2017年04月10日

表層地盤、想定の1.5倍以上の揺れ

 NHKwebnewsの報道による。
 地震の揺れの大きさについて。
 表層地盤によって局所的に揺れが増幅する恐れがあるとして、国の研究機関である防災科学技術研究所が分析した。
 いままでは、揺れの大きさは地盤の柔らかさによって決まると思われてきた。
 だから、山間部は地盤が固いため揺れは小さく、平野部は地盤が柔らかいために揺れは大きくなる。
 当然、平野部ほど建物の被害は多くなるというのが一般的な解釈だった。
 ところが、去年4月の熊本地震では、必ずしもそうなっていなかった。
 平野部でも、場所によって建物被害の大きいところと小さいところが極端に分かれていたのだ。
 特に、河川流域は体積地層が深いので、建物被害は甚大になるはずが、そうなっていなかった。
 むしろ、流域から離れた地域の方に被害が集中していた。

 この謎は、表層地盤の厚さによるものだということが分かってきた。
 表層地盤とは地表面に堆積した柔らかい粘土層の地盤のことを言う。
 山間部は表層地盤が薄いので、地震の揺れは増幅されることがない。
 これは従来からの解釈と同じだ。
 問題は、平野部だ。
 河川流域は表層地盤が厚い。
 当然、地震の揺れは表層地盤で増幅されて地表に伝わるが、その揺れは非常に周期の長い揺れになって伝わる。
 この周期の長い揺れは、地面を大きく揺さぶりはするが、低層階の木造住宅を破壊するような力を持たない。
 一方、河川流域から離れた表層地盤が少し浅くなっている地域は、地震の揺れが増幅され、地表面に達するときには周期1秒ぐらいの揺れになる。
 この周期の揺れが木造住宅に特に被害をもたらすことが分かっている。
 熊本地震で、同じ震度7を観測した地域でも、場所によって建物の被害状況に極端な違いが見られたのはこういう仕組みだったのだ。

 近い将来、首都直下地震の発生が懸念される関東地方。
 従来の地質調査で揺れの大きさをハザードマップで公表されていたが、これが全面的に見直しを迫られている。
 表層地盤の状況によっては、地震の揺れが、これまでの想定の1.5倍以上に強まる可能性のある地域が5000か所余りに上ることが明らかになった。
 場所によっては、揺れの大きさが3倍以上となるところもあり、従来の被害想定がまったく当てはまらなくなっている。
 今後は、他の地域の地盤調査も進み、より正確なハザードマップが作られるようになるだろう。
 地震の調査研究は、常に進化しており、ハザードマップも常に塗り替えられている。
 私たちが地震への備えを考えるときには、最新の情報に敏感になっておく必要がある。


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2017年04月09日

記者会見に不慣れな大臣はそれだけでリスクだ

 今村復興相が記者会見で、記者の質問に激高し、会見室から「出て行きなさい!」「もう二度と来ないでください!」「うるさい!」と声を荒らげたことが問題になっている。
 男性記者は、東京電力福島第1原発事故による自主避難者への住宅の無償提供が3月末で打ち切られたことに関して質問。
 福島県に帰るに帰れない人がいることに対して、国の責任を追及した。
 今村大臣は初めのうちは穏やかに回答していたが、記者側が繰り返し責任を追及し続けたことから対応が感情的になり始めた。
 なおも追及をやめない記者に対して、ついに「責任を持ってやっている。君はなんて無礼なことを言うんだ。撤回しなさい!」と怒りを爆発さるに至った。
 会見を一方的に切り上げ、退場する場面でも記者は質問を浴びせ、それに対して「うるさい!」が出た。
 この「うるさい!」が、原発被災者に対する本音とも受け取られかねないことから問題が拡大した。
 今村氏はその後冷静さを取り戻し、同日夕に復興庁で記者団に陳謝。
 安倍総理も陳謝している。

 記者会見の様子を見ると、執拗に同じ質問を繰り返す記者のしつこさにうっとうしさを覚える。
 今村大臣がいらだちを感じるのも無理はない。
 だが、そもそも記者会見とはこういうものなのではないか。
 記者としては、大臣の本音を聞き出すため、いろんな質問をぶつける。
 時にはわざといらだたせるような質問をして揺さぶりをかける。
 これは記者として当たり前のことだろう。
 今回は、今村大臣が記者の仕掛けにいとも簡単に揺さぶられてしまったという印象が強い。
 政治家経験の長いベテランでありながら、大臣経験が初めてという人は記者会見で対応を間違えるケースが多い。
 記者会見の不慣れな人は、どうしても、目の前の記者に反応してしまう。
 若くて生意気な記者が嫌味な質問をしてくると、それだけで感情的に反発してしまう。
 「こんな奴に、なんで丁寧に対応しなければならないんだ」との思いが先行してしまう。
 こうなったら、危ない。
 公式の場での記者会見は、目の前の記者を相手にしているようで、実はその背後にいる国民や関係者を相手にしているという認識でなければいけないからだ。

 記者会見に不慣れな人物が大臣に就任した場合、それだけでリスクだ。
 いつ、足元をすくわれ、それが国民の不評を買い、内閣の崩壊につながるか分からないからだ。
 大臣初心者は、まず、マスコミ対応のレクチャーを受けるべきだろう。
 
 今の内閣で、最も記者会見のうまいのは、菅官房長官だ。
 毎日2回ずつの定例記者会見を開いているが、いまのところ失態はない。
 これは、無難な物言いに徹しているという意味ではなく、時には外国に主張すべきことは明確に主張し、国民にしっかり伝えるべきことは明確に述べている。
 表現は洗練され、感情も安定していて、その言動は危なげない。
 余計なことは語らず、かつ、必要なことはしっかり伝える。
 スポークスマンの手本を見るようだ。
 
 
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2017年04月06日

那須雪崩事故:事前準備の不備

栃木県那須町のスキー場付近で県立大田原高山岳部の生徒ら8人がラッセル訓練中に死亡した雪崩事故。
 追加の情報でいろいろなことが分かってきた。
 事前の準備に不備があったようだ。
 予定の登山を悪天候でできなくなった場合の訓練計画がなかった。
 実施要項に講師として記載のない教諭にラッセル訓練の先頭班を引率させていた。
 事故現場の国有林の管理元に入林届を出していなかった。
 生徒らに、雪崩発生時の対処方法をレクチャーしていなかった。
 
 当日の天候を見て山頂登山を中止したところまでは計画通りで問題なかった。
 ただ、登山中止の場合の計画はなく、そこからは行き当たりばったりの行動になってしまったようだ。
 雪崩など起きるはずはないという強い思い込みが前提なので、危機意識は全くなく、そのための備えは何もなかったといってもいい。
 特に、生徒らに、雪山遭難を避けるためのノウハウを伝えていなかったのは問題が大きい。
 何のための雪山訓練なのか。
 雪山のリスクを身をもって体験するための訓練ではないのか。
 結果として何も起きなかったとしても、リスクを意識しながら訓練をするのと、何も知らされずにただ引率教員の後をついて登っているだけとでは、経験値が全く違う。
 雪山リスクを実感できれば、その体験は一生の財産になる。
  
 この雪山のリスクを教えずに訓練をさせ、たとえ無事に下山することができたとしても、それは果たして成功と言えるか。
 ただ、みんなで雪山に登ってきました、という思い出ができるだけだ。
 その生徒らは、雪山リスクを学ぶ貴重なチャンスを逃す。
 雪山なんてこんなもの、という偶然の成功体験を増やしただけに終わる。
 偶然の成功体験を蓄積させてしまうと、リスクに鈍感になり、雪山をなめてかかるようになる。
 これは、将来の大きな事故の誘因になりかねない。
 こちらの方は、むしろ、弊害が大きい。
 責任者教員は登山歴の長いベテランだが、あの危機意識のなさは、成功体験しか蓄積してこなかった結果かもしれない。

 引率教員9人は、全員無線機や携帯電話を持っていたという。
 だが、その通信ツールは1つも役に立たなかった。
 ある教員は、何度も本部へ無線連絡を試みたが応答がなかったという。
 訓練開始前、本部と現場とで本日の訓練の打ち合わせをしている。
 その時の打ち合わせは、携帯電話でやり取りしたと本部責任者は言っていた。
 ならば、無線が通じなかったとしても携帯電話が使える状態だったはずで、なぜ、これを有効利用できなかったのか不明だ。
 本部に通じなかったとしたら、直接現場教員から警察に救助要請もできたはずだからだ。
 たぶん、現場教員も埋もれた生徒らの救出に大わらわで、救助要請の連絡をするというところまで気の回る状態ではなかったのかもしれない。
 
posted by 平野喜久 at 10:41| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴルフレッスンプロ1000人超がローン詐欺被害か

 東洋経済オンラインの報道による。
 レッスンプロ1000人超が破産の危機に瀕しているという。
 どういうことかというと、ゴルフ練習場のレッスンプロたちが、ある業者に不当な契約を結ばされ、多額の借金を背負うことになったという。
 ある業者とは、東京・港区のゴルフスタジアムという会社。
 そこが提供する、「ごるスタ」というウェブサイトの作成・運営管理サービスに絡み問題が起きた。
 
 この業者は、レッスンプロたちに無料でウェブサイトを作ると持ち掛け、実際にサイトを作成する。
 業者が無料でウェブサイトを作って終わりということはありえない。
 話には続きがある。
 最終的に契約書を取り交わす段階になると、「ソフトを買う形を取らせてほしい。ついては信販会社とクレジット契約も結んでほしい」と言い出す。
 無料でサイトを作るという話だったはずだ。
 その通り。
 サイトは無料で作った。
 ただ、サイトの運用には管理ソフトがいるので、それをローンで購入せよ、ということらしい。
 ウェブサイトを運用すれば広告料収入があるので、それを支払いに充てれば、実質、持ち出しにはならない。
 無料でサイトを作り、無料で運用できることになる、という理屈だった。

 はじめのうちは広告料収入もしっかりあり、それをローンの支払いに充てることで十分賄えた。
 ところが、今年の2月下旬になって、突然、広告料の支払いが滞った。
 それで、ローンの残債だけを抱えたレッスンプロが破産の危機に陥ったというわけだ。
 残債は少ない人でも300万円、多い人は900万円にも上るという。
 これで破産というのも大げさな感じもするが、急に多額の借金を背負わされた形になっているのは間違いない。
 いま、被害者の会が立ち上がり、信販会社に対して、回収をストップするように働きかけているようだ。

 これは、一時期流行したホームページ詐欺とよく似た手法だ。
 無料でホームページを作ると持ち掛け、管理料と称して、クレジット契約を結ばせる。
 サービスをローンの対象にできないので、管理ソフトという物品を対象にローンを組ませる。
 表向きは、毎月管理料を支払っているという形になる。
 客の方が、サービスを打ち切りたいと申し出ると、管理サービスは終わるが、ローンの支払いは終わらない。
 なぜなら、ローンの支払いは途中で打ち切ることができないからだ。
 ここで初めて客は、支払っていたのが管理料ではなく、ソフト代金のローン返済だったことに気づいてびっくりすることになる。
 
 今回の事例は、広告料収入でローンの支払いを賄うので、実質的な経費負担がないというのが前提だった。
 だが、毎月一定額の広告料収入が保証されているわけではないし、広告料収入とローン契約がリンクしているわけではなく、広告料収入があってもなくてもローンの返済は続く。
 ローンの期間は、7年84回。
 たかが管理ソフトにローンを組むこと自体があり得ないが、ソフトにこれほど長期のローン契約もあり得ない。
 これは、1回当たりの支払額を小さく見せることで、問題の発覚を避ける狙いがある。
 電話機のローン詐欺、ホームページのローン詐欺も、同じように7年84回だった。

 悪質商法であることに間違いないが、詐欺要件が立証できるかどうかは難しい。
 被害者は、スキームのすべてを理解したうえで契約書に署名捺印しているからだ。
 契約書に、ローン完済まで広告料収入を保証するという文言が盛り込まれていれば救われるが、たぶん、そんな業者に都合の悪いことは書いてないだろう。

 今回、なぜゴルフのレッスンプロばかりが被害にあったのかというと、もともとこの業者にゴルフ練習場との取引実績があり、そのコネクションを使って、この悪質ビジネスを立ち上げることを思いついたようだ。
 普段出入りしているゴルフ練習場や、仕事を世話してもらっている先輩からの紹介ということになれば、むげに断ることもできず、疑問に思いながらも契約してしまったという。
 不特定多数の一般の人々を対象としたものではなく、特定の業界の濃密な人間関係を利用した悪質ビジネスという点で特異なケースだった。
 

 
posted by 平野喜久 at 09:58| 愛知 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月01日

第3回レジリエンス認証:審査登録結果

 第3回のレジリエンス認証(国土強靭化貢献団体認証)の審査結果が公表された。
 今回、審査登録されたのは7社だった。
 第1回が44社、第2回が20社だったから、第3回はずいぶん少ない印象だ。
 応募そのものが少なかったのか、それとも、応募はあっても審査に合格するレベルの企業が少なかったのか。
 応募総数や合格率などが公表されていないので、実態はよくわからない。
 これまでに審査登録になった企業は、71社。
 初年度に100社を目標としていたはずなので、やや低調だ。

 レジリエンス認証制度は、民間企業のBCPの取り組みを客観的な立場で認証し、国が応援しようという仕組みだ。
 いままで、BCPの必要性はいろいろなところで語られてきたが、各企業が勝手に取り組んでいるだけで、それが実質的に意味のある内容になっているのかどうかは、よくわからなかった。
 BCPに取り組んでいるといっても、いろんなレベルの取り組みがある。
 ようやく基本レベルが一通りできた初級レベル。
 基本レベルのBCPに基づき、具体的な対策を実行し始めた中級レベル。
 必要な対策は実行済みで、さらに実効性の向上にバージョンアップを重ねている上級レベル。
 「BCPに取り組んでいる」と表明していても、その企業が実際にどのレベルの取り組みを行なっているのかは外部からはうかがい知ることができない。
 外部から伺い知ることができないだけではない。
 取り組んでいる当事者も、自分たちの取り組みはこれで十分なのか、まったく足りないのか、それが分からないことがある。
 お手本を見ながら、見よう見まねで作っているだけだからだ。
 
 こういう状況にあるとき、レジリエンス認証のような客観的な審査制度は非常にありがたい。
 取り組んでいる当事者にとっては、自分たちのBCPが十分なレベルにあり、いままでの取り組み方が間違っていなかったことの確認になる。
 第三者に対しては、我が社のBCPは十分なレベルにあることの証明になる。
 このことから、BCPに取り組む企業には、まずはこのレジリエンス認証をクリアできるレベルを目指すことをお勧めしている。
 
 だが、このレジリエンス認証制度は、まだ昨年度に始まったばかりで、認知度は高くない。
 いままで認証取得した企業も、地域や業種が一部に偏っている。
 このレジリエンス認証の審査基準の1つに、過去2年ほどの活動実績があることが要求されている。
 これが1つのハードルになっているようだ。
 つまり、とりあえずBCP文書を作りました、というだけでは認められない。
 それに基づいて実際の活動が行われていて初めて認証される。
 この認証制度は、文書が形式的に整っているかは重視しない。
 実際に活動が行われており、今後もその活動が継続する仕組みがあるかどうか、という実質性の方に重点が置かれている。
 だから、この認証制度を知って挑戦しようと思っても、まずは活動実績がなければ申請できない。
 それで、いま、活動実績を作っているところということかもしれない。
 回を重ねるごとに登録企業数が減っているのは、こんなところに理由があるのだろう。

 国土強靭化は国策として取り組まれており、レジリエンス認証制度は、その一環として重要な位置づけにある。
 国は本気でこの制度を広げていこうとしている。
 レジリエンス認証に挑戦する企業が増え、このメリットが具体的に実感できるようになれば、一気に普及が進むだろう。


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2017年03月31日

NHK子会社の余剰金問題:競争原理から隔離された奇妙な事業体

 読売新聞・産経新聞の報道による。
 NHKの子会社13社の利益剰余金が2015年度末で計948億円に上ることが、会計検査院の調べでわかった。
 検査院はNHKに対し、子会社の剰余金の状況を把握し、適切な規模とするよう求めた。
 このニュースは何が問題か。
 一般に、子会社に剰余金があることは別に悪いことではない。
 だが、これがNHKだから問題なのだ。
 NHKの収入は国民の受信料で賄われている。
 その受信契約は放送法で強制されているもの。
 この受信料は、他の有料放送の視聴料とは全然違う。
 法律による強制力があることから、税金や社会保険料と同じような性格を持つ。
 それだけに、その使途については国民に明らかにする必要があるし、そこに無駄な経費があれば、厳しく削減が求められて当然だ。
 ところが、このNHKは民間事業者としての性格も持っているために、その経営内容には国民は立ち入ることができない。
 ここに不透明な点が残る。
 不透明な最大のポイントは、受信料がどのように使われているかだ。
 NHK本体だけ見ていては受信料の使われ方は見えない。
 NHKは関連会社に業務を丸投げしており、そこに受信料が流れているからだ。
 関連26団体のうち、9割以上が随意契約だという。
 つまり、仲間内に仕事を回し、そこに受信料を流してしまえば、NHK本体には剰余金は必要以上に出ないので、表向きは受信料は適正な規模で使われていると見せることができるというわけだ。
 受信料は子会社にふんだんに流れていく。
 それが子会社の剰余金という形で表れている。
 これを会計検査院が指摘し続けているのだ。
 だが、NHKは一向にこれを改めようとする気がない。
 
 検査院は05年度末時点の調査でも、子会社の剰余金が計759億円に上ると指摘し、剰余金が過剰にならないようにNHKに改善要請をしていた。
 にもかかわらず、10年たってその体質は変わらず、剰余金は増える一方だ。
 国民をなめ腐った態度としか言いようがない。
 今回の指摘に対しても、NHK広報局がコメントを出している。
 「検査結果を真摯に受け止め改革を進めていく」
 本当に改革する気がないのがまるわかりのコメントだ。

 なぜこのような体質が放置されているのか。
 1つは、NHKには競争原理が働いていないからだ。
 もちろん民放では競争原理が働いている。
 ところが、NHKだけは、競争原理から隔離された存在になっている。
 収入が法律で保障されている企業が、自ら経費節減の改革などするはずがない。

 もう1つは、国民によるチェックができていない。
 NHK予算は国会の審議を経て承認を受ける。
 ここで、形式上、国民のチェックを受けていることになる。
 だが、NHK予算が問題になったことはない。
 すべて、NHKの希望通りで承認される。
 「子会社に剰余金が出すぎているので、受信料をもっと下げよ」という議論が上がったためしがない。
 つまり、政治家がNHKの経営を問題にしないのだ。
 政治家がマスコミに介入することのタブーから、どうしてもここに強く切り込めない。
 本当は、総務省が本気でNHKを監督すべきだが、これも、マスコミの独立性の壁に阻まれている。
 総務大臣がNHK改革を口にすることはない。

 一方で、NHKは放送法の改正を望んでいる。
 受信料の徴収率が75%ほどにとどまっており、これを100%に近づけるために、いろいろな策を考えいるようだ。
 テレビを所有しているかどうかを全世帯に申告させる制度にしようとしている。
 申告用紙を全世帯に郵送し、テレビの所有の有無を申告させる。
 テレビがあれば契約を結ぶ。
 なければ契約の必要はない。
 ただし、テレビがあるのにないと申告した場合は、虚偽申告として刑事告発する。
 さらに、申告書を提出しなかった世帯については、テレビを所有しているものとみなして、契約の義務を課す。
 そして、テレビがなかったとしても、ワンセグが見られる携帯電話やカーナビを持っている場合は、契約の義務ありとする。
 このように放送法を改正しようとしているらしい。
 NHK側の都合だけを考えた法改正だ。
 
 東横インがNHKとの裁判で負け、19億円もの支払い命令を受けた。。
 客室に設置されているテレビ1台ごとに受信料を払えということだ。
 いま、受信料は世帯ごとの支払いになっているが、ホテルの部屋は世帯なのか。
 部屋ごとに受信料を徴収するということになると、その受信料は結果として宿泊客が負担することになる。
 宿泊客は、家庭ですでに受信料は負担しているはずであり、これは受信料の二重取りになってしまう。
 この辺は、放送法にきっちり決められているわけではなく、すべてNHKの勝手な解釈で行われていしまっているのが実態だ。
 
 放送法では、NHKの放送を受信することを目的としない設備を設置した場合は、契約の義務がない旨が明確に規定されている。
 ならば、NHKを見ることを目的としないテレビは対象外になるのではないのか。
 ワンセグ付きの携帯電話は、テレビを目的として購入しているわけではない。
 また、携帯電話は携帯するものであり、設置しているわけではない。
 そして、NHKだけが受信できないテレビがあったら、それは対象外になるのではないか。
 戦後間もないことに制定された放送法は、現状にそぐわないところがあり、放送法を改正するのであれば、NHKの受信料制度そのものを見直すところからやるべきだろう。

 子会社の剰余金の問題が放置されたまま、受信料の徴収率アップのための法改正などありえない。
 受信料はもっと安くできるはず。
 そして、法律で脅して受信料を巻き上げるようなことをしなくても、スクランブルをかけることで、徴収率100%は容易に達成できる。
 
 公的機関でもなく民間企業でもない不思議な事業体・NHK。
 競争原理から隔離され、国民のチェックからも隔離されている現状は異常だ。
 このNHKの問題は、全国民にかかわる重大案件だが、これを問題視する政治家や政党がほとんど存在しないのが不思議だ。
 



posted by 平野喜久 at 21:34| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月30日

てるみくらぶ経営破綻

 旅行会社てるみくらぶが経営破綻。
 3年前から粉飾決算を行なっており、2017年3月期では、126億円の債務超過に陥っていたという。
 時々、旅行会社の破綻がニュースになる。
 このようなニュースに触れるたび、「やはり、高くても大手旅行会社に頼んだ方がいいのでは」と思わせる。
 
 業界の過当競争と、現金商売で自転車操業がやりやすい業態による。
 いろんな旅行会社が様々なツアー商品を開発している。
 だが、その内容はどれも似たり寄ったり。
 そのために、ツアーの選択理由の1番は、値段の安さになりがち。
 特に中小の旅行会社は、値段の安さで集客するしかない。
 派手な広告と値段の安さで集客し、薄利多売で資金を回す。
 非常に危なっかしい営業形態だ。

 旅行会社は、客からの現金入金が先で、ホテルや航空会社などへの支払いは後になる。
 支払いは、2,3か月から半年後になるという。
 これが、自転車操業の誘因になる。
 派手な広告を打って、集客できれば、現金が手に入る。
 その現金を支払いに回す。
 やがて、販売したツアーは実行され、その支払い期日がやってくる。
 そのときまでに、次のツアーで集客し、現金を手に入れる。
 その広告は値段の安さを強調した派手なものになっていく。
 採算度外視の廉価販売なので、目先の集客は成功するが、問題は深刻化するばかりで、経営改善にはつながらない。
 これを繰り返すうち、負債がどんどん膨らんでいった。
 最終的には、前受金が100億円にまで達していたという。
 
 経営破綻した企業の事例を見ると、「どうして、もっと早くに撤退しなかったのか」と感じる。
 だが、早期撤退の判断は非常に難しい。
 早期撤退できるのは、かなりの勇気と決断力がある人だけだ。
 たいていは、もう少し、もう少しとずるずると深みにはまっていく。
 
 
 
 
 
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雪崩事故:責任者のリスク認識

 8人もの若い命を失う重大な結果を招いた栃木県那須町の雪崩事故。
 この事故の論点は2つ。
 1つは、なぜ雪崩発生のリスクがあるのに雪山訓練を決行したのか。
 もう1つは、なぜ事故発生の通報が遅れたのか。

登山講習会責任者が会見を開いた。
 訓練決行の理由については、「絶対安全との認識があったため」と発言した。
 前日の報道で雪崩発生の可能性を認識していたが、雪崩の発生しそうな場所は分かっているので、そこを避ければ安全であると判断したようだ。
 「100%か」と問われ、「100%だ」と答えていた。
 世の中に「絶対」とか「100%」などということはめったにあるものではないが、この責任者は安易にこの言葉を使う。
 すべての間違いはこの「絶対安全」との認識から始まっている。
 リスクを認知していなければ、それに対する備えをすることはなくなってしまう。
 遭難時用のビーコンを生徒らに持たせなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。
 本部で緊急事態に備えた心構えができていなかったのも、遭難リスクを認知していなかったから。

 彼は、登山歴20年のベテランだ。
 どうしてそのような人物が雪山リスクを正しく認知できなかったのか。
 もしかしたら、自らの経験が判断を誤らせたのかもしれない。
 経験豊かな人が判断を間違うということは往々にしてある。
 むしろ、経験豊かだからこそ間違うということも起きる。
 その経験が偶然の成功体験しかなかったら、その経験則は、間違った判断しかもたらさない。
 
 彼は、同じ場所で過去に同じような訓練をした経験があるという。
 そして、その時には何も問題は起きなかった。
 この成功体験が判断を誤らせたのは間違いない。

 当日、早朝、天候が悪いために、通常登山は無理と判断し、「ラッセル訓練」に切り替えたという。
 前日の雪崩注意の報道、そして当日の荒天。
 そのために、登山を避けるべきというリスク判断をした。
 ここまではよかった。
 だが、ラッセルなら絶対安全という認識に至る経緯が理解不能だ。

 問題の2つ目は、通報が遅れたこと。
 この理由は、よくわからない。
 本部が遭難を知ったのは、最終班の教員が本部に駆けつけて通報したことによる。
 そのために、雪崩発生から警察への通報に50分もかかることになった。
 各班の教員は、それぞれ無線機を携帯し、何かあればただちに本部に連絡できる体制になっていた。
 なのに、なぜ、雪崩に巻き込まれた先頭班の教員らは、ただちに無線連絡しなかったのか。
 教員らも雪崩に巻き込まれ、無線連絡できる状態ではなかったとしても、2番班、3番班の教員たちは、ただちに無線連絡できたはず。
 今回、最終班の教員が本部に駆けつけたので、緊急事態を知ることができたが、もし、それがなかったら、さらに救助が遅れたはずだ。
 会見では、無線連絡がなかった理由はよくわからないとのことだった。
 ただ、無線機を車の中において、他の作業をしていた時間帯が10分ほどあったことを明かしていた。
 
 このあたりもあまりにも不自然な印象を受ける。
 たぶん、雪崩発生を受けて現場の教員らは直ちに本部へ無線連絡を試みたに違いない。
 雪崩に巻き込まれて、教員にそんな余裕がなかったとしても、離れた場所にいる教員は何が起きたかすぐにわかり、それをただちに無線連絡することは可能だ。
 1班から5班までのすべての引率教員が無線連絡を失念していたなどということはあり得ない。
 特に最終班の引率教員が本部に駆けつけて緊急事態を知らせたのは、無線が通じなかったからではないのか。
 もしかしたら、本部ではまったく無線が通じない状態にあったことを疑わせる。
 たとえば、無線機の近くに誰もいなかったとか、無線機の電源が切られていた、とか。
 「絶対安全」との認識だったのだから、そうなっていたとしても不思議ではない。
 すべての間違いは、責任者のリスク認識にあったと言わざるを得ない。

 最終班の教員が本部に駆けつけたのはせめてもの救いだった。
 この教員が、「どうせ誰かが本部に通報しているだろう」「無線が通じないのは既に本部で緊急対応が始まっているからだろう」などと憶測してしまっていたら、対応は更に遅れていた。

 最後に、責任者の記者会見について。
 たどたどしい語りだったが、まるで人ごとのように軽々しく話しているという印象を受けた。
 たぶん、彼自身、ことの重大さをまともに受け止め切れていない感じだ。
 「どうして、こんなことになってしまったのだろう」と訳が分かっていない様子に見えた。
 最後、隣にいる人に促されて、立ち上がって頭を下げていた。
 その姿が痛々しい。



 
 

 
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2017年03月26日

森友問題:本当に政権崩壊の恐れ

 籠池氏の証人喚問で、新たな人物名やFAX文書などの具体的な物証が明らかになり、騒動は拡大しつつある。
 本質の問題が拡大しているというより、周辺事情でいろいろな情報が取りざたされるために焦点が拡散してしまっている印象だ。
 メディアは、周辺事情の方が話題性があるため、「誰が嘘を言っているのか」という謎解きの面白さを強調しながら視聴率を稼いでいる。
 「総理や総理夫人が関与していることが判明したら総理退陣」という総理自身の発言があったために、この1点に野党と一部メディアの関心は集中している。
 テレビの情報番組では例外なくこの森友問題を取り上げるようになっているが、登場する識者が問題の本質に迫る発言をしても、そこに論点が移ることはまずない。
 あらかじめ用意されていたボードには、総理夫人と籠池氏とのやり取り、総理夫人と籠池夫人とのメールのやり取り、総理夫人付き秘書と籠池氏とのやり取りばかりが表示されており、話題はそこに集中する。
 司会者の「誰かが嘘を言っているはず。さて、真相はどこにあるのでしょうか」と大げさに煽る。

 総理夫人と籠池夫人との間で、メールのやり取りが頻繁に行われていて、証人喚問で籠池氏は「2月中は22回、3月に入ってからも15,6回行われている」と証言し、会場がどよめいた。
 籠池氏が「総理夫人から口止めともとれるメールをいただいた」と言ったことから、このメールに関心が集まることになる。
 そのメールを公開してもいいか、と籠池氏に質問したところ、「いい」という返答。
 総理も、総理夫人も公開を了承したため、公開されることとなった。
 ところが、直前になって、民進党から待ったがかかる。
 政府が公開したメール内容が、本物であるという確証がない、ということらしい。。
 このメールは国会には提出されなかったが、メディアには公開されたらしい。
 あるメディアが早々にネット上に全文をアップした。
 それを見ると、ほとんど籠池夫人からの一方的な愚痴と要求だった。
 内容が長文にわたっているので、何回にも分けでメールが送られており、それで、メール数があれほど大量になっていたのだ。。
 一方的なメールに、時々、総理夫人がメールを返信しているといった感じだ。
 その総理夫人の返信も、一方的な要求に戸惑いながらも、相手の感情を害さないように気遣いながら、なんとかやり過ごそうと苦慮する姿が見える文面だった。
 「口止め」を感じさせる文面はかけらも見られない。
 
 ところが、この公開されていたメール全文が、突然削除された。
 その後は、どのメディアも、全文から抜粋したやり取りだけを抜き出して紹介するというスタイルになる。
 メディアによってどの部分を抜粋するかが違うので、どのように報道するかでイメージが全然違って感じられる。
 これは、もはやメディアによる印象操作の域に達している。
 
 さて、一時、ネット上に全文公開していたメール全文は、いまでもネット上に画像データとして拡散している。
 そこには、民進党議員の実名が登場する。
 籠池夫人のメールの中で、呼び捨ての形で登場するのだ。
 民進党が公開に反対し始めた理由はこれだったことがここで分かった。
 民進党は一切、このメールについては、触れなくなった。
 メディアにも、このメールの内容はでたらめだから拡散しないように働きかけたようだ。
 それで、今では、一部抜粋の形での紹介になっているようだ。

 いまのところ、森友学園への国有地の払い下げについて、政治家の口利きがあったという根拠は1つも見つかっていない。
 ただ、籠池氏が「たぶん、口利きがあったのだろうと思う」と言っているだけ。
 まして、総理や総理夫人が口利きを行なったなどと本気で思っている人は、もはや誰もいないだろう。
 いま、野党側の焦点は「総理夫人が関与していた」という1点にある。
 関与といっても、積極的に働きかけたということではなく、最大に見積もっても、秘書に頼んで関係省庁に聞いてみただけ、というところが限界。
 当初は、「これほどの値引きが行われるのは不自然であり、何らかの働きかけが行われていたのに違いない」との見込みで、野党側の追及が行われたが、働きかけを行なった痕跡が見つからない。
 そこで、「積極的な関与」から「広義の関与」に切り替わった。
 「具体的に働きかけを行なっていなかったとしても、総理夫人と関係があったというだけで、国有地の払い下げ判断に影響を及ぼしたはず」という理屈になった。

 このフレームのずらし方は、慰安婦問題に酷似する。
 当初は、「日本軍が慰安婦を強制連行し、慰安所で働かせた」というフレームで話が始まった。。
 ところが、その根拠が1つも見つからない。
 ようやく見つかった唯一の証拠は、日本軍が出した慰安所の運営に関する通達文書だけ。
 この文書の内容は、慰安所の衛生管理と慰安所経営業者の不正を取り締まるという通達内容だった。
 唯一の証拠は、日本軍が少女を強制連行したとも、慰安所で働かせたとも言っていない。
 そこで、いつの間にか、「日本軍が関与していたことは事実」として、独り歩きすることとなった。
 実態は、日本軍が慰安所業者を取り締まっていたことを、「日本軍の関与」とし、まるで、日本軍が慰安婦を強制連行したかのようなイメージだけを拡大させることに成功した。

 今回の問題もそっくりな構図だ。
 総理夫人の積極的な関与を示す根拠が見当たらない。
 そこで、関与の解釈を拡大していった。
 秘書が関係部署に問い合わせたことをもって、「関与あり」と認定。
 そこからは、国民のイメージが勝手に拡散するに任せるだけでいい。
 「総理や総理夫人の影響で、国有地が不当に安く払い下げられた」というイメージが勝手に作られ、いつの間にか定着する。
 野党側は、これを狙っているように見える。
 いまのところ、野党側はせっかくつかんだ安倍政権への攻撃材料を簡単に手放すつもりはない。

 自民党側は、細かい事実関係を詳細に説明し、実態はそんなレベルの関与ではなかったことを主張しても、それはメディアに乗りにくい。
 ややこしい話は「受けが悪い」からだ。
 野党側のストーリーの方が単純で分かりやすい。
 メディアも単純ストーリーの方が説明しやすいし、興味深い演出ができる。
 「よく調べたら何も不正常な取引はありませんでした」では、収まりがつかなくなっている。
 この問題は、自然鎮静化することはない。
 中途半端に幕引きを図ろうとすると、あの慰安婦問題のように、長期に影響を及ぼす根の深い問題として定着してしまいかねない。
 慰安婦問題は、当初の日本政府は「いずれ真実は明らかになる」と軽く考え、安易な弥縫策を繰り返した。
 このことが、問題を深刻化させた。
 森友問題も、対応を間違えると、本当に政権崩壊につながりかねない根の深い問題になってしまいそうだ。

 
 
 

 

 
posted by 平野喜久 at 08:20| 愛知 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月24日

籠池氏証人喚問:問題の本質は安倍夫人ではない

 昨日、籠池氏の証人喚問が行われた。
 いままで、籠池氏の参考人招致すら拒否し続けてきた自民党だったが、籠池氏がマスコミや野党議員の前で、不規則な発言を繰り返すようになり、その中に、安倍総理や総理夫人の関与を疑わせるような話が飛び出すようになったために、急遽、証人喚問ということになったようだ。
 自民党としては、放置しておくと、籠池氏はマスコミの前で言いたい放題になってしまうので、嘘をつけない証人喚問の場で発言させて、その真偽を正そうとしたのだろう。
 だが、結果として自民党の思わくは裏目に出た。
 籠池氏は、そんなやわな人物ではなかった。
 彼は国会の場で、ますます言いたい放題であった。

 この証人喚問で、籠池氏の思いがよくわかった。
 小学校設立に向けて、時間をかけて奔走してきた。
 その過程で、いろんな人に声をかけ、協力や支援を仰ぎ、理解をいただきながら進めてきた。
 そして、ほとんど完成し、4月開校を目前にして、その夢が瓦解した。
 いままで好意的に応援してくれていると思っていた人々が、掌を返すように離れていく。
 一番敬愛している安倍総理にまで「しつこい人」と言われ、その衝撃から、ついにスイッチが入れ替わった。
 我慢の限界を超えたようだ。
 自分一人が悪者にされ葬り去られてなるものかと、「怨念」ともいうべき情念を感じさせる答弁だった。

 各党の代表者による質疑は、いずれも迫力を欠いた。
 自民党の西田議員は、国会質問で、証拠を1つずつ出しながら相手を追い込んでいく手法を得意とする。
 だが、いつもと勝手が違う相手に本領を発揮できなかったようだ。
 100万円の受け渡し場面の証言が、安倍夫人の言っていることと違うことを指摘しようとするが、籠池氏は、その場面には自分と安倍夫人しかいなかったという設定をしており、本人の証言しか証拠が存在しない。
 矛盾を指摘しても、「私の言っていることが正しい」と堂々と断言させるだけで終わってしまった。
 籠池氏は、反証しようのない事項については、堂々と断言し、危ない事項については、答弁拒否という手段に出た。
 実に巧みであった。
 与党議員は、「籠池氏はでたらめな人物である」というイメージを浮き彫りにしようとし、野党議員は、「安倍夫人が深くこの問題に関与していた」というイメージを印象付けようとした。
 野党議員の関心は、安倍夫人の関与のところにしかない。

 そもそも、この問題を大きくしたのは、安倍総理の国会答弁がきっかけだった。
 「この問題に自分や妻が関与していたら、総理大臣も国会議員も辞める」
 これで、野党が浮足立った。
 安倍夫人が少しでも関与していた事実を1つでも見つけることができれば、安倍政権を倒せるのだ。
 いままで、圧倒的な強さを維持してきた安倍政権。
 攻撃材料がなく手詰まりだった野党の目の前に、いきなり黄金の斧が降ってきたのだ。
 これを使わない手はない。
 それで、この証人喚問でも、安倍夫人がいかにかかわっていたかに集中して発言を引き出していた。
 籠池氏も、安倍夫人といかに深い関係にあり、同じ思いで小学校設立に向けて取り組んできたかということを言いたいがため、野党質問への答弁は、ことのほか弁舌なめらかであった。
 今回の騒動は、安倍総理自身の失言が増幅したといってもいい。

 与野党議員の思わくがこんなところにあるため、問題の本質に迫れるはずがなかった。
 なぜ、国有地がこんなに安く払い下げられることになったのか。
 こんな怪しげな小学校設立に「認可適当」などという審査結果がでたのか。
 ここが本質のはずだが、これらは、行政側の問題であり、籠池氏をいくら追及しても、答えは得られるはずはない。
 証人喚問で、籠池氏は「驚いた。神風が吹いた」と言っていたが、この程度の理解しかなかった。

 だが、今回の証人喚問の中で、この本質に迫る場面がなかったわけではない。
 1つは、自民党・葉梨議員の質問。
 彼は、なぜ国有地払い下げがこれほど安く実行されたのかをボードを用意して説明していた。
 小学校予定地だけではなく、隣接する土地も別の団体に払い下げられており、その金額も同様に大幅に値引きされていた。
 それは、地中に廃棄物が埋設されておりその処理にどれほどのコストかわからない土地であることが原因で安く処分されていたらしい。
 森友学園にだけ不当に安く払い下げられたわけではないのだ。
 むしろ、森友学園の値引き幅は、他よりも少ないぐらいだったという。
 籠池氏は、金額の安さに驚いている場合ではなく、「なぜ、うちだけ値引き幅が少ないのか」と文句を言わなければいけない立場だったのだ。
 だが、葉梨氏は、この事情を説明するだけで、次の話題に移ってしまった。
 せっかくテレビ向けにボードまで用意し、最大の見せ場であったにもかかわらず、だ。
 ここは葉梨氏のミス。
 「この事情を知っていたか」と籠池氏に問いただすべきだった。
 そして、「これは、あなたに神風が吹いたわけではなく、順当な手続きでこうなっただけ」ということを認めさせればよかったのだ。
 この葉梨氏の重要な指摘は、質問の形になっていなかったため、籠池氏の答弁がなく、そのためにマスメディアでは取り上げられることがない。
 葉梨氏は惜しいことをした。

 だが、問題の本質はここにある。
 今後、行政側の人物の参考人招致が予定されているという。
 その中で、葉梨氏の挙げたような事情が明らかになってくれば、「政治家の関与で国有地が不当に安く売却された」という疑惑は一気に消滅する。
 今回の森友学園問題は、もともと問題といえるほどの内容すらない案件だったのではないか。




 
 
 
posted by 平野喜久 at 22:55| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 世事雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする