「ロングテール・マーケティング」なる言葉を作って、高説を垂れようとするコンサルも存在する。
久し振りに「役立たずビジネス用語」のヒットだ。
天使と悪魔のビジネス用語辞典としては、料理のしがいがある。
「ロングテール」とは、「80:20の法則」を裏返した考え方だ。
80:20の法則とは、原因の20%が結果の80%を占めるという経験則。
たとえば、
売上の80%は、売れ筋上位20%の商品でもたらされる、
社員の20%で、利益の80%を稼ぐ、
というふうに解釈される。
ロングテールとは、売れ筋(ヘッド)の20%ではなく、死に筋(テール)の80%に宝の山があるという発想だ。
アマゾンの経営実態を調べた人が、ある現象を見つけて大騒ぎした。
以下のように・・・。
上位、4万番目の本から230万番目の本までの売上が、なんと全体の売上の半分以上を占めていた。
普通なら切り捨てるべき回転率の悪い商品が、売上に貢献していた。
これは、アマゾンのような在庫コストのかからないビジネスモデルだからこそ実現できたもの。
ネットの普及によって、新しいタイプのマーケティングが可能になってきた。
これに便乗して、これからは、テール部分に着目すべきだ、と新しいマーケティングを提唱する者が現れ、一気にビジネス用語としての地位を獲得した。
このアマゾンの事例は、当初から疑問の声が多い。
正確な数字を分析した結果ではなく、外部から推測してはじき出したもののようだ。
冷静に分析すると、テール部分の貢献度は3分の1程度に過ぎないという結果が出たらしい。
さて、この「ロングテール」から我々は何を学べというのだろうか。
アマゾンのようなビジネスを目指せと?
インターネットの普及で、アマゾンのようなビジネスモデルが成り立つようになったのは事実。
しかし、そんなのは、いま大騒ぎするほどの発見でもない。
インターネットビジネスが盛んになってきたころから言われていた。
それを、新しい言葉で解釈して見せただけだ。
コンサルの中には、「ロングテール・マーケティング」を提唱する者がいる。
何を言っているかというと、
「マイナーな市場に注目せよ」
「売れない商材も、商圏を広げることでボリュームを確保できる」
何のことはない。
従来から当たり前に言われている「ニッチ市場を狙え」というアドバイスだ。
ネットビジネスではニッチ市場を狙いやすいというのも、10年前のインターネット普及当時から言われてきたことだ。
なんの目新しさもないではないか。
いまごろ、こんな話が出てくることの方が驚きである。
これを、新しいマーケティングであるかのように得々と語るコンサルは、時代感覚が実態とずれてしまっているか、言葉の新しさで内容の陳腐さをごまかそうとしているか、どちらかだ。
中小零細企業は、ニッチを目指すのは常識。
このニッチの市場の中でも、売れ筋と死に筋はある。
80:20の法則は健在なのだ。
音楽のジャンルの中で、クラシックはマイナーな部類に入る。
そこで、クラシックファンだけを対象とした専門ショップが存在する。
しかし、その中でも、売れ筋と死に筋は存在する。
どこに重点を置くかといえば、当然、売れ筋である。
更に、クラシックの中でも、モーツアルトだけに限定したショップが存在する。
ここでも、売れ筋と死に筋は存在する。
やはり、売れ筋に重点を置いて販売戦略を立てる。
当たり前の話だ。
新しいマーケティング手法が登場したかのような喧伝に惑わされてはいけない。