2011年01月06日

プロモーション動画第1弾:電子書籍『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 電子書籍のプロモーション動画の第1弾がが完成。
 YouTubeにアップした。

 今回は、収録されている用語のリストを見せるだけの内容。
 単調になりがちなので、それを、スターウォーズ風のクレジットタイトルで見せる工夫をした。

 バックには星空の宇宙空間。
 そこに、まず青文字のオープニングメッセージ。
 続いて、メインタイトルが登場し、遠ざかっていく。
 すると、いよいよビジネス用語のパレードが始まる。
 この辞典に取り上げられたビジネス用語が、収録順に登場する。
 黄色の文字で、手前から前方の宇宙のかなたに向かって、文字が流れていく。
 まるで、章ごとに隊列を組んで行進しているようだ。

 このスターウォーズ風のクレジットスクロールは、意外に難しい。
 文字が立体的に傾いている。
 それが、下から出る時は大きく、上にあがっていくにつれて少しずつ小さくなる。
 進んでいく速度も、下ほど速く、上に行くほど遅くなる。
 これらがうまくシンクロしないと、手前から遠方に進んでいくように見えない。

 パワーポイントでも近い演出はできるが、遠近感がうまく出せないし、延々と続くクレジットは容量オーバーで動かない。

 今回は、Adobe Premiere Pro で作成。
 複数のエフェクトを使って、目の前から宇宙のかなたに向かって進んでいく感じを出した。

 問題は音楽だ。
 スターウォーズのテーマ音楽を使えばそのものずばりだが、あまりにも芸がないし、著作権を侵害してしまう。
 そこで、今回は、ホルストの組曲「惑星」の中の「火星」を採用した。
 この曲なら著作権が消滅しているので、自由に使える。
 我がシンセサイザーで演奏し、収録。
 映像の尺にぴたりと合わせられるのが自演のいいところ。
 前へ前へと進んでいく雰囲気がよく出ている。
 実演奏に負けないぐらいの音響効果が出せた。

 アプリのリリースに合わせて、第2第3のプロモーションビデオを制作予定。










posted by 平野喜久 at 16:57| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月03日

インターネットの黎明期と電子書籍の黎明期

 十数年前、インターネットの黎明期。
 まだインターネットをやっているのは、ごく一部の人たちだけだった。
 新しいものをいち早く取り入れようとする人たち。
 よく言うと革新的な人たち、悪く言うとコンピュータオタク。
 そのころ、インターネット上にはろくなウェブサイトはなかった。
 日本語コンテンツは、同じようなオタクが作った貧弱なウェブサイトがあっただけ。
 そのころはすでにアメリカのインターネットの方が進んでいて、楽しむのは主に英語のコンテンツだった。
 電子メールも使っているのはごく一部の人たち。
 友人がメールアドレスを取得したと聞くと、さっそくメールを送り、合わせて電話をかけて「いま電子メールを送ったから見て」と知らせる始末。
 そのメールの内容はどうでもいいもので、メールが届くという現象自体を楽しんでいた。

 このとき、今日のようなインターネットの隆盛を予想した人としなかった人がいた。
 インターネットによって、人々の暮らしやビジネスは劇的に変化すると予感した人たち。
 インターネットなんてオタクのオモチャみたいなものが世の中を変えるはずがないと頭から否定してかかった人たち。

 結果、インターネットによって、私たちの暮らしは劇的に変化した。
 いまや、情報をインターネットによって収集するのは当たり前。
 情報発信するときにインターネットを利用するのも当たり前。

 現在は、インターネットができるからと言って自慢する人はいない。
 インターネットが世の中を変えると大騒ぎする人もいない。
 それは、インターネットが衰退したからではない。
 インターネットが私たちの暮らしに十分に浸透し、当たり前になってしまったからだ。

 だが、インターネットが普及するまで、いろいろな意見が存在した。
 ネットの未来に過剰に期待する人。
 ネットの可能性を真っ向から否定する人。

 ネットの黎明期には、インターネットでウェブサイトを探してみたところで、貧弱なサイトしかなかった。
 「こんなものを見て、何が面白いんだ」という発言は、もっともな感想だった。
 だが、そのような状況の中でも、ネットの未来に無限の可能性を予感した人たちが存在した。
 その人たちが、時には無駄なトライアルを繰り返しながら、ネットの可能性を探りだしてきた。
 今日のインターネットの隆盛は、こういう人たちの功績による。

 さて、翻って、電子書籍の話。
 いま、電子書籍も黎明期にある。
 アメリカから始まった今回の電子書籍の波。
 日本でも新し物好きが、まず手を出し始めた。
 いろんなハードが開発されているが、コンテンツはまだまだ貧弱なものばかりで、十分そろっていない。
 それでも、電子書籍の未来に無限の可能性を感じ取る人がいる。
 一方、電子書籍の限界を早々と結論付ける人たち。 

 状況は、インターネットの黎明期にそっくりだ。

 アメリカから始まった今回の電子書籍の波。
 日本では今まで何度の電子書籍の波があったが、今回だけは様子が違う。
 何らかの形で、この波は広がっていくことを予感させる。
 どのような形で、どのようなスピードで拡大していくのかはわからない。
 思いにも寄らない方向に展開していくのかもしれない。
 
 新しい動きが始まった時、必ずその動きを否定する人は存在する。
 過剰な期待をする人たちを冷笑し、冷や水を浴びせようとする人は常にいるものだ。
 新しい時代を作るのは、彼らではない。
 むしろ、時代の流れを押しとどめようとする人たちだ。
 時代の流れに乗り遅れそうな人たちが、いち早く走り始めた人たちを見て、からかおうとする。
 特に日本では、新しい動きにうろたえたり、あわてたりするのは、はしたない、という風潮がある。
 何が起きようとも、どっしりと落ち着いている人の方が大物のように見えるからだ。
 新しい動きに色めき立つよりも、「あんなものは大したことない」と言っている方が、超然としていてカッコいい。

 宝島社が出版した『電子書籍の正体』は、まさに時代の流れを押しとどめようとする視点で書かれた本だ。
 電子書籍の負の面にだけスポットを当てて、可能性を全否定している。
 新しい市場の可能性も、将来に対する期待感も何もない。
 普通は、賛否両論を併記してバランスを取ろうとするものだが、この本は、電子書籍の可能性をひたすらつぶすことを目的としているように見える。
 電子書籍が本当に可能性のない試みだというのなら、放っておけば自然消滅するはずだが、どうやら、可能性をつぶしておかないと気が済まない人たちがいるようだ。
 彼らは、「放っておいて、もしも電子書籍が成功してしまったら大変だ」と怯えているかのようだ。
 本当は、電子書籍の可能性を一番感じているのは、彼らではないのか。

 人は自分が失敗することを恐れるのではない。
 自分が成功する前に他人が成功してしまうことを恐れる。

 この本を読んだとき、むしろ、電子書籍の波は、今度こそ本物だという確信を強くした。
 逆説的な意味で、この本をお薦めする。



 


 

 
posted by 平野喜久 at 23:26| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月02日

最終調整:電子書籍『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 電子書籍版『天使と悪魔のビジネス用語辞典』。
 いよいよ今月、アップルストアからリリース予定だ。
 去年は日本では電子書籍元年と言われたが、私にとっては、今年が電子書籍元年である。

 ベータ版を実機で確認しながらの最終調整の段階だ。
 2010年中にアップル申請の予定だったが、遅れている。
 文字表示の読みやすさの調整と、画面動作の不具合を修正している。

 本当に読みやすい電子書籍になっているかどうか。
 これが重要なポイントだ。
 印刷書籍よりも優れたコンテンツに仕上がっていなければ意味がない。
 現状でも読めないことはない。
 しかし、読めれば十分ということだったら、わざわざ電子書籍にするまでもない。
 ウェブ上に公開すればそれで済む。
 ウェブサイトとも印刷書籍とも違うコンテンツだということを実感していただけるかどうかが、成功のカギだ。
 一刻も早くリリースしたいという思いはあるが、ここで早とちりするわけにいかない。
 現状、もうひと踏ん張りというところ。

 ベータ版を実機で確認する。
 読みやすいレイアウトに仕上がっている。
 だが、時々画面転換で誤動作を起こす。
 フリーズしたり、画面が消えたりする。
 バグが残っているらしい。
 いま、このバグを取り除いてもらっている。
 電子書籍といっても、ゲームとおなじアプリとしてプログラミングされている。
 プログラムのバグが厄介だ。
 
 最終的にこのバグが取り除けるのかどうか。
 これが少々気がかり。
 有料でご購入いただく以上、いい加減なものは出せない。

 有料のゲームアプリを購入して、バグのために誤動作したりフリーズしたりすると、がっかりする。
 とたんにそのアプリの評価が下がる。
 ネット上の評価では「金を返せ!」と散々だ。
 一度下された悪評は簡単に覆せない。
 
 バグのある電子書籍は、印刷書籍で例えると、印刷されてないページがあるとか、裁断がずれていて開けないページがあるようなものだ。
 書籍の乱丁落丁なら、新しいものと交換すれば済む。
 しかし、電子書籍のバグは、交換では済まない。

 


 
 




 
 
 
posted by 平野喜久 at 20:15| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月24日

出版市場は世界に開かれている

 遅々として進まない日本の電子書籍市場に対して、先行するアメリカ。
 ヨーロッパでも電子書籍市場は確実に広がっているようだ。

 いまや、ビジネスは日本人だけを相手にしていたのでは、成り立たなくなっている。
 それだけ、市場が縮小し始めているのだ。
 これからは、世界を相手にビジネスをすることを考えなくてはならない。

 これは、出版市場も同じである。
 日本人向けの出版だけを考えていたら、先はない。
 本が売れなくなってきたというのは、そのことを端的にあらわしている。

 日本人は、海外から情報を集めることには熱心だが、こちらから情報発信することが苦手だ。
 日本人にとって、海外の情報が貴重であるのと同じように、日本の情報は海外の人にとっては貴重なのだ。
 
 電子書籍市場が世界同時に広がり始めているのは、好機到来である。
 私たち日本人が海外向けに出版するのに、これほど都合のいい時はなかった。
 従来は、海外で自分の本を出版するというのは、気の遠くなる手続きと交渉が必要だった。
 しかし、電子書籍市場においては、日本向けの手続きも世界向け手続きも、まったく同じなのだ。
 市場の縮小しつつある日本人向けにだけこだわっている必要は、まったくない。
 出版事業もグローバルの時代だ。

 出版で一番困るのが言葉の壁。
 だが、障害はこれだけ。
 言葉の壁は翻訳という手続きを経るだけでクリアできる。
 言葉の壁は、単なる手続きの問題に過ぎないのだ。
 これさえクリアできたら、市場は全世界に開かれる。

 ある作家が、絵本を電子出版した。
 日本人による日本人向けの絵本だ。
 ところが、海外からのダウンロードが多いことに気付いた。
 言葉が日本語なので、意味は分からないはずだが、絵が分かりやすくてかわいらしいことが受けたようだ。
 そこで、急遽、外国語版の電子書籍を販売することにした。
 絵本に出てくる言葉の翻訳なら、簡単だ。
 英語だけではなく、世界各国の言葉に訳すのにそんなにコストはかからない。
 たちまち、グローバルなコンテンツに大変身である。

 世界に向けた出版は簡単。
 あとは、世界に向けて、何を発信するかだ。
 日本人が何でもないと思っていることでも、海外の人たちにとっては、貴重な情報だったり、興味深い話だったりする。
 それを見つけられるかどうかがキーポイントになる。
 これは、アイデア次第で可能性は無限に広がりそうだ。

 なんともワクワクする話ではないか。





 
 
 
posted by 平野喜久 at 10:06| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月20日

あと一息:電子書籍『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 電子書籍『天使と悪魔のビジネス用語辞典』。
 テスト用のアプリデータが出来上がったので、実機に入れて動作確認。
 
 天使の辞典から悪魔の辞典に画面がひっくり返る動きが面白い。
 この部分はインパクトがある。
 文字も読みやすい。
 ページ送りもスムーズにいく。

 たが、気になるところも多々見つかった。
 時々、誤動作をしたり、フリーズを起こして落ちる。
 複雑な動きをさせようとすると、負荷がかかりすぎるためだろうか。
 iPhoneの方がiPadよりも頻繁に動作の不具合は起きるようだ。
 単なるプログラム上のバグなら、修正すれば済む。
 どこまで改善できるだろうか。
 これ以上、改善は無理ということになると、やっかいだ。
 
 もう1つ気になるところ。
 行末行頭の禁則処理の問題。
 行頭に句読点が来る場合は、前の1文字も合わせて行頭に持ってくるように処理している。
 すると、行頭に「た。」「る。」「と、」という表記が並ぶことになる。
 これは、読む方としては非常に読みにくい。
 文末が句読点だけではなく、カッコなどの記号がいくつかついていたりすると、合わせて次の行に送られるので、更にイビツになる。
 1文字だけ次の行頭に送られる読みにくさの上に、見た目の見苦しさも際立つ。
 行末を見ると、ラインがそろっていない。でこぼこなのだ。
 禁則処理で次の行に文字送りが頻繁に起きているからだ。

 このコンテンツは、辞書という性格から、表現を簡略化した短文が多い構成になっている。
 そのために、句読点や記号が多く、この禁則処理の不格好が目につく。
 これは、見た目にガサツなイメージを与える。
 電子書籍は中身であり、見た目は問題ではないというのはその通りでも、見た目のだらしなさは、中身のだらしなさを連想させる。
 最低限の身だしなみは必要だ。
  
 無料で読むブログや掲示板なら、改行の表示の不自然さなど誰も文句を言わない。
 でも、これは、有料コンテンツだ。
 読者の読みやすさに配慮のないコンテンツは受け入れられない。

 今回のコンテンツ制作は、
「電子書籍ってこんなに素晴らしい」
 ということを人々に見せるために挑戦しているものだ。
 それが、中途半端なものになってしまったおかげで、
「電子書籍って読みにくいね」
「やっぱり、電子ブックってダメだね」
 などということになったら、今回の挑戦は無意味になってしまう。
 
 当初のスケジュールでは、年内にアップルに申請の予定だった。
 アップルは外資系なので、クリスマス休暇が早い。
 年内の営業は22日までらしい。
 ということは、あさってが最終日。

 もうここまできたら、年内の申請にこだわる必要はないだろう。
 ギリギリに申請を出したとしても、アップル側の審査は来年になる。
 だったら、もう少し時間をかけて、コンテンツの完成度を高めた方がいい。
 納得のいくものを作って、新年明けに申請となりそうだ。

 あと一息だが、ここが一番重要なところだ。
 一刻も早く出したいという思いはあるが、九仞の功を一簣に虧くことは避けたい。




 

posted by 平野喜久 at 12:40| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月16日

電子書籍の行方はテレビ業界に学べ

 2010年は、電子書籍元年と言われた。
 各社の読書端末が出そろい、いよいよ本格的な流れがやってくるというところだ。

 期待が膨らむ一方で、日本ではなかなか市場が広がらないもどかしさがある。
 「今度も一過性のブームで終わるのでは?」という不安はぬぐえない。

 電子書籍の将来像を音楽業界になぞらえて捉えようとする人がいる。
 音楽業界では、CDの売り上げが低下し、音声ファイルのダウンロードが主流になってきた。
 同じように、電子書籍が普及すると、紙書籍が衰退し、書店は閉店に追い込まれるのでは、と連想してしまう。
  
 しかし、紙書籍と電子書籍の関係は、CDと音声ファイルの関係とは違う。
 電子書籍は、紙書籍とはまったく違うコンテンツであり、これから新しい市場が立ちあがるところと見るべきだ。
 この関係は、映画とテレビの関係でとらえると分かりやすい。

 テレビが登場するまで、映画が娯楽の主流だった。
 ハリウッドなどの映画業界は娯楽の王者として君臨していた。
 テレビが登場した時、映画業界はどうしたか。
 新しいメディアの登場と言って、真っ先に飛びついたか。
 ノーだ。
 むしろ、テレビに対して冷ややかな態度だった。
 その上、俳優もスタッフもノウハウもテレビ業界に渡そうとしなかった。
 当時は、俳優も映画会社専属だったのだ。
 
 そのためにテレビ業界は失敗したか。
 これまた、ノーだ。
 見ての通り、その後、テレビ隆盛の時代を迎えることになる。
 映画にはないテレビ独特の文化が花開いたのだった。
 ストーリーが何週にも渡って展開するテレビドラマというカテゴリーが登場した。
 クイズ番組のような視聴者参加型の番組も始まった。
 バラエティのような情報番組も。
 スポーツ中継、報道番組などなど・・・・・・。
 いずれも、映画では実現できないコンテンツばかり。
 
 映画業界が俳優もスタッフもノウハウも提供しなかったために、テレビ業界では、新たな人たちが新たなタレントを使って新たなやり方で番組作りを進めなければいけなかった。
 このことが、新たな文化を創造させたのである。
 これは、映画業界がテレビ業界に進出しなかったおかげで実現できたものだと言っていいかもしれない。
 もしも、映画業界の人たちがテレビ業界の立ち上げを任されていたら、映画業界の人たちが損をしないことを最優先にして、まずは映画の補助メディアとしてのスタートとなっていただろう。


 日本でも1960年ごろからテレビが一般に普及し始めるが、このきっかけは、皇太子殿下のご成婚と東京オリンピックだと言われる。
 ご成婚パレードが見たい、オリンピックが見たい、こういう消費者の欲求がテレビを買わせたのだ。
 決して、テレビを先に買って、あとから何か見るものはないかと探したわけではない。
 ここは、重要な点だ。

 いま、電子書籍は、どのような状況にあるか。
 読書端末ばかりが先行して発売され、話題になっているが、コンテンツの供給が追い付いていない。
 僅かに出回っているのは、従来の紙書籍を電子化しただけのコンテンツ。
 それも、紙書籍でよく売れたものを電子化している。
 電子書籍独特のコンテンツはまだ登場していない。
 「それを楽しみたいために端末を買いたくなるようなコンテンツ」は、気配すら存在していない。
 
 現状は、映画とテレビの関係で言えば、過去に封切りされた映画をテレビで放送しているだけという状況である。
 これでは、本格的な電子書籍時代の到来はまだまだだ。

 もう1つ気になるのが、これからの電子書籍のあり方を出版業界の人たちが決めようとしていることだ。
 これなど、テレビのあり方を映画業界の人たちに決めさせるようなものだ。
 こんなことをすれば、魅力のない映画業界がもう1つ出来上がるだけに終わる。

 新たな人たちが新たな発想で、電子書籍業界という新たな業界を作り上げるぐらいでないと、市場は確立しない。
 

 
 
 
 
 
 
posted by 平野喜久 at 08:34| 愛知 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月15日

電子書籍を紙書籍のできそこないにするな

 電子書籍では、スクロールによるページ送りを実現してほしい。

 ページめくりよりも、スクロールの方が読みやすいと思うのだが、どうなのだろう。
 ページめくりの場合は、ページの最後は左下に視点がある。
 それをページをめくった瞬間、右上に移動させなくてはならない。
 本を読む時はこれが当たり前なので、気にも留めないが、本当にこれが読みやすいのか。

 視点の移動で、読書の流れが途切れる。
 言葉がや文が2ページにまたがって分かれた場合は、ページ間を行ったり来たりしながら、確認しなおすこともある。

 キンドルやソニーリーダーのような「電子ペーパー」の場合は、ページめくりのたびに、フラッシュして画面をリセットするので、余計に読書の流れを阻害する。
 そもそも、電子ペーパーの場合は、スクロールという操作ができないのだ。
 はじめから、印刷書籍を端末上に再現することを目的にしている。


 ウェブサイトでは、スクロールは当たり前だ。
 マウスのホイールを回して画面を動かしながら、読み進めている。
 視点は動かさず、画面の方を動かす。
 読書の流れは途切れない。
 言葉や文がページで分断されることもない。

 ウェブサイトの場合は、縦スクロールだが、横スクロールができれば、巻物と同じである。
 巻物スタイルの読書。
 これは、電子書籍でこそ実現できる読書スタイルだ。
 
 タブレット型の読書端末ならこれが実現できる。
 なのに、タブレット型向けのコンテンツでも相変わらずページめくりを再現しているのはがかりだ。
 なかには、紙のページがめくれていく様子が3D映像で再現されているものもある。
 なんと、そのめくれていくページの裏側には、表の印刷が透けて見えるという凝りようだ。
 そのリアルさをコンテンツの面白さにしているのだから、困ったものだ。
 コンテンツ開発者は「書籍とはこういうもの」「本はこう読むもの」という固定観念に縛られているように見える。

 端末上で紙書籍をリアルに再現しようとすればするほど、紙書籍のできそこないになるだけだ。
 電子書籍の良さではなく、紙書籍よりも劣る点ばかりがクローズアップされるからだ。
 「目が疲れる」
 「重い」
 「端末が高すぎる」
 「電池が切れたらただの物体」

 現状では、電子書籍で読まなければならない理由が見当たらない。
 「これなら普通の本を買った方がいい」という声が大きいのはこのためだろう。
 従来の書籍概念に縛られているうちは、電子書籍が本格的に普及することはなさそうだ。

 タブレット型端末の差別化要素は、色彩の鮮やかさと動きの滑らかさだ。
 この特性を存分に生かしたコンテンツはいつ登場するのか。




posted by 平野喜久 at 08:30| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月13日

ページめくりのない電子書籍:『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 電子書籍版『天使と悪魔のビジネス用語辞典』進捗状況。
 2011年1月発売に向け、最終調整中。
 
 アプリの動作を確認。
 目次から目的の用語をタップすると、そのページにジャンプ。
 天使の辞典を読み終わったところで、タップすると画面がクルリとひっくり返って、裏側の悪魔の辞典が出てくる。
 用語によっては、更にジャンプして詳しい解説を読むことができる。

 画面がクルリとひっくり返って裏側の意味が表示されるのは、この電子書籍ならではの仕掛け。
 言葉には、表の意味と裏の意味があるという二面性をアプリの動作で表現している。
 ちょっとした感動モノだ。

 従来のページの概念も取り払った。
 このコンテンツは、各用語につき「天使の辞典」「悪魔の辞典」「用語解説」と3つの要素で構成されている。
 それぞれの要素に1つの画面が割り当てられている。
 文章が短いものもあれば、長いものもある。
 すべて、1つの要素は1つの画面に収録。
 長い場合は、スクロールして読む。
 文章の途中で、ページをめくるという動作は入らないようにした。
 
 文章の途中でページめくりを入れない、というのは、このアプリのこだわりの1つだ。
 ページめくりは、読書の流れを阻害するからだ。
 今回の電子書籍は、いままでにない新しい書籍のスタイルを示す、ささやかな試みでもある。




 

 
posted by 平野喜久 at 13:45| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月11日

盛り上がりに欠けるガラパゴス:電子書籍端末

 シャープのガラパゴスが発売になった。
 家電量販店だけではなく、コンビニの店頭でも実機を並べてPRしている。
 日本発の電子書籍端末ということで注目されたが、発売当日の盛り上がりが見られない。
 
 iPadが発売になった時は、ずいぶん話題になった。
 アメリカで発売された時も、そのあと日本で発売された時も、ニュースで取り上げられた。
 店頭に行列を作って、1番機を手に入れたい人が映像で流れた。
 本物を手に入れた喜びで舞い上がっている人々の姿が見られた。
 その映像を見た人は、「なんか、すごいものが発売されたようだな」と関心を示したに違いない。

 ところが、今回は、そのような場面がない。
 コンビニの店頭に実機を並べて、スタッフが呼びかけを行なっている姿が映し出されていた。
 でも、その周りに行列ができるわけでも、人だかりができるわけでもない。
 コンビニの入り口で、寒さに凍えながらスタッフが道行く人に声掛けをしている。
 見ているほうが、寒さを感じるような光景。

 こうなってしまった理由は、1つは、iPadの二番煎じの匂いがして、新鮮味が感じられないこと。
 もう1つは、店頭販売ではなく、メーカー直販方式にしたこと。

 本当に欲しい人は、既に予約済み。
 今頃、自宅に届けられているかもしれないが、手にとって喜ぶ姿は、他の人に見えない。
 その興奮は、他の人に実感として伝わらない。
 東京都内の代表的な1店舗だけを選んで、そこでは、店頭で即日渡しの販売を演出すればよかった。
 その映像をマスコミに撮らせる。
 その映像は、ニュースで使い回しされる。
 
 もしかしたら、派手な演出をわざと避けているのだろうか。
 一気に盛り上がったブームは一気にしぼむ。
 まだ電子書籍の環境は整っていない。
 シャープ自身も万全の態勢でこの日を迎えたわけではない。
 一時の盛り上がりよりも、長期持続的な成長を見越して、緩やかな発進を心掛けたのか。


 そもそも、コンビニでの販促は、正しいのか。
 ガラパゴスの客層と、コンビニの客層は、セグメントが合っていないのではないか。

 シャープが、いち早く電子書籍市場に挑戦するその意気込みは高く評価したい。
 だが、戦略展開に不安が残る。


posted by 平野喜久 at 11:00| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月10日

電子書籍版の進捗状況:『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 電子書籍『天使と悪魔のビジネス用語辞典』の進捗状況。

 アプリの動作確認をした。
 一部データをiPhoneに入れて、操作性を確かめる。
 基本的な動作に問題はない。
 これならスムーズに読めそう。
 
 印刷書籍では実現できない見せ方をしているのがこのコンテンツの特徴。
 ただ、ページをめくって順番に読んでいくという単純な見せ方はしない。
 縦にも横にもコンテンツ内を自由に飛び回って、楽しめるようになっている。
 こういうことができるのも、このコンテンツの特徴と、電子書籍の特性がうまくマッチしたからだ。

 いま既に販売されている電子書籍は、既に存在している印刷書籍を電子化しただけなので、ページをめくりながら順番に読んでいく、というところは同じ。
 まだまだ、印刷書籍の概念に縛られているなぁ、という印象だ。
 電子書籍単独でコンテンツを作ろうとするとコスト負担が大きい。
 それで、既にある印刷書籍データを電子書籍に流用している。
 こうなるのは、仕方がない。

 電子書籍版『天使と悪魔のビジネス用語辞典』は、印刷書籍と違うだけではない。
 他の電子書籍とも違う特徴を持っている。

posted by 平野喜久 at 10:39| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月02日

拡大し続ける電子書籍市場:アメリカの統計

 電子書籍の動きについては、日本国内の情報だけに頼っていると、判断を誤る。

http://www.publishers.org/main/PressCenter/Archicves/2010_Oct/AugustStatsPressRelease.htm

 米国の出版社業界団体の1つであるAssociation of American Publishersが市場統計情報を発表した。
 その中に、電子書籍のデータがある。
 2010年は1月から8月までの合計は、2億6300万ドル。
 前年同期は8980万ドルだった。
 なんと293%の伸び率。
 全書籍売上のうち、電子書籍の占める割合は、今年のうちに10%を確実に超える。
 この統計はすべて出版社純売上(卸売)ベースであるため、小売ベースでの金額はさらにこの2倍強程度になるという。

 「日本ではもう電子書籍ブームは終わった」と言っている人がいる。
 「日本人はすぐにブームに踊らされるから」と自分以外の日本人を小馬鹿にする人もいる。
 が、今回のブームは過去のブームとはまったく違う。
 過去のブームが短期間で終わってしまったのは、日本国内で話題になっただけで、それ以上広がらなかったからだ。
 今回は、アメリカが先行して市場拡大し始めているということが最大の違い。

 日本国内だけのブームだったら、これまでと同じように、既得権益を握ったもの同士の足の引っ張り合いで、結局誰も身動きができなくなって終わる。
 いま、やたらと「電子書籍はだめ」論を振りまこうとしている人は、たぶん、既得権側の人たちなのだろう。
 自分がいいポジションを得られそうにない改革には抵抗したくなるのが普通だからだ。
 
 だが、アマゾンやアップルが日本での電子書籍に本腰を入れたら、状況は一変する。
 特にアマゾンは、短期的な損得は度外視で行動する。
 市場を確保するためなら、赤字覚悟で乗り込んでくる。
 目先の損得に振り回される日本の出版業界は太刀打ちできない。

 あとは、日本の消費者がこれを歓迎するかどうかだろう。
 アメリカ企業の横暴に反発するか。
 利便性がいいと分かれば受け入れるか。

 ネット書店として日本市場に乗り込んできたアマゾン。
 アメリカ企業を儲けさせ、近所の書店を潰してしまうのは忍びない。
 そう思いながらも、私たちはアマゾンで本を注文してしまうではないか。
 いまでは、価格にかかわらず、送料無料になった。
 書籍以外のアイテムも増えた。
 日本にアマゾンは完全に定着した。
 この現在位置を考えると、電子書籍の行方も明らかだ。

 電子書籍はどうなるのか。
 答えを出すのは、消費者であって、出版業界ではない。




posted by 平野喜久 at 09:17| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月29日

電子書籍版の進捗状況:『天使と悪魔のビジネス用語辞典』

 「天使と悪魔のビジネス用語辞典」電子版の進捗状況。
 校正原稿が届いたので、チェックを入れる。
 細かい文字遣いまで校正が入っていて驚いた。
 「散りばめる」は「鏤める」が正しいということを初めて知った。
 一通りのチェックを入れて返送。

 校正原稿を読み直している途中で、原稿そのものを差し替えたくなる個所が数か所。
 担当者には申し訳ないが、差し替え原稿を送る。
 あとから差し替えや変更ってのは一番面倒なのは分かっている。
 担当者の嫌そうな顔が浮かぶが、内容をよりよくするためならしかたない。

 でも、校正を読み返していると、原稿を書き変えたいところがどんどん出てくる。
 書いた時は名文だと思ったのに、時間をあけて読み返してみると、表現がくどかったり、言葉足らずだったり。
 特に、夜中の乗りに乗っているときに書いた文章は酷い。
 暴走しすぎだ。
 気になりだすと、すべてが気になる。
 手を入れ始めたらきりがない。
 ここは、最低限の変更にとどめ、前へ進めるしかない。
 
 アプリのデザインイメージも届いた。
 iPad用とiPhone用。
 スマートで落ち着いたデザインに仕上がっている。
 少し地味かなという感じがするが、対象が30〜40代の男性ビジネスマンなので、こんなところだろう。

 実際に、原稿を流し込んで動作確認をしないと分からないが、従来の印刷書籍とはまったく違ったコンテンツになるのは間違いない。
 目次から目的のビジネス用語に飛ぶ。
 まず「天使の辞典」が表示される。
 タップすると画面が反転して、「悪魔の辞典」が現れる。
 更にタップすると、「用語解説」のページに飛ぶ。
 アプリとしては単純な機能しか備わっていないが、これでも、印刷書籍とはまったく違った見せ方ができる。

 無料版と有料版の制作を検討中。
 無料版(Lite版)では、1/10ぐらいの用語を収録。
 これで興味を持ってくれた方に正規版をご購入いただく。
 より多くの人たちに存在を知ってもらうのが第一。
 そして、本当にこのコンテンツの価値をご理解いただける方にご購入いただきたいというのが第二。

 これがどの程度の効果があるのかは不明。
 やってみなければわからない。

 価格もいくらが妥当なのか不明。
 今のところ、電子書籍は文庫本と同じぐらいの価格が1つの目安になっているようだ。
 500円から800円ぐらいが相場。
 
 アップストアにはいろんなアプリが並んでいるが、100円とか200円というアプリも目立つ。
 その中に並べると、500円から800円は高いという印象。
 もちろん、中には1000円を超えるコンテンツもあるが、さすがに高すぎて手を出しにくい。
 印刷書籍なら1000円の本などむしろ安いと感じるぐらいなのに、不思議なことだ。
 電子書籍では、このあたりの相場観がまったく違う。
 電子書籍は印刷してないんだから、安くて当たり前という先入観があるせいだろうか。

 価格はその商品の価値を表す。
 安すぎるコンテンツは、却って安っぽさをイメージしてしまう。
 100円ショップで売られているというだけで品質が悪いとイメージするのと同じだ。
 特にデジタルコンテンツは、原価がはっきりしないから、余計に価格がその商品価値を表す。

 安すぎず高すぎない適当な値ごろ感がどこかにあるのだろう。









posted by 平野喜久 at 13:48| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月23日

電子書籍コンテンツのアイデア:電子絵巻

 電子書籍向けのコンテンツ。
 いろいろなアイデアが思い浮かぶ。
 誰かに先を越されるのも悔しいので、思いつき次第、ブログに公開して日付を確定しておくことにする。

<電子絵巻>

内容
 日本の有名な絵巻物を電子書籍にする。
 『源氏物語絵巻』・『信貴山縁起』・『伴大納言絵巻』・『鳥獣人物戯画』など、優れた絵巻物を、iPadで鑑賞できるようにする。

特徴
 ページの制約のない電子書籍の特性を利用したコンテンツ。
 スクロールして見られる。
 部分を自由に拡大して細かいところを見ることも、縮小して全体を見ることもできる。
 ボタンを押すと、ポップアップで、解説が表示される仕掛け。
 本物の絵巻物を目の前にして自由に鑑賞している感覚を再現。

趣旨
 絵巻物は、1巻が一続きの長い紙に絵画や文字が描かれており、巻物を右から順に手繰りながら見ていくと、ストーリーが分かるように構成されている。
 この本来の絵巻物の見方を電子書籍なら再現できる。
 従来の印刷書籍では、ページの制約があるため、どうしてもぶつ切りになってしまった。
 その限界を取り除くことができる。
 また、印刷よりも、カラー液晶の方が発色がいいため、絵巻物の美しさが際立つ。
 特に、源氏物語絵巻は、復元模写され、作成当時の鮮やかさが見事に再生されており、その美しさを電子書籍上で再現できたら、インパクトは大きい。
 これなら、1部1000円以上の値段でも購入したい。
 2000円でもいいかも。
 源氏物語は、現存する世界最古の長編小説としても知られており、世界に発信できるコンテンツとしても期待できる。
 
 まずは、源氏物語絵巻から。
 これがヒットした後、電子絵巻をシリーズ化する。

 もしかしたら、この電子絵巻を見たいためにブックリーダーを購入しようとする人が出てくるかも。
 このように、印刷書籍ではできないコンテンツが続々と登場する流れになってこそ本格的な電子書籍の時代の幕開けだろう。
 現状のような、印刷書籍を電子端末上に再現しているだけでは、見通しは暗い。




  
  
 

 
posted by 平野喜久 at 22:04| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月22日

ページ概念のない電子書籍

 電子書籍の将来像について話を続ける。

 電子書籍と印刷書籍との最大の違い、それは、ページの概念がないこと。
 今の電子書籍は、印刷書籍をそのままデジタル化しただけなのでページの概念がある。
 iPadの画面を指先でこすると、3D映像で本当にページがめくられるように操作できる。
 このことが驚きであるかのように報じられているが、とんでもない。
 なぜ、読書端末上で、わざわざ印刷書籍を再現しなければならないのだ。
 印刷書籍の制約をそのまま持ち込んでいるようなものだ。
 このようなことをすれば、印刷書籍と比べて、電子書籍の欠点が際立つだけだ。
「端末が重い」「目が疲れる」「壊れたら読めない」

 ページという概念は、従来の紙書籍の特性から仕方なく出来上がったものだ。
 むしろ、このページは制約であったと見るべきである。

 書物は、もともとは巻物であった。
 仏教の経典もそう、平家物語の絵巻もそう。
 日本最古のマンガと言われる鳥獣戯画もそう。
 この時代は、ページの制約がなかったのだ。
 
 これをもっと見やすくするために、髪を小さく切って、片側を閉じるという方法に変わった。
 これは、閲覧性を優先した改革である。

 いま、電子書籍の登場で、再び、ページの制約がなくなろうとしている。
 ぜひ、電子書籍で、ページで切り刻まれていない平家物語絵巻を見てみたい。
 ぜひ、電子書籍で、最初から最後までスクロールできる鳥獣戯画を見てみたい。
 この電子書籍なら有料でも買う。

 これを出版したら、話題性が抜群。
 電子書籍の特性もアピールできる。
 これを手がける出版社はどこか。
 いそうにないなら、弊社でやるしかないか。



 
 
posted by 平野喜久 at 10:05| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

電子書籍の将来像:印刷書籍の代替物ではないコンテンツ

 電子書籍の将来像はどんな感じだろう。

 現在の電子書籍は印刷書籍の二次利用にとどまっている。
 既にある書籍をデジタル化しただけ。
 これは、アメリカでも同じ。
 市場の黎明期であり、市場の確立を優先した結果なので、仕方ない。
 
 しかし、これは、電子書籍市場の最終形ではない。
 コンテンツ開発の間に合っていない現状で、やむを得ない経過措置にすぎない。
 今後のコンテンツ市場はどうなるか。
 たぶん、次のようになる。
 
<現状>
印刷書籍 ⇒ 電子書籍

<将来>
コンテンツ ⇒ 印刷書籍 or 電子書籍 or その他

 つまり、コンテンツが先にあり、それをどのような形で発信するかは、商品特性による、ということだ。 
 「印刷か電子か」という二者択一の議論は無意味だということが分かる。
 「電子書籍が普及すると印刷書籍がなくなる」という心配も杞憂に過ぎない。
 このような誤解が支配的なのは、現状の電子書籍が印刷書籍のデジタル化にとどまってしまっているからだ。
 電子書籍はどんなものだろうと見てみると、印刷書籍のできそこないを見せられているだけ。
 これでは、電子書籍の魅力は伝わらないし、市場も拡大しない。
 
 印刷書籍の枠を超えられない限り、電子書籍の発展はない。

 しかし、この結論が分かっていても、なかなか電子書籍市場は拡大しない。
 それは、コンテンツ開発に時間とコストがかかるからだ。
 どうなるか分からない未確立の市場に多大なコストをかけるのはリスクが大きい。
 十分な市場が出来上がっていれば、コストは負担ではない。
 コストがかかることがいけないのではなく、採算の見込みがないのが障害となっているのだ。

 このような局面では、大手の事業者は身動きが取れない。
 図体が大きすぎてフットワークが悪いからだ。
 印刷書籍市場にどっぷりつかった事業者は、電子書籍の動向が気にはなっても、ただちにそちらに軸足を移せない。
 デジタル化の流れが分かっていながら、宅配制度を抱えているために却って身動きが取れなくなっている新聞社と同じだ。
 それで、印刷書籍向けに制作したコンテンツを電子書籍に流用することしかできないのだ。
 せいぜいできたとしても、印刷書籍と電子書籍を同時開発というところまでだろう。

 ならば、小規模の事業者や個人にとっては、最大のチャンスのはず。
 印刷書籍にはないあらたなコンテンツとして電子書籍を作るのは、リスクに挑戦できるベンチャーしかないのではないか。
 「いままでにないメディアを創造する」このぐらいの意気込みでないと成功しない。
 どんな電子書籍を作るか。
 これは、非常にわくわくする話ではないか。


 
  



posted by 平野喜久 at 09:45| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月21日

電子書籍版『天使と悪魔のビジネス用語辞典』:現在進行中

 『天使と悪魔のビジネス用語辞典』、略して『天悪辞典』
 電子書籍版のリリースに向け、準備が着々と進行中。
 年内には、アップストアにリリース予定。

 原稿が仕上がった。
 手を加えようと思うと、どんどん分量が増えていく。
 きりがないので、ある程度のところで、切り上げる。
 現在、校閲に回っている。

 図版については、ほとんどを自作。
 デザイン性を要求されるものだけプロに依頼。
 パワーポイントは、かなりの表現力があることに気付いた。
 これだけでも見栄えのいい図版ができる。
 ビジネス書に出てくる図版は、もともと単純なものが多い。
 それをカラー版にして、少し飾りを付けた。
 懲りすぎると、却ってやぼったくなる。
 カラー表示できるからと、いろんな色を使うと、却って素人くさくなる。
 その兼ね合いが難しい。
 プロの目で見ると、素人くささが丸見えかもしれない。

 最近、NHKニュースの図解画面がビジュアルになってきた。
 複雑な事件の概要を伝える場合は、図解が欠かせない。
 それを、ただ文字を並べて矢印でつなぐだけではなく、ビジュアル性にも気を配っているようだ。
 結構、色使いや装飾は派手に作っている。
 この程度なら許容範囲かと、色遣いとレイアウトの参考になる。


 『天悪辞典』については、ウェブ版と書籍版があるが、いずれもしっくりした見せ方ができていない。
 その制約が今度の電子書籍では取り払われる。
 この辞典は、普通の辞典と違い、「天使」「悪魔」「解説」という3つの要素で成り立っている。
 その特徴を生かした見せ方があるはず。
 それを電子書籍で実現できればと思う。
 ウェブ版とも、印刷書籍とも違うEブックという新しいコンテンツだ。
 
 今のところ、出回っている電子書籍は、印刷書籍を元に作っているのが普通。
 だから、印刷書籍をそのままデジタル化しただけのものがほとんどだ。
 これでは、電子書籍の良さが出ないだろう。
 使いにくい印刷書籍が出来上がるだけだからだ。

 電子書籍は、電子書籍として作られなければ意味がない。
 今回の試みで、1つの答えを出したいと思う。








 
posted by 平野喜久 at 10:08| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月14日

無断転載の海賊版アプリ:iTunes

 App Storeでは、他人のコンテンツを勝手に転用した海賊版アプリが横行している。
 販売者は中国の業者らしい。

 ウェブ上には、無料で公開されていながら内容が充実しているサイトがいっぱいある。
 その中から勝手に内容を転載して、電子書籍を作り、アップストアで販売しているようだ。
 アップル側は、一応内容の審査をしているが、内容の是非を判断しているだけ。
 著作権の帰属まで正確に調査はできない。
 このために、簡単に海賊版が出回ることになる。

 どこかの裏サイトで海賊版がこっそり売られているのなら、まだ分かるが、アップストアで堂々と売られているところが衝撃的。
 日本人では考えられない所業だ。
 著作権の侵害がばれても、痛くも痒くもない連中が仕掛けている。
 そもそも著作権という概念がない。
 そのような業者を相手に損害賠償請求しようにも、すべがない。
 
 アップル側に責任を持たせようとする意見もある。
 しかし、アップルにしても限界があるだろう。
 アプリの登録申請者が、コンテンツの著作権保有者かどうかを調査するのは大変だ。
 これを避けようとすると、大手出版社を通したコンテンツしか受け付けないということになりかねない。
 個人や弱小出版社がコンテンツを登録するのが難しくなる。
 これだと、多様なコンテンツの登録が阻害される。
 従来の印刷書籍をデジタル化しただけのつまらないコンテンツばかりになりそう。
 電子書籍市場は発展しない。

 アップルは野放しでアプリを登録しているのではなく、きっちり内容の審査をしている。
 エロや暴力を表現したマンガなどは登録できないらしい。
 この判断基準はあいまいなので、アップルの恣意的な判断で決められる。
 理由が分からないまま登録が削除されるケースもあるという。
 アップルの勝手な判断で、電子書籍の可否が決められることを問題にしている人もいる。

 アップルとしては対応が難しい。
 多様なコンテンツを集めようとすると、違法なコンテンツを排除できない。
 違法なコンテンツを排除しようとすると、正規の出版ルートに乗ったものしか扱えなくなってしまう。



posted by 平野喜久 at 17:26| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月31日

電子書籍ブームがカラ騒ぎで終わる可能性

 電子書籍元年ということで、今年は年初から電子書籍の話題が絶えない。
 続々と新しい動きが出てきて、情報をフォローするだけでも大変だ。
 本格的な電子書籍の時代が到来することを期待する声が大きい一方、単なるカラ騒ぎにすぎないと冷めた目で見る向きもある。

 日本では過去に何度も電子書籍化の動きはあった。
 パソコンが一般に普及し始めた時から、何度も話題になりながら、本格的な動きになる前に沈んでいった。
 今回の今回のカラ騒ぎも同じだ、というわけだ。

 確かに、今回も単なるカラ騒ぎに終わる可能性はある。
 だが、今回の騒ぎが従来の騒ぎと違う点がいくつかある。

1.アメリカで先行して本格的な電子書籍市場が立ち上がり始めたということ。
2.アメリカで電子書籍化を主導しているのは、アマゾン、アップル、グーグルと、世界市場を狙っている事業者であること。
3.iPhoneやiPadなどの登場により、従来の印刷書籍とはまったく違ったコンテンツの開発が可能になったこと。


 印刷書籍か電子書籍かという視点で見ると流れを見誤る。
 二者択一の問題ではなく、印刷書籍も電子書籍もというのが正解だろう。

 そして、電子書籍の市場を主導するのは、従来型出版事業者ではない。
 逆に言うと、日本の電子書籍化を従来型出版事業者が主導しようとしている限り、本格的な市場は確立することなく、今回のブームも立ち消えになる。

 印刷書籍の市場は97年以降縮小傾向にある。
 この縮小傾向は今後も進行する。
 電子書籍化の流れが、市場縮小に拍車をかけるのか、市場の下支えにつながるのかが不透明だ。
 印刷か電子かという二者択一で考えた時、市場縮小に拍車をかけることになる。
 しかし、電子書籍を印刷書籍とはまったく別のコンテンツと捉えた時、はじめて新規市場の開拓につながる。

 従来の印刷書籍の延長線上で捉えている限り、ブレイクスルーはありそうにない。


 
  

 
posted by 平野喜久 at 12:08| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月30日

電子書籍は印刷書籍とは別のコンテンツ

 電子書籍は、印刷書籍とはまったく別のコンテンツだ。
 よく、書籍の電子化と言われるが、印刷書籍をそのまま電子化しても意味がない。
 電子書籍が普及していない現在では仕方なく印刷書籍をスキャナで読みとってiPadで読んではいるが、これは、本来の姿ではない。

 電子書籍が印刷書籍と決定的に違うところ。

1.ページの概念がない。
 書籍はページをめくりながら読むものという固定概念があるが、電子書籍にはない。
 電子書籍ではページの制約から解放されるということだ。
 逆に言うと、印刷書籍はページが制約になっていたのである。
 たとえば、1行だけ次ページにはみ出してしまう場合は、無理に言葉を削ってページ内に収まるようにしたり、文章が短く終わって余白ができてしまう場合は、無駄な文章で水増しするか、イラストや図解を入れてスペースを埋めたりする。

 また、印刷書籍はある程度のボリューム感が必要だ。
 200ページ前後の分量がないと書籍としての形にならないからだ。
 そこで、100ページぐらいの内容でも、無理に倍の分量に水増ししたりする。
 「前半は面白く読めたが、後半はどうでもいい話の繰り返しでうんざり」という本に時々出会うのはそのためだ。
 その他には、文字を大きくしたり、イラストを増やしたり、改行を多くしたり、厚手の紙に印刷したりして、ボリュームを出す。
 これらは、書籍を作る側の勝手な都合で、読者のためではない。

 電子書籍では、このような不自然な加工をする必要がない。
 必要な情報を必要な表現で伝えることができる。

2.内容の更新が容易
 デジタルコンテンツで在庫がないということは、内容の更新が簡単にできるということだ。
 情勢の変化や読者の反応を見ながら、リアルタイムで内容の更新が可能だ。
 印刷書籍の場合は、内容に誤りが見つかっても、次の増刷のチャンスに修正するしかない。
 増刷のチャンスがなければ、そのままである。
 電子書籍では、コンテンツが完成した後も、つねにブラッシュアップして完成度を高めていくことができる。

3.いろいろな見せ方が可能
 紙 印刷 という制約から解放されたために、あらゆる操作性が追及可能だ。
 カラー表示が可能。
 ワンタッチによるジャンプやウィンドウの表示が可能。
 動きのある画面転換が可能。
 動画や音声の再生が可能。
 情報の検索、並べ替えが可能。

 
 まだまだ、電子書籍市場はようやく立ちあがろうとするところ。
 いまある電子書籍は、従来の印刷書籍をデジタル化しただけというのが現状。
 電子書籍先進国のアメリカでも、印刷書籍の延長線上から逃れられていない。
 印刷書籍と同じものが情報端末で読めるだけでは、電子化の魅力は理解されないだろう。
 
 
 電子書籍が本当に発展するかどうかは、印刷書籍の枠組みから脱皮できるかどうかにかかっているのではないか。
 その意味でも、従来の出版業界が主流で電子化に取り組んでいる限り、本当の電子書籍時代は訪れないのかもしれない。
 

 いま準備を進めている「天使と悪魔のビジネス用語辞典」の電子書籍版。
 従来の書籍の概念を超えたものに挑戦したいと考えている。
 以前出版した印刷書籍では、見せ方にいろいろなアイデアがあったが、様々な制約から実現できなかった。
 電子書籍ではその制約がなくなる。
 また、このコンテンツは、一般のビジネス書とは違って、見せ方の工夫ができる特徴がある。
 ここも最大の売りだ。
 この特徴を最大限に生かした電子書籍を作りたい。









 

posted by 平野喜久 at 10:37| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする