで市中感染か

 イギリスで新型コロナウイルスの「オミクロン株」による集団感染が、先月20日にすでに起きていた可能性がある。
 イギリス北部、スコットランドでは、これまで9人のオミクロン株への感染が確認されている。
 この9人全員について、最近の海外渡航歴がなく、先月20日に行われたイベントで集団感染した可能性があると発表された。
 南アフリカがオミクロン株の存在をWHOに報告したのは先月24日なので、イギリスではそれ以前から市中での感染が始まっていた可能性があることになる。
 
 同じような事例はオランダでも起きている。
 11月19日と23日に採取された2つの検体からオミクロン株が見つかった。
 そのうち、南アフリカへの渡航歴があったのは1人で、もう1人はオランダ国内で感染したとみられている。

 こうなると、本当の資源値は南アフリカではないのかもしれない。
 たまたま南アフリカからの情報提供で事態が発覚したが、その前にすでにヨーロッパ各地でオミクロン株の市中感染が始まっていたのかもしれない。
 そうすると、いま入国制限をしていても既に手遅れということ。
 各国で見えない市中感染が広がっており、それが今後顕在化してくることになりそうだ。

 ただ、オミクロン株は感染力が高そうだが、重症化した事例は報告されていない。
 いまのところ死者はゼロ。
 毒性についてはそれほど深刻ではないのがせめてもの救い。
 一般に、ウィルスは変異を繰り返すことで感染力は高まるが、毒性は弱くなると言われている。
 いまのところ、その一般法則の通りの展開だ。
 気になるのは、2回のワクチン接種をした人が感染している点だ。
 ワクチンは、感染、発症、重症化の3段階の有効性で評価されるが、感染、発症が突破されても、重症化を防ぐことができれば十分な効果がある。
 しばらくは、ここに期待するしかない。

posted by 平野喜久 at 08:20| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月01日

外国人入国全面停止

 日本政府は30日午前0時から全世界を対象に外国人の新規入国を停止した。
 オミクロン株の海外での感染拡大を受けて水際対策を強化した。
 対象国を限定して入国制限は他の国で行われているが、いきなり全面停止に踏み切ったのは珍しい。
 これまでの日本政府の対応は、「遅すぎ、緩すぎ」と言われてきたが、今度は「早すぎ、厳しすぎ」に切り替えた。
 オミクロン株については、特性は何もわかっていない。
 感染力は格段に強いと言われるが、感染者が見つかった国でも、僅か1例、2例であり、市中感染が始まっているところはない。
 震源地の南アフリカでもオミクロン株の感染は100例程度しか確認されておらず、感染爆発が起きている様子はない。
 毒性については、まったくわかっていない。
 いまのところ、感染者は軽症で済んでいるようで、深刻な状況にない。
 ワクチンが有効かどうかもメーカーが検証中。
 ただ、ウィルスのスパイクたんぱく質の部分で30か所もの変異が確認されており、従来のウィルス株とは全く違う特性があるのではないかと警戒されている。
 いままでなら、日本政府はまず様子を見ることを優先するところだが、今回だけは、何もわからないうちに最も強い策を打った。
 空振りになる恐れが大きいものの、その批判も覚悟の総理の決断だったのだろう。
 海外のニュースでも、日本の対応が取り上げられるほど、驚きをもって受け止められている。

 いまや世界中がオミクロン株について最大限の警戒をしている。
 イギリスは、7月以降、感染防止のための規制を全面解除してきたが、再規制の方向に舵を切った。
 公共交通機関や店舗内でのマスク着用を義務化。
 着用を怠った場合は、罰金として200ポンドが課せられるという。
 200ポンドは日本円で3万円ほど。
 ワクチン接種も、6か月経過から3回目を打てるように準備していたものを、3か月に前倒しして打てるように方針転換した。
 これは、アストラゼネカ製のワクチンの有効性が3か月で急減することが分かってきたためだろう。

 30日時点の各国の新規陽性者数。
 イギリス:3万9千、ドイツ:6万8千、フランス:4万4千、アメリカ:11万6千、イタリア:1万2千、オランダ:2万2千。
 韓国では5,120人と過去最大の感染状況にある。
 一方、日本の30日新規陽性者数は、132人だ。
 ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず海外では過去最大の感染状況にある不思議。
 そして、日本だけは過去最少のレベルにとどまっている不思議。
 いまのところ、この謎を解明できる専門家はどこにもいない。


posted by 平野喜久 at 16:54| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月29日

オミクロン株の拡大

 オミクロン株の世界的な拡散が続いている。
 現在、感染者が確認されている国は以下の通り。
 南アフリカ、ボツワナ、イギリス、オランダ、デンマーク、ドイツ、チェコ、ベルギー、イスラエル、イタリア、香港、オーストラリア、カナダ。
 速報では、フランスでも8例が確認された。
 いずれも空港検疫で見つかった事例で、件数も数例に限られている。
 市中感染にまでは至っていない。
 感染力が従来株よりも強そうだということはわかっているが、それ以外の特性は不明。
 
 南アフリカでは、ワクチン接種率が24%でとどまっている。
 ワクチンが確保できずに遅れているわけではなく、国民の間にネガティブな情報が拡散しているために、拒否する人が多いのだという。
 南アフリカでも7月8月でデルタ株が流行しており、冬季の終了とともにほとんど収束していた。
 そこに突然オミクロン株が出現し、感染再拡大が始まった。

 世界各国の対応は早かった。
 直ちに入国制限や空港検疫の強化が実施され、各国政府の緊張感が伝わってくる。
 ただ、これまで強力な行動制限により国民のフラストレーションが蓄積している中、再び制限強化ということになれば、世情不安を引き起こしかねない。
 国によっては、デモや暴動が起きているところもある。
 クリスマスシーズンを迎えるにあたり、どこまでの対応にするのかは、非常に難しい。

 現在、オミクロン株が感染拡大しているのは、南アフリカだけ。
 それも、確認されているのは77人。
 感染爆発を起こしているようには見えないし、重症者が急増して医療崩壊を起こしている様子もない。
 
 
 
posted by 平野喜久 at 09:03| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月28日

オミクロン株の脅威

 南アフリカ発の新たな変異株ウィルスが世界を震撼させている。
 WHOは「オミクロン株」と名付け、警戒を呼び掛けている。
 オミクロンは、ギリシャ文字の15番目。
 イギリス発のアルファ株から始まって、様々な地域で変異株が出現し続けたが、ついに15番目にまで至っている。

 南アフリカではデルタ株が流行していたが、いつの間にかオミクロン株が主流になっていたという。
 オミクロン株の特性は正確にはわかっていないが、感染力だけは従来株に比べて格段に高そうだ。
 イギリスメディアの報道では、実行再生産数が2を記録している地域もあるらしく、感染力は過去の変異株の中で最大になりそうだ。
 香港では、ホテルで感染者の部屋の向かい側に入室していた人が感染する事例が確認されており、「ドアを開けた瞬間に廊下の空気が室内に入り、それで感染したのでは」とみられている。
 となると、空気感染が起きていることになり、事態は深刻だ。
 いままでは、飛沫感染か接触感染とみられていたが、空気感染となると一気にステージが変わってしまう。
 この変異株の出現のニュースは瞬く間に世界に拡散し、世界同時株安を引き起こしている。
 
 南アフリカ、ボツワナ、イスラエル、ベルギー、香港で感染者が確認されていたが、イギリスとドイツでも感染事例が確認されるようになってきた。
 イギリスはこれまで感染防止については全面解除の方針を貫いてきたが、ここにきて制限再強化の方向に舵を切った。
 レストランや公共交通機関ではマスクの着用を義務化、海外からの入国者にはPCR検査の義務付け、など。
 デルタ株の脅威が十分収まりきらない中で、オミクロン株の流入は去年の感染爆発を想起させ、緊張感が高まっている。
 
 日本では、デルタ株がほとんど収束状態にある。
 いわばウィルスの空席状態にあり、新たな変異株が流入した時には、一気に感染拡大を引き起こす恐れがあり、警戒されている。
 さらに、ワクチンがオミクロン株にどの程度有効かがわかっていない。
 一般論によれば、効力が多少落ちたとしても、一定の効果はあるだろうと予想されている。
 過去の経験から、ヨーロッパで流行した後に1〜2か月遅れで日本にも変異株の感染拡大が始まる。
 今後のヨーロッパでの感染状況から目が離せない。
posted by 平野喜久 at 10:04| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月26日

第6波の予測

 26日付産経新聞による。
 名古屋工業大学の平田晃正教授のチームの試算によると、1日当たりの新規感染者数は12月中旬以降に徐々に増え、東京大阪とも来年1月中旬にピークを迎える見込みだという。
 ただ、ピークでも東京は約370人、大阪は140人程度にとどまる予測になっている。
 この予測は、人流やワクチンの効果などを基に人工知能を使って試算しTEいる。

 第6波は1月中旬をピークにやってきそう。
 ただしその規模は、第5波の20分の1程度にとどまりそう。
 これが予測の結論。
 この程度の波であれば、季節性のインフルエンザの感染状況より穏やかな状態だ。
 本当にこのレベルでやり過ごせるのであれば、緊急事態宣言は出さずに済みそうだし、行動制限や飲食店の時間短縮やイベントの人数制限も必要なさそうだ。

 一方で、外国では過去最大の感染状況を更新し続けている国がある。
 ドイツ、オーストリア、オランダ、韓国など。
 クリスマスシーズンを前に緊張感が高まっており、再び強力な行動制限に舵を切り始めている。
 3回目のワクチン接種も急がれている。
 フランスでは、2回目接種後5か月から3回目を接種できるようにし、7か月目までに3回目を接種しない場合は、ワクチンパスを無効にするという方針を打ち出した。
 この冬のさらなる感染爆発を恐れて、3回目を国民に強力にすすめようとしている。

 


 
posted by 平野喜久 at 17:27| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月25日

ドイツの感染拡大

 ドイツでも過去最大の感染状況を迎えている。
 23日の時点で新規陽性者は63,000人を超えた。
 一時はヨーロッパの防疫優等国と言われたドイツだが、ここにきて様子が違う。
 ワクチン接種は67.5%にとどまっており、進んでいない。
 しかも、当初はアストラゼネカを使用していたが、血栓ができやすいという副反応の異常性に気づき、中年若年層への接種を急遽停止した。
 なので、高齢者ほどアストラゼネカの割合が高くなっている。
 アストラゼネカ製ワクチンの有効性に限界があるために、感染拡大が起きているのではないかという仮説が、ここでも当てはまる。

 ドイツでは再び強力な行動制限を課すようになった。
 3G政策と言って、国民の行動には3つの条件が課せている。

1.ワクチン接種済(接種後2週間以上経過していること)
2.コロナ罹患歴(罹患後半年以内であること)
3.検査陰性証明(過去24時間以内の検査による)

 この3つのいずれかに当てはまらなければ、レストランやイベント会場はもちろん、職場にも入れない。
 そのために、検査場では陰性証明を得るための行列ができている。
 陰性証明がないと職場に行けないからだ。
 さらに、公共交通機関もこの3Gが求められる。
 電車の中で抜き打ちでチェックがあり、証明を提示できないか拒否した場合は、途中で強制的に下車させられる。
 日本ではとても考えられないことが行われている。
 ドイツのニュース番組では、これらのことが「あたりまえのこと」という感じで報じられているのが驚きだ。

 また、ドイツ国内で感染が拡大している地域に特徴があるという。
 ベルリンのフンボルト大学社会科学研究所のハイケ・クレーバー教授の今年3月に2万人以上を対象に行われた調査に基づく結果。
 「教育とワクチン拒否に著しい相関性がある。教育レベルが低いほど拒絶も高い。そしてワクチンを拒否する人はAfDへの投票率が高く、右翼思想である傾向が高い。加えて、政治や政府、メディア、ヘルスケアシステムへの信頼度が低い」
 AfDとは、ドイツの極右政党のこと。
 教育レベルが低いほど極右政党の投票率が高く、右翼思想であるほど政府やメディアへの信頼度が低いというのだ。
 日本でこんなことを学者が言ったら、袋叩きになりそうだ。
 だが、政府やメディアへの信頼度が低い人ほどワクチン拒否をする傾向があるというのは、どこの国でも起きている現象だろう。
 


 
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韓国の感染拡大

 韓国では23日の新規陽性者数が4100人を超えた。
 過去最大の感染状況を迎えている。
 重傷者も500人を超え、死者も増えている。
 入院できず自宅待機の感染者も増えており、医療逼迫が深刻だ。

 韓国のワクチン接種率は79.2%に達し、日本よりも高く、世界最高水準にある。
 にも拘わらず過去最大の感染状況に至っている。
 これがなかなか合理的な説明がつかない。

 韓国では、11月1日にいままでの制限を全面解除した。
 感染者数が完全に下がり切っていなかったが、日本が全面解除に踏み切ったのを見て、同調したようだ。
 感染が下がり切る前に解除したことが再拡大の温床となっている。
 そして、ワクチン接種が進んでいるものの、その内容は日本とずいぶん違う。
 アストラゼネカ製のワクチンが27%、ファイザー製が54%となっている。
 アストラゼネカ製はもともと有効率が70%とファイザーやモデルナと比べて低いうえに、抗体量の半減期が3か月と非常に短い。
 そのために、早期に接種した高齢者を中心にブレイクスルー感染が起きているのではないかとみられている。
 さらに、ワクチン接種方法も日本と違う。
 当初はワクチン確保が十分でなかったために、1回目の接種だけを優先して進めていったという。
 そのために2回目がかなり遅れた。
 1回目を6月に、2回目を9月にという感じだ。
 日本では、ファイザーについては3週間、モデルナについては4週間の間隔を律義に守って接種していたが、韓国では柔軟な対応だったようだ。
 これらの理由で、ワクチン効果を十分獲得できまま制限解除をしてしまった結果が今の感染拡大なのではないかと推測されている。

 このアストラゼネカを接種している国で感染拡大が起きているという現象は、ヨーロッパでも確認できる。
 イギリスをはじめ、アストラゼネカが入っている国では感染拡大が起きており、このワクチンの有効性に限界があるのではないかというのが1つの仮説だ。
 
posted by 平野喜久 at 11:40| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月16日

新型コロナ3つの防波堤理論

 フランスのテレビ報道による。
 いまヨーロッパでは過去最大の感染拡大を起こしている国が散見される。
 ところが、すべての国が同じ状況ではなく、国によっては感染拡大を抑えられているところもある。
 2極分化している印象だ。
 その理由を、フランスのニュース番組で解説員が説明していた。

 いまフランスでは感染状況がひところと比べると落ち着いてきてはいるが、依然として1日1万人以上の感染者を出している。
 それでも政府が危機感を抱いていないのは、入院患者が過去7日間で6%増に抑えられているからだ。
 その理由は、フランスでは3つの防波堤が働いているからだという。
 1つは、ワクチン接種の進捗率。
 フランスでは接種率は77%に達しようとしており、周辺諸国の中ではかなり高い。
 2つ目は、予防措置のレベル。
 フランスでは、引き続き感染防止の措置がヨーロッパの中で比較的高いレベルで維持されている。
 3つ目は、罹患経験者の数。
 フランスでは、ここまでにコロナに罹患し回復した人が多く、その人たちは自然免疫を獲得している。
 これら3つの防波堤のおかげでフランスは重症患者を一定レベルに抑えることができているという解説だった。

 この理論は、ほかの国にも当てはめることができる。
 スペインでは、ワクチン接種率が82%と非常に高い。
 そのために、感染防止措置をかなり緩和していても、状況をコントロールできている。
 オランダでは、ワクチン接種率はフランスと同等なのに、感染防止措置を緩和してしまったために感染拡大が起きている。
 ギリシャは、感染防止措置は非常に厳しいのに、ワクチン接種率が66%と低く、そのために状況をコントロールするための防波堤が十分機能していない。
 ドイツやイギリスで感染拡大が収まらないのも、同じ理屈で説明できそうだ。

 この仮説を日本の状況に当てはめるとどうなるか。
 日本では、15日の新規陽性者数は79人。
 ヨーロッパの国々に比べると、桁が2つも3つも違う。
 ワクチン接種率は75%を超えた。
 スペインほどではないが、他の国に比べるとかなり高い。
 感染防止措置については、緊急事態宣言中に比べると緩和されてきているが、人々の基本的な感染防止行動は変わっていない。
 街中を行き来する人はみなマスクをしている。
 施設や店舗に入る際には、アルコール消毒をするようになっている。
 ソーシャルディスタンスは今でも気遣われている。
 1つめと2つめの防波堤は十分だ。
 ただ3つ目の防波堤、罹患経験者の数はヨーロッパの国々に比べると圧倒的に少ない。
 すると、日本では1つ目と2つ目の防波堤だけで、ほとんど収束レベルにまで抑え込むことができているということになる。
 この仮説で、各国の感染状況の違いをある程度は説明できそうで、興味深い考え方だ。
 だが、日本だけが極端に低いレベルに抑え込まれている理由は、これだけでは足りなそうだ。
 
 政府は、3回目のワクチン接種を8か月から前倒しして、6か月で摂取できるように準備を進めているようだ。
 医療関係者の接種を12月から始めるという。
 この冬を万全の態勢で乗り切りたいからだろう。
 日本政府はまだまだ警戒感を緩めていない。
 国民の感情も同じだろう。
 もうひと冬を我慢してやり過ごし、何事もなく春を迎えることができれば、成功ということになる。
 政府は、このような見通しや、今回のワクチン措置の狙いなどを国民に伝えればいいのに、それをしない。
 前政権も、説明不足が指摘されていた。
 それは総理の口下手のせいだといわれていたが、新総理になっても状況は同じだ。
 
 
posted by 平野喜久 at 09:31| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月15日

コロナ給付金は迅速給付を優先せよ

 いま政府は0〜18歳の子どもがいる世帯に10万円相当を支給するほか、住民税非課税世帯に10万円を支給する政策を検討している。
 だが、これが国民にまことに評判が悪い。
 収入の減っていない人やもともと高額の収入のある人にはコロナ給付金はいらない。
 そのような人たちを対象から外そうとすると、どこで線引きをするのかが大問題になる。
 必ずぎりぎりでもらえなくなる人が出てくるからだ。

 コロナ給付金は、コロナによる思わぬ収入減で生活に支障をきたしている人を救済するのが目的。
 ということは、生活保護受給者にはコロナ給付金はいらないということになる。
 年金生活者も同じ。
 公務員もコロナで収入が減っていない。
 このような人たちを対象から外せという意見もある。
 理屈としてはその通りだ。

 すると、民間企業に勤めている人の中にもコロナで収入の減っていない人は多い。
 中にはコロナのおかげで会社が空前の売上を達成し、多額のボーナスを支給されている人もいる。
 そのような人も対象から外すべき。
 一方で、コロナで本業の収入が減ったものの、副業を頑張って収入を維持している人もいる。
 この人は給付の対象外になって、副業を頑張ったために給付金をもらい損ねる。

 このように、具体的な検討をすれば、不毛な損得議論が展開されるだけだ。
 国民全員の合意を得られるような線引きを模索していたら、いつまでたっても実行されない。

 これは恒久的な生活支援策ではなく、緊急措置的な救済策なので、迅速性が求められる。
 条件を付けずに、全国民一律10万円の給付で直ちに実行する、これでいいのではないか。
 「濫救を恐れて、漏救を招くなかれ」
 緊急時の支援策はなによりも迅速性が求められる。
posted by 平野喜久 at 12:40| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

再びヨーロッパが感染拡大の震源地に

 オランダの11日の新規感染者数が16,000人を超え、過去最大規模になっている。
 ワクチン接種率は85%に達している。
 従来、専門家の見解では、80%を超えれば集団免疫状態に至り、感染は終息すると言われていた。
 オランダでは、とっくに集団免疫状態に至っていてもいいのに、感染拡大が止まらない。
 政府は9月末に社会的距離(ソーシャルディスタンス)規則を撤廃したが、その後に感染が再拡大したため、先週に感染抑制策の再導入を決定。
 店舗でのマスク着用を再び義務化し、ワクチン接種を証明する「コロナパス」の提示が必要な範囲を拡大した。

 いつのまにか集団免疫ということを言う専門家はいなくなった。
 ヨーロッパの様子を見ると、ワクチン接種を進めても感染拡大は収まらないことが分かったからだ。
 ただ、ワクチンには重症化を抑える効果ははっきり認められる。
 感染拡大が続いている国でも、重傷患者は一定数に抑えられているようだ。
 その点、同じ感染拡大でも、去年とはまったく様子が違う。
 
 日本では、1日の新規陽性者数は200人前後に落ち着いている。
 これは、国際的な視点で見ると驚異的な少なさで、日本はほとんど収束に至っているように見える。
 政府は、ワクチン接種の効果との見方を示しているが、ヨーロッパの様子を見るとそれは怪しい。
 日本ではこのまま次の冬をやり過ごすことができればと期待するが、たぶん無理だろう。
 この冬で第6波がやってくる。
 今度はどの程度の波になるかはまったく予測不能。
 各自治体では、第5波と同程度の波が来ても対応できるだけの医療体制を準備している。
 少々の感染拡大がみられても、緊急事態宣言を出さずにやり切れるかどうか。
 総理の胆力があれば持ちこたえられる。
 これで、春以降の体制が決まる。
 新年度は、アフターコロナの体制でスタートしたい。
posted by 平野喜久 at 12:09| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月11日

ドイツの感染者数過去最大

 ドイツの保健当局は11日、新たに5万196人の新型コロナウイルス感染者が確認されたと発表した。
 これは1日の感染者数としては、過去最大だ。
 ワクチン接種が進んでいる今になって、過去最大の感染者数を出しているのが驚きだ。
 ドイツでは感染防止策は解除の方向だったが、今月に入り感染拡大を受けて、再び感染防止策を強める方向にあるようだ。
 マスコミでは、過去最大の感染状況がトップニュースになっているが、国民の意識はまったくかけ離れていて、コロナなんか気にしない雰囲気にあるらしい。
 ドイツのワクチン接種完了は66.66%になっている。
 国民の3分の2だ。
 ワクチン効果か、感染拡大が続いてはいるが、重症者や死亡者は一定レベルに抑えられているようだ。
 それで、国民は騒いでいないのかもしれない。
 
 いまや日本のワクチン接種率は74.68%にまで達している。
 これは先進国の中ではトップだ。
 日本に続いて、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカとなる。
 なんと、接種率が悪くなるほど、感染者数が多くなっている。

 日本の1日の感染者数は200人前後で、これは他の先進国に比べると、100分の1〜200分の1のレベルで、ほとんどゼロに近い。
 「なぜ日本だけ?」という疑問がここでも持ち上がる。
 この謎は分からないまま。
 もしかしたら、ここに新型コロナの本質があるかもしれないのだが、結論が出ない。

 欧米の感染拡大の状況を見て、日本でも油断すると同じ状況に陥る可能性を指摘する専門家もいる。
 このような指摘は去年にも見られた。
 欧米で感染爆発が起きているとき、「いまのニューヨークは2週間後の東京だ」などと警告とも脅しともとれるアドバイスをする専門家がいた。
 だが、そのアドバイスはことごとく的外れだった。
 今回も、同じ状況が再来しているのではないか。
 
 これだけ感染状況が収まってきているのにも関わらず、日本国民は全員マスクをしている。
 街中で、電車の中で、マスクをしていない人は一人もいない。
 これほど徹底している国はほかにない。
 国が強制しているわけでもないし、法律で縛られているわけでもない。
 国や自治体がマスク着用を呼び掛けてさえいない。
 それでも、全国民が自主的にマスクを着用しているのだ。
 日本が他の国と違うとしたら、この国民性だろう。
 やはり、ファクターXは日本人の国民性にあったということか。

 この冬の第6波が警戒されているが、日本ではそれほど深刻な状況にはなりそうにない。
 というのは、日本人の警戒感がなかなか緩まないからだ。
 ある程度の行動の自由は確保できるようになる。
 飲食の自由化やイベントの開催などは従来通りに戻っていくし、旅行客も戻ってくるが、マスク着用は続くだろう。
 手指の消毒も続く。
 年末年始だからといって、従来通りの大宴会や懇親会は行なわれない。
 そして、なにごともなく冬を乗り切って春を迎えたとき、いよいよマスクなしの生活に戻れる。
 これが希望的観測だ。


posted by 平野喜久 at 21:49| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

漏救を招くなかれ

 コロナ関連の経済対策として、給付金構想が次々に明らかになってきている。
 18歳以下の子供への10万円給付、困窮学生への10万円給付、マイナポイント2万円付与。
 この経済対策の効果と意義については、議論が多い。
 どんな支援制度でも付きまとうのは、不公平感だ。
 対象を限定すれば、必ず給付対象から外れる人が出てくる。
 所得制限を設けた場合、ボーダーライン前後では僅かな違いで、給付金満額かゼロかに分かれ、極端な違いになる。
 前回の給付金では、この不公平感をなくすために(そして迅速給付のために)、全国民に一律10万円給付となった。
 国民は、経済対策の効果の有無や給付金の多寡よりも、不公平感に敏感だ。

 政府は、事業者へ持続化給付金の支援も検討している。
 新型コロナウイルス禍の影響で売り上げが減少した企業に対し、事業規模に応じて最大250万円を支給するというもの。
 前回の持続化給付金は最大200万円だったが、それが250万円になった。
 適応条件も、売上減少50%以上から30%以上に変更される。
 一方、個人事業主については、前回は最大100万円だったものが、50万円になる。
 (この個人事業主の支援額が減らされたのは、前回個人事業主を装った不正受給が横行したことの反省か)
 これはまだ検討段階で、具体的にどのようなスキームになるのかは不明。
 これも受給資格をどのように条件設定するかで不公平感が生じる。

 緊急事態宣言発出中は、営業自粛に協力する飲食店に対して給付金(協力金)が出された。
 これについても常に不公平感が指摘されていた。
 1日数万円の給付金ではまったく経営支援にならないと嘆く経営者がいる一方、零細飲食店の中には、普段の売上よりも多くの給付金を手に入れるケースもあったらしい。

 このように緊急時の給付金については、不公平感は免れない。
 不公平感のない仕組みを作ろうとすれば、時間がかかり手間がかかりコストがかかる。
 結局、そんな支援ならやらないほうがまし、となりかねない。
 
 緊急時の経済支援については、第1優先は迅速性だ。
 本当に困っている人に一刻も早く支援を届けること、これが求められる。
 そして第2優先は、十分な支援規模。
 わずかな支援では、手間とコストをかけただけで、困窮者の助けにならない。
 最悪の支援策は、「少なすぎ遅すぎ」だ。
 
 「濫救を恐れて漏救を招くなかれ」という言葉がある。
 これは、緊急時の支援策を実施するときの鉄則だ。
 「濫救」とは、野放図にカネをばらまいてしまうこと。
 「漏救」とは、本当に必要な人に支援が届かないこと。
 不必要な人にまで給付金が配られないようにするには、条件を厳しく設定し選別をしっかり行わなくてはならない。
 しかし、条件を厳しくすると、必ずその対象から外れてしまう人が出てくる。
 条件が厳しすぎるために、本当に困窮している人に支援が届かないとすると、この支援策の意味はない。
 それで、「少々無駄なバラマキになってしまったとしても、本当に困っている人にしっかり支援が届くことを優先しよう」という戒めとしてこの言葉がある。
posted by 平野喜久 at 09:28| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月09日

コロナ新指標

 政府の新型コロナウィルス感染症対策分科会が、感染状況を評価するための新たな指標を策定。
 いままでは、新規感染者数などに基づく4段階のステージ分類だったが、それを見直し、医療体制の逼迫度合を重視した5段階のレベル分類に変更した。

レベル0:感染者ゼロレベル〜新規感染者がゼロ
レベル1:維持すべきレベル〜医療が対応できている
レベル2:警戒を強化すべきレベル〜医療に負荷が生じ始めている
レベル3:対策を強化すべきレベル〜一般医療を相当程度制限しなければ対応できない〜緊急事態宣言
レベル4:避けたいレベル〜一般医療を制限しても対応できない〜災害医療的対応

 9月30日に緊急事態宣言が全面解除され、1か月以上が経過した。
 当初は、解除すればリバウンドが起きると心配されたが、今のところその様子はない。
 昨日の新規陽性者数は、全国で107人。
 重傷者も死者も一貫して減少傾向にある。
 ワクチンの2回接種率は74%に達し、先進7か国の中で最も出遅れていた日本が、いまやトップレベルにある。
 抗体カクテル療法などの軽症者が重症化を防ぐ治療薬も登場。
 経口治療薬も年内に実用化の動き。
 この状況を受けて、実態に合った警戒指標を新たに設定したということだ。

 気になるのは、具体的な数値設定が消えたこと。
 従来は病床使用率など数種類の数値をもとにステージを判断していた。
 その数値による判断基準も暫定的なもので、明らかな状況変化の中、従来の数値に縛られ続けるのは問題が多い。
 それで、数値基準がすべてなくなったのだろう。
 その代わり、レベル判断は、分科会メンバーによる総合判断で行われることになる。
 国民に納得感のある判断ができるかどうかがポイントになる。

 日本では1日の新規陽性者数が100人程度になっているが、これほど感染状況が収束している国は他にない。
 イギリスでは1日の新規陽性者数は3万人。
 ドイツでも3万人もの新規陽性者数が記録されており、過去最高の感染レベルにある。
 アメリカでは最悪時期に比べれば収まってきているが、それでも新規陽性者数は8万人レベルだ。
 それらに比べると、日本はほとんどゼロに近い。
 日本のような人口密度の高い国で、これほど感染状況が抑えられているのは、世界のなぞ。
 しかも、他の国のように強権的なロックダウンも行われていない中での感染収束だ。
 「なぜ日本だけ」というのが率直な印象だ。
 その理由は、専門家でも説明がつかないでいる。

 日本だけ感染状況が抑えられているのは、今に始まったことではない。
 去年の早い段階から言われ続けていた。
 欧米で感染爆発が起きている中で、日本の感染状況だけが、10の1から20分の1程度に抑えられていた。
 日本にだけ存在するファクターXがあるのでは、と言われたが、ついにその本質はわからないままだ。
 同じ状況が今も起きている。
 やはり、ファクターXは存在し続けているのだ。

 これから冬を迎えるにあたり、何らかの感染の波があるのは避けられないだろう。
 その時、政府が緊急事態宣言を出さずに持ちこたえることができるかどうか。
 政府がきちんと情報発信をし、国民を安心させることができれば、宣言を出さずに乗り越えられる。
 だが、政府がリスクコミュニケーションに失敗し、国民の不安が増幅してしまった場合は、世論に押されて宣言を出さざるを得なくなる。
 ひとえに総理の発信力にかかっている。

 この冬、宣言を出さずに乗り越えることができれば、日本のコロナ対策完全解除の日は近い。
  
posted by 平野喜久 at 09:53| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月29日

皇室のダメージコントロールはだれが?

 小室夫妻の結婚会見。
 眞子氏のマスコミや国民に対する強烈な敵意だけが際立った異様なものだった。
 自分のことで精いっぱいで、周りに気遣いを見せる余裕もなくなっている。
 過剰なストレスにさらされ続け、かなり心を病んでいる様子がうかがえた。
 急遽、質疑応答をなくし、文書での回答にしたのも、理解できる。
 質問は事前に提出させていており、想定外の質問を受けることはない。
 答えを用意し、それを読み上げるだけなのだが、それもできない心理状況なのだろう。
 特に疑惑追及型の質問については、考えるだけでまともな精神状態を維持できなくなっているのかもしれない。
 眞子氏の精神的な病状を、周りの人たちもなすすべがなく、本人の意に添うように対応するしかなくなっているように見えた。

 小室夫妻の結婚問題は、4年前の婚約発表の直後から継続していた。
 国民の心配や疑念が常に存在しており、消えることがなかった。
 むしろ、時間を経るにしたがって、それは増幅していった。
 そして、とどめは最後の結婚会見で、国民の心配は嫌悪感に変わり、それは皇室全体への不信感に発展しそうだ。

 なぜ、事態を悪化させ続け、ついに皇室の危機までもたらしてしまったのか。
 有名人のゴシップとしてではなく、危機管理の問題として考えてみたい。

 まず、この結婚問題に対する責任者はだれなのか。
 つまり、誰がこの問題のダメージコントロールをしていたのか、ということだ。
 実は、ここがわからない。
 宮内庁か。
 長官のコメントを見ると、傍観者的な姿勢で、この問題にまともに関与できていないのがわかる。
 長官は定期的に記者会見を行っているが、皇族方の様子を伝えたるだけだ。
 皇室内の問題に積極的に関与し、いい方向にもっていこうという意思も能力もなさそうに見える。
 宮内庁はそもそもそんな役割も権限も与えられていないのだろう。
 せいぜい、政府から派遣された皇族方のお世話係であり、皇族の問題になにがしかの働き掛けをするということ自体が出すぎた行いなのだ。
 宮内庁としてはただただ見守るしかなかったというのが実情だろう。

 では、ダメージコントロールの主はだれか。
 秋篠宮皇嗣殿下か。
 殿下もずいぶん心を悩ませておられた。
 家庭内では、眞子氏への説得も含めて努力をされたと思う。
 しかし、彼女の心を変えるまでには至らず、万策尽きて結婚を認めざるをえないことになった。
 国民の理解を得られていないことをもって、納采の儀など一連の儀式を行わない決断をされた。
 この儀式中止の決断に、殿下の苦悩と覚悟が見て取れる。
 これは、国民の理解が得られないまま結婚させることになってしまったことに対する、国民への謝罪に見えた。

 皇室内の問題としてとらえると、そのダメージコントロールの主は、天皇陛下または、上皇陛下か。
 両陛下も内々に働きかけを行っていただろう。
 強権的にご聖断を下せば、ことは抑え込めたかもしれないが、眞子氏の精神的ダメージは深刻な事態に至っており、とてもそのようなことで収まる状況ではない。
 結局、秋篠宮家内でもこじれて膠着してしまっている問題を、誰もどうすることもできなかったのが実情だったのだろう。
 誰もどうすることもできなくなった問題を、国民はハラハラしなかが見守り、心配し続けてきた、というのがこの問題の構図のようだ。

 では、実際はだれがダメージコントロールをしていたのかというと、眞子氏だったのだ。
 スキャンダル発覚後に、小室氏をアメリが留学に行くように仕向けたのも、留学中は何の行動も起こさず存在感を消すようにしたのも、今年4月になって6万文字にも及ぶ金銭トラブルの釈明文書を公表させたのも、眞子氏の差し金だったことを自ら明かした。
 眞子氏が複雑性PTSDに罹患していることを公表させたのも彼女の意思による。
 そして、このPTSDは国民の非難中傷が止めば寛解すること、PTSDであっても渡米の準備はできることを公表させたのも彼女の意思による。
 彼女なりに、どうしたらダメージを最小限に抑えられるかを必死で考えてきたことがわかる。
 しかし、事態は悪化の一途だった。
 何か手を打つたびに国民感情は悪化し続けた。
 つまり、対応がことごとく間違っていたことになる。

 たぶん、彼女は国民感情を読み間違えていたのではないか。
 実社会で暮らしていない彼女は、どのように国民の声を感じ取っていたのだろう。
 もしかしたら、彼女の情報源は、週刊誌報道とネット上の書き込み、そして小室氏とのウェブ会話。
 この偏った情報の中で、被害妄想を膨らませ、自分ひとり悩み、苦しんでいたのではないか。
 あの結婚会見での国民に向けた憎悪と敵意は、いままで蓄積された彼女の思いの発露だった。
 本人は必死に対応しようとしているが、はた目にはあまりにも幼稚で大人の知恵が少しも入っていないのがわかる。
 経験豊かな人の助けを得ることなく、ひとりでもがき苦しんでいるさまが痛々しく、お気の毒だ。

 よく、記者会見は小室氏が一人で対応し、自由質問が尽きるまで答えるということをすべきだった、という人がいる。
 確かに、そうすれば、小室氏の心意気を国民は肌で感じ、印象が好転したかもしれない。
 だが、それは眞子氏が許さなかった。
 小室氏が質問攻めにあい、窮地に立たされている姿を見ることすら、眞子氏には精神的に耐えられないことなのだ。
 
 複雑性PTSDという精神疾患は、一般には並大抵の病気ではなく、人格が崩壊するほどのかなり深刻な状態を言うらしい。
 記者会見の場で、神経に障る質問が出たときに、まともな精神状態を保てなくなる。
 会見会場には、妹の佳子様がひそかに駆けつけていたという。
 それほど心配な状態だったのだろう。
 深刻な病気を患っている眞子氏を、周りはどうすることもできず、ひたすら彼女の意に添うように進めるしかなくなっていたのかもしれない。
 彼女が一刻も早く苦しみから解放されることを願わずにはいられない。

 問題は、今回の結婚騒動が、皇室の危機に発展しかねないことだ。
 今ほど、国民の心が皇室から離れてしまったことはない。
 眞子氏の結婚に異を唱えた人は、もともと皇室に嫌悪感を持っていた人ではない。
 むしろ、皇室に敬愛の情を持っていた人ほど、今回の結婚に苦言を呈していた。
 それほど、眞子内親王殿下のことを心配していたのだ。
 ところが、眞子氏の言動は、皇室を支えている国民を敵に回してしまった。
 これが大問題なのだ。
 ダメージコントロールの失敗は、眞子氏が主導権を握ってしまって、他の人間が手出しできなくなったこと。
 そして、眞子氏自身が国民の真の声を理解できずに、ただ否定的な声を振り払うことしかできなかったこと。
 未熟なパイロットに乗っ取られた飛行機がダッチロールを繰り返して、ついに墜落してしまったという印象だ。

 だが、危機管理のポイントは、この先にある。
 それは、今回の結婚騒動を皇室の危機につながらないようにすること。
 これについては、また、別の機会に。 

 
posted by 平野喜久 at 13:51| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月27日

眞子さん会見の目的

 26日、秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまが結婚された。
 午後には、小室眞子さんとして、都内のホテルで小室圭さんと記者会見に臨んだ。
 記者会見といっても、記者を前にメッセージを読み上げただけで、質疑応答に応じることもなく退場。
 事前に出されていた質問には文書での回答が報道陣に配布された。

 この会見は、何を目的に行われたのか不明だ。
 国民の理解を得ようとしたのか。
 これまでの誤った報道を正そうとしたのか。
 それとも、いままで国民に心配かけたことを謝罪しようとしたのか。

 いずれも違う。
 これまで、何も言えず溜まっていた鬱憤を一気に吐露した印象だ。
 いまさら、国民に理解してもらおうとしていないし、誤った報道を正そうともしていない。
 まして、国民に心配をかけたことを謝罪する気持ちは少しもない様子だった。

 この会見で一番感じたのは、眞子さんの恨みと怒りだ。
 恨みと怒りの対象は、間違った報道を繰り返したマスコミと、その間違った報道を鵜呑みにして誹謗中傷した国民だ。
 眞子さんが今まで、いかに報道と国民の声に心を苛まれてきたかがわかる。
 複雑性PTSDとはこのことか、と理解した。

 この会見で、もう1つ感じたのは、主導権が眞子さんにあることを強調していたことだ。
 それは会見全体の演出からそうなっていた。
 まず、屏風の陰から登場するときには、眞子さんから進み出て、続いて小室さんが従って出てきた。
 壇上に上がるときには、眞子さんからすたすたと上がり、小室さんがそれについていく。
 お辞儀をするときも、眞子さんのタイミングに小室さんが合わせている。
 会見のメッセージは、眞子さんが口火を切り、小室さんは途中の補足説明のような部分を読み上げ、最後は眞子さんの言葉で締めくくり。
 退席の時には、眞子さんからさっさと壇上を降りていく。
 皇族の習慣では、夫の前を妻が歩くというのは、あり得ないため、はっとさせられる光景だった。
 もしかしたら、眞子さんが皇室を毛嫌いする理由は、こういうところにあったのか。
 
 メッセージの中では、驚くべきこともさらりと触れられていた。
 「圭さんのお母様の元婚約者の方への対応は、私がお願いした方向で進めていただきました」
 「圭さんが将来計画していた留学を前倒しして、海外に拠点を作ってほしいと私がお願いしました」
 これまでの小室さんの言動は、すべて眞子さんの差配によるというのだ。
 
 いままで、マスコミ報道では、世間知らずの眞子さんが、狡猾な小室さんの言いなりになり、好きなように利用されている、との論調が見られた。
 こう思われていることが、ことのほか腹に据えかねたらしい。
 それを完全否定するために、今回の会見が設定されているかのようだ。

 さて、この会見は、どのような結果をもたらすのだろうか。
 目的のはっきりしない会見なので、その成果は評価しようがないが、少なくとも国民の理解を得られる方向には役立たなかったことは確かだ。
 むしろ、眞子さんの怒りを感じ、近寄りがたさを感じた人が多かったのではないか。
 
 眞子さんの結婚問題は、単に、有名人のゴシップネタで終わらない。
 これは、皇室存続の危機にもつながりかねない深刻な事態を招いている。
 というのは、明治以降、これほど皇室に対する国民の不信感を招いたことはなかったからだ。
 今回の結婚問題を、皇室の危機管理の問題としてとらえると、奥が深い。
 次回は、危機管理の視点から、この問題を考えてみたい。
posted by 平野喜久 at 15:20| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月20日

新ドラマ「日本沈没〜希望のひと〜」

 10月10日から新しいドラマが始まった。
 「日本沈没〜希望のひと〜」(TBSテレビ)
 原作は、小松左京のSFで、1970年代に大ヒットし、映画化され、その後、ドラマ化され、高視聴率を取った。
 それが再び登場だ。
 ただ、原作通りではなく、コンセプトはそのままで、時代を現代に置き換え、新たにストーリーを構築したという印象だ。
 災害多発の時代に合って、このテーマがリバイバルされるのは、タイムリーと言え、今後、どのようなストーリー展開になるのか、楽しみだ。

 田所博士を香川照之が演じており、浮世離れしたマッドサイエンティストぶりを発揮している。
 主人公は、原作とは違い、環境省の若手官僚:天海啓示という設定だ。
 第2回までのドラマ展開では、当初は、田所の関東沈没説に反発していた天海が、田所を無理やりつぶそうとする政府や研究者の姿勢に反感を覚え始める様子が描かれている。
 ここまでは、官僚同士の話し合いや、閣僚らの動きが中心になっており、ドラマとしては見どころがない。
 伊豆半島沖にあるという日之島という島が突然沈没する様子が描かれていたのが、唯一の見どころだった。

 旧作ドラマの日本沈没では、CGが存在しない時代で、すべてがミニチュアモデルを使用しての演出だったが、ここが今回はリアルに描かれることになりそう。
 制作費に20億円をかけたらしい。
 今後のスペクタクル場面に期待が高まる。

 旧作ドラマは26回シリーズだった。
 1回ごとに必ず日本のどこかで異変が起き、地震が発生し、有名な観光地が破壊される場面が登場した。
 誰もが知っている観光地が被災する場面は、見る者がカタルシスを得られる見どころでもあった。
 印象に残っているのは、金閣の水没、清水寺の倒壊、鎌倉大仏の地盤沈下、東京タワーの水没。
 いま見直してみると、模型を作って壊しているだけというのがまるわかりだが、それでも、当時はその映像に目を見張った。
 新作ドラマではCGでどこまでスペクタクル場面を再現できるだろうか。
 
 さて、このSFの最初の見どころは、日本沈没説がどうして出てきたのか、というところだ。
 現実には日本列島が沈没するというのはありえない。
 これは、水に浮いている木切れが、突然沈み始めることはありえないのと同じように、日本列島が沈没することは原理的にありえない話だからだ。
 しかし、SFではそこを乗り越えないとストーリーが進まない。
 そこで、それをどのように乗り越えているのかというところが、注目ポイント。

 ドラマ中では、田所が関東沈没説の根拠を説明する場面がある。
 いきなり日本沈没ではなく、関東沈没から話が始まっているのが面白い。
 田所の説明では関東沈没の根拠はこうなっていた。
 関東地方は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートという3つのプレートがぶつかり合っている世界でも非常に珍しいところで、この3つのプレートが重なり合って微妙なバランスを保っている。
 ところが、最近の地球温暖化による海面上昇で、このバランスが不安定になってきた。
 そのことで、プレートの境目ではスロースリップ現象が起き始めており、なおかつ政府が行っているコムスという海底掘削事業により、海側プレートの沈下速度が速まっている。
 このことにより、関東の沈没が引き起こされる。
 
 「地球温暖化」「海面上昇」「スロースリップ」という最近のキーワードを混ぜ、海側プレートの沈下と陸側プレートの引きずり込まれという専門知識をベースにうまく沈没説を構成していた。
 専門家が見れば、「なんのこっちゃ」の説明にしかなっていないが、素人には十分リアリティのあるストーリーだろう。

 日本沈没は、結論が題名になってしまっている珍しい作品。
 結論がわかっていながら、どのようにそこまでのストーリーが展開していくのかについていろんなイマジネーションを掻き立て、期待感が大きい。
 現代版の日本沈没、今後の展開を楽しみたい。

 
posted by 平野喜久 at 14:25| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする