2020年02月25日

新型肺炎はBCPの対象リスクだ

 新型肺炎のリスクが高まっている。
 いま私たちは感染拡大期の入り口に立っており、今後の展開から目が離せない。
 この新型肺炎は間違いなくBCPの対象リスクだ。

 今後、日本は感染拡大期に入っていく。
 日本各地で散発的に感染拡大が始まる。
 ここで、企業も非常態勢に切り替えていかなくてはならない。
 新型感染症のリスクは、ヒトだけにダメージを及ぼす災害なので、ひたすらヒト対策を徹底するしかない。
 企業の対策のポイントは、

・職場で集団感染を起こさないこと

 ここに全力を挙げる必要がある。
 そのためには、

1.まず、従業員が感染しないこと
2.万が一、感染者が出たとしてもウィルスを職場に持ち込ませないこと

 これに尽きる。
 今回のウィルスは毒性が低く、重症化するのは高齢者か基礎疾患の持ち主だけという認識から、大げさに騒ぐ必要はないという人もいるが、そうではない。
 多くの人は重症化したり死亡したりしないとしても、発症者は、高熱、吐き気、頭痛、下痢、関節痛、倦怠感などに襲われ、一定期間働けなくなる。
 死ななければ感染しても構わないという人はいないだろう。

 特に、新型感染症については、免疫を持っている人が誰もいないので、職場にウィルスが持ち込まれると簡単に集団感染を起こす。
 すると、その職場の従業員が一斉に感染し、一度に全員が出社不能になりかねない。
 企業としては、この事態を避けなければいけないのだ。
 だから、これは、個人の健康の問題、病気の話と認識しないことだ。
 あくまでも企業の危機管理の問題と捉え、組織として対応する必要がある。

 この新型肺炎は、地震や風水害と同じように、企業の業務継続を脅かすBCPの対象リスクとして対応しなければならない。


 
posted by 平野喜久 at 09:17| 愛知 | Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新型肺炎:感染拡大期の直前

 新型肺炎のリスクが高まっている。
 政府の専門家会議では、「これから1〜2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際だ」と見解を発表した。
 いま、日本では「国内感染早期」にある。
 国内で感染が認められるが、持続的な感染拡大にまでは至っていない段階だ。
 これが更に進行すると、「国内感染期」に入る。
 国内感染期は、更に3つの段階に分かれ、「感染拡大期」「蔓延期」「回復期」と進んでいく。
 いま、私たちは、感染拡大期の入り口に立っている。
 収束の目途が立たないどころか、まだピークがいつになるのかさえ分かっていない。

 だが、ピークがいつになるのか分からないということは、逆にみると、現在の対応次第で、ピークをコントロール可能だということでもある。
 専門家会議が「1〜2週間が瀬戸際」というのは、そういう意味だ。
 ピークの高さを少しでも低く、ピークの時期を少しでも遅らせるための対策が求められている。

 本日25日に、政府が専門家会議の見解を踏まえ、対策本部の基本方針を決定する。


 
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2019年07月18日

大地震被害 企業に速報

 17日付読売新聞の記事による。
 政府は、南海トラフ地震などの巨大地震の発生直後、全国各地の被災状況を推定し、企業に有料配信することを決定した。
 防災科学技術研究所が開発したシステムで、当初は、被災地での救助・復旧を迅速に進めるため、内閣府の大型研究プロジェクトとして取り組んできたもの。
 この情報は、政府内にとどめるのではなく、広く民間事業者にも広げることで、早期の復旧につなげようとする狙いがある。

 このシステムは、全国約5000地点の地震計の記録と地盤や建物の構造のデータ、昼夜の人口などから、各地の震度や建物被害、死傷者数を推定する仕組み。
 250m四方ごとの精度で情報提供されるらしい。
 希望する企業は、月額48,000円を負担。
 支店、工場、取引先などの地域を登録。
 複数地点で震度3以上の揺れが生じると、20分以内に推定結果を企業に配信する。

 このシステムは、全国に拠点や関連会社を持つ大企業には有効だ。
 重要拠点が全国に分散している場合、地震発生後にまずやらなければいけないことは、各拠点の被災状況を把握することだ。
 この被災状況を把握しないことには、次の行動が起こせないからだ。
 正確な情報まではつかめないにしても、まずはこのシステムによる推定情報をもとに、どのエリアにどの程度の被害が予想されるのかを把握できれば、まずは今後の活動方針が決められる。
 これだけでも、緊急時の初動に違いが出る。
 情報の遅れは初動の遅れにつながり、それが結果の良しあしに直結する。
 いち早く状況把握するツールとして、このシステムは心強い。
 いまは有料配信でスタートするが、ゆくゆくは一般に公開される方向だろう。

 ただ、運用が始まったばかりで、どの程度の詳しい情報がどの程度の精度で提供されるのかはよく分からない。
 このシステムは、震度情報から各地の被害状況を推定するというもの。
 被害状況を確認した結果を集約して配信するものではない。
 全国に拠点があり、地震直後から行動開始しなければならない企業にとっては必要な情報だ。
 だが、地域密着で取引先もエリア限定的な中小企業には、不確定な推定情報よりも、現地の正確な情報収集の方が優先される。


posted by 平野喜久 at 08:59| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月07日

知財「下請けいじめ」

 読売新聞の報道による。
 公取委の調査によると、大企業が優位な立場を使って中小企業の知的財産を不当に吸い上げている実態が明らかになったという。
 製造業者3万社を対象に調査し、約半数から回答があったが、730件の問題事例が報告されたらしい。

・設計図やデータなど、契約にない知財やノウハウを無償で提供させられた・・・250件
・共同研究の成果が、相手に一方的に帰属する契約を強いられた・・・130件
・自社のノウハウが含まれる設計図などを一方的に低い価格で提供させられた・・・120件
・門外不出のノウハウや製造手法の開示を一方的に義務付けられた・・・110件
・特許などを出願する際に、相手の許可を得なければならない取引条件になっていた・・・100件

 中小企業が持つ特許は画期的な大発明であることはほとんどなく、多くは改良特許だ。
 改良特許とは、より効率が上がる製造法とか、より歩留まり率が高まる方法とか、従来の方法よりもより良い製造方法をいう。
 これは製造現場の日々の工夫と試行錯誤の積み重ねの中で獲得する技術で、中小企業の最も得意とするところでもある。
 このとっておきのノウハウを大企業に不当に吸い上げられてしまうケースが起きているという問題提起だ。

 これは、今に始まった話ではなく、昔からある日本の製造業の宿命みたいなものだ。
 中小企業は独自技術を自社1社で秘匿し続けることは不可能だ。
 それは、技術はあっても生産能力が不足しているからだ。

 その会社の特殊技術でしか作れない部品があったとしよう。
 その会社は、この部品の製造を独占できるので、同業他社に対して圧倒的な競争力を持つことになる。
 この部品の受注を一手に引き受け、好業績を維持できる。
 ここまでは、理想的なシナリオだ。
 だが、現実は中小企業1社に利益を独占させるほど甘くはない。

 取引先から見ると様子が変わってくる。
 この部品は特殊技術を持っているその会社にしか発注できない。
 月に100万個の部品が必要なのでその会社に発注したとしても、それだけの生産能力がないとどうなるか。
 月に50万個が限界ですということになると、取引先の生産計画は変わってしまう。
 つまり、取引先の生産計画は下請けの中小企業1社の生産能力に制約を受けてしまうことになる。
 下請け1社の生産能力に合わせて生産計画を立てていたら、必要量を確保できず、製品の市場投入がままならず、市場競争でライバルに後れをとることになる。
 こんなことが許されるはずがない。
 そこで、その下請けが持っている技術を同業他社にも使わせるようにして、同じ技術レベルで同じ部品を大量に作れる体制を確保しようとする。
 下請けが技術の提供を拒んだらどうなるか。
 その場合は、親会社内部で製品の市場投入が不可能との判断が行なわれ、その製品の開発を断念するか、その部品を使用しない設計変更をするか、どちらかになる。
 そうなれば、その下請けの独自技術を生かす場はなくなり、親会社としてはその会社と取引をすべき理由まで失う。
 下請けにとって技術の提供拒否は、そのまま取引の消滅に直結してしまうのだ。
 それで、気前よく技術を提供し、取引先にとって必要な会社との位置づけを獲得したほうが得策となる。
 こうして、独自技術やノウハウを無償提供するのが当たり前の状況ができあがる。

 本来なら、下請けの独自技術やノウハウを尊重し、その会社の生産力に不足がある場合は、技術やノウハウの使用契約を結んで有償で他社展開するという方法をとるべきだ。
 そのことで下請けの技術開発のモチベーションを維持し、結果として系列企業全体の技術力を向上させることができる。
 ところが、これは親会社の担当者としては煩わしい。
 技術使用契約を締結し・・・などという話になると上層部に諮り、経営トップの承認を得ないと話が進まなくなる。
 担当者レベルで処理したいと思えば、「なんとかお願いしますよ。その代わりお宅への発注はどこよりも優先しますから」という言葉で下請け社長を説得したほうが簡単だ。
 この口約束は、担当者が異動になるとうやむやになる。
   
 「うちにしかない独自技術を持とう」というのが中小企業の戦略としてよく言われることだが、独自技術を持ってしまうことはいいことばかりではない。
 
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2019年04月24日

コンビニ24時間営業:公取委

 朝日新聞の報道による。
 ようやく公取委が動き出した。
 コンビニのオーナーが24時間営業の見直しを求め、それを本部が一方的に拒否しオーナーに不利益を与えた場合、独占禁止法の適用対象とする方向で検討に入ったという。
 まだ「検討に入る」という観測気球的な情報発信が行われているだけ。
 具体的にどのようなケースを対象にどのような規制をかけようとしているのかは不明。
 まずは、脅しをかけてコンビニ本部の自主対応を求めているというところか。

 近年の人件費の上昇で、深夜営業のコスト負担が増えている。
 個別店舗の商圏特性を無視して、全国一律の24時間営業の強制をすると、赤字が常態化してしまう店舗が出てくる。
 深夜におにぎり1個を売るためにバイトを夜通し雇わなくてはいけないということが簡単に起きるからだ。
 オーナー側に確実な不利益が明らかでありながら、契約を盾に24時間営業を強制するのは、「優越的地位の濫用」にあたる。
 これを規制していこうというのが公取委の狙い。

 コンビニシステムについては、本部とオーナーという圧倒的な地位落差の大きい契約関係から、その内容には問題が多い。
 24時間営業の強制もその1つ。
 形式上は独立事業者同士の契約であり、本部はその契約内容の履行を求めているだけであり、そこに違法性は何もない。
 ところが、その契約内容自体が、独立事業者としての権限も裁量も認めないようなもので、形式と実態が乖離しているのは明らか。
 そこにようやく公的なメスが入ろうとしている。

 
 
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2019年04月22日

ようやく経営変革が始まったコンビニチェーン


 コンビニチェーンの経営変革がようやく始まろうとしている。
 一部店舗で試験的に24時間営業をやめ、深夜は閉店する方法を試みている。
 新規出店も見直し、店舗数の増加を抑える方向で方針が発表されるようになった。

 この背景には、コンビニチェーン本部の経営拡大の一方で、店舗オーナー側の疲弊がクローズアップされてきたことがある。
 きっかけは、あるコンビニオーナーの反乱だった。
 24時間営業はもう限界だとして、勝手に深夜時間帯の閉店を強行した。
 当然ながら本部は勝手な時間短縮を認めない。
 24時間営業が契約に明示されており、時間短縮は契約違反。
 違約金1700万円の支払いを迫るなどの強硬姿勢で対応した。
 ところが、マスコミに報じられたことで様子が変わった。
 横暴なコンビニ本部と気の毒なコンビニオーナーという図式に世論は敏感に反応した。

 報道でこのコンビニオーナーの実態が浮かび上がる。
 いまは人材不足で、バイトを確保するのが大変。
 バイト代はうなぎのぼり。
 このバイトの確保はオーナーの責任。
 バイト代が経営に重い負担となってのしかかる。
 更に多店舗出店で近隣に同じ看板のコンビニが乱立し売り上げが激減。
 バイトを雇う余裕がなくなり、オーナー家族で24時間を回さざるを得なくなる。
 夫婦だけでなく、高校生の息子2人もレジ打ちを手伝う。
 長男は大学進学を断念し、コンビニ手伝いに専念。
 廃棄用の弁当を食べながら家族でなんとか24時間営業を続ける。
 そんな中、長男が自死。
 絶望感の中、オーナーは短縮営業の強行に出た。

 初めのうちは契約を盾に24時間営業を迫っていた本部も、世論を敵に回すことを恐れ、ここへきて柔軟な姿勢を見せ始めた。
 
 コンビニ経営の過酷さは以前から知られていた。
 コンビニのシステムは実によくできていて、何があってもコンビニ本部には傷がつかず、オーナーにだけリスクがかかるようになっていた。
 「コンビニ会計」という会計処理はその典型だ。
 コンビニの売上は全部一旦本部に納められ、その中から仕入れ代金とロイヤルティを引かれて、残金がオーナー口座に振り込まれる仕組み。
 その残金から、バイト代や光熱費など店舗運営の経費を払う。
 廃棄ロスがあっても、それはオーナー負担となる。
 時々チェーン全体で安売りキャンペーンが行われるが、安売りの分が仕入れ値が下げられていればいいが、そうなっていない。
 その一方、本部では安売りキャンペーンを行うからと言って、納入業者には値引きを迫っていたりする。
 キャンペーン商品は、本部からの一方的な納品で押し付けられる。
 売れ残ったら、すべてオーナー側の負担だ。
 本部にはリスクがない。
 うまい仕組みだ。
 オーナー側は、本部でどのような会計処理が行われているのか分からない。
 分からなければチェックのしようがなし、日々多忙な中、そのようなことをこまごまと調べているような余裕がない。
 それに、会計処理の不合理を指摘したところで、本部側が折れて修正処理をしてくれる可能性は皆無だ。

 コンビニシステムの不合理さは、マスコミに取り上げられることはほとんどなかった。
 テレビや新聞などの大手メディアで取り上げられるコンビニの話題は、常に本部側の提供する情報に限られていた。
 まれに、コンビニオーナーの悲惨な実態が経済雑誌に取り上げられることがあったが、次号の記事で、本部側の反論や順調に経営を行なっているオーナーのコメントが紹介されていた。
 その経済雑誌には、その後、コンビニ関連の記事が出なくなる。
 コンビニチェーンはマスコミにとって巨大なスポンサーであり、敵に回せないのだろう。

 しかし、今回は違った。
 あるコンビニオーナーの時短営業の強行がマスコミに取り上げられたのだ。
 これは、オーナー側にうまい広報戦略があったのかもしれない。
 オーナー家族の悲劇的なストーリーも人の心を動かしやすかった。

 コンビニの24時間営業は簡単にはなくならないだろう。
 時短営業は確実に本部の売上を減らすからだ。
 それに、我がチェーンだけ時短すれば、ライバルチェーンを利するだけ。
 そんなことを本部が率先して行うはずがない。

 ドミナント出店といって、ある地域に集中的に同じコンビニチェーンを出店する戦略がある。
 これは、その地域のコンビニ需要を独占するとともに、物流の効率化を狙った本部側の戦略だ。
 ところが、これはオーナー側にとっては、カニバリを起こし、売上激減をもたらす。
 本部としては、おにぎり1個でも売れれば必ず売上増につながる。
 正確には、そのおにぎりが売れなかったとしても本部に損はない。
 店舗におにぎりを納入できた時点で売り上げが立つ。
 店舗を増やせば増やすほど本部の売上は着実に増加していく。
 しかし、オーナーにとって、そのおにぎり1個を売るためにどれだけのコストを負担するかが経営を左右する。
 本部とオーナーとで戦略的な利害が一致しないところに、このビジネスモデルのいびつさがある。
 
  
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2019年04月11日

ベテランの初入閣議員はリスクが大きい

 桜田五輪大臣が更迭となった。
 「復興以上に政治家が大事」との失言を受けての処分だった。
 10日、高橋衆議院議員のパーティーでのスピーチの中で問題発言があった。
 その2時間後には更迭処分が決定。
 問題を拡大させないスピード対応だった。

 今回の失言、スピーチ全体を見ると、特に問題だと感じない。
 スピーチの冒頭、災害復興の話で前振りを始め、本題である高橋議員の話に切り替えるときに、つなぎの言葉として「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と言ってしまった。
 このパーティは高橋議員を応援するための集まりであり、当座でスピーチを聞いている人には、自然な流れで特に違和感を覚えなかったのではないか。
 だが、記者は聞き逃さなかった。
 つなぎの言葉の部分だけを抜き出し、「復興以上に政治家が大事」と表現が加工され大きくクローズアップされた。
 ここだけを報道で聞かされると、とんでもない問題発言に見える。
 桜田氏にとっては、そんな意味で言ったのではないと抗弁したい気持ちでいっぱいだっただろうが、余計な抗弁は、騒ぎを大きくするだけなのは明らか。
 それで、桜田氏に言い訳する余裕を与えずに、即更迭の処分となった。

 桜田氏は、これまでに不安定な国会答弁やぶら下がり取材での危なっかしい発言が問題視されていた。
 一つ一つは致命的なものではなかったが、あまりにもイエローカードの累積が多すぎた。
 それで、今回は一発退場となったのだろう。

 彼は、当選7回のベテラン。
 入閣待機組の一人として今回初入閣になった。
 だが、ベテランの初入閣は、失言リスクが大きい。
 それは、議員としてはベテランでも、閣僚としては初心者だからだ。
 支持者を前にしてのスピーチは得意でも、閣僚としての公式発言は未経験。
 スピーチ慣れしてしまっているために、気を許して、これまでと同じ調子で受けを狙って喋り捲ると、問題発言の連発となる。
 マスコミもそこが分かっているから、ベテランの初入閣者には、わざと失言を誘うような質問をぶつけたりする。
 条件反射的にその場の雰囲気でしゃべってしまうと、無意識のうちに問題発言をしゃべらされている。
 
 特に、桜田氏の不安定さは新たな失言を予感させるものがあり、マスコミも張り付いてチャンスをうかがっていたのだろう。
 そこに、今回の発言が飛び出し、マスコミが飛びついた。
 桜田氏の真意がどこにあったかはどうでもいい。
 問題を指摘できる表現が見つかればOK。
 今回、マスコミの張る網の中に不用意に飛び込んでしまったという印象だ。
 ひとえに、桜田氏の甘さとしか言いようがない。

 報道によれば、桜田氏は、特別に大臣秘書官を2人態勢にしていたそうだ。
 国会答弁が非常に不安定で危なっかしかったからだ。
 途中からは、答弁原稿を読み上げるだけのスタイルになった。
 あらゆる質問を想定し、答弁原稿を用意していたらしい。
 野党側の質問に合わせて原稿を差し出し、桜田大臣がそれを読み上げるというスタイルになった。
 ところが、それでも原稿の読み間違いを起こす。
 「1500億円」を「1500円」と誤読し、失笑を買った。
 「石巻市」を「いしまきし」と何度も誤読し、秘書官に耳打ちされて初めて気づき、周りをあきれさせた。
 桜田氏の大臣としての資質以前に、基本的な能力の欠落を感じさせる。
 派閥領袖の要請でやむなく一番任務の軽そうな大臣職につけたはずが、それさえまともにこなせなかった。
 このような人物をいつまでも大臣職にとどめたのは危機管理のミスだ。

 国会答弁は秘書官のコントロールで危なっかしいながらも乗り切りつつあった。
 しかし、議員応援のパーティーでのスピーチは無防備で、そこに落とし穴があった。
 次の失言予備軍としてマスコミに狙われているのは明らかなのだから、もっと慎重になるべきだった。
 気を付けたとしても、自分のスピーチスタイルは長年の習慣でしみついてしまったものであり、今更変えようがなかったのだろうか。
 ならば、周りがもっと配慮すべきだった。
 応援スピーチは辞退するか、その場の思い付きで自由にしゃべるのではなく、スピーチ原稿を用意し、その場では読み上げるだけ、ぐらいの対応でちょうどよかったのではないか。

 危機管理の事例として見たとき、考えさせる要素が多い。

posted by 平野喜久 at 10:18| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月22日

韓国との協議打ち切り:レーダー照射問題

 防衛省が、レーダーの探知音を公開するとともに、最終見解を発表した。
 探知音は、レーダー波を音声に変換したデータで、ビーという持続した音だ。
 探索レーダーであれば「ビ、ビ、ビ・・・」というパルス的な音声になる。
 だが、公開された音声は持続型のレーダーであり、これは火器管制レーダーがロックオンしたことの証拠となる。
 これは、韓国側が今月18日になって、「韓国の警備救難艦が捜索レーダーを発しており、それを日本側が誤認したのでは」と言い始めたため、それへの反証として公開されたものだ。
 日本の哨戒機が受信したのは、捜索レーダーではなく、明らかに火器管制レーダーであることが、素人でもはっきりわかる。

 ところが、韓国側はこの音声を「実態の分からない機械音」としてはねのけた。
 この音声を公開したことの意味をまったく理解していない。
 それとも、理解していないふりをしているのか。

 防衛省は、同時に最終見解として文書を公開した。
 その文書を読むと、いままでの協議の経緯と、韓国側がまったく真相解明に協力的ではないこと、それどころか主張が二転三転し、論点をずらし続け、とても話し合いで問題が解決できる状態ではないことが分かる。

 ここには、協議の様子を印象付ける文言が盛り込まれている。
 協議で韓国側が「脅威を受けたものが脅威と感じれば、それは脅威だ」とまったく客観性に欠ける主張を繰り返している、というくだりだ。
 協議に臨む日本側の担当者の脱力感が伝わってくるようだ。
 協議打ち切りもやむなし、との判断は実感として理解できる。

 今回公表された最終見解は、非常に冷静で論理的な文章で、分かりやすく納得感が高い。
 ところが、不安がある。
 このような客観的で理性的なメッセージは韓国国民には届かない。
 これは、韓国国民へではなく、日本人と世界世論へのメッセージなのだろう。

 韓国側の対応には終始驚かされどおしだ。
 国家機関が信じられない反応をし続けている。
 だが、これが韓国流のケンカの手法なのかもしれない。
 口論で勝つには、いかに相手を黙らせるかがポイントとなる。
 そこでは、事実であるかどうかや論理的であるかどうかは関係ない。
 黙ってしまうと負けを認めたことになるので、とにかく言い返す。
 さらに、相手のトーンよりも上を行く口調で攻撃をする。
 言い返す言葉を失った方が負けということになる。
 今回の韓国側の反応は、まさにこのパターンを再現しているかのようだ。
 特に、レーダー照射問題を、哨戒機の異常接近問題にすり替え、逆に日本に謝罪を要求するあたりは、韓国流クチゲンカの定石なのではないか。

 日本人としては、韓国流のクチゲンカは対応しにくい。
 論点が次々に拡散し、手が付けられなくなる。
 1つ1つは出鱈目な主張なので反論するのは簡単なのだが、それにいちいち反論していると、際限がなく本質からどんどん離されて行ってしまう。
 防衛省の最終見解も、哨戒機の異常接近の話、無線の問いかけの話など、本質と関係ないところに字数をかけている。
 そのために、文章が異常に長くなり、相対的にレーダー照射のウェイトが小さくなってしまっている。
 第三者がざっと目を通すと、日本側は細かい理屈をくどくどと言い訳しているような印象を持たれかねない状況だ。
 韓国流クチゲンカの定石に見事にはまってしまったか。
 日本を黙らせたということで、韓国側の圧勝ということになるのかもしれない。

 事件、事故が起きたとき、やるべきことは「事実の確認」「原因の究明」「再発の防止」。
 日本側が求めたのは、再発の防止だったが、韓国は最初の「事実の確認」から先に進めなかった。
 今回のレーダー照射はどうして起きてしまったのか、二度と起きないためにはどうしたらいいのか。
 韓国の軍組織に問題があるとすれば、それを至急取り除く絶好の機会だったはずだが、検証されることもなく、問題を温存したまま存続する。
 韓国軍の組織は本当に大丈夫か。
 

 
 
 
 

 
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2019年01月14日

韓国大統領の記者会見:がっかりは日本人だけではなさそう

 10日に韓国大統領の年頭記者会見が行われた。
 その中で、日韓問題について「日本政府はもっと謙虚な態度をとるべき」と発言したことが報じられ、日本の世論に火が付いた。
 大統領の発言のすべてに突っ込みを入れたくなるほどの無責任な発言に終始していた。
 普段は韓国の立場を配慮した言説を心がけている朝日新聞や毎日新聞までが批判的な社説を掲載。
 大手マスコミの論調が一致するのは珍しい。
 それほど、大統領の発言は擁護のしようがないほどの無責任なものだった。

 日韓問題への言及は、年頭の所信表明では一切触れられず、その後の記者会見でも、韓国の記者からは一切質問がなかった。
 その場に居合わせたNHK記者は、その雰囲気に違和感を覚えたという。
 このままでは、日韓問題への言及はないまま終わってしまう。
 大統領の指名する指先が自分に向いたと思った瞬間、直ちに立ち上がり、徴用工問題についての質問をぶつけた。
 この質問への回答で、あの問題発言が飛び出したのだ。
 この時、大統領はNHK記者を指名したつもりではなかったようだ。
 後ろの記者を指名したつもりが、NHK記者が質問を始めてしまったらしい。
 日韓問題はこじれにこじれており、できれば言及を避けたかったのかもしれない。

 日韓問題に対する大統領の発言を聞くと、問題を我がこととしてしっかり受け止め、自らの責任で解決していこうという姿勢はまったく見られない。
 ひたすら責任逃れをしようとしているようにしか見えない。
 これは、日韓問題だからこうして逃げ回るしかないのだろうと思ったが、どうやら、今回の記者会見全体がこのような雰囲気だったらしい。

 韓国人記者から日韓問題に関する質問が一切出なかった。
 これは、日韓問題に触れなくない大統領に配慮したためではない。
 韓国人記者には、もっと他に聞かなくてはならない重大な問題が山ほどあったのだ。
 現在、韓国経済は冷え込んでおり、若者の失業率は10%を超えている。
 年齢層を限れば、4人に1人が職に就けないような状況だという。
 ポスト半導体、ポストサムスンの見通しが見えず、先行きの不安ばかりが増幅している。
 これに韓国国民は危機感を抱いている。
 この経済問題に対する大統領の明確な答えを聞きたがっているのだ。

 ある韓国記者は厳しく大統領に詰め寄った。
「現在の経済が凍り付いている。それでも、経済政策を変えようとしたいのはなぜか。その自信はどこからくるのか」
 大統領の回答は、とても国民を納得させられるようなものではなかった。
「先ほどの年頭所感で30分も述べており、これ以上新しい答えは不要だ」と突っぱねるような回答だった。
 具体的な経済政策としてはっきりしているのは、最低賃金の引き上げと労働時間の短縮。
 これ以上のものは何も出てこなかった。
 たぶん、経済浮揚策も具体的なものが何もないということだろう。

 文大統領は、北朝鮮問題については、実に行動的だった。
 これだったら、自分が積極的に進められる。
 行動を起こすたびに世界の注目を浴び、世論の喝采を受ける。
 今年のノーベル平和賞かと噂されたことも。
 これほど気持ちのいいことはない。
 北朝鮮問題にかまけている間、経済と日韓関係は悪化し続けた。
 もはや国内経済や日韓問題を真正面から受けとめ、責任をもってドライブするだけの意思も力量もなさそうだ。

 この北朝鮮問題も、いろいろは政治イベントは行なわれたものの、実質は何も進展していない。

 いま、日本は文大統領に絶望している。
 同じように、韓国国民も彼が大統領のうちは経済好転の可能性はないと絶望しているのではないか。


 
posted by 平野喜久 at 10:44| 愛知 ☀| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月06日

日本国民は密室での協議を望んでいない:韓国レーダー照射問題

 韓国国防省の公開した映像。
 日本人から見ると、一方的な主張を述べただけで、何の説得力もない。
 ところが、これが韓国世論への情報発信という視点で見ると、別の見方ができる。
 このような働きかけでないと韓国世論は動かないのだ。

 日本の防衛省が公開した動画は、自らの主張は控え、客観的な事実を淡々と提示しただけで、その解釈を視聴者にゆだねている。。
 一方、韓国国防省の動画は、客観的な事実よりも自らの主張を前面に押し出したものになっている。
 だから、動画に含まれるメッセージはすべて、主観的な表現で飾り立てられている。
 例えば、動画中に出てくる字幕には、こんなメッセージがあった。

「人道主義的な救助作戦中の艦艇に非紳士的な偵察活動を継続し、広開土大王艦の人道的救助作戦を妨害する、深刻な威脅行為を行いました」

 ここに客観的な情報は1つもない。
 事実を提示する前に、結論を先取りした主観的な表現だけで構成されている。
 全編がこんな感じなのだ。 
 だが、韓国国民が見たとき、納得感が高いのは、韓国国防省の動画の方かもしれない。

 日本防衛省の動画は、ぼーっと見ているだけでは何を言おうとしているのか分からない。
 ただ、機内から撮影した映像と機内での会話が延々と続いているだけだ。
 13分もの間、この動画を集中して見続けるのは辛い。
 更に、いったいこれで何が分かるのかは自分で考える必要がある。

 一方、韓国国防省の動画は分かりやすい。
 4分という集中力を途切れさせない短さ。
 そして、結論をはっきり提示してくれる。
 この問題をどうとらえるべきかは、すべて動画の中に提示されている。
 視聴者は余計なことを考える必要はない。
 
 韓国世論は論理よりも感情による感応度が高い。
 だから、韓国の政治家やメディアに登場する有識者は、主観表現だらけの感情に働きかける言説が多いのだ。
 過去に何度も繰り返された歴史問題もすべて同じ構図だろう。
 慰安婦、徴用工、旭日旗、靖国神社・・・。
 日本側が、「強制連行の事実はない」「20万人などあり得ない」と客観的なデータで説明しても受け入れられる素地がない。
 きめ細かい説明で事実を証明しようとすればするほど、伝わらなくなる。
 あの防衛省の動画が韓国国民に伝わらないのと同じだ。
 
 韓国国防省は今回のレーダー問題を実務者協議に舞台を移そうとしている。
 密室における話し合いなら、日本側をうまく抱き込めるからだ。
 これで過去に日本側は何度も失敗し、問題をこじらせ続けることになった。
 今回の問題を密室で決着させたらどうなるかは、手に取るように見える。
 決着したあと韓国側は次のようなメッセージを国民に発するだろう。

「韓国国防省の毅然とした対処で、日本の悪辣な策謀をはねのけた」

 そして、韓国側のレーダー照射の事実はなく、日本側が低空飛行で救助活動を妨害してきたということだけが事実として書き込まれる。

 日本国民は密室でのあいまいな決着を望んでいない。
 事実はどうだったのか。
 原因は何だったのか。
 再発しないためにどうするのか。
 これらを明確にしてもらいたい。
 
 
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2019年01月05日

日本は韓国国民への説得を試みたらどうか:レーダー照射問題

 日本の自衛隊の哨戒機が韓国の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された事件。
 韓国側の対応がぐずぐずで決着の糸口が見えない。
 韓国国防省の対応は、不祥事を起こした企業のダメな対応ぶりをそのまま再現したかのような様相を呈しており、事態はますます悪化している。

 問題が発覚した時は、「事実の把握」「原因の究明」「再発の防止」とステップを踏んでいかなくてはいけない。
 だが、最初の事実の把握の段階で、行き詰まっている。
 韓国国防省が、日本防衛省の主張をことごとくはねのけており、そこから先に進まない。

 日本防衛省が最初に火器管制レーダーの照射を発表したとき、韓国側の言い分は「レーダーの照射はしていない」だった。
 そこから、韓国の主張は、防衛省の反論を受けるたびに、二転三転し続けた。
 「遭難船探索のレーダーは照射したが、管制レーダーは照射していない」
 「荒天だったため、管制レーダーを含めあらゆるレーダーを総動員して探索した」
 「たまたま、管制レーダーの照射範囲に自衛隊の哨戒機が入り込んだ」
 「日本哨戒機が異常接近したため、警告のためレーダー照射した」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪く他船への呼びかけだと思った」
 「日本哨戒機が韓国駆逐艦に威嚇行動をとったが、わが軍はレーダー照射は行なわなかった」
 「日本哨戒機からの無線は、受信状態が悪い上に、英語の発音がひどく聞き取り不能だった」

 いったいどこに韓国側の最終回答があるのか不明だ。
 反論する側としても、次々に繰り出す言いがかりに、どこから反論すればいいのか戸惑う。
 
 4日になって、韓国側の反論動画がネット上にアップされた。
 それを見た多くの人は驚いただろう。
 新しいデータの開示も確定的な証拠の提示もなく、これまでの自分らの主張を稚拙な動画にまとめているだけだったからだ。
 全4分の動画のうち、韓国側が撮影したとされる現場の映像はわずかに11秒だけ。
 あとは、自衛隊が撮影した現場映像と意味不明な民間の旅客機が空港に着陸するシーンが編集されている。
 バックにはBGMが流れ、字幕が躍動的に表示される。
 安っぽい演出は、バラエティ番組でよくあるUFO目撃談の再現映像を見るようだ。
 本当にこれは韓国国防省が正式に発表したものだろうか、といぶかしく思っていると、最後に「韓国国防省」のロゴマークが表示され、背筋が寒くなるような驚きを覚える。

 一体、これで韓国国防省はなにを証明しようとしているのか。
 一説には、この動画は防衛省や軍事専門家に向けた情報発信ではなく、韓国一般国民への言い訳動画であるらしい。
 日本に言われっぱなしで、何の反論もできない国防省は国民世論が許さない。
 その国民世論に応えるために、今回の動画公開となったようだ。
 だから、その内容に客観的なデータや決定的な証拠は不要。
 力強く日本側の主張をはねのけている姿勢を見せられればOKというわけだ。

 不思議なのは、韓国の一般国民は今回の騒動をどう見ているのか、ということだ。
 これが、まったく逆の立場で同じことが起きていたらどうなっていたかを考えてみよう。
 自衛隊の言い訳が二転三転し、あんな無様な動画を公開してぐずぐずの対応を続けていたら、日本国民は黙っていない。
 自衛隊は国民の信頼を失い、その批判は政府にまで及び、安倍政権は吹っ飛ぶだろう。
 韓国でそうならないのが不思議でならない。

 もしかしたら、国民には正確な情報が届いていないのではないか。
 日本の防衛省が説得を試みるのは、韓国国防省ではない。
 韓国国民ではないのか。
 韓国は国民情緒が何よりも優先する国だという。
 だとしたら、日本が相手にすべきは韓国政府ではなく、韓国国民だろう。
 大臣や官房長官が記者会見で日本語のコメントを発表しただけでは、韓国国民には伝わらない。
 韓国のマスコミによって情報がゆがめられ、大事なニュアンスはすべてそぎ落とされてしまうからだ。
 防衛省の反論も、韓国語で韓国国民に直接届けられるような工夫がいる。




 
 


 


 
posted by 平野喜久 at 13:18| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

ゴーン氏解任は日産の自己防衛か

 ゴーン氏の逮捕は、誰も予想しておらず衝撃をもって受け取られた。
 直接の容疑は、有価証券報告書の虚偽記載というものだが、ゴーン氏の報酬をめぐる不透明な部分が次々に明るみになるにつれて、底なしの様子を見せている。
 ゴーン氏の報酬を実際より少なく報告書に記載していただけではなく、退任後に残りの報酬を受け取る契約にしてあったという。
 株主総会では常にゴーン氏の高額報酬が問題にされており、その批判を回避するのが目的のようだ。
 さらに、ゴーン氏の親族の高級住宅を日産に提供させたり、ヨットを600万円で購入し、その名義をゴーン氏に書き換えたりということも発覚している。
 ゴーン氏の姉をアドバイザー契約を結ばせ、活動実態のないまま報酬を払うようにしていたとも。
 ゴーン氏の家族旅行や食事代まで日産に負担させていたという情報まで漏れ出ている。
 守銭奴ゴーン氏の姿が浮かび上がってくる。
 自分はもっと高額報酬をもらってしかるべきなのに、株主批判でそれがやりにくい。
 それで、少しでも日産から搾り取る方法をあれこれ仕組んでいるように見える。
 別に、手元資金がなくて住宅やヨットが買えないわけではない。
 ゴーン氏にとって、600万円のヨットなど、釣銭でついで買いするような買い物だろう。
 しかし、グローバル企業のトップとしては不当に安い報酬しかもらっていないという意識が先に立ち、このようなことに無感覚になっているのかもしれない。

 今回の不正発覚は、日産の内部告発によるという。
 どの部署の誰による告発かは不明。
 だが、有価証券報告書の作成には多くの人物がかかわっており、長年の不正の実態は内部では広く知られていたはず。
 それが、いままで不問に付されていたことの方が不思議だ。

 さて、今回の逮捕劇は、単なる不正発覚という単純な話ではなさそうだ。
 ことはフランス政府も絡んでおり、もっと大きな構図が背景にあるらしい。
 
 日産の無資格審査が発覚し問題になった時、ゴーン氏は一切表に出てこなかった。
 三菱自動車との提携の時には、全面的に出てきてアピールしていたのとは対照的だ。
 無資格審査の問題で記者会見を開いたのは、西川社長。
 当然ながら、記者からゴーン会長の責任を追及する質問が相次いだが、ゴーン氏に責任が及ばないように防戦一方だった。
 役員が報酬を自主返納しているということを明らかにしたが、その詳細は公表されなかった。
 ゴーン氏は報酬を返納したのかとの質問には、「あくまで自主返納なので内容は差し控える」と答弁を逃げている。
 実際には、ゴーン氏は自主返納をするどころか、非公表の報酬をもらい続けていたことが今回の事件発覚で分かった。

 この時、日産の経営陣は必至でゴーン氏の身を守ることに汲々としている様子が見える。
 それが、一転、ゴーン氏の不正を暴露し、日産のイメージダウンを覚悟してまでゴーン氏の追い出しに向かったのはなぜだろう。
 そこに、フランス政府の動きがあるらしい。
 フランス政府はルノーの筆頭株主であり、現在のマクロン大統領は経済産業相の時代から、ルノーと日産の合併を働きかけていたという。
 業績好調の日産を取り込み、フランス国内の生産拠点の維持や雇用の拡大を狙っていた。
 ところが、それに強力に抵抗していたのがゴーン氏だったのだ。
 そんなことをすれば、日産側の抵抗が激しいことが分かり切っていたからだ。
 日産側にとって、この時点のゴーン氏はフランス政府の圧力をはねのけてくれる守護神であった。
 ところが、その後、フランスの大手新聞に、ゴーン氏退任の観測記事が出始めた。
 フランス政府がゴーン氏を追い出し、別の役員をルノーから日産に送り込んで、一気に合併を進めようとしているとの観測だ。
 ゴーン氏は18年の6月をもって会長職を退任との具体的な情報まで流れ始めた。
 この段階で、ゴーン氏を追い出したがっていたのはフランス政府であり、それを阻止しようとしていたのが日産側であった。

 それが、今回の逮捕劇では、立場が逆転している。
 日産側がゴーン氏を追い出し、それをフランス政府が批判している。
 もしかしたら、その後の働きかけで、フランス政府はゴーン氏の取り込みに成功していたのか。
 日産側は、ゴーン氏の変身を察知し、会社を守るために追い出しにかかったのかもしれない。

 いずれにしても、長年にわたりゴーン氏に頼りすぎた日産側の自業自得との印象をぬぐえない。
 ゴーン氏による大改革で経営が立ち直った時点で、ゴーン氏の役割は終わっていたはず。
 それを、ゴーン氏に任せておけば間違いないとばかりに、ずるずると経営を任せきりにし、フランス政府のつけ入るすきを作ってしまっていた。
 西川社長もゴーン氏に抜擢されたイエスマンであったはずだが、ギリギリのところで踏みとどまったということか。



 



 
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2018年10月17日

KYB免震装置数値改竄

 KYBとカヤバシステムマシナリーが製造した免震制振装置のオイルダンパーで検査データの改竄が見つかった。
 改竄は00年から先月まで行なわれていた。
 00年〜07年はKYBが製造、07年以降はカヤバ社が製造していた。
 免震用903件、制振用83件、合わせて986件。
 このうち、410件で不正が確認されており、残りは調査中。
 用途別では、住宅265件、事務所175件、医療福祉施設159件、庁舎109件など。
 地域も、東京都250件、大阪府107件、愛知県93件、神奈川県71件など。

 8月上旬、カヤバ社の内部告発で発覚。
 きっかけは、従業員同士の会話の中で、検査担当者から改竄の話を聞いた1人が上司に報告したのだという。
 カヤバ社から報告を受けたKYBが調査を始め、先月19日に国交省に報告した。
 
 免震装置と制振装置では仕組みが違う。
 免震装置は、揺れを建物に伝えないようにする装置だ。
 免震ゴムの上に建物を乗せ、直接地面に接触しないようにする。
 建物の固有周期を延ばすことで、地震の揺れと共振しないようにする仕組みだ。
 免震装置は、揺れないようにするのではなく、建物が地震の揺れと共振しないようにするのが目的だ。
 これで、建物の破壊を防ぐことができる。
 だがこれだけだと揺れを減衰させる機構がないため、ダンパーを設置し、一定以上の揺れにならないように、揺れても早くに減衰するようにしている。

 制振装置は、建物に伝わった地震の揺れに抵抗し、揺れを抑えようとする装置だ。
 建物内の柱と梁との間に斜めにダンパーを設置する。
 地震の時には、このダンパーが水平方向のエネルギーを吸収し、建物の揺れを小さくする。

 今回の検査データの改竄は、このダンパーの性能が基準に達していない恐れがあるために問題となった。
 ダンパーは揺れを抑える装置なので、建物の耐震性に直接関係するものではない。
 国交省が、今回の改竄を受けて、「震度7程度の地震でも倒壊の恐れはない」としているのは、こういう理由だ。
 ただ、性能不足のダンパーが使われている可能性があり、これをそのまま放置しておくのは利用者が納得しない。
 KYB側も、データ改竄の可能性のあるダンパーは特定できても、どのダンパーが基準未満のものだったかは、たぶん記録に残っていない。
 となると、該当期間に設置されたダンパーはすべて取り換えるということにならざるを得ない。
 これは、KYBにとって過酷な負担であり、事実上不可能だ。
 ダンパーの性質上、建物の耐震性には直接の影響は少なく、揺れの減衰効果がやや劣るかもしれない程度ということにして、現状維持になるかもしれない。
 
 
 
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2018年09月26日

月刊誌「新潮45」休刊

 新潮社は月刊誌「新潮45」を10月号を最後に休刊すると発表。
 休刊といいながら、実質的には廃刊となりそうな気配だ。


 騒動は、8月号で杉田衆議院議員の「LGBTのカップルは生産性がない」と主張する論考が掲載されたことに端を発する。
 この刺激的な主張が反発を招き、杉田氏の政治家としての資質を問う指摘が相次いだ。
 杉田氏への批判の嵐の真っただ中に出されたのが、10月号の特集「そんなにおかしいか杉田水脈論文」だった。
 複数の論者による杉田氏擁護の論考が掲載されたが、その中の小川栄太郎氏の主張が注目された。
 電車内の痴漢を例に引き、「彼らの触る権利を社会は保証すべきではないのか」と述べた。
 LGBTと痴漢を同列に扱う姿勢が、さらに世間の攻撃を受けることになる。
 攻撃は、論考の執筆者よりも新潮社へ向かう。
 「どうしてあんな低劣な差別に加担するのか」といった批判が相次いだ。
 新潮社社内にも疑問の声が広がったという。
 新潮社社長までもが「偏見と認識不足に満ちた表現があった」とコメント。
 そして、10月号をもって休刊とする旨の発表となる。 


 一説には、「新潮45」は売上低迷から、編集長が交代し、売上拡大にテコ入れの最中だったらしい。
 それで、刺激的な論考を掲載し、炎上マーケティングを仕掛けたのかもしれない。
 杉田氏の論考で炎上マーケティングは成功。
 第2弾として、今回の杉田氏擁護の特集となった。
 だが、その擁護論が、あまりにも刺激的過ぎた。
 問題となった小川氏の論考は、このデリケートな話題を慎重に議論しようとする姿勢はなく、わざと騒ぎを起こそうと煽っているようにも見える。
 小川氏がこんな粗雑な文章を書くとは、と驚いた。
 「なぜ、事前に編集部内で内容のチェックができなかったのか」という指摘があるが、編集者からの依頼で、執筆者が無理やり刺激的な論考を執筆したのかもしれない。

 掲載した論考への批判から廃刊に追い込まれた雑誌として、「マルコポーロ」が連想される。
 「ナチスによるホロコーストは本当にあったのか」と疑問を投げかける論考だった。
 これが国内だけでなく、国際的な反発を招くことになり、文芸春秋の社長と編集長の辞任と雑誌の廃刊にまで発展した。
 いまや、ナチスを擁護するような姿勢やホロコーストの存在に疑問をさしはさむような言説はタブーとなっている。

 今回の新潮45の騒動で、今後はLGBTを否定したり疑問を抱いたりする言説はタブー化しそうだ。
 注目を浴びた新潮45の10月号は、既に手に入らなくなっている。
 「低劣な論考」がどのように低劣なのかを確かめることもできない。
 
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2018年08月05日

大塚家具:自力再建困難

 大塚家具がいよいよ自力再建が困難になってきた。
 15年末に109億円あった現預金は18年3月末時点で10億まで減少。
 17年12月期単体決算は、最終利益が2期連続赤字。
 18年通期で13億円の黒字を見込んでいたが、業績の予想を下方修正する方針という。
 いま、貸し会議室大手のTKPに支援を求め、資本業務提携に踏み切り、増資の引き受けや協業の進展など交渉をしているという。
 別の企業にも支援交渉を進めているらしく、事態は流動的だ。

 大塚家具の社長大塚久美子氏は、かつて創業者の父親大塚勝久氏と経営権をめぐり派手な争いを見せた。
 マスコミで格好の話題となり、世間の注目を浴びた。
 従来型の客ひとりひとりに寄り添う接客サービスに拘る勝久氏と、新しいカジュアルな店舗運営を目指す久美子氏との戦いだった。
 経営権闘争の当時から、久美子氏の目指す経営戦略へは疑問の声が投げかけられていた。
 カジュアルな家具店としては、既にニトリやイケアが頑強なポジションを確立しており、そこに後発の大塚家具がどのように参入するのか。
 ニトリ、イケアと同じ市場に進出するのだから、圧倒的な差別化を確立しないと、成功はおぼつかない。

 それまでの大塚家具は、ニトリ、イケアとはまったく違うポジションに立っていた。
 ターゲットもサービス内容も、客単価も違う。
 それを、ニトリやイケアと同質化してしまったら、自ら差別化要素を捨てるようなものだった。
 結果は、多くの予想通りとなった。
 企業経営は水物で多くの人々の予想通りにはいかないものだが、これほど予想通りの展開を見せるのも珍しい。

 大塚家具としては、経営権争いで話題を集めているときが最大のチャンスだった。
 その時に、新生大塚家具のブランドカラーを確立できていたら、一大転機となっただろう。
 ところが、騒ぎを沈静化させることだけにエネルギーを使い果たし、落ち着いた時には目の前に客がいなかった。
 
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クロネコヤマト:過大請求

 宅配最大手のクロネコヤマトで不正が発覚。
 長年にわたって法人向け引っ越し代金を過大請求していた。
 4割ほどで過大請求があり、総額は16年5月から18年6月までで17億円に上る。
 5年前にさかのぼると31億円に膨らむ。
 実際には600キロ程度の荷物を5トンと見積もり、約10倍に当たる17万円を請求した例もあったらしい。
 また、実際には行われていないサービスの料金が付加されていたこともあったという。

 不正があったのは、法人向けの引っ越し代金だった。
 社員の転勤に伴う引っ越し代金を企業が負担するケースで不正が行われやすい。
 引っ越しは単発で発生する需要であること、法人の場合、請求書のチェックが緩いことが、背景にある。
 単発の引っ越し業務であれば、総務の担当者レベルで発注し決裁される。
 アイミツなどという煩雑な手続きは行なわれないし、実際に転勤者の荷物がどれほどあるのかを総務が把握しているわけもない。
 支払いは事務的に処理されるだけで、見積や請求の中身まで細かいチェックは行われない。
 このチェックの穴に付け込んだような不正行為だった。

 これが個人の引っ越しであると、少しでも支払いを減らそうと請求書のチェックが厳しいので、ごまかしはきかない。
 また、法人向けでも、製品の入出荷のような定期的な運送業務の場合、コストダウンの圧力が強く、ごまかしは不可能。
 これらのチェックをすり抜ける唯一の業務が、単発の法人向け引っ越しサービスだったのだ。

 今回の不正の深刻なのは、11年に内部告発によって過大請求の事実を把握していたのに、問題を放置したまま同じことを繰り返していたことだ。
 更に、この不正は一部の営業所だけで行なわれていたものではなく、全国規模で同じことが起きていららしいことも問題の根深さをうかがわせる。
 一部の現場の人間が勝手なことをしていたというレベルではない。
 むしろ、現場の個人には代金の過大請求によって得られる利益はなく、不正に手を染める動機がない。
 組織的に不正が行われていたことが疑われる。
 
 客は、クロネコヤマトのブランドを信用して発注している。
 請求額をわざと過大に乗せてくるなど、夢にも思わない。
 その信用を裏切る行為であり、ブランドの棄損は深刻だ。
 
  
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2018年06月30日

西野監督は勇将ではないか:サッカーW杯

 サッカーワールドカップ、日本が決勝トーナメント進出を決めた。
 2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出だ。
 だが、この決勝トーナメント進出を決めた対ポーランド戦の戦い方が議論を呼んでいる。
 日本チームは、試合終盤で無意味なパス回しを繰り返し、明らかに時間稼ぎをしている姿が見られたからだ。
 この時点で日本チームは1点を失っており、このままでは負けてしまうのにもかかわらず、時間稼ぎをし始めた。
 この不可解な行動に場内からは激しいブーイングが起きた。
 結果として決勝トーナメント進出が決まったが、もろ手を挙げて喝采を叫ぶ雰囲気ではなく、後味の悪さを残した。

 この不思議な戦術は、西野監督の指示で行われたもので、そこには冷徹な計算と苦渋の賭けがあったようだ。
 59分の時点でポーランドがFKから先制し、日本は1点を失うことになった。
 この直後に、別会場のコロンビアサポーターにも日本の失点が伝わり、大歓声が上がっている。
 なんとしても失点を取り返さなければならない日本だが、ポーランドは守りを固くしてゴールに近づけない。
 そうしているうち、74分にコロンビアがCKから先制点を挙げた。
 ここから状況が一気に変わってくる。
 コロンビア先制の情報は日本側にも伝わった。
 コーチが西野監督に耳打ち。
 82分、西野監督は長谷部の投入を決め、その長谷部にコロンビアの状況を伝え「勝たなくてもいい。不用意なファウルを避けろ」と指示。
 長谷部はその意味を理解し、ピッチに入るや他の選手らに伝えていく。
 そこから日本の攻撃は鳴りを潜めた。
 そのあと、西野監督は長友にも指示を伝えていた。
 日本チームは自陣でボールを回しながら試合終了を迎える。

 日本が1点を失い、コロンビアが先制した時点で、直ちに戦術の変更をした西野監督。
 その戦術は見事に当たった。
 これほど迅速な意思決定ができたのは、事前にあらゆる状況を想定し、戦術パターンを研究し尽くしてきた結果だろう。
 この戦術は決して楽な選択ではなかった。
 残り時間がまだ10分以上あるなか、セネガルが追い付いていたら、直ちに日本の敗退が決まる。
 その時の日本のダメージは大きすぎる。
 時間稼ぎで無駄な時間を費やし、試合には負け、さらにGL敗退を招いたとなると、世間の風当たりは一層強くなる。
 全力を出し切って敗退した時以上のダメージだ。
 だが、その大きなリスクを承知で敢えて賭けに出たのは、そこには冷徹な計算があったのだろう。
 ここで無理して攻撃を仕掛け、守りを固めたポーランドにカウンター攻撃を受ければ、0−1が0−2になる恐れがあった。
 一方で、コロンビアは1点先行を死守するに違いない。
 ならば、日本が決勝トーナメントに進出するために最も優位な選択肢は何か。
 それは、このまま試合を終えることだった。
 ポーランドもこのまま終われば悲願の一勝を挙げることができるので、日本の時間稼ぎを無理に突き崩そうとはしてこないことも、この決断を後押しした。

 西野監督は、よくぞこの決断を行なったと思う。
 選手らも、監督の意思を理解し、会場の大ブーイングによく耐えた。
 この作戦は、批判を受けることが確実だった。
 決勝トーナメント進出が決まっても称賛されないかもしれない。
 まして、GL敗退が決まったら、西野監督の評価は地に落ちる。
 そのリスクを負っても、選手たちを決勝トーナメントに進める決断をした。
 今回の西野監督の瞬時の決断は、見事であったと称賛したい。

 監督の責務は、日本チームを決勝トーナメントに導くことであり、見事にその役割を果たした。
 開幕前まで、日本チームは酷評の嵐だった。
 「おっさんジャパン」「三戦全敗が見える」
 GL突破を予想する声はほとんど聞かれなかった。
 そのチームを決勝トーナメントに導いた功績は大きい。

 監督の責務は、選手らに「後先考えるな。とにかく全力で戦って来い」と指示することではない。
 これでは、戦時中、先の見えないままに特攻作戦を指示していた軍幹部と同じだ。
 あの時、命を惜しんで逃げかえってくるよりも、潔く戦って死ぬことが尊いとされた。
 今回の西野監督の采配に感情的に反発している人たちがいる。
「世界に恥をさらした」
「あんなサッカーは見たくなかった」
「こんなことなら、全力で戦って敗退した方がまし」 
 それは、あの特攻作戦を生み出した精神背景に通底するものがあるのではないか。
 かつて、なぜ日本は勝算のない対米戦に突入していったのか。
 なぜ敗戦濃厚の情勢でも終戦の決断ができなかったのか。
 その答えが、今回のW杯で見えた気がする。
 当時も、今回と同じような感情的な空気が支配していたのかと考えると納得できる。

 一般に、リーダーが決断を迫られるとき、積極的な決断よりも消極的な決断の方が遥かに勇気がいる。
 なぜなら、消極的な決断は、うまくいっても大して褒められないが、失敗したら強烈な非難を受けるからだ。
 一方、積極的な決断は、うまくいったら大絶賛され、失敗しても「仕方なかった」と免責となる。
 リーダー自身の保身だけ考えれば、積極策を選択した方がいい。

「もう戦わなくていい。なんとしても生き残れ」
 この指示を出せた西野監督は、稀代の勇将かもしれない。
 

 
 
 
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2018年06月19日

都市型災害の影響:大阪北部地震

 昨日、午前7時58分に起きた大阪北部地震。
 死者4名、負傷者300名。
 ブロック塀が倒壊したり、火災が発生したり、水道管が破断し道路が陥没したりという直接的な被害が見られた。
 震源近くでは断水や都市ガスの停止が起きており、しばらくは影響が続きそうだ。

 今回の地震で特に人々への影響が大きかったのは、交通機関が広域で全面運休したことだろう。
 朝8時という通勤時間帯であったこともあり、通勤途中で被災し、職場へも行けず、帰宅もできない人が駅周辺にあふれた。
 新幹線については、午後3時ごろに運行が再開したが、在来線はなかなか再開の見込みが立たなかった。
 いつ動き出すか分からないまま、駅周辺で待ち続ける人々。
 新幹線が再開したが、新大阪駅へのアクセスがすべて停止している。
 夕方には、梅田から新大阪まで徒歩で向かう人で長い行列ができた。

 都市で大地震に見舞われたときは、むやみに動き回るのではなく、いち早く宿泊場所を見つけるなど、落ち着ける場所を確保することが望ましい。
 人が多すぎるために、有効なルートが見つかったとしても、そこには多くの人が殺到し、常に群衆の中に身を置かなくてはならなくなるからだ。
 群衆の中に身を置くのはそれだけでリスクが大きい。
 ただ、今回の地震の場合、これほどまで長時間にわたり交通がストップするとはだれも思わなかった。
 確かに大きな揺れがあったが、目に見えるような被害がなかったからだ。
 緊急点検を行なった後、午前中には動き出すのではと思った人も多かったのではないか。
 ところが、この緊急点検に時間がかかった。
 再開の見込みが立たないまま、今か今かと待ち続けるうち、夜になってしまったというのが実態だろう。
 JRも、午後3時ごろからは午後5時に再開の見込みとのアナウンスをしていた。
 ところが、それが午後7時になり、すぐに午後10時と変更されていった。
 JRも再開の見通しを正確に把握できていなかったことが分かる。
 たぶん、何の情報のないまま待たされる乗客の不安やいらだちを紛らわせるためにも、情報を先走って出してしまったのだろう。
 はじめから、「運行再開は午後10時以降になる見込み」「本日中の運行再開はありません」とのアナウンスが出ていれば、人々は次の行動に移っていたかもしれない。
 だが、この判断は非常に難しい。
 JR側も、運行再開に全力を挙げており、これほど時間がかかるとは当初思っていなかったのに違いない。

 昨日は梅雨時でありながら、幸いにも天気は良かった。
 寒くも暑くもない。
 地震が起きたのが早朝なので、暗くなるまでに十分な時間がある。
 町は深刻な被害を受けていないので、途中でコンビニやレストランを利用しながら進むことができる。
 徒歩で移動することが可能だったのだ。 
 線路沿いに徒歩で歩き始め、運行再開した時点で最寄駅から乗車するという方法をとることができただろう。
 20q程度の距離であれば、徒歩移動を検討すべきだ。
 
 


 
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2018年06月18日

大阪府で震度6弱

 本日、午前7時58分、大阪府北部で強い地震が発生した。
 震源は茨木市、深さ13m、マグニチュード6.1
 最大震度は6弱。
 有馬高槻断層帯の一部が破壊したらしい。
 この地域は活断層の密集地帯で、無数の活断層が確認されている。
 熊本地震の教訓を生かせば、強い地震が起きた後、同規模の地震が近隣の地域で再び発生する恐れに警戒しなければいけない。
 それは余震かもしれないし、本震かもしれない。
 また、別個の地震が誘発されて起きるかもしれない。
 今後の予想は難しいが、可能性として、大地震の発生したあと数日から数週間は、同程度の地震が起きやすい状態にあることだけは確かだ。

 
 大阪府内を震源とした地震が起きたのは、1936年の河内大和地震以来だ。
 河内大和地震は、M6.4 、死者8名だった。
 それほど大阪で内陸型の地震が起きるのは珍しい。
 大阪で一番心配されている内陸型地震は、上町断層帯が破壊して起きる地震だ。
 これが起きると、大阪市内が壊滅的なダメージを受ける。
 有馬高槻断層帯は、上町断層帯とは直接つながっているわけではなく、影響は少ないだろうと見られている。
 ただ、一度地震が発生し、地盤のひずみ状況に変化が生じると、周辺の活断層を刺激する可能性があり、そのことが心配されている。

 今回の地震は、直接的な被害はそれほど大きくないが、交通機関への影響が大きかった。
 大阪、京都、神戸、奈良のJR、各私鉄は全面運休になった。
 新幹線は午後になって一部運行再開。
 月曜日の通勤時間帯だったことから、人々の移動に大きな影響が出た。
 都会を襲う地震は、直接的被害が少なかったとしても、間接的な被害が広範囲に及ぶ場合がある。
 
 この地震を、私は京都事務所にて感じた。
 最初、地響きのような細かい揺れが発生。
 初期微動だ。
 すぐに地震だと分かった。
 だが、スマホの緊急地震速報がその時点では無反応。
 初期微動が3秒ぐらい続いた後、大きな横揺れ。
 書棚などを揺さぶった。
 横揺れは十数秒ぐらいで減衰していった。
 揺れている最中に、スマホの緊急地震速報が鳴り始める。
 気象庁は地震発生後4秒以内に緊急地震速報を発信したという。
 京都事務所から震源まで24km。
 これだけ震源が近いと、緊急地震速報は間に合わない。
 ただ、3秒の初期微動があり、この間に身構えることができるかどうかが重要になりそうだ。



 

 
posted by 平野喜久 at 16:41| 愛知 ☔| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月10日

被害想定1410兆円:南海トラフ巨大地震

 土木学会が7日、南海トラフ地震の長期的な経済被害額の推計を公表した。
 南海トラフ巨大地震発生後、20年間で最悪1410兆円に達すると算定。
 「国難」と呼びうる事態になりかねないとして、政府に対策の強化を求めるという。
 1410兆円は国家予算の14倍。
 日本は東アジアの最貧国に転落しかねない。

 南海トラフ巨大地震の被害総額は、5年前に内閣府が行なった推計がある。
 220兆円。
 これは、被災後1年程度の短期的な被害に限定した数字だ。
 これでも国家予算の2.3倍にのぼる被害規模で、日本経済を根本からひっくり返すようなダメージをもたらすと衝撃を受けた。
 今回の土木学会の推計は、被災後20年という長期的な被害額を算出している。
 そのために、1410兆円という天文学的な数値になってしまっている。
 南海トラフ巨大地震が国難をもたらすのは間違いはないものの、それを強調しようとするあまり、現実離れした数値になってしまっている感じが否めない。
 
 今回の推計の算出根拠はよくわからないが、地震による直接的な被害額は170兆円と推計し、それによって波及する間接的被害を含めると、1410兆円になるということらしい。
 直接的被害とは、地震や津波により損壊した建物やインフラの被害額をいう。
 間接的被害とは、企業の生産活動の低下や国民所得の減少といったものを指す。
 この間接的被害は、本来なら得られたであろう収益が得られなくなるという機会損失のことだ。
 地震による経済活動の低下は長期に及ぶので、この機会損失をすべて足し合わせたら、莫大な被害額になるのは当たり前だ。
 だが、地震が起きなかった場合と比べて、地震が起きた後の機会損失を長期に足し合わせることにどれだけの意味があるのか分からない。
 
 地震発生後は経済活動が長期にわたって停止したままになってしまうわけではない。
 直ちに復旧活動、復興活動が始まる。
 地震発生と同時に経済活動は一気にどん底に落ちるが、その直後から、活動が再開する。
 全国のあちこちで復興需要が発生し、たぶん、日本経済は急ピッチで立ち上がっていくだろう。
 つまり、長期的な被害額というのは、潜在的な復興需要の総額でもあるのだ。

 確かに、南海トラフ巨大地震が日本経済に及ぼす影響は大きい。
 一時的に壊滅状態に陥る。
 だが、日本が最貧国に転落することはない。
 今回の土木学会の推計は、国の防災予算を確保するための説得材料として提示されたのだろう。

 南海トラフ巨大地震による被害を最低限に抑える対策を怠らないのは重要だ。
 この事前対策は、本番を迎えるまで永遠に続けなければいけない。
 しかし、事前対策には完璧はあり得ず、どんなに対策を施しても、多大なダメージを受けるのは避けられない。
 企業のBCPでは、ダメージを最小限に抑える対策を怠らないのは当然だが、ダメージを受けた後、いかに早期に業務再開するかということの方に重点が置かれる。
 つまり、BCPのポイントは、被害を受けないことにあるのではなく、被害を受けても最短で立ち上がることにある。

 企業のBCP支援をしているときによく見かける失敗事例に、ポイントの置き所が間違っているケースがある。 
 被害をなくすことばかり考えていてそこから先に議論が進んでいかないことがある。
 どんな対策を施しても、被害をなくすことは無理だ。
 考えれば考えるほど、不可能の壁にぶち当たり、手詰まりになる。
 「もう何をやってもダメだ」という答えしか出てこなくなり、やがて考えることもあきらめてしまう。
 私たちがやるべきは被害を最小限に抑えることであり、被害をゼロにすることではない。
 ヒトの命が奪われたり、事業が再起不能に陥ってしまうような最悪の事態だけは絶対に避けなければいけないが、それさえクリアできたら、あとは、いかに早く業務を再開するかということの方に重点を移すべきだ。

 これは、地方自治体の南海トラフ対策においても同じだ。
 被害想定の大きさに気後れして手詰まりになっているところがあまりにも多い。
 一定程度の被害があるのは当たり前。
 それを前提に、いかに早く復興するのかということの方が遥かに重要だ。
 震災後の復興計画を描いている自治体がある。
 この自治体は震災後も間違いなく発展するだろう。
 少子高齢化が急速に進む時代、人口減少に歯止めがかからない自治体が出始めている。
 今後は、地方においては人口の奪い合いが起きる。
 南海トラフ巨大地震によって、この傾向は加速し、自治体の優勝劣敗が明確になりそうだ。
 
 
 
 
posted by 平野喜久 at 09:13| 愛知 ☁| Comment(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする